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再びビズをするようになる?

さっき、女の子2人の再会場面に遭遇した:「○○!」「××!」名前を呼んで駆け寄り・・・1m弱の距離でピタリと立ち止まり、もどかしそうに笑った。
抱き合って頬っぺたにビズ(キス)し合あう、言葉では置き換えられない愛情表現なのに、それができないもどかしさ。

握手の起源は「わたしは武器を持っていない=仲直り」を示す行為。握手をする右手には元来、武器が握られていたからだ。

グラスを合わせて乾杯するのは、お酒に毒物を入れるのが横行した中世に始まった 「飲み物に毒は入っていない」ことの証。
グラスをぶつけ合ったとき、中身が飛び散って、相手のグラスに入るからだ(そんなにうまいこと入るかね)。

両頬のビスは「相手が病気だったらうつる距離まで接近する=信頼の証」だそうだ。

coronavirus-bisous-de-loin.png
image:ptit libé

何気なく繰り返していた“親愛”の行為は、武器、毒、病原菌・・・と物騒な起源だったのだ。

ビズとひとことに言っても、地方によって回数が違い、

フランス、ビズの回数


どっちの頬を出すかも違う。青=右頬、赤=左頬。ややこしい・・・


フランス、ビズ


ラジオで政治評論家やジャーナリストが「再びビスをするようになるだろうか?」を真剣に討論していた。
答えは「ウィ」
その代わり、仕事場のビズ(義理ビズ)はなくなり、家族や親しい友人間の“本来のビズ”が生き残るのではないか。
それはよいことだ。日本のバレンタインデーに義理チョコを廃止し、本当に好きな人だけに贈る、つまり本来の慣習に戻ったら、人生よりシンプルになると思いません?
わたしたちはあまりに機械的にビズをするようになっていた。サルサのクラスでは名前も知らない人とチュッチュッとするのが当たり前になっていた。コロナのお陰(?)で家族や親しい友達との、つまり感染していないと信頼できる人とのビズが生き残るのは賛成だ。
他の番組(国営放送)では、今はマスクとサングラスで、みんな“顔が見えない”し、すれ違うときは歩道を変えたりするので人間的ではない、という話をしていた。
「道でナンパするのは再開するでしょうかね?」
「するでしょう。でもその“次の段階”に進む時、今までより考えるんじゃないでしょうか」
そんなことをマジで討論してるの!?と言われればそうだけど、コロナウィルスはこれまでの人間関係を、その潤滑油であったスキンシップを不可能にしてしまったのだ。


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フランス映画の大物がまたひとり・・・

3年くらい前、郵便局で並んでいた時、隣のおじいさんに「こっちのカウンターでいいんですか?」と聞かれ、「ええ、一般用はこっちです」と答え、顔を見たらミッシェル・ピコリだった。
わたしはコーフンし、後ろにいた20代後半女性に「ミシェル・ピコリよ!」と囁いたら「それ、誰ですか?」と言われ、フランス映画の大物俳優を知らんのか!と内心思ったものだ。

ゴダールの『軽蔑』で、全裸でベッドに横たわり「わたしの脚が好き?」「わたしのオシリが好き?」と迫るブリジット・バルドーに「ウィ」「ウィ」と熱意なく答えていたポール。
クロード・ソーテの『すぎさしり日の・・・』では、まだ未練がある妻(レア・マッサリ)と、少し重くなってきた愛人(ロミー・シュナイダー)の間で揺れるピエール役。
そのほか『小間使いの日記』『ロシュフォールの恋人たち』『昼顔』『ブルジョワジーの秘かな愉しみ』など60年代からフランス映画に欠かせない名優。美男ではないけど圧倒的存在感があった。

そのミッシェル・ピコリが5月12日、94歳で亡くなっていた、と家族が1週間後に発表した。

ミッシェル・ピコリ

高齢だけに準備万端できていたみたいで、すぐ追悼番組や作品集がテレビにかかり、昨日は『Une Etrange Affaire/奇妙な出来事』を観た。ピエール・グラニエ=デュフェールの1981年の作品。日本未公開。

