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怖い偶然

深夜、Youtubeで『Calls』を観ていた。観ていた、というより聞いていた。
『Calls』はカナル+のシリーズで、飛行機のブラックボックス、カセットの録音、警察ヘの通報電話・・・などの媒体で、映像はなく音声だけで惨事を描いている。



「はい、警察です」
「あの・・・ヘンな人がいるんで通報しようと思って」
「あなたの名前と住所をいってください」
「リザ・ラルシェ、〇×通り何番地、ナンシー」
「どんな風にヘンなんですか?」
「うちの前を行ったり来たりしてるんです」
「その人はピエロの恰好をしていますか?」
「わからない・・・よく見えない」
ガタガタいう物音。
「そんな!うちに入ろうとしている」
「マダム!何が起こっているか話してください」
「うちの中に入った!」
「マダム、7分でパトカーが着きます。その間、電話は切らないで。どこか隠れる場所、中から鍵がかかる場所はありますか?」
・・・というような会話が11分か12分続く。

映画『The Guilty』は警察の一室の中で電話だけで事件が描かれるが、これは映像が一切なく声と物音だけ。でもけっこう怖い。
深夜にひとりで観るもんじゃない、と思いながら、さて寝ようかと立ち上がったとき、ドンドンとうちのドアを叩く音がした。
全身から血が引いた(ような気がした)。私の隣で寝ていたタマがビクっとして顔を上げる。
午前零時すぎに誰?
夫がまた鍵をドアにさしっぱなしにしてた?鍵が外側にあるなら入ってこれるってことじゃない・・・その夫はイビキをかいて眠っている。
再び「ドンドン!」
私は、カーテンの隙間からこっちが見えない場所にソロソロと移動し、固まっていた。

5分くらいしたら中庭の電気が消えた。電気は人が通るとつくようになっているから、“その人”は立ち去ったらしい。
さらに5分待って、私は恐る恐るドアに近寄り、夫のキーホルダーがあるのを確かめ、2重鍵をかけた。

翌朝、夫が「なぜ2重鍵がかかってるんだ?」
この人はどんな物音でも絶対目を覚まさない。夜中に子供が病気になりS.O.S.médecinが駆け付けても起きなかった。
あなたが眠っている間にいろんなことが起こるのよ・・・


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お薦めしない”ラーメンの味”

友達が観たいというので一緒に行ったら、映画が始まってすぐ、
「居眠りしたら起こしてくれ」
間もなくイビキが聞こえてきた。私もちょっとウトウトしたので起こさなかった。

エリック・クー/Eric Khooの『la Saveur des ramen/ラーメンの味』。日&仏&シンガポール合作で、原題は『Ramen Teh』

Ramen Teh/la Saveur des ramen

ポスターが「どこかで見たことがある」と思ったら、『餡/les Délices de Tokyo』(河瀨直美監督)のに似てません?ああ、樹木希林さん・・・

餡、delice de Tokyo

マサトは父親のラーメン屋-行列ができる人気-で働いている。殆ど口をきかず仕事が終われば酔いつぶれるまで飲む父親は、10分も経たないうちに死んでしまう。
シンガポール人の母親は既に亡くなり、孤児になったマサトは、親子3人幸せな時を過ごした母の母国に赴く。小さい時に母親が食べさせてくれたバクテーの味と再会したかった。
そこで家族の秘密を、その背景にある日本軍のシンガポール攻略(1942)を知るのだ。

と書くと面白そうかもしれないけど、全編甘ったるく、フラッシュバックで登場する母親は美しく微笑むだけでキャラがなく、定期的に現れる料理シーンはドキュメンタリーのように人間味がない。

Ramen Teh/la Saveur des ramen

是枝監督の『歩いても歩いても』(ここでも樹木希林が圧倒的な存在感だった・・・)の冒頭料理シーンなどは、日本の台所を物語り、香りが漂ってきそうだった。

そしてシンガポール在住のブロガー女性、松田聖子!アップで見るのは何年(何十年)ぶり?全くシワのないピンピンの肌も不思議だけど、役どころも表面的というか、存在理由がイマイチわからない。フランスの批評では「Jポップの80年代アイドル」と紹介されていた。

