Category : パリ雑記

メトロ“リラの門”の幽霊駅

この週末は、日頃入れない歴史的建物が一般公開されるヨーロッパ文化遺産の日。
すごく待つという噂で(エリゼ宮は7時半から並んだ人が12時半に入れた)、いつもはパスしていた。けど今年はメトロporte de Lilas/リラの門の“幽霊駅”が初めて公開になる、と聞いて、それは見てみたい。

11番と3b番のポルト・デ・リラ駅の傍らに、1939年から使われていない駅があって、幽霊駅とかシネマ駅と呼ばれている。
『アメリ』(2001)でマチュー・カソヴィッツが証明写真を破片を拾い集め、『レディ・エージェント 第三帝国を滅ぼした女たち』(2008)でソフィー・マルソーがSSに銃をつきつけるのがこの駅。

メトロ ポルト・デ・リラの幽霊駅
photo:culturebox

メトロ ポルト・デ・リラの幽霊駅
photo:visites guidees

メトロはパリのイメージのひとつで、年間約80本の映画、テレビドラマ、ヴィデオクリップの舞台になるそうだ。
舞台として人気の線は、6番(地上に出た時エッフェル塔が見える)、10番(距離が長い)、3b番(乗客が少ない) 。
「でも大勢のエキストラを使い、スタッフも大人数のときは午前1時から5時、最終と始発の間。またはポルト・デ・リラの“シネマ駅”で撮影してもらいます」とRATPの撮影担当者。シネマ駅の利点は、映画の時代背景やストーリーに合わせてカスタマイズできること。一日の使用量は15.000~18.000ユーロ(195万~234万円)と安くはないけど、運転手、電気技師、守衛など約15人のRATP職員もつけてくれる。職員たちは喜ぶとか(そりぁそうだ)。

週末は朝市と近くの映画館にしか行かない私が重い腰を上げ、友人とポルト・デ・リラ駅に向かう。
着いてみると、矢印も貼り紙もなくて、駅の窓口には誰もいない。中学生くらいの子供連れのオジサンもキョロキョロしていたので「もしかして・・・?」と聞いたら「そう、もしかして文化遺産の?」
そこへ清掃係が通りかかったので尋ねると、「よくわかんねぇけどエレベーターがあるから下に降りてみたら?」
下に降りると、目の前に幽霊駅!と期待したが、さっき出た改札の前に出た。そこへ従業員専用のドアが開き、中から人がゾロゾロ出てきた。RATPの制服を着た先頭の女性に、
「幽霊駅のヴィジットで来たんですけど」と言うと、
「あれは予約制で9月の初めに予約しなくちゃ見れないんです」
「そんなことどこにも書いてなかった」
「いえ、あちこちに書いてありましたよ。またやりますから来年ぜひ。オホホ」
来年だって・・・オホホだって・・・せっかく一念発起して来たのに。仕方なくまたメトロに乗って帰った。
慣れないことをするとこういうことになる。


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パンを買い損ねたわけ

マダム・ウードゥローは息子の小学校の担任の先生(こっちでは“先生”ではなく、マダム、ムッシューと呼ばせる)。
当時既に60歳くらい、小柄な女性で子供のようなきらきらした眼をしていた。
厳しくて宿題も多かったにも拘わらず子供たちには絶対の人気があり、“厳しすぎ”と文句を言う親も黙らざるをえなかった(しばしば子供の方が慧眼なのだ)。子供に教えるのが大好きで、定年を2度延長し、ついに小学校を去った後は、家庭教師をしている。

この界隈には教え子の親(例えばアタシ)がけっこういるので、道やスーパーで先生に呼び止められることがよくある。おしゃべりなんで、急いでいるときはパッと物陰に隠れたり、方向転換する親(例えばアタシ)も少なくない。
昨日パン屋の前でばったり会ったときは、久しぶりなんで隠れず(その暇もなく)
「アラ、お元気ですか?」
「それがアナタ、化学療法が終わって一安心よ」
「化学療法 ?!」
「それじゃ最初から話すと・・・」15分の立ち話になると見積もった。パンがなくなっちゃうかもしれないけど聞くに値しそうだ。
先生が乳房に赤い痣を見つけたのが夏前。痛みも痒みもないけど嫌な予感がして、皮膚科に行ったら、
「ブラジャーにかぶれたんでしょう」
まさか、と婦人科に行くが、ここでも「何でもない」と言われ、納得できずマンモグラフィーとエコグラフィーをしたけど異常は見つからない。
「でも疲れがひどいし絶対何かの病気と思ったの。自分の身体は自分が一番よく知ってるでしょ」
身体の声に従った彼女が正しかった。
3件目のクリニックで乳がんとわかり、乳房切除、化学療法。

