Category : ニュース

大統領はこの中のひとり

火曜日にフィヨンは記者会見をして、自分は法に触れることは何もしていない。自分を失墜させようとする陰謀の犠牲者である。しかし今回、国民は政治家が家族を雇うのを評価しないとわかった。そのことは国民にお詫びしたい(問題になっているのは家族を雇うことではなく、マダム・フィヨンが本当に仕事をしたか、だ)。大統領候補を降りるつもりはない。私は国民大多数の支持を得て選ばれたので裏切ることはできない・・・という主旨の演説をした。

でも支持率落下を食い止めることはできない。
翌日トロアに選挙運動に赴き、ブーイングで迎えられた。安い給料で毎日あくせく働いている人たちは、政治家の立場を利用して家族を富ませていたのが我慢できない。
他の政治家に比べて、フィヨンがクリーンで公明正大をウリにしていただけに。

8日に行われた「第一次選挙で誰に投票するか?」のアンケート調査で、マリーヌ・ルペン、エマニュエル・マクロンに抜かれてた。

フランスの次期大統領はこの中のひとり
ルペン25%、マクロン22%、フィヨン20%、国民全員に毎月500ユーロのアモン15%
でも二次選挙で「マリーヌ・ルペンは敗れる」が大多数:マクロンに負ける(34%)、フィヨンに負ける(38%)。
お父さんのジャン=マリーはシラクに負けたし。私もこのアンケート結果を信じたい。

第一次選挙(4/23)まで10週間あるから、フィヨンの巻き返しなるか?(右派の政治家は左派ほどクリーンさが重要視されない。政治家は灰色でいいみたい) マクロンが更に伸びるか?

そのマクロン、Radio France社長のマチュー・ギャレが恋人で二重生活を送っている、という噂を立てられ、
「私は妻とずっと一緒に暮らしている。もしレストランやクラブで私とマチュー・ギャレを見たのなら、それは私のホログラムだ」

radio-france-mathieu-gallet.jpg

マチュー・ギャレは独身、マクロンは24歳年上の元高校教師と結婚している。2人ともけっこう美男だし、ゴシップが生まれる好条件だったってこと。


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大統領選3か月前というタイミングにスキャンダルが出てきたのは、誰かが告発したからだ。
フィヨンも「これは左派の陰謀だ」「自分を陥れるための中傷だ」「クーデタだ」と騒いでいるけど、犯人を“左派”というのは、自分の陣営のせいにはできないからじゃない?

右派予備選挙のフィヨン圧倒勝利で、一番傷ついたのは誰?
ニコラ・サルコジだ。
“大統領の私が決断したことを実践していただけ”のフィヨンに負けるなんて。
候補者テレビ討論でのフィヨンの一撃「ポンピドー元大統領が、警察の取り調べを受けるなんて想像できない」(サルコジは選挙資金粉飾のなどいくつかの容疑で取り調べを受けている)も飲み下せない。
・・・ので、サルコジ派の逆襲、ありそうだ。じゃ誰?
ラシダ・ダチが怪しい。
サルコジお気に入りの元法相、パリ7区の区長は、フィヨンとは犬猿の仲。
「外見にはつい騙されるものだ。経費と協力者についてフィヨンは透明だろうか」と2014年にツィートしている。
TVのニュース番組で、「垂れ込んだのはあなたですか?」という直球の質問に笑い出し、
「言いたいことがあったら直接言う。そういう真似はしない」

ラシダ・ダチ 垂れ込んだのは彼女?

最近ボトックスして顔が変わったダチは、執念深くアグレッシブ。ますますありそうだ。

一方、フィヨンの失墜で誰が得をするか?
極右マリーヌ・ルペンと“左派でも右派でもない”エマニュエル・マクロン。
現に後者は、土曜日の支持者ミーティングで1万4000人を集め、会場に入れない人がたくさん出る大盛況だった。
インタビューされた参加者のひとりは「フィヨンがあんなことになったから、マクロンに投票する」
でもいまのところ、ルペンもマクロンもタレコミの疑いはかけられていない。

どっちにせよ、左派はバラバラだし、右派はフィヨンの代わりに誰か候補者を立てなくてはいけない。アラン・ジュッペはピンチヒッターはイヤだというし、大統領の器が他にいない。
フランス政治界は対外的にも自慢できる状態ではなくなっている。困ったことです・・・


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奥さんペネロープに50万ユーロを超える架空人件費を払っていたことが暴かれたフィヨン。
翌日TF1の20時のニュースに登場し、
「妻は、常に私のために働いてきた。彼女の協力なしに今日の私はありえない」
「弁護士である私の子供たちに仕事を頼み、報酬を払ったこともある」
「なぜこのスキャンダルが選挙の3か月前に炸裂するのか?」
「妻が架空雇用だったというメディアを告訴する」
「私の潔癖を司法の前で証明する」
・・・と熱く抗弁した、つもりが墓穴を掘る結果に:フィヨンが“仕事を頼んだ”という2005-2007年、2人の子供はまだ弁護士になっていなかったのだ。すぐにバレることなのに、どうして?

