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Category : 映画

大人たちの危ういゲーム

シックな中年カップルが、親友たち-カップル2組とシングル男-をディナーによんでいる。
全員が揃うのを待ちながらキッチンでワインを飲み(かなりガブガブ飲む)、「ベン(シングル男)の新しい彼女はどんな女?」
ところが彼はひとりでやってきた。彼女が「お腹を壊した」という説得力のない言い訳で。

映画『le jeu/ゲーム』

食事半ばで誰か(女性)が言い出す。
「ねぇゲームをしない?」
「?」
「携帯を全部テーブルの真ん中に置いて、メッセージ、メール、電話をみんなに公表するの」
「そんなの面白くない」と男性。
「アラ、あなた隠すことでもあるの?」とその妻。
「隠すことなんかないさ」
「じゃやりましょうよ!」

映画『le jeu/ゲーム』

ところが始めてみると、ほぼ全員からヤバい隠し事がボロボロ出てきて、ゲームが悪夢に転じるのに時間はかからない。
仕事、家族、友達、愛人、(悪)趣味・・・今日、私たちの生活が凝縮され、依存度がますます高まる携帯を皮肉った『Le Jeu/ゲーム』

映画『le jeu/ゲーム』

配偶者に知られたくない隠れアヴァンチュールだけでなく、姑と同居や年頃の娘の行動などマジメな悩みも晒される。
しかしただの暴露大会に終わらず最後のオチがなかなか。

もうひとつ面白いのはパリの中流ボボ・ディナー。旦那が作った凝りすぎメニューは熱い生ガキ(生ガキに熱いソース?)、メインがフォアグラの牛乳煮にブロッコリーのピュレ。どちらもあまり食べたくない。

不味ディナーの張本人(ステファン・ドゥグルート)とその妻(ベレニス・ベジョ)

映画『le jeu/ゲーム』
photos:allociné

お客たちも同様で、パンをむさぼり、ワインをガブガブ。
「どうして今夜はパンが足りないのかしら?」と女主人。
「いつもはほかに食べるものがあるからよ」
果たして最後に大きなチーズプレートが出ると、みんな飛びつく。
「招待されたときチーズをお代わりすると失礼。食事がまずかったということだから」なんて礼儀はぶっ飛んでいる。中には小学校からの友達もいるくらいだから。

小さな携帯の大きな役割が浮き彫りになり、フランスの中年カップルの“倦怠期の生き延び方”が見える映画。
傑作ではないけど、けっこう良かったです。

Le Jeu
監督:フレッド・カヴァイエ
主演:ベレニス・ベジョ、スザンヌ・クレモン、ヴァンサン・エルバーズ、ルシュディ・ゼム他
1時間30分
フランスで公開中

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笑いたかったら迷わずこの一本!

2年前からうつ病で仕事をしていないベルトラン(マチュー・アマルリック)。
癇癪持ちで妻に去られたロラン(ギヨーム・カネ)。
つぶれかかっている小さな会社の社長マルキュス(ブノア・ポールヴールド)。
永遠に売れないロック歌手シモン(ジャン=ユーグ・アングラード)。
全くモテないのを悩むプール職員ティエリー(フィリップ・カトリーヌ)・・・

人生に疲れた中年男たちが、市営プールの“男子シンクロ・スイミング教室”で出会う。

le grand bain

お腹は出て、二の腕はたるみ、日ごろ運動していない彼ら。プールに飛び込む姿はアザラシに似ている。
でも、週一の練習は-その後でバーで一杯やりながら愚痴を言い合うのも-次第に欠かせないものになっていく。

タバコを離さないコーチ、デルフィーヌ(ヴィルジニー・エフィラ)は元アル中。

le grand bain3

間もなくデルフィーヌのアルコール依存がぶり返し、アマンダ(レイラ・ベクティ)が代役コーチで現れる。
デルフィーヌとアマンダはかってデュオを組んだシンクロチャンピオン。アマンダが事故に遭い、車椅子生活になり、デルフィーヌはアルコールに溺れた・・・

le grain bain4

“ゆるい”デルフィーヌと違いアマンダはサディックな鬼コーチ。中年男たちはヒィヒィ言いながら、大会出場というシュールな目標に向かって加速していく。

ジル・ルルーシュのLe Grand Bain。大浴場ではなく深いプールのこと。浅い(子供用)プールはPetit bain。足がつかないと不安な私はいつもプティ・バンだけど。

le grand bain affiche
photos:allociné

ジル・ルルーシュ 、フランスでは夥しい数の作品に出ているが、日本では『フランス、幸せのメソッド/ Ma part du gâteau』(DVDスルー)の横柄な富豪ビジネスマン。『プレイヤー/les Infidèles』の浮気男(共同監督・脚本も兼ねる)など。

とにかく可笑しい。マチュー・アマルリックやブノア・ポールヴールドは“地のまま”だし、意外といいのが、内気でお菓子ばっかり食べていてオタクっぽいフィリップ・カトリーヌ。
チームにフランス語が全くしゃべれない小太りのスリランカ人がいて、彼が何か(スリランカ語で)言うと全員が賛同する。他の男たちは長々グチャグチャと口論し収拾がつかなくなるのに、スリランカ人のひと言がチームをまとめる。沈黙は金?

