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田舎の週末:リンゴの花咲く頃

世の中、復活祭で街中にチョコレートが溢れている。カトリック信者にとってはクリスマスより大切なお祝い(誕生より復活のほうが大事、というのは理解できる)、3連休に実家に帰る人、田舎に行く人で、土曜日は渋滞がひどかった。

私も1日だけ田舎に行く。従弟のジャン=ピエールが急に亡くなって、一人残されたマリー・フランスに会うためだ。看病疲れと哀しさでぶっ倒れているかと思いきや、意外と元気。というのも、ひとりになった彼女を心配して、毎日のように友達や近所の人が夕食に呼んでくれて、まだ別れを実感する暇がないらしい。田舎の人間関係は都会と違う。
私が着いた日はブドウ畑の手伝いをしていた。手伝いを頼む、というのも心遣いだと思った。
だって「何かしていないといられないの。うちの中を片づけ始めた」とマリー・フランス。

大きな家は、寝室が2階なので、ジャン=ピエールが階段を上らなくても済むように、階下に寝室を移し、医療ベッドも入れた。でも彼がその部屋を見ることはなかった。
去年からジャン=ピエールは入退院を繰り返していたので、
「考えてみたら、ひとりで暮らすのに慣れていたわ」
「お葬式の後、庭にみんな来てシャンパン飲んだでしょ。あの時、『ここシャンパン足りないぞ!』ってジャン=ピエールの声が聞こえそうだった」というと、マリー・フランスは真面目な顔になり、「あの時、彼は一緒にいたわよ。ずっと感じてた」

うちの庭には2月に枝を切ったリンゴの木が花をつけていた。
リンゴの花ってこんなに可憐だったの!?

リンゴの花

リンゴの花

こちらは2月の図。

リンゴの木

夫が植えたチューリップも開いた。

tulips.jpg

「親父が庭仕事をしていた頃は手伝うのもイヤだったのに、おかしなモンだ」
子供はいくつになっても反抗期?


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泣き笑いのお別れ

日曜日、泣きながら眺めた景色をもう一度。4日後、娘と私は田舎に向かう電車に乗った。

村が近づくとこういう景色になる。

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従弟ジャン=ピエールの告別式は、改築された村役場のSalle des fêtes/宴会場。
“音楽入りで陽気に”という彼の希望通り、親族や友人の「別れの言葉」の合間にジャン=ピエールのPlay listが入る。
巨体にもかかわらずダンスが上手で、私がダンスを習いだしたのも一緒に踊るためだった。でも私が何とかステップを踏めるようになったとき、彼はもう踊れなくなっていた。

彼のシャンパンJean Pierre Royer père et filsは日本へ何千本も輸出された。クライアントのひとり、某出版社の社長さんがこの田舎まで訪ねてきたのは6年前の早春。広大なブドウ畑(土の古さでシャンパンの各が違う)を周り、マリー・フランスの手料理を絶賛した。
マリー・フランスが30年独身を通し、ジャン=ピエールが離婚するのを待って結婚した話は、社長さんを感激させ「ぜひ小説にしよう!」 彼らの家のすぐ近くにローマ時代の橋が残っているので、タイトルは『ローマ時代の橋』。クリント・イーストウッドとメリル・ストリープの『マディソン郡の橋』の二番煎じを狙おう!と盛り上がった。
そう、マリー・フランスは30年待って15年一緒に暮らした。思い出だらけの大きな家で、これからどうやって暮らしていくんだろう・・・

告別式の最後に、参列者がひとりひとり棺に触ったりキスして、さよならを言った。その列の長さ!私たち親族は前に座っていて見えなかったけど、会場に入れなかった人が大勢いたのだ。隣村やまたその隣の村からも、彼の人柄に触れた人たちがさよならを言いに来た。

