香りは2秒で人を魅惑できる

12月末にオープンしたGrand Musee du Parfum/香水大博物館に行きたいと思いつつ延び延びになっていた。
友人の調香師、新間美也さんに「もう行っちゃった?」と聞いたら、ラッキーに「まだ」で一緒に行くことに。

パリ香水大博物館/Grand musee du parfum

地階の[香水の歴史]はイマイチ。古代エジプトまで遡るので、範囲が広すぎて一貫性がない。まぁ、言うは易しだけど。

パリ香水大博物館/Grand musee du parfum

嗅覚や調香についての上のフロアは面白い。調香師のことをフランス語ではnezというくらいだから、美也さんは鼻が鋭く、私が「何の匂いをしない」香りを嗅ぎ充てる。
象の嗅覚は人間の5倍、犬は2倍とか。フランス語で記憶力のいい人のことを“象の記憶力”というけど、見かけによらず五感の鋭い動物らしい。
香り当てクイズも美也さんのをカンニングして全問正解。賞品は何も出なかったけど。

匂いを嗅いで・・・

パリ香水大博物館/Grand musee du parfum

こちらに回答

パリ香水大博物館/Grand musee du parfum

調香師のインタビューの中で、ジャン=クロード・エレナ氏(エルメス、ブルガリ、フレデリック・マルなどの香水を多数作った)が、
「香りは2秒で人を魅惑することができる、言葉は2秒で何も伝えられない」というようなことを言っていて「ほーなるほど」
香水選びを考え直さねば。

あっと言う間に2時間が経ち、閉館時間。私たちは追い出されるように博物館を出た。
五感の中で二の次にされがちな嗅覚は、場所や人の記憶を呼びこす感覚だった、と再認識。
一昔前、パリに着いたときの“匂い”はメトロの匂い。当時は禁煙じゃなかったので、タバコと過熱されたレールの匂い、決して嫌な匂いではなかった。
最初、サン・シュルピスの屋根裏に住んでいて、サン・シュルピス通りにあったBeauté Divine(神々しい美しさ)というお店を時々覗いた。薄暗い店内に、ごちゃごちゃとアンティークのオブジェや香水瓶なんかが並んでいて、タンスに入れるビーズの香料が気に入って買った。微妙で特徴のあるその香りが、パリのイメージになった。
今はお店もなくなり、メトロは禁煙になったけど、“メトロとビーズ”の匂いに出会えば、30年前に引き戻されそうだ。

メトロと言えば、10年以上前、RATPが[サンジェルマン・デ・プレ][モンパルナス][オペラ]などメトロの名をつけた香水(!)をRATPブティックで売り出した。でもその頃すでに“メトロは臭い”という先入観だか事実が行き渡っていて「え?シャトレ駅の匂い?そんなのやだー」と人気が出ず消えてしまった。無理もない。

香水大博物館の情報はこちらをどうぞ。


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田舎の日曜日

シャンパーニュ地方の小さな駅に着くと、憲兵が5人、出口に並んでいた。やだ、身分証明書を忘れてきた、と一瞬ビビったけど、私は完全無視された。少し離れて観察していると、“白人男性”が調べられている。
一足先に田舎に着いていた夫が迎えに来た。憲兵の話をすると、
「囚人の脱走だろ」
10㎞離れた村にある刑務所から、時々脱走するんだそうだ。
物騒な話をよそに、のどかな風景。木はまだ裸だけど、春の色。

Spoy、田舎の春

庭仕事を始めた夫に「手伝おうか?」
私は“緑の手”を持っていないので断られると期待したら、
「じゃ、枯れてる枝を半分に切って」

Spoy、田舎の春

「枯れてる枝って全部枯れてるじゃない」
「今に蘇る」
ホントかね。手袋をし、長靴に履き替え、携帯の音楽をつけて切り始める。
「これ、コスモスじゃなかった?」
「知らない」
男たちが、バラ以外の花の名前を知らないのは何処も同じ。

切ったぜ!

