Category : 子供・猫・家族

親子離れ日記

娘はスーツケースを引きずって帰ってくる。中身は洗濯物と空のタッパーと絵の道具。
日曜に発つはずが、
「月曜の朝の美術史はもうやったことばかり、先生もつまんないからさぼる」
「・・・」
「午後は“瞑想の会”があるんだって」
「何それ?」
「さっきメールでお知らせが来たの。1時間、瞑想すると自分の姿が見えてくるんだって」
「あなた、学校じゃなくて宗教団体に入ったの!?」
「そうだね、行かない。じゃ月曜の夜のTGVね」
彼女は携帯であっという間にTGVを変更する。TGV MAX(一か月79ユーロでTGV乗り放題のパス、ただし16~27歳)は変更・キャンセルただなのだ。

月曜の夕方、さらに重いスーツケースを引きずって発っていく。洗濯済みの服とぎっしり詰まったタッパー。今回はポタージュ、ラタトゥイユ、ハンバーグ、鶏のバスク風、トンカツ、チリコンカン・・・をアングレームまで運んで行った。
食べることが大好きな子、彼女が発ったあとの冷蔵庫の空っぽさにしばし呆然となる。
その後数日は、
「〇×は冷凍できる?」
「××はいつまでに持つ?」
というSMSを頻繁に送ってくる。
かと思うと、切羽詰まった声で
「水道料金を払ってないんで水を止めるって通知が来た、どーしよう!?」
「それ脅しよ。料金払わなくても水を止めるのは禁じられてるの」

電気・ガス料金は「2週間以内に払わないと止める」という警告が来て、それでも払わないと止める(または供給量を減らす)ことができる。ただし11月1日~3月31日のTrêve hivernale(冬季休止期間)は電気・ガスを止めてはいけない(凍死の危険!)。
同じ理由からこの期間は家賃を払っていない住人を追い出すことも禁じられている。寒い国の知恵。
生きていくのに必要不可欠な水はというと、一年中止めてはいけない。

11月に入ったから、何も払わなくても追い出されたり止められたりしないから気にしない!とは言えないので、
「きっと前の住人から変更になってないのよ、電話してみなさいよ」
果たして変更されてなかったそうだ。

一人暮らしを始めたばかりの娘は、「生活するのってこんなにお金がかかるって知らなかった」(払っているのはこっちだけど)。
電気ガス・水はもちろん、インターネットも電話も“当然ある”ものだったのだ。私だってそうだった・・・


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ロベールの初仕事

アルバイトの“営業”に来て以来、果たしてロベールは毎日電話してくる。誰も仕事を頼んでくれないと嘆く。
「今日は(今日も!)頼むことないわ、ごめんね」
どうして私が謝るの?と思いつつ、何か手伝ってもらうことなかったかなぁと考える。ミニチュアカーを買いたい、と言っていた。貢献したいもんだ。

ついにある晩、ロベールに電話。
「モシモシ、アルバイトのこと、お母さんは知ってるの?」
「うん」
「宿題は?」
「やった」
「じゃ、20分後にモノプリの前に来てくれる?買い物、持ってほしいの」
「うーん・・・今夜は難しい」
時間は19時半だった。
「わかった、じゃまた頼むね」
「それはあまりに残念だ。ちょっと待って!」
ママン、お願いねぇお願い!と懇願する声が聞こえ、
「大丈夫、服着てからすぐ行く!」
やだ、もうパジャマだったの・・・

先に着いた私がヴィネガーやオイルや8個パックのヨーグルトや重いものを買っていると、時間通りにロベールがやってきた。
「はい、じゃ今からね」と携帯のストップウォッチを押す。来るまでの時間は入れてないのね、なかなか良心的。
買い物が済むと、彼はセルフのレジに行き、慣れた手つきで次々バーコードを読ませる。私は払うだけ。
ニコラでワインを2本買い、ロベールは両手に荷物を持ち、私のケータイで遊んでいる。うちに着くと、
「20分しか経ってない」
「20分でも5ユーロよ、タクシーだって最低料金があるでしょ」と言うと、顔がパッと明るくなった。
「ところであなたが欲しいミニチュアカーっていくら?」
「275ユーロ」
「 !!??」
私はせいぜい50ユーロくらいと思っていた。
「つまり30分のサービスを55回やらなくちゃいけないってこと」
ちゃんと計算してるんだ。
ロベールは5ユーロ札を受け取り、
「じゃーね、いつでもお申しつけください!」
と叫ぶと駆け出して行った。
あと270ユーロ・・・ミニチュアカーはまだ先の先だ。


