長谷川たかこのパリのふつうの生活
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パリのふつうの日常
カンヌのパルム・ドール、21年ぶりにフランス映画!
DATE : 2008-05-26-Mon Comment 1
cantet

ローラン・コンテの『Entre les murs』が61回目のカンヌ映画祭のパルム・ドール。87年、モーリス・ピアラの『Sous le soleil de Satan』が取ってからなんと21年ぶり。開催国の名誉挽回 !
『愛の賛歌』のマリオン・コティヤールがアカデミー主演女優賞を取るし、『Bienvenue chez les ch’tis』が仏映画史上最高のヒットになるし、2008年はフランス映画の当たり年だ。

さて受賞作『Entre les murs』は、パリ20区の中学校に赴任した若い教師と、反抗的な4年生(13歳〜14歳)の生徒たちとの“戦い”の物語。審査委員全員一致で決まったそうで、審査委員長、ショーン・ペンは「アメージング!」と繰り返し、目が潤んでいたという噂も。

ドキュメンタリーすれすれのこの作品は、教師役だけが俳優で、生徒たちはみんなシロウト、初めて映画出演を体験した。
パルム・ドールを授与するために現れたのは、ロバート・デニーロ。さすがに会場がどよめいた。映画初出演の子供たちにとってデニーロからパルム・ドールを渡される感激はいかに!

“Entre les murs”は、“壁の間”“閉じ込められて”という意味だけど、イギリスのプレスは“the class”と訳していた。フランスでは10月に公開になる。

61回カンヌ映画祭特別賞は『Un conte de Noel/クリスマス物語』のカトリーヌ・ドヌーヴ、『Exchange』監督のクリント・イーストウッド、映画界の長老(?)2人が受賞。
カンヌ映画祭公式サイトはこちらです。
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yakuza

「通訳をやっている友人が、私に会いたいといっている日本人がいる、というので承諾した。その男をひと目見たとき、私は彼が何者なのかわかった。彼も、私がわかったのがわかった。彼は率直に自分の正体(ヤクザの組長)を明らかにした。彼は滞在の最後の日に、組の内部を映画に撮らないか、と提案してきた」
ジャン・ピエール・リムーザンのドキュメンタリー映画『Young Yokuza』がARTEで放映され、映画館でも封切りになった。「よく撮らせた」「ヤラセじゃないのか?」というのが日本人の率直な感想だけど、きっかけは上の通り。

組長の提案に、リムーザンは、ヤクザを撮ろうとしたドキュメンタリー作家2人の1人は殺され、もう1人は斬りつけられたことを思い出し、背筋が寒くなった。
結局、非合法なことをしている場面は一切撮らない、その代わり、リムーザンの撮ったものを検閲しない、という了解で撮影は開始された。

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“仕事にもつかずブラブラしていて悪いことしかしない”息子を持て余した母親が、熊谷組に息子・ナオキ(20歳)を託することからドキュメンタリーは始まる。挨拶、お茶の入れ方、掃除、買出しなどヤクザの日常を覚えていくナオキの姿が描かれる。親分亡き後を継いだ若い組長(写真)は、目つきは独特の冷酷さがあるものの、指を詰めたりしないし物分りがよく、私の抱くヤクザ組長像とすごく違う。

リムーザンによるとこの組長は、この映画が公開されることで低迷しているヤクザ界の活性化を図ろうとしたらしい。つまり「こんなとこなら俺も入ってみるか」と志願者が増えるようなヤクザ興し映画。そんなプロモーションを思いつく組長だけに、正当派ヤクザとは違う異端児なのでは?なかなか絵になっているので、実は俳優になりたかったとか?
何度か日本のラッパーの歌が入るが、日本語とラップ音楽がちゃんと一体になっていて予想外に良かった。
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シュティの国にようこそ
DATE : 2008-03-21-Fri Comment 0
bienvenue

郵便局に勤めるフィリップは、欝の傾向がある妻のために、コート・ダジュールへの転勤を願い出る。みんなが行きたがる、輝く太陽とコバルトブルーの海の南仏、希望しただけでは行けそうもない、と画策を練るが、それが裏目に出て、北フランスの田舎町に左遷される。

北フランス!一年中灰色の空、寒い気候、粗暴な住民、訳のわからない方言・・・という既成概念を持つ彼、欝病の妻などとても連れていけない、と単身で北の町に出かけていく。
フィリップが“訳のわからない方言を話す粗暴な住民の陰気な町”に慣れ、はまっていく様を超ユーモラスに描いた作品。

“シュティ”は俗語で北に住んでいる人のこと。ダニー・ブーンが自分の故郷への愛情を込めて作ったこの映画、北フランスで先行上映されたときは大ウケで、「地元の人がわかるギャグなのね」なんて思っていたパリッ子も、封切りと同時に大絶賛。全国で1260万の入りと予想外のヒットになっている。

