Category : 映画

期待しないで観たら・・・『バルバラ』

他の映画(『Wind River』)を観に行ったら満員で、「じゃ『Barbara』にするか」「そうだね」
封切りになったばかりなのでこっちも結構混んでいた。

若い世代はバルバラを知らないし、マチュー・アマルリックの監督作品はちょっとわかりにくいので、観客の反応はどうだろうか?とラジオで言っていたけど、マチュー・アマルリックは作っても演じても、ある程度の観客数を動員するようだ。この作品は作って演じてるから尚更・・・
私は批評を読んでいなかったので、バルバラの生涯(かその一部)が描かれているんだろう、と思っていたら全然。監督(マチュー・アマルリック)が、女優(ジャンヌ・バリバール)と、バルバラの伝記映画を撮ろうとしている、とこを撮っている。
“女優”が歌を聞き、ヴィデオを観て役作りをするうちに、段々バルバラと重なってくる。撮影のオフの部分なのか、カメラが回っているのか、境目が曖昧になってくる。

『Barbara』マチュー・アマルリック

「これはどっちだ?」と混乱しながら、バルバラの音楽世界にはしっかり引き込まれる。

『Barbara』マチュー・アマルリック

それがアマルリックの意図であったなら(そうに違いない)成功している。
後で批評を読んだら、バルバラを知らない世代にも受けているそうだ。

今まで積極的に聴いたことがなかったバルバラの声は形容詞をつけるのが難しい。なんという声!その声を、まるで楽器のように操る。



そしてジャンヌ・バリバールが滅茶苦茶なりきっている。顔も似てるし。
彼女はアマルリックの前妻で子供が2人。15年前くらいに別れている。

今年のカンヌ映画祭で。モト妻の危ういドレス!
『Barbara』は『Un certain regard/ある視点』部門で”シネマの詩情賞”を取っている。

『Barbara』マチュー・アマルリック

棚からぼた餅・・・観てよかった。

この前、朝市の卵屋で、私の前にマチュー・アマルリックがいた。「今起きました」(既に13時頃)という乱れ髪、しかも染めた髪と地の髪が混じってる。「服のまま寝ちゃった」ようなしわくちゃのシャツとズボン。つまり映画の中と一緒だった。

Barbara
マチュー・アマルリック監督作品
主演:ジャンヌ・バリバール、マチュー・アマルリック、オーロール・クレモン
1時間37分
フランスで公開中

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老人が窓から、戦火で荒れ果てた風景を眺めている。ソファに座り込み頭を抱える。
周囲の住民はみんな避難し、残るのはこの家族だけ:老人と息子の嫁、その子供2人、家政婦さん。子供の友達2人、そして階上に住む若夫婦+赤ちゃんが居候している。
ドアには太い木材が渡され、10人が息をひそめて新しい一日を生きようとしている。

映画『Une famille syrienne/あるシリアの家族』

銃声や爆発音の度に窓にかけより、住人のいないアパートを略奪する人たちの足音に怯える。水道は止まり、電話もなかなか通じない。

建物を揺るがす空爆。一番奥まった台所に避難する。
中央が、10人の住人を仕切る”息子の嫁”。息子(つまり彼女の夫)はどこかに出かけてまだ戻ってこない。

映画『Une famille syrienne/あるシリアの家族』

ここでは生きられない。若夫婦の夫は“渡し屋”と話をつけ、夜には国外逃亡するつもりだ。

ここを離れられない、と思うのは老人と息子の嫁。アパートは大きく、裕福な暮らしだったことが窺え、食器棚の上に並ぶ写真が家族の歴史を物語る。平和で幸せだった日々の名残を捨てていくことはできない。
一家を仕切る息子嫁は、家族が食事をしてなんとか一日が過ごせるようにイライラと動き回る。

『Une famille syrienne/あるシリアの家族』は、シリアのどこか-アレッポかダマス?-の、アパートの中の24時間を描いている。

映画『Une famille syrienne/あるシリアの家族』
photos: allociné

ハラハラの1時間半、どんなサスペンス映画より怖い。
メランコリックな優しさの老人、性格はきついけどすべてに気を配る母、不便な生活と戦闘の怖さを我慢する子供たち・・・すべてがリアル。観客はスナイパーの音に息を呑み、外の足音にドキドキする。