「あなたに言いたいのは、納得いかなかったら複数のお医者に診てもらわなくちゃダメってこと」
ふむふむ、おっしゃる通り。
「それから年寄りのガンは進行しないっていうけどあれはウソ。私80歳になるのよ」
ピンク色の肌に茶目っ気のある眼が輝いている。彼女は小学校の担任当時から変わらない。
それにしても化学療法の直後でこの元気・・・シンジラレナイ。

彼女はその後、いつものように子供と猫の近況を尋ね、自分の娘と孫のこと、自分の猫(モト野良)が冷蔵庫を開けられること、海老300gを平らげてケロッとしていたことを話し、つまり話したいだけ話すと「じゃーね!」と軽い足取りで去っていった。
果たしてパンは全部売り切れてたけど、役に立つお話でした。

うちのモト野良猫は幸い冷蔵庫を開けない。ハトは捕まえたけど。

猫



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『日本人なぜ休み下手?』

という記事が毎日新聞(デジタル)に載っていた。
“プレミアムフライデーを利用する人が少なく「見直すべきだ」と言われている。政府は来年度から子供の夏休みを別の時期に移し「キッズウィーク」(なぜ全部英語なんだろう?)という大型連休を始めようとしているけど、既に「子供に合わせて休みは取れない」など批判が噴出・・・”
その原因のひとつとして「若いころから休まずに働くことが普通だった人が今管理職についている。上司が休まないから部下も休めない」と分析している。
つまりいくら政府がいくらお膳立てをしても、「3時になりました。帰ります」と言いづらい職場の空気、上司&同僚の目があるということ。
「フランスや北欧の人から見れば滑稽だろう」
滑稽とは思わないでも、理解に苦しむだろうね。
ヴァカンスがあるからこそ、フランス人は毎日仕事をし、
定年&年給があるからこそ、あと1年、もう1年と仕事を続ける、と言っても言い過ぎではない。

8月最後の週末、パリに戻る車の渋滞

ヴァカンス帰り 渋滞

記事中、東工大教授の上田紀行さんの意見に同感した。
「日本人の場合、休むことの意味そのものが確立していない。(・・・・)休暇自体が人生の楽しみだという発想が乏しい」

退職した友人夫婦はあちこち飛び回っていて、仕事をしていた頃より会えなくなった。久しぶりに会ったら前より生き生きしていた。
先日会った友人は、「あと何年で定年」と「もういくつ寝ると・・・」みたいに言っていた。
彼らは、若いころから趣味、余暇に“投資”しているから、仕事をやめても退屈していない。
遊んだり休むことの“豊かさ”を、私も住むようになって経験した。

一方、日本では「休む=怠ける=よくない」という公式が刷り込まれていて、このメンタリティを変えるのは恐ろしく時間がかかる。待っていられない。
上田氏の言われるように「有給消化しない会社に罰則」、だけでなく、消化しない社員は減給、みたいに形から入っていくしかないだろうか。誰かが大型休暇を取るのを待っていたら、いつまで経ってもこのままだ。
あと、高校から哲学をカリキュラムに入れる?
フランスの教育で一番羨ましいと思うのが哲学の必修だ。
「人間の幸せとは?」「なぜ生きているか?」とか考えさせられると「仕事だけが人生じゃない」「自分の人生、他人の目なんか気にしてられるか」と思えてこないだろうか。
ま、フランス人が好き勝手なことをして、同僚全員が残っていても心置きなく帰り、4週間休んでもひとかけらの罪悪感も持たないのは哲学のせいだけとは思えないけどね。
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8月15日:天国の門 VS 地獄の蓋

8月15日。Le quinze août/ル・キャンズ・ウットで思い浮かぶのは、バカンスのピーク、既に人口の減っていたパリが一番空っぽになる日(12-13日の週末は、パリを出る車の恐ろしい渋滞が続いた)、そして「ああ夏も終わりに近づいた」とため息をつく。
つまり、この日がなんで祝日なのか忘れている人(あたしだって)が多い。

