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Category : 子供・猫・家族

“その時”考えること

「このまま死ぬんじゃないかとか、死ぬのが怖いとは全然思わなかった」と夫。
「?」
「頭の中は真っ白で、ただ呼吸することだけを考えた」
「動物的本能?」
「そう、サバイバル本能」
闘病のときアドレナリンが分泌されるのも、動物の闘争&防御の状態と一緒だ。

生き延びた夫は退院できた。
先生に「今日出ますか?明日にしますか?」と聞かれたそうだ。
それはあなたが決めることでしょう、と言いそうになるのを飲み込み、
「明日までいたら何が変わりますか?」
「何も変わりません。薬を病院で飲むかうちで飲むかの違いだけです」
と言うので、そんなら一日でも早く帰りたい。
「ティラノザウルスを食べさせられるのはもうごめんだ」

さようなら、お世話になりました!

pitie entree

私たちが一番心配したのは“肺の腫瘍”だった。
気管支炎だけであれだけ水が溜まるか?と集中治療室のお医者さんもその可能性をほのめかせていた。
あらゆる角度からのレントゲンでその疑いも晴れ、どっと安心した。

2週間で(入院前も3-4日寝込んでいたから)脚の筋肉は落ち、足元がフラフラしていた。
「君には随分心配と世話をかけたね」と珍しく殊勝なことを言い、そのお礼として何をくれたかというと気管支炎!
お医者に行ったら、「副鼻腔炎(sinusite)も併発してますね」
悪寒、咳、鼻、頭痛で私が寝込む番だ。

電話してきた会計士に言いつけたら、
「男はみんなそうだ」(この人、けっこうマッチョだ)
次に電話してきた義弟に言いつけたら、
「彼は自分が持っているすべてのものを君にあげたんだ」
「・・・・」
さすがモト弁護士。今はシャンブル・ドット経営だけど、続けていたらよかったのに・・・

P.S.お見舞いのコメントをありがとうございます。励まされました!


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呼吸は回復、部屋は格下げ

宇宙ステーションに似たEole(風の神アイオロス)は1年前にできたばかりで、主に蘇生医療の病棟。
医療最先端!という顔をしている。

réanimaion pitie

この近未来引き出しのような装置は点滴用。一段ずつ点滴の薬がプログラムされている。

réanimation pitie2
images: youtubu

病室には入れ代わり立ち代わり誰か入ってきて、水を飲むため夫が一瞬マスクを外しただけでベルが鳴り響く。
どこもピカピカで新しく、ブルーの“白衣”を来たお医者さんたちも溌溂としている。
面会は家族だけ。でも24時間可能だ。

無事に“蘇った”夫は、集中治療室(soins intensifs)から継続治療(soins continus)に移される。
部屋は小さくなり、マスクはふつうっぽくなって、スターウォーズ・ファンの彼はちょっとがっかりしたみたい(!)。
でも「みんな親切、食事も病院にしては“食べられる”」
大晦日の晩は「フォアグラ、サーモンの包み焼、イル・フロッタントが出た」。
2日間、殆ど何も食べなかったけど、美味しいものがあると食べるのね。

利尿剤のせいで口が乾くので、うちから持っていくのはナシや蜜柑、ブドウ。
手足がむくんだとき利尿剤を飲むけど、肺の水もオシッコで出すとは知らなかった。

金曜日、心臓循環器病棟に引っ越す、と電話があった。
行ってみると古びた建物で、部屋もボロい。つまり病状が回復するにつれて、部屋は格下げになっていく。
テレビは有料。蘇生病棟ではテレビが無料だったけど観る元気がなかった。
ナイフやフォークはプラスティックで、食事は不味く、
「昨日はティラノザウルスが出た」
「?!」
パサパサの鶏肉で手をつけなかった。プレートを下げに来た看護婦さんに、
「これを食べられた人はいるのか?と聞いたら、3人ほど食べた、という返事だった」
ユーモアが戻ってきて何よりです。

ふつう病棟に来ると、医療器具も古く、予算の足りなさは明らかだ。
フィリップ首相は2020年から3年間、15憶ユーロの追加予算と低サラリーの看護婦、看護助手にボーナスを約束したけど、病院側は満足しなかった。15憶ユーロ÷3=5憶ユーロをいくつの公共病院で分けるんだろうか?焼け石に水らしい。

「Eoleは良かった・・・」と言うので、ちょっと、それはないでしょ、病状が良くなったのを喜ばなくちゃ!