最初、アパートの部屋から次々に人が出てくるので、その関係を理解するのにちょっと時間がかかった。
主人公の女性がどう見ても50代半ばなので、小さい男の子の母親とは思えず、老人の奥さんかと思ったら、息子の嫁だった。

ニュースで荒廃したアレッポの様子は伝えられるけど、そこに暮らす住民の日常を描いたものは初めて観た。ショック。
シリアからの難民を批難する人たちはこの映画を観るべきだ。
たとえ危ういゴムボートでも、他の国に逃げようとする人たちの生活が、臨場感をもって伝わってくる。重い映画だけど観てよかった。

Une famille syrienne
Philippe Van Leeuw監督作品
フランス・ベルギー合作
主演:Hiam Abbass, Diamond Bou Abboud, Juliette Navis
1時間26分
フランスで公開中

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1989年に、Act Up New Yorkをモデルに発足したAct Up Parisは、
『エイズ患者を援助するアソシエーションではなく、エイズに侵された人々の権利を護るための行動主義者の集まり』
メンバーにはエイズウィルス陽性者、既に侵されている人もいれば、感染してしまった血友病患者もいる。
社会の、政府の、ラボラトリーの無知と、現実を見ようとしない態度に怒り、ラボラトリーの壁に作り物の血の袋を投げつけたり、高校の授業中にコンドームを配ったりの活動を繰り返す。
病気の症状や恐怖と戦いながら、犠牲者を増やすまいとする人たち。

Act Upのミーティング

120 battements par minute 一分間に120回の鼓動

グループの中で特に攻撃的なショーンはウィルス陽性だけど、自分が“宣告されている”と感じていた。
でも、彼は、彼らは病気への恐怖の中に閉じこもってはいない。グループで出会ったショーンとナタン(↓)は、恋をし、快楽を求め、生きようとする。

120 battements

映画は、この病気の実態がよく知られていなかった1990年代(陽性の人に触れば感染すると思っていた人が少なくない)を背景に、無関心と偏見を取り除こうとするAct Upの活動と、ショーンとナタンの強い繋がりを描く。
カンヌ映画祭でパルム・ドールを取った『120 battements par minute/1分間に120回の鼓動』(安静時の平均心拍数は60~70だそう)

ショーン役のナウエル・ペレズ・ビスカヤールはアルゼンチンの俳優。小柄な身体に強烈なインパクト。

120 battements par minute 一分間に120回の鼓動

試写でアルモドバルが泣いたというけど、誰だって泣かずにはいられない。決して“泣かせよう”という作品ではなく、むしろ淡々と描かれているのに、最後の方は涙が止まらない。隣の女性もバッグをかき回してティッシュを探していた。

30年近く前に始まったAct Up Parisの活動について(ゲイパレードくらいしか知らなかった)多くを教えられる作品、お奨めです。

120 battements par minute
ロバン・カンピオ監督作品
主演:ナウエル・ペレズ・ビスカヤール、アルノー・ヴァロア、アデル・エネル
2時間20分
フランスで公開中


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8月はリバイバル

東京から戻ると、パリは天気が悪く、寒く、閉まっているお店が多く、夜歩くと、明かりのついていないアパルトマンばかり。
風通しがいいのは確かだけど、この街の短い夏は終わっちゃったのね ・・・

映画も8月はろくなのをやっていない。その代わり、昔の名作のリバイバルがお奨め。
ポンピドーセンター近くのMK2 Beaubourgではルイス・ブニュエル特集をやっている。
『ブルジョワジーの密かな愉しみ』
“密かな愉しみ”なんて言われると、ほんとに密かなことを想像してしまうけど、全然そうではない。

『ブルジョワジーの密かな愉しみ』ルイス・ブニュエル

友人宅に夕食に招待された男女4人が運転手つきの車で到着する。屋敷に入ると暖炉に火はなく、テーブルセッティングもできていない。間もなく現れた女主人は、
「あらご招待は明日の晩よ」「そんなはずはない、明日の晩、私は約束がある」「今夜は夫がいないから間違えるはずがないわ」
というやりとりの後、「この近く(屋敷があるのは人里離れた田舎)にホテル兼レストランがあるからそこへ行こう」
ところがその店でも食事ができない。
着飾って連れだって食事にでかけては、ことごとく邪魔が入って延期になるブルジョワ6人。
自分たちの小さい世界とその価値観しか見えないブルジョワジーをユーモラスに揶揄していて、その間に挟まれる彼らの悪夢や、兵士の物語る逸話はシュールだ。1972年の作品は少しも古びていない。
『去年マリエンバードで』のデルフィーヌ・セイリグ、『バベットの晩餐会』のステファーヌ・オードラン(クロード・シャブロルの前妻)がとっかえひっかえ着るドレスも見もの。
『Le charme discret de la bourgeoisie』
1時間42分

