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Category : 映画
ゲイであることを隠して、ハリウッド映画のスーパーヒーロー役をゲットしようとするテレビスターの物語。
『Ma vie avec John F.Donovan』ジョンF・ドノヴァンとの人生。
『ゲーム・オブ・スローンズ』のキット・ハリントン、スクリーンでは初めて見る。憂いがあって適役。

『Ma vie avec John F.Donovan 』グザヴィエ・ドラン

2016年に撮影開始しているのに、公開がこの3月になったのは二転三転あったから。
まずグザヴィエ・ドランの”読み違い”。彼の頭の中で前から温められていたこのアイデアは、撮ってみると「ウソっぽかった」
媒体が違うと効果が変わるってことある。しかも最初のモンタージュは4時間を超えていた。

そこでもっと個人的な切り口に変え、そのため、ジェシカ・シャステンの役をバッサリ切らなければならなかった。
「僕はジェシカ・シャステンを敬愛している。第一、彼女の結婚の証人だった。だからと言って、もし彼女の役が-ゴシップ誌のイジワル編集長-が作品全体に合わなければカットを厭わない。もちろん最初に知らされたのはジェシカで、それからソーシャルネットワークで公表したら、頭でっかち、恩知らず、と恐ろしいバッシングに遭った。」とグザヴィエ・ドラン。

とうとう2時間強の作品に仕上がり、トロント・フェスティヴァルで上映された。
観客は拍手したのにアメリカのメディアは酷評し、アメリカでは公開されないことに。前作『たかが世界の終わり』もアメリカでは公開されなかった。
ドランのカナダのディストリビューターもそれに倣い、イタリア、日本、韓国など、彼の作品が知られている国にも配給されない。
共同制作したフランスだけで公開となった。

フランスでの批評は『マミー』『たかが世界の・・・』ほど良くはなかったので、ちょっと迷った末、観に行ったら良かった。
2000年はじめ、少年ルペールが大ファンのドノヴァンに手紙を書き続け、10年後、やはり俳優になった彼がジャーナリストに“自分のドノヴァン”を語るところから始まる。
母親(ナタリー・ポートマン)と2人暮らし、学校では“女の子!”といじめられ、学校から帰って観るテレビシリーズだけが生きがいのルペール(ジェイコブ・トレンブレイ)と、

『Ma vie avec John F.Donovan 』グザヴィエ・ドラン

ゲイであることを隠し、分裂したアイデンティティに苦しむドノヴァンの日常が

『Ma vie avec John F.Donovan 』グザヴィエ・ドラン
photos:allociné

交互に描かれる。

アメリカではまだ隠すべきことなんだろうか?
「もしクリス・エヴァンス(キャプテンアメリカ)がカミングアウトして、彼氏と手に手を取り合ってレッドカーペットを歩いたら、ディズニーは大騒ぎするだろう。最新バージョンの『美女と野獣』はアラバマ州の全映画館で上映禁止になった。脇役の男性が他の男性とダンスするシーンがあるからだ」とドラン。
「僕の場合、最初から隠さなかったのでまだいいけど、もし俳優だけやっていたら、絶対主役は回ってこなかった」

ピューリタンの国で、差別はまだ根強いのだ。

Ma vie avec John F. Donovan
グザヴィエ・ドラン監督作品
主演:キット・ハリントン、ナタリー・ポートマン、ジェイコブ・トレンブレイ他
2時間3分
フランスで公開中

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観に行った自分に腹が立つ

15年前、地元県のミスに選ばれ、華々しく北フランスの田舎を出て行ったサンドラが失業して戻ってきた。
なんとか見つけたサバ缶詰工場の仕事。ベルトに乗せられたサバを次々に缶に詰めていくのは女性ばかりだ。

昔の友達に再会する。
左からマリリン(オードレイ・ラミー)、サンドラ(セシル・ド・フランス)、ナディーヌ(ヨロンダ・モロー)

映画「Rebelles/反逆女」

唯一の男性、工場長は女性なら誰でも征服しようとするので有名。元ミスのサンドラにすぐ飛びつくが邪険にされ、闘争心を更に燃やし、更衣室まで追っていく。サンドラは抵抗し、不本意にも・・・殺してしまう。
工場長が持っていたスポーツバッグにはなんと札束がぎっしり詰まっていた。
昔の友達2人マリリンとナディーヌの協力で死体を始末し、さてこの大金・・・ちょうど3人ともお金に困っていた。

映画「Rebelles/反逆女」

3人の中で一番頭が働くサンドラは「サバ缶詰の工場長がこんな大金を持ってるはずがない。これはヤバい金に違いない」と・・・

『Rebelles/反逆女』

映画「Rebelles/反逆女」
photos:allociné

この出だし、桐野夏生氏の「OUT」を思わせる。深夜の弁当工場で働く女たち。事情はそれぞれ違っても「こんな生活から抜け出したい」という点で繋がっていた。
ある時、仕事友達のひとりが暴力夫を殺してしまう。彼女たちは団結し、死体をバラバラにして捨てる。

