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Category : 映画

12個の地雷

28日、45回セザール賞、最優秀作品は『レ・ミゼラブル』が取った。

セザール賞セレモニー2020
photo:next.liberation

移民受け入れの歴史を持つフランスで、彼らの同化の難しさを描いた作品、同じ28日、日本で封切りになった。
コロナ感染に怯えるこの時期に日本公開は残念だ。
移民2世の若い監督の、しかも処女作が受賞したのは素晴らしいけど、セザール賞セレモニーは、“地雷原の上を歩く”4時間。
地雷は12個あり、その名前はロマン・ポランスキーだ。

1977年、アメリカで13歳の少女にドラッグを飲ませ暴行した廉で有罪判決になり、42日間の拘留後、国外脱出。パリに移住した。その後もあちこちで「未成年のとき性的暴行を受けた」という訴えが起こりポランスキーは「記憶にない」とか「でっちあげ」と言っていたが、#Me too運動で再燃。彼が野放しになっていることへの非難が高まっている。

そのポランスキーの最新作『J’accuse /An officer and a spy』がなんと12部門でノミネート、そのせいでセレモニーに欠席を決めた俳優、スタッフも多かった。
「12回、危険な瞬間を孕んだ」セレモニーの司会はフロランス・フォレスティエ。
彼女は今一番人気のユーモアタレント。「ポランスキー(右)、賞を取らないでおくれ・・・」

セザール賞セレモニー2020
photo:purepeaple

外には会場に侵入しようとするポランスキー告発の団体が警察に阻止されている。
最優秀衣装、オリジナル音楽、背景、録音、助演男優、主演男優・・・と、受賞者の名前を書いた紙が開けられるとき会場は緊張し、ポランスキーじゃないとほっと緩む、という繰り返し。

最優秀主演女優はアナイス・ドゥムースティエ(好きな女優さん!)
今年は脚スケスケのロングドレスが目立った。これはDior。グラマーな人は着れないわね・・・

セザール賞セレモニー2020
photo:purepeaple

3時間経過したとき『J’accuse /An officer and a spy』は最優秀衣装、最優秀脚色をとっていた。
ポランスキーはもちろん、出演者、スタッフは反応を恐れて全員欠席。セザールの彫像は速やかに“関係者”の手に渡ってステージから消える。
ここまではよかったけど、上から2番目の最優秀監督賞は「ロマン・ポランスキー!」と名前が呼ばれたとたん、アデル・エネルが「恥だ!」と言い捨てて席を立つ。

セザール賞セレモニー2020
photo:JDD

彼女は12歳の時、他の監督に性的暴行を受けたことを明かし、性的暴行告発の旗頭になっている。何人かの俳優やスタッフがそれに続いて席を立った。
肝心の最優秀作品賞は『レ・ミゼラブル』がとり、会場はホッとして沸いたけど、なぜ監督賞を性犯罪者に?という疑問と怒りは最後までくすぶっていた。
『レ・ミゼラブル』は、最優秀新人男優、モンタージュと3つの賞を獲得。
この作品を観て欲しいから、というわけではないけど、コロナが一日も早く収束することを願いつつ・・・


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カンヌ映画祭パルム・ドール、ゴールデン・グローブ、そして今度はアカデミー賞4部門!
ボン・ジュノ監督は『おそらく、海外の観客はこの作品を100%理解することはできないだろう。この作品はあまりにも韓国的で、韓国の観客が見てようやく理解できるディティールが散りばめられている。』
と語ったというけど、テーマは国境を越え、世界中が拍手した。スバらしい!

わたしは飛行機の中で2度目観て、一度目では気づかなかった細部が見えて、再度感嘆した。
パリはまだ上映館あり。日本もこの受賞で上映館が増えるそうだ。まだの方はもちろん、もう観た方も是非!

湿っぽい地下室に親子4人が折り重なって暮らすキテク一家。
部屋の壁には内職で作るピザの箱が積み上げられ、窓の前は通行人の立ちションコーナーになっている。
運転手の父親は失業中、母も目下仕事がなく、息子はもう学校が続けられない。一家心中してもおかしくない状況なのに、キテク一家は仲が良く、機嫌もいい。

『パラサイト』ボン・ジュノ監督

ある日、息子ギウに美味しい話が舞い込む:富豪の娘の家庭教師をやらないか。
パーク一家のモダン&ミニマルな邸宅に着くと家政婦が迎え、シックでいかにも良家風の母親が現れる。
疑うことを知らない母親はギウをすぐ信頼し、末息子が「幽霊を見てから情緒不安定になった」と嘆く。
「そういえばアメリカでアートテラピーを学んだ知人がいます」とギウ。
”知人”は妹。キテク一家は金儲けのチャンスを嗅ぎ取るのに長けているのだ。

