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Category : 映画

夫の浮気、さらに深刻編

フランソワとノエミは、ジュラで家業の製材所を仕切っている夫婦。フランソワは森の木々の年齢や健康状態を自分の子供のように知り尽くしている。
子供・・・夫婦はずっと子供に恵まれず、何度か試みた体外受精も上手く行かない。
ノエミ(メラニー・ドゥテイ)は養子を取ることを決めるが、フランソワ(ジャリル・レスペール)はもうひとつ踏み切れないでいる。

映画『l'enfant reve』

ある日、地元に越してきた夫婦が、テラスを作る木材を選びに来る。彼らには小さい女の子が2人。「子供がいる母親を見ると殴りたくなるのよ」とノエミ。その母親、パトリシア(ルイーズ・ブルゴアン)とフランソワは強く惹かれ合い、森の中で逢引を重ねるようになる。

enfant reve2

間もなくパトリシアが妊娠を告げる。「あなたの子供よ」
あれほど望んでできなかった子供だ。「堕ろさないでくれ」
「夫と別れるから、あなたもノエミに言って」とパトリシア。

フランソワは引き裂かれる。妻であり、仕事の相棒であり、不妊と戦ってきたノエミにそんな残酷なことはできない。
一方で、材木に囲まれた自分の家を牢獄のように、森を見渡すノエミの家は未来へ開けているように感じるのだ。
「明日はきっと話す」と繰り返すうちに時間切れ。
お腹の膨らみを隠せなくなったパトリシアは“夫の子供”として妊娠を告げる。

次にフランソワがパトリシアに会うのは産院だ。“自分の子供”を抱いたときの、今までにない喜びと愛情にフランソワは驚くのだ。

『L'Enfant rêvé /夢に見た子供』

映画『l'enfant reve』
photos:allociné

不可能な二者択一を迫られたフランソワの苦悩は、サスペンスへ転じていく。

「ふたりの女を持つ者は魂を失い、ふたつの家を持つ者は理性を失う」
エリック・ロメールが映画『満月の夜』のテーマにした格言だ。
『二兎追う者一兎を得ず』というのもあったわね。でもこれは女に限らない。
ふたりの女、ふたつの家を持った男の話が、ハッピーエンドで終わる訳がない。

この映画で特に印象に残ったのは“木”だ。森の光景だけでなく、切り倒された木が板になっていく過程が珍しく、美しい。
製材所を舞台にしたフランス映画は片手で数えられるそうだ。

L’Enfant rêvé
ラファエル・ジャクロ監督作品
主演:ジャリル・レスペール、ルイーズ・ブルゴアン、メラニー・ドゥテイ
1時間47分
フランスで公開中


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夫の浮気、深刻編

ニュースの90%はコロナ関係。特に今夜はエマニュエル・マクロンが“新たな制限”を発表するので、政治家や医療専門家が一日中予想したり、批判したり、他国の政策と比べたりしている。
有力説は『夜間外出禁止令』。いや、再び一日中外出禁止だ、という人もいて、果たしてどうなることか。

現実を離れて映画の話をしましょう。
舞台はウィーンのハイソなフランス駐在員とその妻たちの世界。エーヴの夫のアンリは有名なオーケストラ指揮者、彼女は仏メディアセンターの責任者+小学生の息子がひとり。
他の駐在員夫婦たちの子供も同じインターナショナルスクールに通い、ことあるごとに夕食に呼び合い(ああ、コロナ以前の世界!)優雅な外国生活を送っている。

駐在員妻のヘアスタイルが全く同じ、というのが芸が細かい。

映画『Les Apparences』

夫の肩書、エステや美容院の回数、カシミアのコートにエルメスのスカーフ・・・外見が大切な世界だ。

だからタイトルは『Les Apparences/外見』
エーヴ(カリン・ヴィアール)とアンリ(バンジャマン・ビオレ)

映画『Les Apparences』

ある日、エーヴは夫の浮気を知って動揺する。相手は息子の学校の先生だ(よくあるパターン)。
彼女がまず考えたのは外見をつくろうこと、つまり何事もなかったように振る舞う。
そして復讐だ。相手の女が夫に送ったメールを、宛名は隠して親たちのグループに送りつけ(IPアドレスで誰が送ったかバレるじゃない)、夫がやるならアタシだって、とバーで若者を引っかける。