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ダースベイダーのマスク

病院から帰って、昼から何も食べていなかった私は急にお腹が空いて、冷凍食品を解凍して食べた。
入眠剤を飲んで寝たのは午前3時すぎ。8時には病院からの電話でたたき起こされる。
「ご主人が、携帯電話が見つからないって」と看護婦さん。
「ズボンのポケットの中じゃないですか?」
「・・・あ、ありました!ありがとう、これで救われました!」
これを聞いて娘は大笑い。
「携帯のありかがわからなくて、あなたに電話してくるわけ!」

夕方、娘と2人でPitié Salpêtrière/ピティエ・サルペトゥリエール病院に行き、その広大さにびっくりした。
昨日は救急車で着き、タクシーで帰ったのでわからなかったけど、敷地内に医学部があり、あらゆる科(歯科まで)の建物、教会、託児所、公園があり、道路が通っている病院都市。
確か、97年にダイアナ妃が運ばれたのがこの病院。

ピティエ・サルペトゥリエール病院

夫が移されたEoleという建物まで歩いて10分はかかる。
病室にたどり着いてまたびっくり。宇宙ステーションのように最新機器が並び、夫はダースベイダーみたいなマスク(ただし透明)をつけて寝ていた。
なんでも私が帰ってしばらくしてから超呼吸不全になり、急遽この集中治療室に運ばれた。
肺に水が溜まりすぎたせい、と聞いて鳥肌が立った。
私は高校生のとき肋膜で、肺に少し水が溜まった。呼吸が苦しくなったときの恐怖は今でもトラウマになっている。
夫はどんなにパニックになっただろう・・・そんなことは露知らず、私はご飯を食べていたのだ。
それに、もし救急車を呼ばなかったら、うちでその状態になっていた、ということだ。ゾッとする。

間もなく部屋に入ってきた女医さんが、
「(ダースベイダーの)マスクの圧力と、利尿剤の点滴で“水が掃け”、もう心配ありませんよ。明日は集中治療室から出れます」
朝は携帯を探す余裕があったから、落ち着いてきたんだろう。

この超呼吸不全をdétresse respiratoireと呼ぶ。détresseは、苦境、遭難という意味。

入院の前日、夫を診てくれた先生に、救急車を1時間以上待ったことを話し、
「もしウチでなってたら、どうなったかと思うと・・・」と言うと、
「大丈夫。détresse respiratoireと言えば飛んできます」
なるほど。“開けゴマ”の言葉。覚えておかなくちゃ。


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喧騒エマージェンシー

URGENCES/救急部に入ると、まず看護婦さんが症状や病歴を質問、つまり救急隊がしたのと同じことなんだけど、それでボックスと呼ばれる病室が割り当てられた。
ベッドが足りないため、酸素マスクや点滴の必要ない急患は廊下の担架に寝かされている。
ボックス13という番号に引っかかるけど、そんなこと言っている場合じゃない。

次に若いインターンが入ってきて、看護婦さんより詳しい病歴を-ステントを入れたのはいつか?どこの病院か?不整脈はいつから起こったか?その他の大きな病気は?-を聞き、データにしていく。
夫は酸素マスクでよくしゃべれないので、私が答えたんだけど、羅列するとこの人はけっこう病気をしているんだ。
五月革命世代の彼は、タバコ吸い放題(一日2箱吸っていた)、お酒飲み放題(すごく強い)、エイズの心配もなかった。今の若い子に比べてやりたい放題で育ち、そのツケが回ってきている。
インターン医師が質問している間に看護婦さんは採血をしたり、点滴の準備に忙しい。

50代半ばの救急部のシェフ医師が現れたのは、到着してから1時間半以上経った11時過ぎ。
インターン医師のデータに目を通し「ふむふむ」。
心不全+気管支炎で、心臓ポンプがよく機能せず、肺に水が溜まったので呼吸困難になった、ということらしい。

