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Category : 映画

“恋の主役”になれない2人

マキシムは従弟フランソワの田舎の家に遊びに行く。
ところがフランソワは急な仕事でパリに足止めになり、迎えたのは妊娠3か月の妻ダフネだ。フランソワを待ちつつ2人は付近の村や古城を散策する。そして打ち明け話になる。

マキシム(ニール・シュネデール)とダフネ(カメリア・ジョルダナ、エキゾチックな美しさ)

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作家を夢見る翻訳家のマキシムは、美しく利発なヴィクトワールと付き合っていた。一緒に目覚めたある朝、
「あたし、結婚してるの」と彼女。
「!?」
「欲望&快楽と結婚は別物なのよ。夫は日本に転勤中で、わたしももうすぐ行くことになってるの」
こうして2人の関係は終わりを告げた。
「その代わりに」とヴィクトワール(左)は妹サンドラを紹介する。

choses quon dit4

間もなく奔放なサンドラに惹かれるマキシム。
でもその気持ちを打ち明ける前に、彼女はマキシムの親友と一緒になってしまう。

一方、ダフネはドキュメンタリー映画監督のモンタージュ助手。20歳以上年上の監督が前から好きなのに打ち明けられずにいる。ところが彼女が紹介した女友達と、彼は忽ち恋に落ちるのだ。傷心の晩、フランソワとばったり出会い、一夜をともにする。

コミカルなダメ男役が多いヴァンサン・マッケーンのシリアス役、すごくいい。

choses quon dit3
photos:allociné

フランソワは綺麗な妻がいるのにダフネに一目ぼれ、
「また会いたい」
「だめ、あなた結婚してるから」
「じゃなぜ寝たの?」
「結婚してるから。一夜のアヴァンチュールで終わると思った」
「・・・・」
じゃ、なぜ今フランソワと一緒に暮らし子供まで作ることになったのか?・・・
そしてフランソワにも驚くべき過去の一幕があった。

日本ではあまり知られていないエマニュエル・ムーレ/Emmanuel Mouretの『Les choses qu’on dit, les choses qu’on fait』
“言うこと。すること”と訳したらあまりに味気ないので、『言葉にすること。行動にうつすこと』とか?

傷心のマキシムと妊娠中人妻ダフネ。恋の主役になれない2人を中心に、男女の出会いと別れとすれ違いが描かれる。リアルであり、大人の御伽噺みたいなところもあり。シークェンスの短い撮り方はウッディ・アレンを思わせる。でもより繊細。
背景に流れるショパン、サティ、モーツアルト・・・も映像にしっくり合う。2時間を長いと感じないお奨め映画。
磁石のように惹かれ合う2人、でも落ち着く先はその相手とは限らないのだ。

Les choses qu’on dit, les choses qu’on fait
エマニュエル・ムーレ監督作品
主演:カメリア・ジョルダナ、ニール・シュネデール、ヴァンサン・マッケーン他
2時間6分 
フランスで上映中


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もっともっと見たかった樹木希林さん

「この映画、すごく退屈か、すごくいいか、どっちだろうね」
メトロのポスターを見た友達。
「日日是好日」。
フランス語タイトルは『Dans un jardin qu’on dirait eternel/まるで永遠のような庭で』

日日是好日ポスター

結果は素晴らしいの一言。
日本では2018年10月公開なのに、字幕の仏語訳(難しそうだ)+コロナで遅れ、8月末に公開になった。

将来何をしたいか見えない典子(左)、20歳。従姉の美智子と、“なんとなく”武田先生の茶道教室に通い始めた。

日日是好日2

それから20年以上のお茶との付き合いを描いたお話。
殆どのシーンはお茶室の中で、カメラは、袱紗をたたむ手、柄杓を持つ角度、茶筅を置く場所、掛け軸、お茶菓子、見守る武田先生の顔、緊張する生徒さんの表情・・・を行ったり来たりする。
つまり何事も起こらない。
主人公典子の人生(家族、恋、仕事・・・)も最小限にしか語られない。
だけど、その一挙一動、表情が多くを語り、一瞬も退屈しなかった。

そして樹木希林さん、こんなに綺麗だったの?! 
これまで演技派、独特のユーモア、存在感・・・で大好きな女優さんだけど、”美しい”という形容詞が浮かんだのは初めて(樹木さん、ごめんなさい)。
着物の着こなし、お茶をたてる手元、厳しくて柔和な表情。

日日是好日
photo:allocine

ピチピチした輝きはなくても、手にはシワやシミがあっても、積み重ねなければ出てこない美しさ。
美しさは、造形的なものでなく、生き方とか挙動の総合的なものだ、という誰かのセリフを思い出す。
ああ、樹木希林さんはもっともっと観たかった。

