Category : 映画

マニュキア指一本40ユーロ!

「私たちが服を着るのは脱ぐためだ。どんなドレスも、男性が脱がせたいと思わなければ意味がない」という名言はフランソワーズ・サガン。レッドカーペットを上るスターたちの、ますます露出度の高いドレスを見ていると、これじゃ脱がせる必要もないかと。

でも彼女たちのドレスージュエリーは貸出だけど-一度しか着ない訳でしょ。いくらしたのか知らないけど、もったいない・・・でも夢を売るスターたちはイメージが大切だ。ちょっとでもバストの垂れ下がりや整形の跡がわかったら、ソーシャルネットワークでこき下ろされることになる。だからヘアメイクにかけるお金も桁が違う。

カンヌなどの映画祭の場合、請求書はそのスターが出る映画を買った配給会社にいく(知らなかった)。
フランスの某配給会社は、2日間映画祭に顔を出す主演女優の“ヘア+メイク+スタイリスト+マニキュア”代として3万ユーロ(約380万円)請求された、という話を読んだ。マニュキア指一本40ユーロ!(指1本塗るのに2-3秒?3度塗りしたって10秒・・・)メイクは整形の回数が多くなるほど(隠すのに)時間がかかり、高くなる。

顔は変わらず、ポイントばっちり。誰がメイクしたの?マリオン・コティアール

カンヌ映画祭 ヘアメイク代
photo:aufeminin.com

これがアメリカのスターになるとまた桁が違う。お抱えのヘアデザイナー、メイク、ベビーシッターを連れてきて、自分のホテル(5つ星)に近い、つまり海岸沿いのホテル(3つ星)に泊まらせる。1週間の滞在で彼らは-ベビーシッター以外-9万ユーロ(約1134万円)近く稼ぐそうだ。ほんとかね・・・

ロレアル(カンヌの協賛社)のイメージスターで毎年来るエヴァ・ロンゴリア。彼女はメイクに最低2時間かかるそうだ。
でもなんか顔、変わってない?

カンヌ映画祭 ヘアメイク代
photo:GALA

アメリカの配給会社はお金がありそうだけど、こういうスターを何人か抱えていたら天文学的な額にならない?ま、払えるだけ稼いでいるならいいけど・・・
カンヌ映画祭は一度だけ行ったけど、別の惑星に着いた異星人の気分。1日目は昼も夜も招待され、2日目は夫も私も二日酔いであまり食べなかったのでお金がかからなかった。


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プレス評が良くて観客の評判が悪い時、どちらを信じるべきか?当然、後者だ。
アルノー・デプレシャンの最新作『les Fantômes d’Ismaël/イズマエルの幽霊たち』がその例。
それなのに、キャストがすごい(マチュー・アマルリック、マリオン・コティアール、シャルロット・ゲンズブール)、カンヌのオープニング作品・・・などのミーハーな好奇心に負け、観に行ってしまった。(第一、誘った人がみんな「アレ、つまんなそう」と乗ってこなかった。)
イズマエル(マチュー・アマルリック)は映画監督・脚本家。弟にインスピレーションを受けて、外交官イヴァン(ルイ・ガレル)の映画を撮っているところだ。徹夜、アルコール、タバコ、薬漬けの彼を支える彼女、シルヴィア(シャルロット・ゲンズブール)。
そこへ20年前に姿を消し、誰もが死んだと思っていた妻、カルロッタ(マリオン・コティヤール)が現れる。

「あなた、イズマエルのパートナー?」「・・・」「私は彼の妻よ」と、まるでお天気の話をするみたいに。

アルノー・デプレシャン『イズマエルの幽霊たち』

アルノー・デプレシャン『イズマエルの幽霊たち』

「自分が引き裂かれそうになったからいなくなったのよ」
「君は俺の人生を引き裂いた!」
「私にはあなたが必要なの」
「俺は必要じゃない!」
それでもシルヴィアは、イズマエルがカルロッタを忘れていなかったことを感じる。

・・・そこまではまぁいいんだけど、それに弟イヴァンの人生が平行して語られ、イズマエルが撮っている映画が挟み込まれ、過去・現在が何の断りもなく変わり訳が分からん。デプレシャンの混沌とした頭の中に投げ込まれたようで、一刻も早くここから抜け出したい(=早く映画館を出たい)と思うけど、左右に座っている人たちを踏み越えて出ていく勇気はなく、映画が終わるのを待つばかり。(第一、イズマエルもこの状況に正気を失い、撮影を中断して北フランス、ルーベの実家に逃げ込む。)

マチュー・アマルリックは正気と狂気の境目みたいな役が多いけど、ここではそのカリカチュア。そういえば朝市で隣にいたことがあったけど、服のまま寝たようなシワクチャのシャツとズボン、染ムラのある髪はボサボサで、映画で見るのと全く一緒だった。