Spoy、田舎の春

枯れ枝の中に隠れていた・・・

Spoy、田舎の春

次はリンゴの木。

Spoy、田舎の春

「枝の、三つ目の芽まで残して切って」
「ミッツメノメ?せっかく伸びたのに可愛そう・・・」
「切らないと葉ばっかりで実が生らないんだ」
と言われて心を鬼にして全部切った。
庭のリンゴは見かけは不細工で、甘みの少ない“営業用”じゃない味。
夫が子供の頃はもっと盛大にリンゴの木があって、義父はシードルを作っていたそうだ。

私が切ったんだから沢山実をつけてくれ!

Spoy、田舎の春


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重くて激しい『沈黙』

日本より3週間遅れで封切りになったマーティン・スコセッシの『Silence/沈黙-サイレンス-』

スコセッシ『沈黙-サイレンス-』

1633年.ポルトガルの宣教師、ロドリゲスとガルペは、彼らの師であるフェレイラ神父を探しに日本に旅立つ。キリスト教を布教するために日本に滞在したフェレイラ神父が、棄教したという噂を2人は信じられない。
密かに九州の村に辿りついた2人は、隠れキリシタンに匿われ、彼らがヒステリックなほどに告解と罪の許しを請うのに驚く。

スコセッシ『沈黙-サイレンス-』

そして踏み絵を拒んだ信者たちが拷問のあげく死んでいくのを目のあたりにする。
これらの死は無駄ではないのか?神は彼らの叫びを聞かれたのか?これほど苦しんだ人々を前に神はなぜ沈黙しているのか?
揺らぐ信仰に必死でしがみつくロドリゲス。彼も捕らえられ、檻に放り込まれる。

スコセッシ『沈黙-サイレンス-』
photos:allociné

日本政府にとって2人のしていることは、布教というより“植民地開拓”なのだ。既に確立している仏教を、他の宗教に取り替えようとしている狂信者なのだ。
『日本には偉大な自然以外存在しない。人間を超越するものはないのだ。キリスト教の神の概念は、日本人には理解できない』とロドリゲスはやがて気づく・・・

この映画、キリシタンの拷問や処刑のシーンがかなりショッキング。踏み絵は歴史の教科書にあったと思うけど、こんな残虐なことをしていたんだ、と。
でも考えるとユグノー戦争などヨーロッパの宗教戦争でも多くの人が虐殺されている。終わりなきパレスチナ問題、今日では、イスラム教の名のもとに殺戮を続けるジハードたち。宗教をめぐる戦いは過激だ。

スコセッシはこの作品で善悪の判断を示さず、日本人をカリカチュアもしない。
私は日本で僅か1%と言われるクリスチャンの家庭で育った。特に熱心だったおばあちゃんがこの映画を観たら何と言うだろう?
結局、信仰は自分の中にあるもの、踏み絵を踏んでも、信仰を変えることはできない、という気がした。

登場人物の中で、井上筑後守(イッセー尾形)が特に光っていた。狡猾で、ユーモアがあり、憎めない。夫もさかんに『あの俳優はすごい!』。イッセー尾形さんは『意地悪ばあさん』などテレビドラマに出演していて『長谷川町子物語』では、私が生まれる前に亡くなった祖父の勇吉役。私は見てないけど、なんか親近感。

Silence
マーティン・スコセッシ監督作品
主演:アンドリュー・ガーフィールド、アダム・ドライヴァー、リーアム・ニーソン、イッセー尾形、浅野忠信、窪塚洋介
2時間40分
フランスで上映中

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“オープンスペース”のオフィスは珍しくなくなった。私もやった。仕切りのないスペースを3つの(小さな)会社が共有していた。
最近の新傾向はオフィスに“自分の机がない”。大きいスペースに机が並んでいて、一番早く来た人が好きな机を獲得する。
Danone、AXA(保険会社)、Bouyguesなど大企業がこのシステムを導入していて、日本にも支社があるSanofi/サノフィの例がラジオでレポートされていた。
パリ郊外にあるモダンな新本社ビル。

