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Category : 映画

4か月ぶり映画館

封切り前に映画館が閉鎖になり、ポスターだけ残った作品がいくつかあった。
公開されないのに、ポスターは見飽きられてしまった可哀そうな作品。

そのひとつ『Les Parfums』 。

映画 『les Parfums』

エマニュエル・ドゥヴォス主演だし、4か月ぶりに映画館に行かない?と夫を誘うと、「行く行く!」。

リヨン駅近くのUGCの、一番大きい330席の映写室に、観客はたった10人。従業員数のほうが多い。
「3席使って寝よう」というわけにはいかないけど、観客にとっては快適&安心。
でもこれじゃ映画館はやっていけない、と気の毒になる。
さて。
ギヨームは、日本で言うとハイヤーの運転手。離婚調停中で、ひとり娘の共同親権をゲットするためせっせと働いている。
ある日、迎えに行った女性アンヌは鼻をクンクンいわせ、
「あなた、タバコを吸うのね。わたしを迎えに来るときは、その前も、タバコを吸わないでちょうだい」
だけでなく、着いたホテルではシーツが気に入らないとシーツ取り換え(コロナ以前の話!)まで手伝わされる。
彼女は有名な調香師だった。

映画 『les Parfums』

数日つき合ったギヨームは、その横柄さに腹が立ち、
「僕はあんたの秘書じゃない。それにメルシーひとつ言えないのか」と捨て台詞を残し走り去る。

映画 『les Parfums』
photos:allociné

顧客を失った、と思っていたら、アンヌは再びギヨームを指定してきた。そして打ち明け話をする:
高級ブランドの香水を作っていたアンヌは、ある日突然、嗅覚を失う(コロナ以前)。
「鼻じゃなくて経験に頼りながら香水を作って、1本目、2本目まではなんとか切り抜けたけど、3本目は惨憺たる結果」
契約は破棄され、彼女は香水業界から干されてしまう。
以来、彼女に来る仕事は、地方の洞窟のコピーを作るんでその匂いを再現する、とか、高級バッグの、強すぎるなめし剤の匂いを中和させる、というものばかり。

ギヨームは、孤独で高飛車な調香師を理解し始め、スーパーでシャンプーを買う時、何種類も開けて(!)香りを嗅ぐようになる。

社会的クラスが違う人間が出会う、最近わりとあるテーマで、悪くない。
ラジオで「Feel good mouvieですね」。この表現好きじゃないけど、当たっている。

帰り道、「映画館も劇場も大変だ」と夫。もとの観客を取り戻すのにどのくらいかかるだろう?
お天気のいい日、セーヌ河岸はギョッとするくらいの人出なのに、日曜日の映画館がガラガラなんて。
戸外の方が安全だから?
ロックダウンした都市の再起動は時間がかかりそうだ。

Les Parfumes
グレゴリー・マーニュ監督作品
主演:エマニュエル・ドゥヴォス、グレゴリー・モンテル
1時間40分
フランスで公開中


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フランス映画の大物がまたひとり・・・

3年くらい前、郵便局で並んでいた時、隣のおじいさんに「こっちのカウンターでいいんですか?」と聞かれ、「ええ、一般用はこっちです」と答え、顔を見たらミッシェル・ピコリだった。
わたしはコーフンし、後ろにいた20代後半女性に「ミシェル・ピコリよ!」と囁いたら「それ、誰ですか?」と言われ、フランス映画の大物俳優を知らんのか!と内心思ったものだ。

ゴダールの『軽蔑』で、全裸でベッドに横たわり「わたしの脚が好き?」「わたしのオシリが好き?」と迫るブリジット・バルドーに「ウィ」「ウィ」と熱意なく答えていたポール。
クロード・ソーテの『すぎさしり日の・・・』では、まだ未練がある妻(レア・マッサリ)と、少し重くなってきた愛人(ロミー・シュナイダー)の間で揺れるピエール役。
そのほか『小間使いの日記』『ロシュフォールの恋人たち』『昼顔』『ブルジョワジーの秘かな愉しみ』など60年代からフランス映画に欠かせない名優。美男ではないけど圧倒的存在感があった。

そのミッシェル・ピコリが5月12日、94歳で亡くなっていた、と家族が1週間後に発表した。

ミッシェル・ピコリ

高齢だけに準備万端できていたみたいで、すぐ追悼番組や作品集がテレビにかかり、昨日は『Une Etrange Affaire/奇妙な出来事』を観た。ピエール・グラニエ=デュフェールの1981年の作品。日本未公開。

妻ニナ(ナタリー・バイ)と暮らすルイ(ジェラール・ランヴァン、左)は、パリのデパートのマーケティング担当。ある日、デパートが買収され、収益向上のためやり手のベルトラン(ミッシェル・ピコリ)が送り込まれてきた。