『パラサイト』ボン・ジュノ監督

カンヌ映画祭でパルムドールをとったポン・ジュノの『Parasite/パラサイト』

『パラサイト』ボン・ジュノ監督
photos:allocinés

ユーモラスに貧しい“一家”を描く出だしは、去年のパルムドール『万引き家族』を思わせる。
でも『パラサイト』は後半、富裕層VS貧困層の社会派スリラーになっていく(だからこれ以上言えない)。

人間や社会が、意識の奥や地下に押し込めている“見せたくない部分”を、シンボルの形(例えば匂い)で暴き、ユーモア、社会風刺、サスペンス・・・の多岐にわたるジャンルをまとめてるボン・ジュノの手腕にただ唖然。

ところで、Academy Awordsをなぜフランスはオスカー賞と呼ぶの?と疑問だった、どころか最初は別の賞かと思っていた。
考えるに、「アカデミー」は普通名詞で、芸術家、文学者、科学者などいろんなアカデミーがあって紛らわしいからではない?


Parasite/パラサイト 半地下の家族
ボン・ジュノ監督作品
主演: ソン・ガンボ、イ・ソンジュン、チョ・ヨジョン、チェ・ウシク
2時間12分
パリでまだ上映館あり

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セクハラ告発の先駆者たち

朝のニュース番組『Fox & Friends』を司会するグレチェン・カールソン(ニコール・キッドマン)。

映画『スキャンダル』

ちょっと年はいってるけど、もとミス・アメリカの美貌を誇る人気キャスター・・・なのに2016年、クビになる。
理由は分かっていた。Fox 社長ロジャー・エイルズの“言い寄り”に応じなかったからだ。彼女は社長を起訴することに決める。

夜のニュースショー『Kelly’s File』のキャスター、メーガン・ケリー(シャーリーズ・セロン)はFoxの花形。
右がセクハラ社長、ロジャー・エイルズ。

映画『スキャンダル』

鋭い切り口で出世階段を駆け上る。2016年、大統領予備選挙前の討論でドナルド・トランプのセクシズムを指摘し、後の大統領を敵に回す。討論後、トランプはTwitterで「メーガンは生理中だった」と報復した(なんと大人げない・・・)
グレチェン・カールソンに賛同し、エイルズに止めを刺すのは彼女だ。

ケイラ・ポシュピシル(架空の人物、マーゴット・ロビー)は、グレチェンとメーガンに憧れてFOX NEWSに入って来る。

映画『スキャンダル』

のっけからロジャー・エイルズのボディチェックに遭う。既に短いスカートを「もっと上げて」「もっともっと・・・」
彼は脚フェチで有名なのだ。
「君を出世させる。その代わり忠誠を約束してもらう」が彼の手口。“忠誠”とは彼の要求に応じる、ということ。
クビになるのが怖くて応じてしまった女性が社内に23人もいた。

ハーヴェイ・ワインスタイン以前、米FOX NEWSの社長を辞職に追い込んだセクハラ・スキャンダルを再現した『SCANDALE』

映画『スキャンダル』
photos:allociné

事実に忠実に、早いテンポで描かれ、それはそれで面白いけど、驚くのはこの3女性が似ていること。
もちろんよく見れば違う美しさではあるけど、ブロンド・ナイスバディ・身体の線を強調した服・バッチリメイクが鋳型っぽい。
時代の、または業界のトレンド?テレビに出る職業だから、自分の長所を見せたいのはわかるけど、バービーを見てるみたい・・・

毎回メイクに3時間かかったというシャーリーズ・セロンの変身ぶりもすごい。最初、誰だかわからなかった。
どっちが本物のメーガン・ケリーかわかります?

映画『スキャンダル』

ニコール・キッドマンも顔がちょっと違うけど、彼女は何度も整形していて元の顔がわからなくなっている。

SCANDALE
ジェイ・ローチ監督作品
1時間49分
フランスで公開中。
日本では2月21日公開。

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だんだん怖くなる『優しい歌』

若い夫婦、ミリアムとポール。2人目の子供が生まれてから産休を取っていたミリアムは社会復帰したくなる。
育児と家事に疲れた主婦になりたくない。
「まだ子供が小さいのに」「ボクの稼ぎでやっていけるのに」と夫は渋々だったが、愛する妻の希望だ。
Nounou(乳母)を探すことにする。
何人目かに面接にやってきた中年のルイーズ(カリン・ヴィヤール)は、経験があり、子供の対応は自分たちより慣れている。信頼できそうだ。

果たして仕事の一日目、ミリアムがうちに帰ると、子供たちは大人しく遊び、うちの中はきれいに片付いていた。
申し分のない乳母をみつけた、と満足の2人。

ルイーズは次第に領域を広げていく:子供たちのしつけをし、ピクニックに連れて行き、長女のお誕生日会を企画し、夕食の支度もする。

『ヌ-完璧なベビーシッター』映画

ミリアムは母親の役割をひとつひとつ取り上げられ、「私は産んだだけ?」と当惑する。
それでも仕事は面白く、専業主婦に戻る気はさらさらないのだ。

産みの母(レイラ・バクティ右) VS 乳母(カリン・ヴィヤール)