若さ、愛、お金、夢・・・失ったものへのメランコリーが、水の中で前向きのエネルギーに変換していく。希望に似たものが生まれてくる。
涙が出るほど笑って(自称”ウォータープルーフ”のアイラインが流れ落ちた)元気になる作品。

Le Grand Bain
監督・脚本:ジル・ルルーシュ
主演:マチュー・アマルリック、ギヨーム・カネ、ブノア・ポールヴールド、フィリップ・カトリーヌ・・・
1時間59分
フランスで公開中


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新しい別れ方?

一緒に暮らして10年、子供が2人いるロマーヌとフィリップ。一見、幸せな家族、でも蓋を開ければ、かって熱烈に愛し合った2人の間は冷め-キスすらせず-口を開けば喧嘩になり、子供のために一緒に暮らしている状態だった。
「もうやっていけない」
「このままでは子供も可哀そう」(とこの点では意見が一致)

l'Amour Flou/曖昧な愛

でも2つアパルトマンを借りるのは経済的に重すぎる・・・そこへ建築中のアパルトマンが見つかった。
それを仕切り2つの独立した住居にし、真ん中に子供部屋を作り、どちらからも行き来できるようにする。
画期的な別離同居!子供たちは2つのアパルトマンを行き来する必要がない。ひとつのドアを開ければママンがいて、もうひとつのドアにはパパがいる。

しかし。いざ引っ越して暮らし始めると、子供の取り合いになったり、お互いのプライバシーを守るのが難しい。

l'Amour Flou/曖昧な愛

もう一花咲かせたいロマーヌは、いい男を見ると目を輝かせるがなかなか上手く行かない。
「俺の恋愛生活は終わった」というフィリップは、いとも簡単に若くてきれいなジョガーとベッドインしている。

実際に一緒に暮らし、別離同居をしたロマーヌ・ボランジェとフィリップ・レボの自伝的フィクション『L'Amour Flou/曖昧な愛』。
監督・脚本・主演、彼らの子供も家族も全員“本物”が出演している。

l'Amour Flou/曖昧な愛

熱い恋の状態は長くは続かない。すっかり消えなくても、形は変わっていく。
「わたしたちは失敗した」と嘆くロマーヌに、
「僕たちは友達から恋人になりパートナーになり、家族を作ったじゃないか」とフィリップ。

ロマーヌは俳優リシャール・ボランジェの娘、フィリップ・ルボは脇役ばかりの俳優

l'Amour Flou/曖昧な愛
photos:allociné

そう、ふたりが10年間に積み上げたものは失われていない。2人の連帯感、子供への愛情は変わっていないのだ。

カップルを続ける難しさをユーモラスに描き、自伝なのに決して露出趣味になっていない。
新しい別れ方、というより”新たな出会い方”を教えてくれる作品。

L'Amour Flou
監督・脚本:ロマーヌ・ボランジェ、フィリップ・ルボ
主演:ロマーヌ・ボランジェ、フィリップ・ルボ、その家族
1時間37分
フランスで公開中


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お薦めしない”ラーメンの味”

友達が観たいというので一緒に行ったら、映画が始まってすぐ、
「居眠りしたら起こしてくれ」
間もなくイビキが聞こえてきた。私もちょっとウトウトしたので起こさなかった。

エリック・クー/Eric Khooの『la Saveur des ramen/ラーメンの味』。日&仏&シンガポール合作で、原題は『Ramen Teh』

Ramen Teh/la Saveur des ramen

ポスターが「どこかで見たことがある」と思ったら、『餡/les Délices de Tokyo』(河瀨直美監督)のに似てません?ああ、樹木希林さん・・・

餡、delice de Tokyo

マサトは父親のラーメン屋-行列ができる人気-で働いている。殆ど口をきかず仕事が終われば酔いつぶれるまで飲む父親は、10分も経たないうちに死んでしまう。
シンガポール人の母親は既に亡くなり、孤児になったマサトは、親子3人幸せな時を過ごした母の母国に赴く。小さい時に母親が食べさせてくれたバクテーの味と再会したかった。
そこで家族の秘密を、その背景にある日本軍のシンガポール攻略(1942)を知るのだ。