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ロベールの“アルバイト”

ある晩、うちに向かっているとロベールが追いついてきた。
「学校うまく行ってる?」
彼はうちの子供たちが行っていた中学に9月に入学した。
「ううん・・・ルイが20ユーロくれるっていうのにママンがダメって言うんだ」
「ルイってクラスの友達?なぜ20ユーロもくれるの?」
「彼が言った“悪い言葉”をほかの人に言わないように」
つまりアンタが脅迫したってこと?と出かかったセリフを呑み込んで、
「そりゃマズイよ。お母さんの言う通り、受け取っちゃダメ」

翌日、ロベールがまた窓から手を振っている。
「なーに?」
「ボク、何でもサービスのアルバイト始めたんだ」
「何でもって?」
「買い物や片付け、犬や猫の世話、何でも手伝う。30分5ユーロ、1時間10ユーロ」
かってロベールが木の枝を振り回して追いかけたうちの猫たちは、彼の顔を見たら逃げ出すだろう。
この子に何が頼める?と思いながら、
「わかった。覚えとく」
とドアを閉めようとすると、ロベールは「待って!携帯の番号交換しよう」
そこへ彼の携帯が鳴りだした。
「ロベール !!どこで何してんの ?!宿題は?」
私まで聞こえる母親の怒鳴り声。ロベールは電話を耳から20㎝くらい離して聞いている。
「さっさと帰ってきなさい、わかった ??」
「OK」
「え?返事が聞こえない!」

ヤレヤレという顔で電話を切ったロベールに、
「お母さん、お小遣いくれるんでしょ」
「ノン」
本当かどうかはわからないけど、あの母親は“必要なものは買ってあげるからお小遣いはいらない”と言いそうな顔をしている。
子供にとってお小遣いは、大きくなったことの象徴、自由の象徴じゃないの。
「お母さんに交渉しなさいよ」
ロベールは曖昧に頷いてから、「ほかの住人にも営業してくるから。じゃーね」と去っていった。

とにかく。脅迫や、何もしないでお金をせびるのをやめて、お手伝いをしてお金をもらおうという発想は画期的だ。

翌日、ロベールから着信。頼むこともないから放っておくと、またやってきて、
「あの、料金に変更があった。例えば君が20ユーロの買い物を頼んだら、僕は10ユーロ取る」
「ちょっとそれ高すぎ。よく考えてよ。20ユーロの買い物が30ユーロになるなら誰だって自分でするでしょ」
ロベールは考え込む顔。
「30分ですむ買い物に5ユーロなら頼む人あるんじゃない」
そこへ犬を連れた住人が階段を降りてくると、
「あ、僕のクライアントだ!用事がないか聞いてくる」
と駆け出して行った。
この調子だと、毎日聞きに来るだろうなぁ。何が頼めるかマジに考えないと・・・


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子離れ日記 2

アングレームのアパルトマンに家財道具を運んだあと、娘は学校が始まるまでパリに戻ってきた。大学や高等教育の学校は10月初めに始まるところが多い(なんと3か月のバカンス!)
うちに戻るなり、ヴィールス性の咽頭炎になり、喉を診たお医者さんが「おお!」とのけぞるくらい扁桃腺が腫れて、その晩には私がうつされた。しかも金曜の夜で、“週末病気になる”という最も避けたい事態に。

お粥作ってぇと言うので、「寒気がする・・・頭が痛い」と言いながら、卵とじのお粥を作る。
「アングレームで病気になったら誰も作ってくれないんだ」
そんなこと今頃気がついたの?
人に何か頼むときはグッタリしているくせに、最後だから、と友達が来ると急に元気になり、その後またグッタリするというパターンが1週間。
10月最初の日曜日の早朝、まだ咳をしながら発っていった。

娘に買ったTGV maxという定期券は、一カ月79ユーロでTGV乗り放題。パリ-アングレーム往復は120ユーロ以上かかるので超お得だけど、選択肢が限られている。早朝とか深夜のあまり乗客がいなそうな時間帯しか選べない。