映画『Les Apparences』
photos:allociné

・・・と、ここまではそう珍しくもないけど、夫の浮気相手も、エーヴが誘惑した青年も“脛に傷持つ身”だったので、話はサスペンスになっていく。

傑作ではないけど観て後悔しない。二面性ある女を演じたら抜群のカリン・ヴィアール、茫洋としていてセクシーなバンジャマン・ビオレがよく、ブルジョアジーな書き割り世界を風刺しているのが小気味いい。
映画館は気の毒なほどガラガラなので安心して行っている。

Les Apparences
マルク・フィトゥシィ監督作品
主演:カリン・ヴィアール、バンジャマン・ビオレ
1時間50分
フランスで公開中


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“恋の主役”になれない2人

マキシムは従弟フランソワの田舎の家に遊びに行く。
ところがフランソワは急な仕事でパリに足止めになり、迎えたのは妊娠3か月の妻ダフネだ。フランソワを待ちつつ2人は付近の村や古城を散策する。そして打ち明け話になる。

マキシム(ニール・シュネデール)とダフネ(カメリア・ジョルダナ、エキゾチックな美しさ)

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作家を夢見る翻訳家のマキシムは、美しく利発なヴィクトワールと付き合っていた。一緒に目覚めたある朝、
「あたし、結婚してるの」と彼女。
「!?」
「欲望&快楽と結婚は別物なのよ。夫は日本に転勤中で、わたしももうすぐ行くことになってるの」
こうして2人の関係は終わりを告げた。
「その代わりに」とヴィクトワール(左)は妹サンドラを紹介する。

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間もなく奔放なサンドラに惹かれるマキシム。
でもその気持ちを打ち明ける前に、彼女はマキシムの親友と一緒になってしまう。

一方、ダフネはドキュメンタリー映画監督のモンタージュ助手。20歳以上年上の監督が前から好きなのに打ち明けられずにいる。ところが彼女が紹介した女友達と、彼は忽ち恋に落ちるのだ。傷心の晩、フランソワとばったり出会い、一夜をともにする。

コミカルなダメ男役が多いヴァンサン・マッケーンのシリアス役、すごくいい。

choses quon dit3
photos:allociné

フランソワは綺麗な妻がいるのにダフネに一目ぼれ、
「また会いたい」
「だめ、あなた結婚してるから」
「じゃなぜ寝たの?」
「結婚してるから。一夜のアヴァンチュールで終わると思った」
「・・・・」
じゃ、なぜ今フランソワと一緒に暮らし子供まで作ることになったのか?・・・
そしてフランソワにも驚くべき過去の一幕があった。

日本ではあまり知られていないエマニュエル・ムーレ/Emmanuel Mouretの『Les choses qu’on dit, les choses qu’on fait』
“言うこと。すること”と訳したらあまりに味気ないので、『言葉にすること。行動にうつすこと』とか?

傷心のマキシムと妊娠中人妻ダフネ。恋の主役になれない2人を中心に、男女の出会いと別れとすれ違いが描かれる。リアルであり、大人の御伽噺みたいなところもあり。シークェンスの短い撮り方はウッディ・アレンを思わせる。でもより繊細。
背景に流れるショパン、サティ、モーツアルト・・・も映像にしっくり合う。2時間を長いと感じないお奨め映画。
磁石のように惹かれ合う2人、でも落ち着く先はその相手とは限らないのだ。

Les choses qu’on dit, les choses qu’on fait
エマニュエル・ムーレ監督作品
主演:カメリア・ジョルダナ、ニール・シュネデール、ヴァンサン・マッケーン他
2時間6分 
フランスで上映中


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もっともっと見たかった樹木希林さん

「この映画、すごく退屈か、すごくいいか、どっちだろうね」
メトロのポスターを見た友達。
「日日是好日」。
フランス語タイトルは『Dans un jardin qu’on dirait eternel/まるで永遠のような庭で』

日日是好日ポスター

結果は素晴らしいの一言。
日本では2018年10月公開なのに、字幕の仏語訳(難しそうだ)+コロナで遅れ、8月末に公開になった。

将来何をしたいか見えない典子(左)、20歳。従姉の美智子と、“なんとなく”武田先生の茶道教室に通い始めた。

日日是好日2

それから20年以上のお茶との付き合いを描いたお話。
殆どのシーンはお茶室の中で、カメラは、袱紗をたたむ手、柄杓を持つ角度、茶筅を置く場所、掛け軸、お茶菓子、見守る武田先生の顔、緊張する生徒さんの表情・・・を行ったり来たりする。
つまり何事も起こらない。
主人公典子の人生(家族、恋、仕事・・・)も最小限にしか語られない。
だけど、その一挙一動、表情が多くを語り、一瞬も退屈しなかった。