そして四季の庭の表情、お茶菓子、掛け軸・・・の伝統的様式美。
というと、観光協会の日本アピール映画みたいだけど、表面的な美しさだけではない。
すぐに買える、短時間でマスター、何でも時間をかけずに、という時代に、何年も何十年もかけて覚え、磨き、熟させていくアート。
忘れていたものの価値を思い出させてくれる作品だ。

アクション映画が好きな夫に「退屈しなかった?」と聞いたら、
「まさか。全然。素晴らしい。マニフィック」
この映画は上映館が少ないけど、評判はすごくいい。絶対のお奨め。公開になって2週間以上経つので、お早めに。

Dans un jardin qu’on dirait eternel
主演:樹木希林、黒木華、多部未華子
1時間40分
フランスで公開中


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涼しい映画館で“あの夏の熱い恋”

バカンス客で賑わうノルマンディの海岸町。2年前からこの町に住むアレクシは海辺の喧騒を逃れ、ヨットで沖に出た。
が、急に天候が変わり、小さいヨットは転覆してしまう。
ひっくり返った船にしがみついていると、ヨットが近づいてきた。
「心配するな、僕が岸まで引っ張ってあげる」

ヨットの青年はダヴィッド(右)。彼は遠慮するアレクシを自分の家まで連れて行き、お風呂に入れ、服を貸してくれる。
その晩は、前からの友達のように映画に誘うのだ。

フランソワ・オゾン『Eté 85/85年の夏』

積極的なアプローチに驚きながら、2歳上でいろいろ経験のありそうなダヴィッドに、16歳のアレクシは惹かれる。
その日から2人は離れなくなり、ダヴィッドの部屋で「これまでの人生で最高の夜」を過ごすまで時間はかからなかった。
アレクシはダヴィッドの母親にも気に入られ(「今まで友達がいなかったのよ。感謝するわ」)彼女の経営するマリンショップでバイトを始める。
ダヴィッドとの蜜月が6週間続いた頃、可愛いイギリス娘、ケイトが現れる・・・

フランソワ・オゾン『Eté 85/85年の夏』

フランソワ・オゾンの最新作『Eté 85/85年の夏』

フランソワ・オゾン『Eté 85/85年の夏』
photos:allociné

教会のペドフィリーを訴えた前作『Grace à Dieu/神のお陰』とはガラリと変わる(ガラリと変えるのはオゾンの特技)。

サスペンス要素もあるけど、焦点は初めての恋。
初めて覚える激しい情熱は、所有欲、嫉妬もパッケージになっている。そして、これまで知らなかった自分を発見する。
ごく自然に『君の名前でぼくを呼んで』を思い出した。

原作はエイダン・チェンバース『おれの墓で踊れ』。でも1967年生まれのオゾンが85年に主人公の年頃だったので、自伝的要素もあるのでは。
音楽も懐かしく(ロイド・コール 『Forest Fire』、ロッド・スチュアート 『Sailing』)、そういえば私も、年上の男性に恋して、相手の感情の温度差に苦しみ、ご飯が喉を通らなくなった夏があったっけ。やっぱり6週間くらいしか続かなかった。

映画館には5人だけ、観客には安心な環境、しかも涼しいのに。経営難で閉まる映画館も増えている。
暑すぎるときは映画に行きましょう!

Eté 85
フランソワ・オゾン監督作品
主演:フェリックス・ルフェーヴル、バンジャマン・ヴォアザン、ヴァレリア・ブルニ=テデシ、メルヴィル・プポー
1時間40分
フランスで上映中


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「良き妻」を作る学校

結婚が女の幸せ、それ以外に選択肢がない、という時代がフランスにもあり、「良き妻」になるための家政学校があった。
若い女子たちが、そこで料理、裁縫、そうじ、洗濯を“学び”、結婚の準備をしていた。

ここは校長夫妻、校長の妹、男勝りのシスターが切り盛りする小さな寄宿家政学校。
女子たちが寝食を共にし“良き妻”になるべく修行している。

映画『la Bonne Epouse/良き妻』

料理の先生ジルベルト(ヨロンダ・モロー)

映画『la Bonne Epouse/良き妻』

”良き妻”のお手本、校長婦人ポーレット(ジュリエット・ビノシュ、)と男勝りのシスター・マリー・テレーズ(ノエミ・ルヴォヴスキ)

映画『la Bonne Epouse/良き妻』

ある日突然、夫(校長)が急死。ポーレットは借金を抱えた未亡人になる。
相談に行った銀行で、彼女は昔の恋人(エドゥアール・ベール)と再会。目覚めた情熱と、自分は自由、という事実が、彼女を生き生きと若返らせる。

bone epouse3
photos:allociné

そしてポーレットは自問自答する:自分たちのやってきたことは女性の幸せに繋がるのか?
ちょうどパリには5月革命の風が吹き始めていた。

この作品、いい役者を集めているのにシナリオがイマイチで残念。次に起こることが全部読めてしまうし、みんな演じすぎで、カリカチュアになっている(ノエミ・ルヴォヴスキのシスターは可笑しい!)。最後にいきなりミュージカルになるのはシラケた。