妻ニナ(ナタリー・バイ)と暮らすルイ(ジェラール・ランヴァン、左)は、パリのデパートのマーケティング担当。ある日、デパートが買収され、収益向上のためやり手のベルトラン(ミッシェル・ピコリ)が送り込まれてきた。

ミッシェル・ピコリ

家族もなく、頭の中は仕事だけのベルトランは、ルイに目をかけ広報責任者に抜擢する。その代わり休暇は取り消し、残業も多くなり、ルイの私生活にまで侵入してくる。

初期の松田聖子みたいなヘアスタイルのナタリー・バイ

ミッシェル・ピコリ
photos:allociné

妻のニナは「わたしたちの生活が滅茶苦茶」と警告を発するが、「ベルトランがぼくを信頼している証拠だよ」「ぼくの将来がかかっている」とルイは取り合わない。
ニナはついに出て行ってしまい、ルイはベルトランのうちに泊まり込みで24時間つき合うようになる。そして年末、ミッションを終えたベルトランが外国に発ってしまうと、心身ともに路頭に迷うのだ・・・
というお話。
傑作というわけではなく、タイトルのように”奇妙な”作品。そして感想が夫と全然違う。
私生活が仕事に侵食され-日本妻は我慢するだろうけどフランス妻は愛想をつかせて出て行く-仕事一色になり、カリスマ上司がいなくなると路頭に迷う、というのは日本でありそう、とわたしは感じた。
夫は、ルイは仕事というより、ベルトランの人物に魅せられた。性的なものはなくても一種の同性愛だ、と。
育った環境や経験で観点が違うのは時に腹が立つけど、時には「そういう見方もあるのね」と面白い。


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この夏、海にたどり着けるか?

「バカンスに行けます」とフィリップ首相が宣言したのはいいけど、100㎞という壁が残っている。
Vol d’oiseau/鳥の飛び方で(=直線距離で)100㎞。鳥はまっすぐ飛ぶので(言われてみると右折、左折している鳥は見たことがない)こういう詩的な表現をする。
でも首相が「行けます」と言うからには、100㎞制限はそのうち解除になるということではない?

ほぼ毎年借りている南仏のアパルトマンを予約したけど、まだ前金は払わなくていいと言われている。実現するためには3つの障害をクリアしなければならないからだ。
①はこの100㎞。

②海水は大丈夫か?
Covid-19は湿った表面で長生きするそうだし、海水には飛沫がたくさんありそうではない?
と心配している人は多い。ナントの海洋開発インスティテュートが20か所の海水と牡蠣とムール貝を調べた結果が21日に公開された:なんと「SARS-CoV-2(新コロナウィルスの科学名)の存在はなかった」
海水の浄化作用と塩のお陰とか。自然は素晴らしい!
「危険ゼロとは言えないけど、海水で感染する可能性は極めて低い」そうで、これで海に一歩近づいた。

③「活動的海岸」:あちこちの海岸が開いたものの、今のところ、泳ぐか、サーフィンするか、走るか、歩くか・・・つまり活動しなくてはいけない。座ったり寝転がるのは禁止なのだ。
大西洋側はサーファーも多いけど、地中海側は過半数が寝そべったり座ったりグダグダしている。

se baigner cet ete
photo:France Bleu

一日中浜辺に座って孫のお守りをしているおじいちゃんおばあちゃんに、泳げとか走れなんて言えないでしょ。

第一、Vacanceは空っぽという意味、“何もしない”のが正しいのに。
というわけで、現段階では①と③の障害が残っている。いや、①は解除になるだろうから③がネックだ。
ああ、海が見たい・・・


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新しいレストランの形?