ミッシェル・ピコリ

家族もなく、頭の中は仕事だけのベルトランは、ルイに目をかけ広報責任者に抜擢する。その代わり休暇は取り消し、残業も多くなり、ルイの私生活にまで侵入してくる。

初期の松田聖子みたいなヘアスタイルのナタリー・バイ

ミッシェル・ピコリ
photos:allociné

妻のニナは「わたしたちの生活が滅茶苦茶」と警告を発するが、「ベルトランがぼくを信頼している証拠だよ」「ぼくの将来がかかっている」とルイは取り合わない。
ニナはついに出て行ってしまい、ルイはベルトランのうちに泊まり込みで24時間つき合うようになる。そして年末、ミッションを終えたベルトランが外国に発ってしまうと、心身ともに路頭に迷うのだ・・・
というお話。
傑作というわけではなく、タイトルのように”奇妙な”作品。そして感想が夫と全然違う。
私生活が仕事に侵食され-日本妻は我慢するだろうけどフランス妻は愛想をつかせて出て行く-仕事一色になり、カリスマ上司がいなくなると路頭に迷う、というのは日本でありそう、とわたしは感じた。
夫は、ルイは仕事というより、ベルトランの人物に魅せられた。性的なものはなくても一種の同性愛だ、と。
育った環境や経験で観点が違うのは時に腹が立つけど、時には「そういう見方もあるのね」と面白い。


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51日目:既視感の日々

夜、窓のストールを降ろそうとして唖然。空がまだ昼間のように明るいではないか。

うちは地上階なので、空がこのように切り取られる。

IMG_20200506_205807.jpg

時計を見ると夜の9時、信じられなくて携帯を見てもやっぱり9時だ。

ブティックのウィンドウは冬のコレクションのままで止まっている。外を歩く人も-お洒落する気分じゃないので-ジョギングにダウンのようなかっこうが多い。マフラーを顔の下半分まで巻いてマスク代わりにしている人もいる。
隔離になってから、わたしの中で時間が止まっていたらしい。
でも季節は確実に変わり、どんどん日が長くなっていたのだ。

ビル・マーレイが主演した『Un jour sans fin/終わりのない日』という映画を思い出す。
原題は『Groundhog day』、日本では『恋はデジャ・ブ』というタイトル。“デジャ・ヴュ”ではなくても、せめて“デジャ・ビュ”くらいにしてほしかった。“ブ”なんて・・・
傲慢で不愛想な天気予報オジサンのフィル(ビル・マーレイ)は、2月2日のグラウンドホッグ(マーモットの一種)デーというお祭りを中継するため、ペンシルバニアの田舎町に出かけていく。取材は4年目で、毎年同じような退屈さ。フィルはまるでやる気がなく、いつにも増して不愛想だ。

1993年の映画。ビル・マーレイも若かった。

un jour sans fin
photo:allociné

取材をすませ、取材班と帰ろうとすると濃い霧が出てUターンするはめになり、もう一晩、同じ宿に泊まることになる。
翌朝フィルが目を覚ますと、また2月2日でお祭りが始まり、同じ取材、同じ会話が繰り返される。
そして翌日もまた同じ日が・・・霧で街に帰れないまま、フィルは時間のループの中に閉じ込められてしまう。
取材で知り合ったプロデューサー、リタ(アンディ・マクダウェル)を口説くシーンもあったけど“繰り返される日”の印象が強くて、よく覚えていない。

わたしたちの生活にも既視感がある。今日は昨日に似ていて、昨日はおとといとあまり変わりない。
わたしは週何度かスカイプで日本語を教えているのでまだいいけど、夫は曜日の感覚をなくしている。

隔離解除になったら髪を切りに行こう。カラーもしたい(フランス女の多くは髪を染めているので3色-元の色&染めた色&白髪-になっている人が多い)。
夏服を出して(来週は寒くなるそうだけど)季節に追いつかなくちゃ!と淡いブルーの空を見ながら思ったのでした。


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12個の地雷

28日、45回セザール賞、最優秀作品は『レ・ミゼラブル』が取った。

セザール賞セレモニー2020
photo:next.liberation

移民受け入れの歴史を持つフランスで、彼らの同化の難しさを描いた作品、同じ28日、日本で封切りになった。
コロナ感染に怯えるこの時期に日本公開は残念だ。
移民2世の若い監督の、しかも処女作が受賞したのは素晴らしいけど、セザール賞セレモニーは、“地雷原の上を歩く”4時間。
地雷は12個あり、その名前はロマン・ポランスキーだ。

1977年、アメリカで13歳の少女にドラッグを飲ませ暴行した廉で有罪判決になり、42日間の拘留後、国外脱出。パリに移住した。その後もあちこちで「未成年のとき性的暴行を受けた」という訴えが起こりポランスキーは「記憶にない」とか「でっちあげ」と言っていたが、#Me too運動で再燃。彼が野放しになっていることへの非難が高まっている。