“女性の地位”も描きつつ、完璧と言っていい犯罪小説。映画化され舞台にもなり、英語に訳され、日本人で初めてエドガー賞(ミステリー小説のアカデミー賞)にノミネートされた。
ところがフランス映画のほうは、出だしだけ似ているけど似ても似つかない。お粗末なシナリオ、低級なギャグで、犯罪モノでもなく、コメディでもなく、社会派でもない。演技派女優3人も救えなかった。

第一、そんな映画を観に行った自分に腹が立つ。
「なんで途中で出なかったの ?!」と娘。全く・・・

Rebelles

アラン・モデュイ監督作品
主演:セシル・ド・フランス、ヨランダ・モロー、オードレイ・ラミー
1時間27分

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神様のお陰?

フランソワ・オゾンの最新作は公開が許可されるかがギリギリまでわからなかった。なにしろバルバラン大司教裁判のまっ最中。
聖職者のペドフィリア(小児性愛)行為を、バルバラン大司教が知っていて隠ぺいした経過を描いたこの作品が、ジャッジに影響を及ぼすのを裁判所が恐れたからだ。しかも映画の登場人物は実名になっている。

結局予定日に封切りになった。『Grâce à Dieu/神様のお陰で』

フランソワ・オゾン 『Grâce à Dieu/神様のお陰で』

リヨンに住むアレクサンドル(メルヴィル・プポー)は銀行家。妻と子供5人、敬虔なカトリックのブルジョア家族だ。

フランソワ・オゾン 『Grâce à Dieu/神様のお陰で』

ある日、彼はプレナ神父が司教区に戻ってきたのを知り、30年前の記憶が蘇った:教会のボーイスカウトに入ってた彼は、ブレナ神父から何度も性的愛撫を受けた。しかも被害者は彼だけではなかった。
30年間、悪夢を押し込めてきた。でももう黙っていられない。子供たちに同じ思いをさせてはいけない。彼はプレナ神父を役職から外してくれるよう教会に手紙を書く。
アレクサンドルの訴えはバルバラン大司教まで届くが、事態は変わらない:プレナ神父は相変わらず教会にいて、子供たちに公教要理を教えている。彼は他の被害者たちとアソシエーション《解放された言葉》を作る。重い口を開く人が増えていった。

前列の4人が被害者の”代表者”。どの被害者も、なんらかの“後遺症”を抱えていた。

フランソワ・オゾン 『Grâce à Dieu/神様のお陰で』

彼らはメディアに働きかけ、隠ぺいしようとする教会と戦おうとする。

女装することでアイデンティティを発見する男性の話『彼は秘密の女ともだち』、ブルジョア家庭の娘が売春する『17歳』など、性の形を、挑発的に描いてきたフランソワ・オゾン。この作品ではトーンがガラリと変わり、事実を追ったドキュメンタリーに近い。

どうして被害者たちがこんな長い間黙っていたのかがよく描かれている。
当時、親たちが子供の訴えに取り合わなかった。神様との仲介をする神父がそんなことをするのが信じられなかった。世間体もあった。子供たちも最初は神父に”気に入られた”ことを誇りにさえ感じたのだ。

信仰というのは個人的なものなのに、その上に政治力、権力を持った教会という制度がある。
私のおばあちゃんは熱心なキリスト教だったけど、プロテスタントとかカトリックとか形式は構わず、“直で”神様と繋がっていたような気がする。当時はぶっ飛んだ人だと呆れていたけど、あのプリミティブな形が本当なんじゃないか、と最近思う。

映画の中でバルバラン大司教が記者会見で言うセリフ:
「とにかく昔の話です。神様のお陰で時効になりました」(タイトルはここから)
記者のひとりがはじかれたように立ち上がる。
「あなた、今暴力的なを言いましたね。“神様のお陰”とは“幸いにも”ということですか?」
全くなんてこと!被害者たちにとっては時効になってないよ!
数日後のニュースで、バルバラン大司教には執行猶予付き禁錮6カ月の有罪判決が下りたのを知った。

Grâce à Dieu
フランソワ・オゾン監督作品
主演:メルヴィル・プポー、ドニ・メノシェ、スワン・アルロー
2時間17分
フランスで公開中


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真昼の悪魔

クレールは50歳の大学教授、離婚してひとり暮らし。若い愛人リュドにふられたばかりだ。
もう女として魅力はないんだろうか?と焦りを感じる。

ある晩、クレールはFacebookにページを作る:名前はクララ、年齢24歳。どっかから見つけてきた若い女性の写真を載せ、リュドの友人アレックスにメッセージを送る。