シェフ医師が出て行ってから、かなり待った。
廊下では「助けてくれぇ!お願いだ!」と叫び続ける患者がいて、「うるせぇ!黙れ!」と怒鳴り返す患者がいて、看護婦さんたちはそんなこと日常茶飯事と走り回っている。

pitie salpetriere urgence
photo:challenges.fr

人出不足、ベッド不足、予算不足。公立病院救急部の訴えはその通りだ。
夫はウトウトし始めた。
「この点滴が終わったら、部屋に行けますよ」と看護婦さんが入ってきたのは午前1時過ぎ。もう帰って大丈夫、と言われ帰ることにした。
心臓、呼吸器は命に関わるからパニックになった。水が溜まり続けたらどうなっていたか、と思うと、病院に連れてきてほんとによかった。これだけお医者さん、看護婦さんに囲まれていれば安心だ。

・・・・そんなわけで元日も病院で過ごし、新年のご挨拶が遅くなってしまいました。
健康が一番大事、と思い知った年明け。みなさまがご健康で、幸せな出来事や素敵な出会いの多い年になりますようにお祈りしています。
今年もよろしくお願いいたします。


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ジェットコースター救急車

心不全の持病がある夫は息切れしやすい。その上気管支炎になったのか、座っても横になっても呼吸困難になっていた。
年末でかかりつけのお医者さんはみんな休暇。しかも土曜日。
Doctolibでやっと開いている開業医を見つけ、連れていくと“すぐに肺のレントゲンを撮れ”。
「遠くてもすぐに予約が取れるとこに行きなさい」
という言葉で、グズグズしていられない状態であるのがわかる。

でも「すぐに」と言ったって、12月30日に病院以外でレントゲンを撮れるとこ・・・またDoctolibで探して月曜の朝の11時に予約できるところを見つける。ひと安心。
Doctolibはお医者さんの予約アプリ。専門医、地区を選ぶと予約可能な時間帯が出て便利だ。

ところが呼吸困難はひどくなるばかり。枕を4つ重ねても息苦しい。
「レントゲンを撮ってから・・・」という夫を押し切って、日曜の夜、SAMU(15番)に電話した。
症状や病歴を詳しく聞かれる。大したことがないのに救急に電話する人が多いのと、人手不足で用心深くなっている。
やっと「救急車を送ります。40分くらいかかります」
私は急いで健康保険証、ミュチュエル(相互保険)カードや洗面ポーチをリュックに入れた。

救急車がやってきたのは1時間半後。若い隊員2人、ひとりは医学知識があり、もうひとりが運転手だ。
症状や病歴を聞き、メモし、どこかに電話し、血圧や脈を測りまた電話し・・・動作がのんびりしていて、「URGENCE=急患」って知ってる?と言いたくなる。一方で、そんなに急を要する状態じゃないのか、と安心したり。
40分ほど経って行先が決まる。
「Saint-Antoine病院じゃないんですか?」
そこが一番近くて、メトロがストでも歩いて行ける。
「ぼくもそう思ったけど、心臓疾患の設備が最先端のSalpêtrière Pitiéに運べという指示です」
なるほど。
酸素マスクで呼吸が少しラクになった夫は救急車に乗せられた。
「マダムは前にお乗りなさい」と言われて、助手席に乗る。

ambulanciers.jpg

サイレンを鳴らして走り始めた救急車は、まるでジェットコースター。
渋滞している道を飛ばし「前の車にぶつかる!」間際で、車たちが申し合わせたように左右に割れて道を作る。
赤信号は当然無視。急患を乗せた救急車が事故ったら話にならないから、運転手の腕は信頼できるんだろうけど、すごいスリル。あっと言う間に病院に着いた。
うちに着いてからのゆっくりさと対照的な速さであった。

夫は別の担架に乗せられ、看護婦さんが迎えに来るのを待つ。
救急車のお兄さんたちに「これからまだお仕事?」と聞くと「これが今日最初で、朝8時まで」とニッコリ。
レントゲンや血液検査がすぐできる病院の手に委ね、緊張が少し緩んだ。


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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

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