他に『昼顔』『欲望のあいまいな対象』などなど上映中。

同じMK2 Beaubourgで北野武特集。娘と『HANA-BI』を観に行く。

「物悲しく可笑しく、暴力的で瞑想的」というキャッチ、まさにその通り。

『Hana bi』北野武

腕のいい刑事、西(ビートたけし)。コンビを組んでいた同僚の堀部が撃たれ、車椅子の生活になってしまう。西はその犯人を追い詰めるが、部下が殺される。西は犯人を撃ち殺し、死体に何発も打ち続けた。
西には、余命いくばくもない妻(岸本加代子)がいて、入院費や何やらでヤクザに借金をしていた。妻に最後の旅行をさせようと計画する・・・

殆どしゃべらず、無表情な西。死にかけている妻、半身不随になり妻子に去られた同僚、借金返済につきまとうヤクザ・・・とお先真っ暗の中、ちょっとズレたギャグがポンポンと挟まれる。もう何年も見ていなかった北野の映画の強い個性。
『菊次郎の夏』『キッズ・リターン』もかかっている。

帰り道、娘が、
「たけしって魅力的」
「すごい存在感」
「セクシーだわ」
「 ?!」
たけしは美男とは程遠いし、黙って座っていればちょっとヤバそうなふつうのオジサン。
彼にセクシーという形容詞をつけるとは、なかなか男を見る目があるじゃない・・・


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また魚でご飯を食べにこよう!

今井浜には何もないんで、この日も河津まで晩御飯を食べに行く。
駅のすぐ近く、『さかなでご飯』(魚で?逆撫で?)という、よくわからないダジャレのようなお店が開いていた。
お客は私たちだけ。

中には生け簀があって、魚や大きなエビが食べられるのを待っている。

河津 さかなでご飯

私たちは、エビ、牡蠣、鯵のフライ盛り合わせ定食という、またファミリーレストランみたいなメニューを選んだ。
写真は撮るまでもなく(実は撮り忘れなんだけど)。

「女性が日に焼きたくないっていうんで海水浴客が減っちゃって」とご主人。
「女が来ないと男も来ない」
はぁ、なるほど。
「それで民宿が何軒もつぶれちゃった」
「でも河津の桜は有名ですよね」と私。昨日、仕入れたばかりの知識。
「そりゃすごいですよ。人口8000人の町に80万人来ちゃうんだから。でも昼だけ。午後3時になるとみんな帰っちゃう」
宿泊設備がないからだそうだ。

でもこのご主人といい、ホテルのオーナーといい、お客がいないのを嘆くでもなく、イラつくでもなく、サービスはとても温かい。
ホテルのマダムは、
「もう年だし、ボチボチやってればいいの」と笑っていた。
都会と違うリズムがあり、価値観があるという感じ。

食べ終わって(ふつうの3倍くらいある海老フライがプリプリと美味しかった)お勘定を頼むと、
「どこまで帰るの?今井浜?じゃ、話しながら送っていきますよ。ちょっと待ってて」
「え?ほんと?そんな・・・」
とびっくりしていると、車とともにすぐに戻ってきた。
昨日、街灯のない夜道がちょっと怖かった私たちは大感謝。
「お店に鍵かけないでいいんですか?」
「今から来るのは地元の人だから、中に入って待ってるよ。鍵かけたら入れないから」

エール・フランスのパーサーが、時々ひとりで来て“魚で”ご飯を食べていくそうだ。
「もう3~4年来るかな」
通な人なのね。
電車で2分の距離は、車でもすぐ。もっとドライブしていたかったけど。
「また来てくださいね」
と白いバンは暗い坂を降りていった。
「ほんとに、また行こうね!約束よ」と娘。


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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

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