映画『Celle que vous croyez/あなたが思い描いていた女性』

「こんばんは。あなたの写真、とても素敵ね」
アレックスは24歳、駆け出しの写真家だ。すぐに反応してくる。
「ほんと?どの写真が好き?」
「君は何をしてるの?」

メッセージをやり取りするのが日課になり、クレールはメッセンジャーの発着音を心待ちにするようになる。
リュドの近況を探るのが目的だったのに、彼女は若い男に興味を持たれる快感に酔い、アレックスに惹かれていく。
間もなく電話番号を交換し(「君の声、とても若いね」)「会いたい」と言われるようになって、クレールは現実に引き戻される:すごく会いたい、でも会えない。わたしは50歳のオバサンなのだ。

アレックス(フランソワ・シヴィル)が好きになったのは”クララ”なのだ。

映画『Celle que vous croyez/あなたが思い描いていた女性』


「Celle que vous croyez/あなたが思い描いている女性」

映画『Celle que vous croyez/あなたが思い描いていた女性』
photos:allociné

ヴァーチャルの世界のクララが現実のクレールを侵食していく。顔は輝き、急に若返って、前夫でさえ「誰かに出会ったんだろう?」
ジュリエット・ビノシュは特に好きな女優さんではなかったけど、滅茶苦茶うまい。

映画『Celle que vous croyez/あなたが思い描いていた女性』

老いの恐怖。新しいアイデンティティでもう一度“幸福”を手に入れたいという執念。そしてウソが引き起こす意外な展開。最後まで引きつけるロマネスクなサスペンス。

Demon de midi(真昼の悪魔)とは、中年過ぎて「まだ恋愛現役でいたい!」と焦る“症状”のこと。男女とも自分より若い相手に惹かれるみたい。
映画館には女性が多く-私も友人の新間美也さんと観に行ったんだけど-70歳くらいのおばあさんもけっこういた。彼女たち、この映画にヒントを得て、Facebookにニセのプロフィール作ったりするのかしら・・・

Celle que vous croyez

サフィ・ネブー監督作品
主演:ジュリエット・ビノシュ、フランソワ・シヴィル、ニコール・ガルシア
1時間40分
フランスで公開中


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『美しい息子』を父親は救えるか?

「誰よりも愛している」
これまでデヴィッドは、息子のニック(ニコラ)に何回このセリフを繰り返して抱きしめたことか。
輝かしい未来が待つ18歳の息子と、強い絆で結ばれていると信じていた。
離婚した後一緒に暮らす息子に母親の分まで愛情を注いできた。
それなのに、ニックが12歳からドラッグを始め、深刻な依存症になっていることにすぐ気づかなかった。

ドラッグがこれまでの親密な関係も愛情も押し流してしまったように、今のニックにはどんな言葉も届かず、別人のようだ。
それでもデヴィッドは、別れた妻(ニックの母)、現在の妻の助けを借り、息子を泥沼から救い出そうとする。

ベルギー人監督フェリックス・ヴァン・フルーニンゲンの『My Beautiful Boy』(原題はmy なし)
アメリカ人ジャーナリスト、デヴィッド・ジェフの自伝小説の映画化だ。

Beutiful boy

父デヴィッド役のスティーヴ・カレルは『Welcome to Marwen』(暴行を受けたトラウマと記憶障害で社会生活ができず、人形の世界で暮らす男の話)でもよかった。

Beutiful boy

そして息子はティモシー・シャラメ!(フランスでは”ティモテ”と発音。お父さんがフランス人)

Beutiful boy

君の名前でぼくを呼んで』より大人っぽくなって相変わらずの存在感。もともとラリッタようなトロンとした目だし、脆さと頑固さの混じった中毒者になりきっている。

少し前に封切りになった『Ben in back』は、やはりドラッグ依存の息子を救おうとする母(ジュリア・ロバーツ)の話(観なかったけど)。
こういう映画は、観る前にストーリーがある程度読めてしまうけど、この『My beautiful Boy』は原作があるせいか、俳優がハマっているせいか(両方でしょうね)説得力があった。

ニックの「(ドラッグの)恍惚とした充足感がない生活なんて、生きていく価値がない」というセリフ(正確ではないけど)

Beutiful boy
photos:allociné

2年前に亡くなった夫の従弟はアルコール依存症で、何回か中毒患者治療所にも滞在したけど、結局やめられなかった。
彼も「お酒のない生活なんて生きていてもしょうがない」と思っていた・・・

父親の必死の努力にも拘らず、映画から伝わるメッセージは:
アルコールでもドラッグでも賭け事でも、依存している本人が”やめよう”と決めなければ、誰も助けることができない。

余談ですが、ティモシー・シャラメはマドンナの娘と一緒にいて別れて、今はリリー・ローズ・デップと暮らしているんだって!
有名人の娘が好きなの?

My beautiful Boy

フェリックス・ヴァン・フルーニンゲン監督作品
主演:ティモシー・シャラメ、スティーヴ・カレル
2時間1分
フランスで上映中


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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

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