『ヌ-完璧なベビーシッター』映画

一方ルイーズはボロいアパートに一人暮らし。
愛する配偶者、やりがいのある仕事、可愛い子供・・・ミリアム&ポールの持っているものをひとつも持っていない。
孤独を埋めるのは彼らの子供たちだけ。日増しに大きくなっていく執着と嫉妬。
ルイーズが決して“申し分のない乳母”ではないことにミリアム&ポールも気づきだした。でもそれは遅すぎた。

『Canson douce』。優しい歌。邦題『ヌヌ 完璧なベビーシッター』。
2016年にゴンクール賞を取ったレイラ・スリマニの本の映画化だ。

『ヌヌ-完璧なベビーシッター』映画

プレスと観客の批評はあまり良くないんだけど、私にはけっこうよくできた作品だった。期待しなかったせいもある。
「スバらしい」「傑作」と言われて観るとがっかりすることがあるものね。

原作は「遅すぎた。赤ん坊は既に死んでいた。姉ももう長くはなかった。2人を殺してから、乳母は自分の喉にナイフを突き立てた。でも死ねなかった。彼女は死を与えることしか知らなかったのだ。」(拙訳)から始まり、ネタバレも何もないけど、映画は嬰児殺しを最後に持ってきている。

殺人に至るルイーズの心理変遷が原作より描かれている気がした。カリン・ヴィヤールがやっぱり上手い。
「女優生活30年で初めて、この役がどうしてもやりたいと思った。映画化の権利を買ってくれと頼んだ」というだけあって役に投資している。彼女はいつも上手いけど。
階級の差という壁、憎しみと表裏一体の過度な愛情・・・深いテーマの作品。お奨めです。

CHANSON DOUCE
リュシー・ボルルトー監督作品
主演:カリン・ヴィヤール、レイラ・バクティ、アントワーヌ・レナルツ
1時間40分
フランスで公開中


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パリ郊外の“ああ無情”

2018年7月。フランスはサッカーワールドカップの優勝に沸き返っている。
パリ郊外モンフェルメイユに住むアフリカ系の子供たちも、トリコロールの旗を持ってシャンゼリゼ通りのパレードに繰り出した。
肌の色は違ってもみんなフランス人なのだ。

ステファン(左)はシェルブールから、このモンフェルメイユの警察に配属される。
2人の警官、クリスとグワダとチームを組み、町をパトロールする一日目。

映画『レ・ミゼラブル』

住民の殆どが移民であるのに驚き、権限を振りかざして彼らを制圧しようとするクリスのやり方に疑問を持つ。
これじゃ警察官というよりヤクザだ。

間もなく、町で興行するジプシーのサーカス団から「ライオンの赤ちゃんが盗まれた」と通報がある。「24時間以内に返さないと、町の黒人集団は痛い目に遭うぞ」
なるほど痛い目に遭わせそうな強面のジプシーたち。

映画『レ・ミゼラブル』

ステファンら3人は、インスタグラムでライオン赤ちゃんの写真を見つけ「少年イサが怪しい」。

映画『レ・ミゼラブル』

遊んでいたイサを捕まえようとするが、凶悪犯を捕まえるようなヴァイオレントな追跡になる。
イサの仲間の子供たちに取り巻かれ、パニックになったグワダは、スタンガンを取り出す・・・(これ以上は書かないほうがよさそう)

マリ人、ラッジ・リの初長編映画『レ・ミゼラブル』。
今年のカンヌ映画祭で審査員賞を取った。

映画『レ・ミゼラブル』
photos:allociné

最初は警官の行き過ぎを描いた作品に見える。黄色いベストの暴動の制圧に、警官が必要以上に自衛&防犯武器を使うのが問題になっているし。
しかし作品は、移民の子供たちが束になったときの、制圧できない反抗パワーもたっぷり見せる。
それは大の大人の警察官たちが震えあがるアグレッシブさ。映画の冒頭で、フランス優勝を無邪気に喜ぶ同じ子供たちと、見事なコントラストだ。

移民を受け入れるのはいいけど、ちゃんと受け入れられるかが問題なのだ。すぐに学校制度から落ちこぼれ、一日中町を徘徊して、盗みや万引き、暴力を覚えていく子供たち。
俳優は警官だけ。住民、子供たち、ジプシーまでみんな本物。だからこのリアルさ。

最後にヴィクトール・ユーゴーの『ああ無情』から抜粋される。
『世には悪い草も悪い人間もいるものではない。
ただ育てるものが悪いばかりだ』

内容だけでなく撮り方も上手く、初の長編映画とは思えない完成度。是非、日本でもかかって欲しい。

Les Misérables
ラッジ・リ監督作品
主演:ダミアン・ボナール、アレクシ・マネンティ、ジェブリル=ディディエ・ゾンガ
1時間42分
フランスで公開中


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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

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