どこか似ている(特にボサボサ頭)デプレシャンとアマルリック。トリュフォー&ジャン=ピエール・レオーみたいなデュオ。

アルノー・デプレシャン『イズマエルの幽霊たち』
photos:allociné

プレス評の中にも「躁鬱で、一貫性がなく繋ぎ合わせたような作品」(Nouvel obs)
「デプレシャンは、アヴァンチュール、愛、ノスタルジー、若いころの夢、過去の現在の対立・・・など、彼が執着するテーマを再び取り上げているが、要素がたくさんありすぎてついていけない」(Figaro scope)など全く同感の批評もある。
「マリオン・コティヤールでも救えなかった」とはイギリスのThe Guardian。

一方、絶賛しているプレスがあるんで平均点が上がっているんだけど、なぜ絶賛するんだろう?
自分(批評を書いた人)の頭の中も同じように混沌としていて感情移入できた?
サイコロジカルに入り組んだデプレッシャンの世界を評価しなかったらバカと思われるから?
映画が終わったとき、周囲のブツブツざわざわから、退屈したのは私だけじゃなかったのがわかった。
『キングス&クィーン』や『クリスマス・ストーリー』は良かったのに・・・

Les Fantômes d’Ismaël
アルノー・デプレッシャン監督作品
主演:マチュー・アマルリック、マリオン・コティヤール、シャルロット・ゲンズブール
1時間58分
フランスで公開中

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深刻なギャンブル好きで借金で首が回らなかった父親が亡くなった。息子の良多(阿部寛)は同じ“病”を受け継いでいる:15年前に1冊小説を出したが後が続かず、探偵事務所に勤め、部下にお金を借りては競輪場に走り、妻には離婚され、ひとり息子の養育費も払えない。その息子に、かって賭け事に溺れる父親に失望した子供の自分が重なるのだ。

息子の真吾役、吉澤太陽君が自然で上手い。

海よりもまだ深く

良多の拠り所は母親の淑子(樹木希林)、あの父にしてこの子あり、と思いながらダメ息子をすっぽり受け入れる。
海よりもまだ深く・・・

海よりもまだ深く

良太と元妻・響子と息子が母親のアパートに来たとき嵐になる。母親は「こんな嵐の中、帰っちゃダメよ」と繰り返し、3人は渋々泊まっていくことに。でもそこに母親の画策を感じないではいられない・・・

『海よりもまだ深く』、フランスのタイトルは『Après la tempête/嵐のあと』
是枝さんの名前はハイフンが入る。入れないとKoreeda(コリーダ)になっちゃうから。

海よりもまだ深く
photos:allociné

『誰も知らない』『歩いても歩いても』『海岸diary』も家族の問題を扱った作品だけど、この作品はより私小説っぽい。「自分の父親のことを描きたかった」と是枝さんがどこかで話していた。観て後悔はしなかったけど、前の作品のほうが好き。ちょっと私小説すぎる気がした。
「一部のフランス映画に似てきた」と息子。
そうかも。クリスマスに家族が集まる、親が死んで子供たちが実家にやってくる、という時にそれまで水面下にあった秘密や感情が噴出する・・・よくあるテーマだ。フランス人は登場人物の誰かに感情移入できるんで飽きないで観ているけど。
「フランスでこの作品(『海よりもまだ深く』)に感情移入できるのは日本オタクだけじゃない?それに良多のダメ男ぶりがちょっとカリカチュアすぎる」
でも批評はかなり良かった。前作より“弱い”という批評はあったけど。

私の周囲で観たフランス人は口を揃えて「おばあちゃんがスゴイ」と言っていた。能天気に息子や孫が来たのを喜んでカレーを解凍したりしているけど、実はすべてお見通し。『歩いても歩いても』でも河瀬直美監督の『あん』でも彼女の存在感が後々まで印象に残った。
最近、日本映画批評家大賞でダイアモンド大賞を取られたことを読んだ。「あと1年」なんて言わないで!彼女が出る映画、もっともっと観たい人がフランスにもたくさんいますから。

『Après la tempête』
是枝裕和監督作品
主演:阿部寛、樹木希林、真木よう子、小林聡美
1時間58分
フランスで上映中

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お子様メニューが好きな新大統領

大統領に当選の翌日、TF1で放映された『Les coulisses d'une victoire/勝利の楽屋裏』(教えてくださった読者の方に感謝!)。
この裏に本当の楽屋裏がありそうだけど、面白くて熱心に見てしまった。
印象に残った場面は:
オランド大統領が再立候補を断念発表。それを聞いて「裏切者がいるとすればヴァルス(首相)だ」(そうなんだよね、ゆくゆくこの人の性格が暴かれる)