更にカナール・アンシェネの2/1号は「マダム・フィヨンに払われた額は実は831.440ユーロだった」
つまり、フィヨンが「最初はボランティアだった」と言った時期も払われていた。
これにマダム・フィヨンの2つ目のお仕事、出版社の報酬10万ユーロ(実際に働いたことを証明できない)+2人の子供に払われた8400ユーロを合計すると100万ユーロを超える。

更に、昨日(2/2)のEnvoyé spécial/特派員(France2のスクープ番組)は、2007年のペネロープ・フィヨンのインタヴューを見つけ出し放映した(このスキャンダルではメディアの速さにびっくり。フランス人もやろうと思えばできるじゃない・・・)
Sunday Telegraphのジャーナリストに、
「夫のアシスタントや、その種のことはやったことがありません。コミュニケーションだってしたことがないの」

ペネロープ・フィヨン インタビュー

番組は21.5%の視聴率で(私も観た)フィヨン夫妻に致命的だった。
政治家が家族を雇うことは禁止されていないし、奥さんや子供がアシスタントはよくあること。フィヨンの場合は、奥さんが実際に仕事をしたか?が実証できないこと。そして桁違いの額。
「お城に住めるわけだ」と夫。
「スーツも全部オーダーだもんね」と私。

ロワール地方、サルトにあるフィヨンのお城

フランソワ・フィヨンのお城


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フランス国民全員に毎月500ユーロ!

大統領選左派予備選挙で選ばれたブノア・アモン。

モト教育相。オランド&ヴァルスの政策に反対して左遷された。
よく見ると、オランド大統領を痩せさせて髭を濃くしたらこうなる?という風貌。

ブノア・アモン 政策

彼の政策で、もっとも論議を呼んでいるのがrevenu universel/万人適用の収入だ。

何それ?
フランス国民全員に、貧富に関わらず、条件なしで、一生一定額を毎月支給する。ブノア・アモンは月額535ユーロを提案。

そのメリットは?
貧困の人たちが最低限の生活費(食・住・医療)を払えるようにするのはもちろん、より自由に、よりプレッシャーなく生活設計ができるようにする。例えば、535ユーロのお陰で週5日のフルタイム勤務から週3日にし、生まれた時間で趣味を伸ばす、子供と遊ぶ、スポーツをする、個人事業をする・・・等々。つまり色々な形での”消費”を伸ばす。
(毎日のように終電で帰り、子供や妻との時間が持てず、だんだん家庭の中に居場所を失い、定年後に何をしたらいいのかわからない、という日本人が少なくないことを考えると、これは悪くないアイディアに思える。同時に、元来働き者の日本人には可能だけど、フランスでやっちゃっていいの?という疑問。)

さらに近い将来に起こるロボット化社会では、みんなに仕事がない状態になる。万人適用収入は、現在の社会保障に取って変わり、合理化する手段である。
(確かに。郵便局の窓口、スーパーのレジは既に機械に取って代わっている。今は笑っちゃうGoogle翻訳も数年後には-文学を除いて-使えるものになる見込み)

反対者は?
万人適用収入は人々を怠け者にするという意見。
この制度は1970年からいろいろな国で試され、その後の調査で、このために仕事をしない、という結果にはなっていない(第一、月500ユーロでは生活できない)。仕事の時間を減らし、他の活動(必ずしも収入につながらない)をしている人が大多数。人間は無為では生きられないことを証明している。
先ほどの「フランスでやっちゃっていいの?」は撤回したほうがいいらしい。

そのお金はどこから?
月535ユーロを国民全員に払うと、1年に20億ユーロかかる(2500億円?)
ブノア・アモンは、これを住居手当、家族手当、最低保証などをフュージョンすること、脱税(年間6~8億ユーロ)を減らすことで調達すると言っている。
フランス語に「Déshabiller Pierre pour habiller Paul/ピエールを脱がせてポールに着せる」という表現があるけど、どっかを削らなくては不可能だ。
コンセプトに説得力はあるけど、実際に6600万人に”着せる”には、”脱がせる”ほうも大変じゃない!

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右派の大統領選予備選挙でアラン・ジュッペを押さえてまさかの勝利を収め、選挙運動であちこち駆け回っていたところへ、カナール・アンシェネのスクープ:フィヨンの奥さん、ペネロープは“議会の協力者”の名目で50万ユーロ(約6500万円)を受け取っていた。ところが彼女が仕事をした形跡がない。これは架空雇用である。
アララ・・・
奥様のペネロープ
フランソワ&ペネロープ・フィヨン

フランソワ・フィヨンは木曜の20時のニュース(観なかったけど)で、

フランソワ・フィヨン

「妻は、私がマティニヨンにいたとき(=首相の時期)以外ずっと私の協力者で、彼女なしに今日の自分は考えられない」
奥さんはフィヨンが会う時間がない人に会いレポートにし、代筆もしていたとか。さらにフィヨンは、大統領選の3か月前に突然こういう“スキャンダル”が出るのは陰謀である、と怒り、一刻も早く真実を明らかにしてほしい、と。

そこで公金の横領、公共財産の悪用、隠匿の疑いで、関係者の事情聴取が始まった。
ペネロープ・ゲートと名付けられたこの事件で、大統領選の構図は変わってくる。これまで決選投票はマリーヌ・ルペンVSフランソワ・フィヨンという見方が強かったけど、このスキャンダルでフィヨンの支持率は急落、60%が「信用できない」。

もし横領の容疑が晴れても、政治経験のない奥さんを雇った“えこひいき”は否めないし、その奥さんは過去のインタビューで、「自分は夫の政治には関与しない。時々同行するのにとどめている」と答えている。窮地・・・
フィヨンは「もし、自分が容疑者として取り調べを受けることになったら、大統領候補を降りる」と宣言。自分の潔癖に自信がある+判事にプレッシャーをかけるセリフだ。
昨日からこのニュースで持ちっきり。検索エンジンでpeを打つだけでペネロープ事件が出てくるほど。どうなることやら・・・


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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから20年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書2冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

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