と書くと面白そうかもしれないけど、全編甘ったるく、フラッシュバックで登場する母親は美しく微笑むだけでキャラがなく、定期的に現れる料理シーンはドキュメンタリーのように人間味がない。

Ramen Teh/la Saveur des ramen

是枝監督の『歩いても歩いても』(ここでも樹木希林が圧倒的な存在感だった・・・)の冒頭料理シーンなどは、日本の台所を物語り、香りが漂ってきそうだった。

そしてシンガポール在住のブロガー女性、松田聖子!アップで見るのは何年(何十年)ぶり?全くシワのないピンピンの肌も不思議だけど、役どころも表面的というか、存在理由がイマイチわからない。フランスの批評では「Jポップの80年代アイドル」と紹介されていた。

シングルマザーで息子は中学生。

Ramen Teh/la Saveur des ramen 松田聖子

おばあちゃん(マサトの母の母)が出てくるとちょっとスパイシーになり目が覚めるが、それも長くは続かず「泣かせたい」が透けて見える。監督エリック・クーは泣かせるのが好き、という噂。

Ramen Teh/la Saveur des ramen 斎藤工
photos: allociné

一緒に行った友達は最近日本に興味を持っていて、雑誌の日本特集号など読んでいる。まあ、日仏友好160年記念のお陰でクローズアップされているから日本に興味を持ち出すフランス人は少なくない。
映画の後ビールを飲みながら、
「日本にお医者や看護婦さんが裸の病院があるんだって?」
「 あるわけないでしょ。どこで読んだの?」
「ネットで。他の病院よりよく治るんだって」
「裸のレストランは聞いたことある。確かロンドンから入ってきて予約殺到なんだって」
「いや、絶対病院もある。探してURLを送ってあげるよ」
結局、見つからなかったそうだけど、“他の病院より治る”というのはフランス人が書きそうで、しかもありえそうだ。

la Saveur des ramen
Eric Khoo監督作品
主演:斎藤工、Jeannette Aw Ee-Ping、松田聖子、伊原剛志他
1時間30分
フランスで公開中
日本での公開はなぜか未定


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”Girl”への道のり

天使のような美しい顔、もうすぐ16歳になるララは、エトワールダンサーを夢見て過酷な練習に励んでいる。
でも人一倍練習してもララの身体は柔軟さが足りず、思うように撓ってくれない。
彼女は男の子として生まれたトランスジェンダーなのだ。

映画『Girl』

ホルモン療法はしているけど「手術はまだ先のこと、あなたは若すぎる」と医師。
一日も早く中身と外見を一致させたいララは待ちきれない。レオタードを着るのに毎日ひと苦労だ。

父親(シングルファーザー)はララを全面的に応援し、健康を気遣う。ララが女の子であるを知っているからだ。

映画『Girl』


ブリュッセルのバレエ学校の教室、鏡と向き合う自分の部屋、キッチンでの家族との短い会話、父親と行く病院で医師とのやりとり、またバレエ学校で練習・・・カメラはひたすらララを追う。その優しい表情は仮面のように焦りや葛藤を隠している。父親が尋ねても「問題ない、うまく行っている」と答えるばかり。

一番辛いのは、バレエ学校の生徒たちの好奇の目や、先生の心無い質問「ララが女子更衣室を使うことにみなさん賛成ですか?」ではない。彼女を閉じ込めている“この身体”なのだ。

ベルギー人Lucas Dhont/リュカ・ドン(リュカス・ドント?)の『Girl』。27歳という若い監督の初めての長編作品。
今年のカンヌ映画祭でカメラ・ドールをとった。

映画『Girl』

LGBTのT、トランスジェンダー。最近、この言葉を目にする機会が増えたとは言え、まだ知られていないし理解されるのには程遠い。
ただでさえ難しい思春期に、身体で表現するバレエを選び、2つの性の間で葛藤するララ。まあ、これだけ理解のある父親は珍しいだろうけど。
セリフは多くなく、説明も少なく(母親はどこで何をしてる?)、彼女の”不幸”は、バレエ学校のトイレや自分の部屋の鏡の前で感じ取られる。

映画『Girl』
photos:allociné

それだけにララ役のダンサー、15歳のヴィクトール ・ポルスターの演技は素晴らしい。カンヌの『ある視点』部門で演技賞をとった。

映画『Girl』
photo:LCI

神様も間違うことがある。その間違いを生きるのは大変な苦労だ。「性的嗜好の話」でも「一過性のもの」でもないのだ。
こういう作品で性的マイノリティの理解が増すのを願うばかり。

Girl
リュカ・ドン監督作品
主演:Victor Polster、Arieh Worthalter
1時間45分
フランスで公開中   

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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

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