そのポランスキーの最新作『J’accuse /An officer and a spy』がなんと12部門でノミネート、そのせいでセレモニーに欠席を決めた俳優、スタッフも多かった。
「12回、危険な瞬間を孕んだ」セレモニーの司会はフロランス・フォレスティエ。
彼女は今一番人気のユーモアタレント。「ポランスキー(右)、賞を取らないでおくれ・・・」

セザール賞セレモニー2020
photo:purepeaple

外には会場に侵入しようとするポランスキー告発の団体が警察に阻止されている。
最優秀衣装、オリジナル音楽、背景、録音、助演男優、主演男優・・・と、受賞者の名前を書いた紙が開けられるとき会場は緊張し、ポランスキーじゃないとほっと緩む、という繰り返し。

最優秀主演女優はアナイス・ドゥムースティエ(好きな女優さん!)
今年は脚スケスケのロングドレスが目立った。これはDior。グラマーな人は着れないわね・・・

セザール賞セレモニー2020
photo:purepeaple

3時間経過したとき『J’accuse /An officer and a spy』は最優秀衣装、最優秀脚色をとっていた。
ポランスキーはもちろん、出演者、スタッフは反応を恐れて全員欠席。セザールの彫像は速やかに“関係者”の手に渡ってステージから消える。
ここまではよかったけど、上から2番目の最優秀監督賞は「ロマン・ポランスキー!」と名前が呼ばれたとたん、アデル・エネルが「恥だ!」と言い捨てて席を立つ。

セザール賞セレモニー2020
photo:JDD

彼女は12歳の時、他の監督に性的暴行を受けたことを明かし、性的暴行告発の旗頭になっている。何人かの俳優やスタッフがそれに続いて席を立った。
肝心の最優秀作品賞は『レ・ミゼラブル』がとり、会場はホッとして沸いたけど、なぜ監督賞を性犯罪者に?という疑問と怒りは最後までくすぶっていた。
『レ・ミゼラブル』は、最優秀新人男優、モンタージュと3つの賞を獲得。
この作品を観て欲しいから、というわけではないけど、コロナが一日も早く収束することを願いつつ・・・


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カンヌ映画祭パルム・ドール、ゴールデン・グローブ、そして今度はアカデミー賞4部門!
ボン・ジュノ監督は『おそらく、海外の観客はこの作品を100%理解することはできないだろう。この作品はあまりにも韓国的で、韓国の観客が見てようやく理解できるディティールが散りばめられている。』
と語ったというけど、テーマは国境を越え、世界中が拍手した。スバらしい!

わたしは飛行機の中で2度目観て、一度目では気づかなかった細部が見えて、再度感嘆した。
パリはまだ上映館あり。日本もこの受賞で上映館が増えるそうだ。まだの方はもちろん、もう観た方も是非!

湿っぽい地下室に親子4人が折り重なって暮らすキテク一家。
部屋の壁には内職で作るピザの箱が積み上げられ、窓の前は通行人の立ちションコーナーになっている。
運転手の父親は失業中、母も目下仕事がなく、息子はもう学校が続けられない。一家心中してもおかしくない状況なのに、キテク一家は仲が良く、機嫌もいい。

『パラサイト』ボン・ジュノ監督

ある日、息子ギウに美味しい話が舞い込む:富豪の娘の家庭教師をやらないか。
パーク一家のモダン&ミニマルな邸宅に着くと家政婦が迎え、シックでいかにも良家風の母親が現れる。
疑うことを知らない母親はギウをすぐ信頼し、末息子が「幽霊を見てから情緒不安定になった」と嘆く。
「そういえばアメリカでアートテラピーを学んだ知人がいます」とギウ。
”知人”は妹。キテク一家は金儲けのチャンスを嗅ぎ取るのに長けているのだ。

『パラサイト』ボン・ジュノ監督

カンヌ映画祭でパルムドールをとったポン・ジュノの『Parasite/パラサイト』

『パラサイト』ボン・ジュノ監督
photos:allocinés

ユーモラスに貧しい“一家”を描く出だしは、去年のパルムドール『万引き家族』を思わせる。
でも『パラサイト』は後半、富裕層VS貧困層の社会派スリラーになっていく(だからこれ以上言えない)。

人間や社会が、意識の奥や地下に押し込めている“見せたくない部分”を、シンボルの形(例えば匂い)で暴き、ユーモア、社会風刺、サスペンス・・・の多岐にわたるジャンルをまとめてるボン・ジュノの手腕にただ唖然。

ところで、Academy Awordsをなぜフランスはオスカー賞と呼ぶの?と疑問だった、どころか最初は別の賞かと思っていた。
考えるに、「アカデミー」は普通名詞で、芸術家、文学者、科学者などいろんなアカデミーがあって紛らわしいからではない?


Parasite/パラサイト 半地下の家族
ボン・ジュノ監督作品
主演: ソン・ガンボ、イ・ソンジュン、チョ・ヨジョン、チェ・ウシク
2時間12分
パリでまだ上映館あり

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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

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