シングルマザーで息子は中学生。

Ramen Teh/la Saveur des ramen 松田聖子

おばあちゃん(マサトの母の母)が出てくるとちょっとスパイシーになり目が覚めるが、それも長くは続かず「泣かせたい」が透けて見える。監督エリック・クーは泣かせるのが好き、という噂。

Ramen Teh/la Saveur des ramen 斎藤工
photos: allociné

一緒に行った友達は最近日本に興味を持っていて、雑誌の日本特集号など読んでいる。まあ、日仏友好160年記念のお陰でクローズアップされているから日本に興味を持ち出すフランス人は少なくない。
映画の後ビールを飲みながら、
「日本にお医者や看護婦さんが裸の病院があるんだって?」
「 あるわけないでしょ。どこで読んだの?」
「ネットで。他の病院よりよく治るんだって」
「裸のレストランは聞いたことある。確かロンドンから入ってきて予約殺到なんだって」
「いや、絶対病院もある。探してURLを送ってあげるよ」
結局、見つからなかったそうだけど、“他の病院より治る”というのはフランス人が書きそうで、しかもありえそうだ。

la Saveur des ramen
Eric Khoo監督作品
主演:斎藤工、Jeannette Aw Ee-Ping、松田聖子、伊原剛志他
1時間30分
フランスで公開中
日本での公開はなぜか未定


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メトロで“撒く”

夜10時すぎ、メトロ4番線に乗って本を読んでいたら、前に座っている男性が「S’il vous plaît」。顔を上げると、ツィードのジャケットを着た一見紳士的なオジサンがほほ笑んでいる。
「は?」
「日本人ですね」
「はぁ」
「あなたはとてもチャーミングだ」
「?!」
歳とともに声をかけられることは減ったが、タタミゼが残っていた(注:“タタミゼ”とは日本女性にファンタズムを持つ仏男の俗称)
私はプイと席を立って引っ越した。
ふつうはここであっさり諦めるんだけど、シャトレで降りて1番線に向かうと、男性がすぐ後ろにいて「シル・ヴ・プレ」「あなたは・・・」といいながらついてくる。
私は全く無視して歩き続けたけどタタミゼは概してしつこい。どっかで撒かなくちゃ。まっすぐウチには帰れない。
夫は田舎に行っていて「迎えに来て」と言えないし、駅の反対側の出口から出る?それともうちの隣のバーに逃げ込む?
疲れてお腹空いてて(その晩はサルサに行って晩ごはんを食べていなかった)かくれんぼする元気はないのに・・・幽霊の次はタタミゼか。

そういえば、こういうシーン、スパイ映画やスリラーによく出てくる。映画好きなら実用に生かさなくちゃ。でもどうやって?
1番線のホームに電車が入ってきた。わたしのすぐ後ろにいる男が窓に映っている。
ドアが開くなり、私は脱兎のごとく駆け出し、3両ほど離れた車両に、ドアが閉まる間一発で飛び込んだ。
男性は乗らなかったみたい。いや乗らなかった。ほっ。

映画はこんなとこでもお役に立っている、と後日息子に話したら、
「ふつうは逆をやるんじゃない」
「?」
「一度乗って、扉が閉まる直前に飛び出す」
はぁなるほど。そういえば映画でよく観たのもそっちだったような。
でも私の運動神経では、ドアに挟まれても身体半分は車内という可能性が高い。挟まれてもがいている姿を見たら、男も諦めたに違いないけど・・・


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”Girl”への道のり

天使のような美しい顔、もうすぐ16歳になるララは、エトワールダンサーを夢見て過酷な練習に励んでいる。
でも人一倍練習してもララの身体は柔軟さが足りず、思うように撓ってくれない。
彼女は男の子として生まれたトランスジェンダーなのだ。

映画『Girl』

ホルモン療法はしているけど「手術はまだ先のこと、あなたは若すぎる」と医師。
一日も早く中身と外見を一致させたいララは待ちきれない。レオタードを着るのに毎日ひと苦労だ。