サンドイッチを作って見送った後、バスルームに行って私は愕然とした。
いつもクレンジングやクリームやメイクのパレットがゴチャゴチャと並んでいる洗面台にぽっかり空白ができている。そういえば、
「ママン、コーダリーのクリーム持って行っていい ?」「・・・」
「By Terryの口紅は?」ダメに決まってる。
「Avèneのファンデは絶対必要なの」「・・・」
のような会話があり、結局、一緒に使っていたコスメの大半を彼女が持って行ったということ。
でも私が愕然としたのは、その空白が象徴的だったからだ:服、メイク、猫のYoutube、日本の昔話をテーマにした卒業制作、ボーイフレンドとの諍いの相談・・・彼女とは日常のたくさんのことを共有していた、ということを実感したからだ。

その晩、電話で、重いスーツケースを引きずって階段を7つも上がって死にそうになったこと(アングレームは実に坂道や階段が多い)、疲れ果ててお昼寝して目が覚めたときブルーになったことを話し、
「Tと電話して泣いちゃった」
Tは1年続いているボーイフレンドだ。
「どっちが?」
「あたしに決まってるじゃない!知らない町で友達もいないし」
娘は小さい時から泣かない子で有名だった。
私は、バスルームで立ちすくんだことなどおくびにも出さず、
「すぐに友達できるよ」と慰めると、
「うん、でも木曜の夜に帰る」
「 !!!」
「授業が始まるのは月曜なのよ」
木曜日って4日後じゃない・・・


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親離れ日記

「アングレームのアパルトマンに家具はあるの?」
「冷蔵庫とミニ冷凍庫。家具はなし」
ということは、すべて揃えなくちゃいけないってこと。一目惚れしたカシミアニットを買えなかった所以だ。
9月はあちこち買い物に駆けずり回った。

シャンパーニュの田舎にハイパーLeclercがあって、家電は夫がここで買った。

leclerc bar sur aube

電子レンジ:79.9ユーロ
オーヴン(オーヴントースターじゃなくて鶏の丸焼きもできるヤツ):89.9ユーロ。ひとり暮らしでなぜ鶏の丸焼き?と言われそうだが、娘はお菓子作りが好きで食べきれないほど大きなケーキを焼く。
テフロンのフライパン2個セット:15.3ユーロ
掛け布団:39.9ユーロ・・・
「えーっ!じゃこれからventeprivéeで買わないでLeclercで買おう!」と興奮する私。
今までフライパンや掛布団やシーツ、タオルはストックを安く売るネットショップventeprivéeで買っていた。
「でも往復の電車賃を足さないと」と夫。
確かに。

細々した台所用品やバス用品はパリのHEMAで。オランダのチェーンで生活雑貨、服、食品、文房具・・・と何でもあり。無印やHabitatほど洗練されていないけどLeclercよりダサくなく安い。

パリのHEMA

食料品はお菓子が多い。

パリのHEMA

娘を”引きはがす”のに苦労したメイク用品売り場

パリのHEMA

ベッド、タンス、食器は田舎の物置にあったのを持っていくことに。
その結果、トラックがパリで段ボールを積み込み田舎の家に行き(250㎞)、翌日ベッドや家具、家電を積み込んでアングレームに向かう(540km)という二段階の引っ越しになる。
トラックは夫と手伝ってくれる友人が乗り、娘は友達2人と車で行き、“使い物にならない”私は除外される。
朝寝坊し、久しぶりのひとりの週末!と出かけると娘から電話。アングレームに向かっているところだ。
「大変なことになった」
「??」
「ガソリンを入れたらカードの限度額に達してて10ユーロ足りないんで動けない」
レストランだったら皿洗いっていうテがあるけど。
「3人いて10ユーロないっていうの?現金渡したじゃない!」
「あれパリに置いてきちゃった。Tのカードも限度額で、Eはカード持ってないし現金もないって」
ウソだろ・・・
「私に言われたって・・・パパに来てもらってよ、近くを走ってるでしょ?」
「ううん、かなり距離を離された」
荷物を満載したトラックのほうがゆっくり走るのにどういうこと??
「満タンにしたガソリンを10ユーロ分戻せないの?」
「ママン、それ冗談でしょ?」
いえ、かなり本気だったんだけど、運転しない人の発想か。

結局、娘のカードの限度額を上げる操作をやってみよう、とレアールにいた私は回れ右。メトロに乗ったらまた電話。
「大丈夫だった!結局足りないのは3ユーロで車の中をくまなく探したらあった。ハハハ」
「・・・・」
大体、若者が3人いて合計3ユーロの所持金というのがシンジラレナイ。これでひとり暮らし始めて、どーなるんでしょう?

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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

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