聖母マリアの被昇天:マリアが肉体と霊魂を伴って天国に昇ったのを記念するカトリックの祝日なのだ。

聖母の被昇天
Philippe de Champaigne (1602-1674)

聖母マリアを祭るルルド、ラ・サレット、ロカマドゥールなどの聖地では盛大なお祝いが行われるそうだ。

15日のルルド。

聖母の被昇天
photo: Nord Littoral

日本では終戦記念日。でもなぜか休日ではない。そしてお盆。東京の人口が減って風通しが良くなる。
空港に行くタクシーが見つからずに焦ったとき、友人たちは口々に「お盆だから・・・」と言った。「迎え火(13日)から送り火(16日)までの4日間をお盆休みにするのが一般的」だそうで、さらに「山の日」ができたので11日から6連休も夢ではない。

祖先の霊が子孫に会いに帰ってくるという、怪談のインスピレーションになりそうなお盆。日本の夏らしい風情がある慣習だ。

お盆
『日本の礼儀と習慣のスケッチ』より幕末期の日本-wikipedia

子供の頃は、箱根の大文字の送り火(本家、京都の五山の送り火と違い花火大会だ)を観に行くくらいでよく知らなかったので、ウィキペディアを読んでいたら、「一日が「釜蓋朔日」で一般的にこの日からお盆」と書いてあった。
カマブタツイタチ?この日に地獄の蓋が開くんだって!先祖の霊たちが出てくるってこと?つまり、みんな地獄にいることになってるの?ウソ・・・
いえ、うちの先祖は極楽にいるはずです、というような文句は出なかったんだろうか。

日本でもフランスでも、8月15日は“夏の休暇”の同義語のようになっているけど、一方ではマリアを迎える天国の門が開き、他方では地獄の蓋が開く・・・なんという違い。


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寂しくなった朝市

エルザおばさんの八百屋は6月末に。チーズ屋のクリストフ、肉屋のブリューノは7月半ば・・・次々にバカンスで6週間の店じまい。朝市のあちこちにぽっかり穴が開いている。
長すぎ!と最初は思ったけど、彼らの労働時間を聞くと、それぐらい取らないと割りが合わなそうだ。

11区(バスティーユ)と13区(オーギュスト・ブランキ)の朝市に出しているエルザおばさんは「10時に起きる」
なーんだ、私と一緒、と言いそうになったら、夜の10時なのだ。トラックに野菜・果物を積み込んで、パリ近郊の町からまず13区に着き、店の準備。旦那さんを残し、エルザがバスティーユに着くのが午前4時頃。「たいてい私が一番乗りだね」
店員さん5名が到着し、野菜・果物を綺麗に並べ、値段をつける。最初のお客は7時すぎにやってくる。

これだけ準備するのに2時間はかかるそうだ。

パリの朝市

浮気せず、20年近く通っているこの八百屋で、私はVIP待遇(!)。コリアンダーやミントの香草はタダだし、いつも何かプレゼントしてくれる。最近ではイチゴを買ったことがなかった。

チーズ屋のクリストフは、午前2時起きで5時に到着。バスティーユの朝市は14時近くまでやっているから店をたたんで帰り、チーズたちを冷蔵庫にしまうと18時近く。なんと長い一日。

さて“行きつけ”を失った私は、デフォルトで残っている店に並ぶ。「どうせ数週間のお客」とぞんざいに扱われるか、「夏の間に新規客をゲット!」と愛想がいいか、態度は真っ二つに別れる。

生牡蠣&白ワインの立ち食いは中国人観光客に人気。

パリの朝市

かって牡蠣はRのついた月だけと言われていたけど、これはルイ15世が決めた(つまり冷蔵庫がなかった時代)ことで、衛生上は夏でも食べられる。でも夏場は不妊の牡蠣で味が違うとか。牡蠣が雌になったり雄になったりできる器用な生き物とは知らなかった。

休暇の商店の場所は服やアクセサリーの店になる。

パリの朝市

寂しくなった朝市でパッと華やか花屋さん。オランダからくる花は新鮮で安い。

パリの朝市

最近のお気に入りは大輪のアジサイ

パリの朝市

こっちは10日以上持っている。

パリの朝市

茎を斜めに切って、中の白い部分を取り除くと長持ちすると教わった。
そう、朝市で面白いのは専門家の知恵やコツを教えてもらうことだ。おまけも嬉しいけどね。


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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

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