フィリップ首相が「フランス人はバカンスに行けます」と発表した直後、SNCF(フランス国鉄)やバカンス村の予約が急増した。
教会や礼拝所も間もなく許可になるという。
政府は「ピークは去りつつある」という情報と、再開しなければ大変な経済危機になるという確信を持っているということだ。

それでも開け渋っているのがレストラン&カフェ。
「緑ゾーンの地域で6月2日から開店を検討する」そうだけど、レストラン&カフェがひしめくのはパリだ。
パリに多い、テーブルが接近した小さいレストランは4㎡にお客一人なんて言われたらやっていけない。
「歩道まで(無料で)テーブルを出していいことにする」とパリ市 。でも歩道がすごく狭い場合もあるでしょ・・・

隔離中に車や服が買えなかった人は、今から買うだろうけど、レストランは「2か月行けなかったから、2か月分食べよう」ということにはならない。損失は取り戻せない。

レストランを開け始めた国ではどうしてるかというと:
ドイツのシャポー・フリット(フランドポテト帽子)。冗談かと思ったけど、ほんとにやっているの?
個人的にはこれを被ってまで行きたいとは思わない。

新しいレストランの形
photo:demotivateur.fr

アムステルダムでは2人用のビニールハウスが登場したそうだ。海岸ならいいけど、都市部では難しい。
セーヌ河岸でできるかも。

新しいレストランの形

フランスは、Christophe Gernigonというデザイナーがプレクシグラスの釣り鐘を提案。

新しいレストランの形
photo: Christophe Gernigon

これならマスクも外せるし、見た目も美しく、“一緒に食事”が可能になるけど、この釣り鐘を天井からいくつもぶら下げるのはお金がかかりそう。

現実では、開店許可を待ちつつ、テイクアウトできるお店が増えてきた。

新しいレストランの形

何が食べたいか?と聞かれれば迷わず「お寿司!」。東京の息子が行ったお寿司屋さんの写真に身悶えした。
でも叶うまでまだ時間がかかりそうですね・・・


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新しい朝市の形

どこから入っても出てもいいのが、ふつうの朝市の姿だけど、今日は周囲に赤いテープが巻かれ、横入りできなくなっていた。
市場の始まりと終わりに警備員が立っていて、入場者を制限している。

大人しく待つ人たち

バスティーユ朝市再開

市場の中には何十人という人が右往左往しているし、出口は2か所あるので、どうやら目算で入れているらしい。
でも警備員(オレンジのベスト)は、目算のプロのようには見えず、かなりアバウトな感じがした。

バスティーユ朝市再開


外出禁止が解除になってから初めての週末。お天気が良くて、けっこう人が出ていて嬉しくなる。

バスティーユ朝市再開

2か月前、朝市の閉鎖は突然決まり、商店たちはストックを捌く猶予がなく、多大な食材とともに籠ることになった。
これはレストランも同様だ。
八百屋のエルザおばさんは「野菜が冷蔵室一杯だもの。途方に暮れたよ」
そこで、パリから50㎞の自宅の前に屋台を出して売り始めた。

エルザが送ってくれた”その図”

elsa

警官が見に来たけど、生活最低必需品なので許可された。
パリの“お得意さん”には配達サービスを始めた。隔離の後半1か月、わたしも配達してもらったひとり(ホッホ)。

チーズ屋のクリストフも「腹が立ったね」
「だれに?Covidに?」
「いや、政府に。だって前触れなしにいきなり閉めろ、だもの」
彼も膨大なチーズのストックを抱え、近所の人にあげたり、朝昼晩、自分たちで食べ続け、
「チーズはしばらく食べたくないね」

売る側は全員、お客さんは7割くらいがマスクをしている。
お客間の間隔は「1m」だけど、お店によってマチマチ。

marche_20200518025122e88.jpg

入場制限、安全な間隔、マスクが“新しいふつう”になるのね。
2か月間、スーパーでの買い物は味気なかった。朝市には季節があり、会話がある。再開は喜ばしい!


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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

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