観客動員数でゆるぎない1位を保っているのは『タイタニック』の2000万、フランス映画では1966年のルイ・ド・フィネスとブールヴィルの『大進撃』1700万人。『Bienvenue chez les Ch’tis』が後者を追い越して、フランス映画第1位になるだろうという噂だ。

こういう映画がヒットするということは、物価が高いとか仕事がつまらない、なんて日常を忘れて、笑いたいってことでしょうね。
フィリップを演じるカッド・メラッドが持ち味を全開してすごくいい。彼は、カッド&オリヴィエというギャグのコンビでスタートしたが、映画でのほうが「マジメ可笑しい」そのキャラが生きるようだ。

公式サイト
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クラピッシュの『PARIS パリ』
DATE : 2008-03-17-Mon Comment 0
paris


心臓病で、移植をしなければ後数ヶ月の命、と宣告されたピエール(ロマン・デュリス)。ダンサーの仕事も辞め、長い一日を、アパルトマンのバルコニーから、パリの街で起こることを眺めて暮らす。
余命わずかと言われると、パリの表情も違って見える。そこで生きて、泣いたり笑ったりしている人たちも・・・弟を心配して子供連れで彼のうちに引っ越してきた姉エリーズ(ジュリエット・ビノッシュ)、向かいのアパルトマンに住む美しい女学生(メラニー・ローラン)、彼女に真剣に恋をしている大学教授ローラン(ファブリス・ルキーニ)、その弟で建築家のフィリップは兄から「お前は限りなく普通だ」と言われて深刻に悩む。エリーズに気がある市場の八百屋(アルベール・デュポンテル)、口うるさい近所のパン屋の女主人(カリン・ヴィアール)・・・など、ピエールの周囲で出会い、すれ違う人々が、パリの色々な地区を背景に描かれる。

すっぴんのビノッシュがすごくいい。夫と別れて3人の子供を育て、新しい出会いに控えめに開いている。いい年をして女学生に恋するルキーニもいい。匿名でSMSを送ったりする:『je te kiffe』!学生がメールやSMSで使う俗語で、je t’aimeの意味。カリン・ヴィアールのパン屋の主人(写真)は「こういうパン屋のマダム、いるいる!」と大笑い。

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「ロンドン、サンペテルスブルグ、バルセロナ・・・とこれまで外国を舞台に映画を取ってきたので、自分の街に戻ってきたくなった」とクラピッシュ。「パリはスノッブでブルジョアで気取った街というイメージがある。そしてパリジャンは文句ばっかり言っている、絶対満足しない。でもこの態度の中には美しく前向きの要素もあると思う。」この映画のサブタイトルに「永遠の街の、束の間のポートレイト」とつけたかったそうだ。パリが好きな人には必見の作品。

難といえば、20分ほど長すぎる感じ。パリコレのマヌカンのエピソードは余分だったと思う。

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今週のお薦め映画「NOTRE UNIVERS IMPITOYABLE」
DATE : 2008-02-18-Mon Comment 1
univers impitoyable

あの朝、私がスカートにするかパンツにするか迷わなくて、大切な面接に遅刻しなかったら、今頃どうなっていただろう?「あの時、ああしていたら・・・」は誰もが振り返って思うことだけど、人生は先が読めなくて、巻き戻しもできない。

「NOTRE UNIVERS IMPITOYABLE」(私たちの非情な世界)は、同じ弁護士事務所で働くカップルのお話。2人とも若く美しく、そして深く愛し合っている。ある日、ボスの共同経営者の弁護士が心臓麻痺で急死し、2人のうち1人がそのポストの候補者となる。彼女が選ばれるか、それとも彼なのか・・・?
物語は「あの時、彼が選ばれていたら・・・」「彼女だったら・・・」の2通りを、交互に見せてくれる。どちらにせよ、ライバル意識や嫉妬は隠せず、同じ地位で働いていたときとは大きく違ってくるけど、果たしてどっちの運命がいいのだろう。そして、実は2通りだけではなく、もうひとつの可能性もあるのだ。

タイトルやポスターを見て、「同じ職場で働き、一緒に暮らすことの難しさを描いた映画」と想像していたけど(その難しさは10年間経験した!)、予期せぬ展開で面白かった。まだまだ男性社会である社会背景、女性であることのハンディも織り込まれている。

主人公のアリス・は「LA DOUBLURE」(替え玉)ではトップモデル役を演じた美貌とスタイルだけど、それに気が着いていないような“庶民っぽさ”が魅力。セクシーな初老のボスを演じるティエリー・レルミットもはまり役。軽くて笑えるのに、ちゃんと余韻を残す、お奨め映画です。2月13日に封切りになったばかり。
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