そして樹木希林さん、こんなに綺麗だったの?! 
これまで演技派、独特のユーモア、存在感・・・で大好きな女優さんだけど、”美しい”という形容詞が浮かんだのは初めて(樹木さん、ごめんなさい)。
着物の着こなし、お茶をたてる手元、厳しくて柔和な表情。

日日是好日
photo:allocine

ピチピチした輝きはなくても、手にはシワやシミがあっても、積み重ねなければ出てこない美しさ。
美しさは、造形的なものでなく、生き方とか挙動の総合的なものだ、という誰かのセリフを思い出す。
ああ、樹木希林さんはもっともっと観たかった。

そして四季の庭の表情、お茶菓子、掛け軸・・・の伝統的様式美。
というと、観光協会の日本アピール映画みたいだけど、表面的な美しさだけではない。
すぐに買える、短時間でマスター、何でも時間をかけずに、という時代に、何年も何十年もかけて覚え、磨き、熟させていくアート。
忘れていたものの価値を思い出させてくれる作品だ。

アクション映画が好きな夫に「退屈しなかった?」と聞いたら、
「まさか。全然。素晴らしい。マニフィック」
この映画は上映館が少ないけど、評判はすごくいい。絶対のお奨め。公開になって2週間以上経つので、お早めに。

Dans un jardin qu’on dirait eternel
主演:樹木希林、黒木華、多部未華子
1時間40分
フランスで公開中


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涼しい映画館で“あの夏の熱い恋”

バカンス客で賑わうノルマンディの海岸町。2年前からこの町に住むアレクシは海辺の喧騒を逃れ、ヨットで沖に出た。
が、急に天候が変わり、小さいヨットは転覆してしまう。
ひっくり返った船にしがみついていると、ヨットが近づいてきた。
「心配するな、僕が岸まで引っ張ってあげる」

ヨットの青年はダヴィッド(右)。彼は遠慮するアレクシを自分の家まで連れて行き、お風呂に入れ、服を貸してくれる。
その晩は、前からの友達のように映画に誘うのだ。

フランソワ・オゾン『Eté 85/85年の夏』

積極的なアプローチに驚きながら、2歳上でいろいろ経験のありそうなダヴィッドに、16歳のアレクシは惹かれる。
その日から2人は離れなくなり、ダヴィッドの部屋で「これまでの人生で最高の夜」を過ごすまで時間はかからなかった。
アレクシはダヴィッドの母親にも気に入られ(「今まで友達がいなかったのよ。感謝するわ」)彼女の経営するマリンショップでバイトを始める。
ダヴィッドとの蜜月が6週間続いた頃、可愛いイギリス娘、ケイトが現れる・・・

フランソワ・オゾン『Eté 85/85年の夏』

フランソワ・オゾンの最新作『Eté 85/85年の夏』

フランソワ・オゾン『Eté 85/85年の夏』
photos:allociné

教会のペドフィリーを訴えた前作『Grace à Dieu/神のお陰』とはガラリと変わる(ガラリと変えるのはオゾンの特技)。

サスペンス要素もあるけど、焦点は初めての恋。
初めて覚える激しい情熱は、所有欲、嫉妬もパッケージになっている。そして、これまで知らなかった自分を発見する。
ごく自然に『君の名前でぼくを呼んで』を思い出した。

原作はエイダン・チェンバース『おれの墓で踊れ』。でも1967年生まれのオゾンが85年に主人公の年頃だったので、自伝的要素もあるのでは。
音楽も懐かしく(ロイド・コール 『Forest Fire』、ロッド・スチュアート 『Sailing』)、そういえば私も、年上の男性に恋して、相手の感情の温度差に苦しみ、ご飯が喉を通らなくなった夏があったっけ。やっぱり6週間くらいしか続かなかった。

映画館には5人だけ、観客には安心な環境、しかも涼しいのに。経営難で閉まる映画館も増えている。
暑すぎるときは映画に行きましょう!

Eté 85
フランソワ・オゾン監督作品
主演:フェリックス・ルフェーヴル、バンジャマン・ヴォアザン、ヴァレリア・ブルニ=テデシ、メルヴィル・プポー
1時間40分
フランスで上映中


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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

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