でも2つの理由で印象に残った。
-今でこそフランス女性の70%が働き、上手く行かなければ配偶者と別れられる経済的自立が大切になっている。男女同権を目指して戦い続けているフランスにも、こういう時代があり、こんな学校まであったのね、と興味深い。しかもたかが60年前のことだ。

-映画を観る直前、朝日新聞で「小学女子へのモテテク指南本・・・」という記事を読んでぶっ飛んだ(有料会員記事なのでリンクが貼れません)。
「男性に選ばれるのを教える内容」で、男子にウケる受け答えや、携帯の可愛い持ち方、「無地の絆創膏や裁縫道具の携帯を促すネット記事もある」
なんでこうなるの?
異性への関心は幼稚園、いやもっと前から始まる。「男子用モテテク指南本」があるならまだしも、どうして女子だけが気に入られる努力をしなくちゃならないんだろう。裁縫道具なんて時代に逆行してるじゃない。
お目当てがある子は自分のやり方で、自由にアピールすればいい。“テクニック”なんかで型にはめないで欲しい。
記事は「男性の意識が変わらないと」と結んでいたけど・・・ブツブツ。

さて『la Bonne Epouse』は公開日前日に隔離が始まってしまった不運な映画のひとつ。ポスターの女優たちが 3か月以上、人通りのないメトロの廊下で微笑んでいた。

La Bonne Epouse
マルタン・プロヴォスト監督作品
主演:ジュリエット・ビノシュ、ヨロンダ・モロー、ノエミ・ルヴォヴスキ
1時間40分
フランスで公開中


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4か月ぶり映画館

封切り前に映画館が閉鎖になり、ポスターだけ残った作品がいくつかあった。
公開されないのに、ポスターは見飽きられてしまった可哀そうな作品。

そのひとつ『Les Parfums』 。

映画 『les Parfums』

エマニュエル・ドゥヴォス主演だし、4か月ぶりに映画館に行かない?と夫を誘うと、「行く行く!」。

リヨン駅近くのUGCの、一番大きい330席の映写室に、観客はたった10人。従業員数のほうが多い。
「3席使って寝よう」というわけにはいかないけど、観客にとっては快適&安心。
でもこれじゃ映画館はやっていけない、と気の毒になる。
さて。
ギヨームは、日本で言うとハイヤーの運転手。離婚調停中で、ひとり娘の共同親権をゲットするためせっせと働いている。
ある日、迎えに行った女性アンヌは鼻をクンクンいわせ、
「あなた、タバコを吸うのね。わたしを迎えに来るときは、その前も、タバコを吸わないでちょうだい」
だけでなく、着いたホテルではシーツが気に入らないとシーツ取り換え(コロナ以前の話!)まで手伝わされる。
彼女は有名な調香師だった。

映画 『les Parfums』

数日つき合ったギヨームは、その横柄さに腹が立ち、
「僕はあんたの秘書じゃない。それにメルシーひとつ言えないのか」と捨て台詞を残し走り去る。

映画 『les Parfums』
photos:allociné

顧客を失った、と思っていたら、アンヌは再びギヨームを指定してきた。そして打ち明け話をする:
高級ブランドの香水を作っていたアンヌは、ある日突然、嗅覚を失う(コロナ以前)。
「鼻じゃなくて経験に頼りながら香水を作って、1本目、2本目まではなんとか切り抜けたけど、3本目は惨憺たる結果」
契約は破棄され、彼女は香水業界から干されてしまう。
以来、彼女に来る仕事は、地方の洞窟のコピーを作るんでその匂いを再現する、とか、高級バッグの、強すぎるなめし剤の匂いを中和させる、というものばかり。

ギヨームは、孤独で高飛車な調香師を理解し始め、スーパーでシャンプーを買う時、何種類も開けて(!)香りを嗅ぐようになる。

社会的クラスが違う人間が出会う、最近わりとあるテーマで、悪くない。
ラジオで「Feel good mouvieですね」。この表現好きじゃないけど、当たっている。

帰り道、「映画館も劇場も大変だ」と夫。もとの観客を取り戻すのにどのくらいかかるだろう?
お天気のいい日、セーヌ河岸はギョッとするくらいの人出なのに、日曜日の映画館がガラガラなんて。
戸外の方が安全だから?
ロックダウンした都市の再起動は時間がかかりそうだ。

Les Parfumes
グレゴリー・マーニュ監督作品
主演:エマニュエル・ドゥヴォス、グレゴリー・モンテル
1時間40分
フランスで公開中


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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

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