父親(シングルファーザー)はララを全面的に応援し、健康を気遣う。ララが女の子であるを知っているからだ。

映画『Girl』


ブリュッセルのバレエ学校の教室、鏡と向き合う自分の部屋、キッチンでの家族との短い会話、父親と行く病院で医師とのやりとり、またバレエ学校で練習・・・カメラはひたすらララを追う。その優しい表情は仮面のように焦りや葛藤を隠している。父親が尋ねても「問題ない、うまく行っている」と答えるばかり。

一番辛いのは、バレエ学校の生徒たちの好奇の目や、先生の心無い質問「ララが女子更衣室を使うことにみなさん賛成ですか?」ではない。彼女を閉じ込めている“この身体”なのだ。

ベルギー人Lucas Dhont/リュカ・ドン(リュカス・ドント?)の『Girl』。27歳という若い監督の初めての長編作品。
今年のカンヌ映画祭でカメラ・ドールをとった。

映画『Girl』

LGBTのT、トランスジェンダー。最近、この言葉を目にする機会が増えたとは言え、まだ知られていないし理解されるのには程遠い。
ただでさえ難しい思春期に、身体で表現するバレエを選び、2つの性の間で葛藤するララ。まあ、これだけ理解のある父親は珍しいだろうけど。
セリフは多くなく、説明も少なく(母親はどこで何をしてる?)、彼女の”不幸”は、バレエ学校のトイレや自分の部屋の鏡の前で感じ取られる。

映画『Girl』
photos:allociné

それだけにララ役のダンサー、15歳のヴィクトール ・ポルスターの演技は素晴らしい。カンヌの『ある視点』部門で演技賞をとった。

映画『Girl』
photo:LCI

神様も間違うことがある。その間違いを生きるのは大変な苦労だ。「性的嗜好の話」でも「一過性のもの」でもないのだ。
こういう作品で性的マイノリティの理解が増すのを願うばかり。

Girl
リュカ・ドン監督作品
主演:Victor Polster、Arieh Worthalter
1時間45分
フランスで公開中   

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メトロで聞いた夢の話

日曜の夜。メトロを降りたところにスーツケースを両脇に置いた中年過ぎの女性、長い階段を前にして躊躇うように立っていた。
周りに頑強な男性はいない。
「持ちましょう」
とそのひとつに手をかけると、
「あ、それ重いです」
持ち上げるとなるほど重い。それは夫に任せ、小さいスーツケースを持って一緒に階段を降り始めた。
「叔母が亡くなって彼女の家の後片付けをしてたんです、一日中」
控えめな印象の女性がいきなりそんな話を始めたんでちょっとびっくり。
「だからすごく疲れて・・・」
「精神的にも」
「そう。叔母は日仏混血だったんです」
「 !?」
「日本とフランスを行ったり来たりで、2つの国の思い出がいっぱい詰まってました」
彼女はレトロな服装で、優しい表情をしていた。
「昨日、とても綺麗な不思議な夢を見たんです。叔母は元気で、日本に発つところで、飛行機のタラップの上から手を振ってるの。口をパクパクさせてるけど何を言っているかわからない」
「すごく象徴的な夢じゃないですか?」
「そう、ウソのように象徴的な夢」
もっと夢の話を聞きたかったけど、彼女は立ち止まり、
「私はこっちの出口から出ます。エスカレーターがあるからもう大丈夫です」
「ほんとに?」

彼女と別れたあと、私が日本人だとわかって話したんだろうか?でも顔にジャポネーズと書いてあるわけじゃなし、中国人でも韓国人でもありえたわけだ。
一日中ひとりで亡き人の持ち物を整理していて、誰かと話したくなった?きっとそうだ。
と思った後、ちょっと待って。パリ-東京便にタラップがあったのは大昔のことじゃない?そういえばあの女性にも浮世離れした雰囲気があった。影が薄いというか・・・もしかして彼女も・・・?

凡人の怪談』を読み、村上春樹の『騎士団長殺し』を読んでいるせいかも。
霊が見える人は最初から見えて、見えなかった人が突然見えるようにはならないだろう。あの女性だって幽霊扱いされたら迷惑だ。足もちゃんとあったし。

“タラップの上で手を振っていた叔母さん”の姿は、頭の中で映像を結んだ。


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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

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