Sanofi/サノフィの本社ビル

社員は毎朝、自分のロッカーに入れておいたパソコンや書類を抱え、机取りに奔走する。遅く来た人は空いている机がなくて、カフェテリアに行ったり、うちに帰ったり(!)。上司も平社員も研修生も同じ条件。

Sanofi/サノフィの本社ビル

なぜそんなことをするのかと言うと、
メリットその1:場所の節約
“出張や休暇や外回りで、通常60%のポストしか使われていない”という現状が発想の源。これはスペースの無駄である、とサノフィでは10人につき8つの机しか置かず、節約したスペースは他の用途に使われる。大コンサルティング会社accentureに至っては4000人に1000の机、しかない。
「毎朝、プールみたいにロッカーに取りに行って、自分の場所をゲットするのに10分はかかる」とサノフィ社員のひとり。帰る時も机には何ひとつ残してはいけない。飛ぶ鳥、跡を残さず・・・
メリットその2:協調精神を養う(フランス人は個人主義だからね)。
メリットその3:順応性を培う。

こちらはaccentureのオフィス。人に聞かれたくない電話の時はこの箱に入る!

accenture_dans_une_bulle_de_confidentialite.jpg
photo: radio france

外回りの多い社員や若い社員はこのシステムを面白がる。
「ヒエラルキーが薄れて、話しやすくなる。敷居の高かった上司が隣に座ってたり、他の課の人から思いがけないアドバイスをもらえることもある」
「集中できない」「落ち着かない」と愚痴るのは外に出ない社員と年配。ほら、フランス人ってオフィスに子供の写真とか絵を飾ってカスタマイズするのが好きでしょ。それもできないってこと。
会議室も同様で早い者勝ち。なのでコートやカバンを置く“お取り置き”テクを使う人も。
「取るか取られるかの緊張感、領土争いの西部劇の中にいるみたいだ」と社員。
確かにプラスαのストレスになる、と労働基準監督官は警告しているとか。早い者勝ちだから、より早く出勤しようという、という傾向はないみたい。そこまでして机取らなくても・・・ということらしい。


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床の穴、眠れぬ夜

金塊はなかったけど、より現実的な希望は残っている:ここにマンホールがあるんで床を壊さなくてもいいのでは?
「それはワタシラにはわかんない」と建具屋さん。ごもっとも。
後でマンホールを見に来た工事主任は、いや、やっぱり床を壊さないとダメだね、とすげないお返事。2つ目の希望もはかなく消えた。
間もなく、ドリルの騒音とともに床壊しが始まる。音だけじゃなく、埃もすごかったわね。周囲の家具や本は巨大ビニールの覆いがかけられ、工事の人たちはマスクをしていたけど、してないこっちはゴホゴホ。台所まで薄っすらと埃で覆われた。

・・・音が鎮まったときは、こういうことになっていた。

travaux.jpg

その夜。どこからかカサカサ、シューシューという音。夫のイビキじゃない。
気のせい?いや聞こえる。発信地はどこ?・・・と考えるうち恐ろしい事実に気がついた:うちの中に開けられた穴は、中庭の穴と繋がっている。外にドブネズミが出たからには、同じ道を通って、より暖かく食べ物の匂いがするうちの方にやってくるのではないか?ネズミの身になって考えればいかにもやりそう・・・鳥肌が立ってくる。
唯一の安心材料は足元に寝ているタマが反応しないこと。リュリュが興奮して走り回っている気配もない。
私は階下に降りる勇気もなく、ネズミは階段を上がってはこないだろう、食べ物は台所だし。もし出たらタマとリュリュが何とかするだろう・・・と言い聞かせながら、そのうち眠ってしまった。

翌朝、職人さんたちに「ネズミに出会いませんでした?」
「 ??」
「中庭を掘り返したとき、2匹も出たんですよ、このくらいのドブネズミ」と私は両手を30㎝くらいに広げる。
職人さんたちはゲラゲラ笑いだし( ?!)、
「マダム、そりゃネズミじゃなくてウサギじゃないですか?ゲラゲラ」
「マジで、ほんとにいなかった?」
「マジでいなかったね」
ああ、今夜は安らかに眠れる。


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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから20年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書2冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

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