フランソワ・バイルー(中道Modem党首)がマクロン支持を表明。

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「共和国大統領というのは奇妙なものでね・・・君はその年齢にはなっていないけど、まあそれはいい。私がやろうとしてできなかったことを君がしようと言うなら、力になりたい」
感動的なシーン。

農業市で、生産者や報道陣に取り囲まれたマクロンに誰か(ルペン派!)が生卵を投げつけた。そのヴィデオを何回も見て笑い転げる。

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「スーツはどうなったの?」とブリジット(女の心配することは同じ)。

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第一回の候補者討論を終えて、「ふーっ!チョコレートかなんかない?」というマクロンに「だめよ、そんなもの食べちゃ」とブリジット。彼はフィヨンの足腰の強さにびっくり「3時間以上立ちっぱなしで脚がガクガクしてきた。フィヨンは微動だにしないんだ」

第一次投票の日。故郷のトゥーケで投票し、パリの選挙本部に戻る途中、ドライブインで昼食。Franch(学生時代に行ったセルフサービスのレストラン)が好きというマクロンは目を輝かせ、「あ、コルドンブルー(鶏むね肉の間にハム&チーズを挟んだカツレツ)がある!僕、好きなんだ」

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「それはお子様メニューです」
「・・・・」

90分のドキュメンタリーは、アグレッシブではないけど権威のあるマクロン、選挙本部のスタッフたちの結束、献身、そしてエマニュエル&ブリジットの強い繋がりが窺える。
マクロンは1時間もブリジットの姿が見えないと落ち着かなくなるそうで、ミーティングや討論の後、必ず彼女の意見を聞く。
選挙本部のスタッフが声を揃えて「よかった」と言っても、ブリジットに、
「ほんと?」
「2人だけの時に言うわよ、シェリ」
「ウィかノンだけ言って!」
「2人だけの時しか言わないって知ってるでしょ」

考えてみれば16歳の高校生と40歳の高校教師(既婚、子供3人)が結婚するまでの14年間-いくらフランスでも-家族と世間を敵に回しての戦いだったに違いない。
1年前に「大統領?不可能だ」と言われた彼が可能にしたのも、百戦錬磨のカップルだったからこそ、かもしれない。
次なる戦いは始まったばかり・・・


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決選投票を待ちつつお奨めの2本

レイラは弁護士、サルマはレストランで生活費を稼ぐDJ。イスラエル人の2人はテルアヴィヴで一緒にアパートを借りている。
バー、アルコール、タバコ・・・彼女たちにとってそれらは“自由”の象徴だ。
サルマの両親は、娘を結婚させようと次々と男性を紹介する。実は女性が好きなのをサルマは明かせないでいる。

そこに3人目の同居人、ヌール。2人よりずっと堅く、ヴェールを被り、大学で情報処理を勉強する。婚約者が来ると、慌てて酒瓶や灰皿を隠す。その婚約者は、この同居が“ヌールに悪い影響を与える”と非難し、学業をやめて早く“奥さん”になってほしいと言う。
3人3様に自分の将来を、自由の形を思い描いていた女たちは、違った形でつまずく。因襲的な親に、自分に都合よく宗教を利用する男たち、その偽善に・・・NYで仕事をしたというレイラの彼でさえ、彼女が人前でタバコを吸うのを嫌がるのだ。

パレスチナ女性、Maysaloun Hamoud/マイサルーン・ハムードの処女作品 『Je danserai si je veux/踊りたいなら踊るわ』。

jedanserai.jpg

時代を変えよう、もっと自由にと戦う女たちは美しく、でも“踊りたいなら踊れる”まで道のりはまだ長いと感じさせる。

Ja danserai si je veux
マイサルーン・ハムード監督作品(仏・イスラエル・パレスチナ合作)
主演:ムーナ・ハワ、サナ・ジャムリー、シャデン・カンブーラ
1時間42分

こちらはスペイン映画:『la colère d’un homme patient/忍耐強い男の怒り』

colere dun homme patient affiche

誰も覚えていない8年前の宝石店強盗事件。捕まったのは運転手クーロだけだ。彼が刑を終えて出所してきた。妻のアナと息子と新しい人生をやり直そう・・・
彼の出所を待ち受けていた男がひとり、“復讐”を誓って、辛抱強く待っていたホセだ。

8年間の刑務所が“丸く”した元凶暴な男(右)と、復讐心に培われ凶暴になった男。

colere dun homme patient

どっちも憎むべきキャラだけど、どっちかの肩を持ちたくなる。スペインっぽいノワールさのスリラー。

La colère d'un homme patient
監督は俳優のラウール・アレヴァロ。
主演:アントニオ・デ・ラ・トーレ、ルイ・カレジョ、ルース・ディアス
1時間32分

どちらもパリで上映中。どちらもお奨め!

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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

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