その後、彼らの家に移って賑やかな酒宴になる。ひと電車遅れて息子も着いた。

ブドウ畑に囲まれた彼の家。

spoy30_03_17.jpg

暑いくらいの日差し、庭にテーブルが用意されシャンパン(もちろん!)が何本も開けられた。今にもジャン=ピエールが現れて「おいマリー!(彼はマリー・フランスをこう呼んでいた)、ここシャンパンが足りないぞ!」と叫びそうだった。

帰り道、息子が「知らないおばあさんに言い寄られそうになった」
「?」
「ジャン=ピエールのお姉さんの友達(つまり70歳以上)という人が、『あなた、ジャン=ピエールの若いころにどこか似ているわ』って、熱い視線で見るんだ」
思い出に笑っては、彼のことを過去形で話しているのに気づいて泣く・・・
自称ウォータープルーフのアイラインはすっかり流れ落ちた。


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田舎の週末:哀しい春景色

大酒飲みで大食漢、“節制”という言葉を知らなかった従弟のジャン=ピエール。
3-4年前からそのツケが回ってきて、糖尿、心臓、大腸がん・・・がんは無事取り除けて、お医者に40㎏痩せるように言われた:130㎏を90㎏に(身長は183㎝)
「40㎏なんて!最初からやる気をなくすじゃない。“まず10㎏”とか言えなかったの ??」
「ほんとにバカ医者!」と、奥さんのマリー・フランスと言い合ったものだけど、果たして酒量は減らず体重も変わらなかった。

あの時やめてればねぇ・・・
でも彼としては、好きなだけお酒が飲めず食べられない人生なんて、ありえなかったのかもしれない。第一職業がシャンパン造りだもの。

そして去年の暮、肝臓がんが見つかった。フランスでは一番生存率が低いと言われているガンで、それを聞いた人はみんな「ああ・・・」と絶句した。
先週、化学療法のためにトロワの病院に入院したけど、始める前に昏睡状態になってしまった。
「会うなとは言わないけどチューブだらけだし・・・いい思い出を残しておいたら?」と奥さんのマリー・フランス。
夫は会うのを躊躇っていたし、電話を切ったあと考え込んでいたら、
「会ってさよならを言いたいんでしょ?」と娘。
「うん・・・」
「じゃ行って手を握ってあげて」
「そうだね、会わないとぜったい後悔する」
と土曜日に病院に駆けつけ、目を覚まさず苦しそうに呼吸するジャン=ピエールの手を握っていた。
日曜日、パリに帰る電車に乗ったとたん、電話が鳴った。“マリー・フランス”の表示を見ただけで内容はわかっていた。

親戚の中で一番仲がよく一番近しかった。田舎に行く愉しみは、彼とマリー・フランスに会うことだった。
あんなに頑丈で陽気だった人が、なんてあっけなく死んじゃうの?
パリまでの2時間、私はぐしゃぐしゃに泣いて、検札に来た車掌さんが恐れをなしてパスするほど。ちゃんと切符持ってたのに。


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田舎の日曜日

シャンパーニュ地方の小さな駅に着くと、憲兵が5人、出口に並んでいた。やだ、身分証明書を忘れてきた、と一瞬ビビったけど、私は完全無視された。少し離れて観察していると、“白人男性”が調べられている。
一足先に田舎に着いていた夫が迎えに来た。憲兵の話をすると、
「囚人の脱走だろ」
10㎞離れた村にある刑務所から、時々脱走するんだそうだ。
物騒な話をよそに、のどかな風景。木はまだ裸だけど、春の色。

Spoy、田舎の春

庭仕事を始めた夫に「手伝おうか?」
私は“緑の手”を持っていないので断られると期待したら、
「じゃ、枯れてる枝を半分に切って」

Spoy、田舎の春

「枯れてる枝って全部枯れてるじゃない」
「今に蘇る」
ホントかね。手袋をし、長靴に履き替え、携帯の音楽をつけて切り始める。
「これ、コスモスじゃなかった?」
「知らない」
男たちが、バラ以外の花の名前を知らないのは何処も同じ。

切ったぜ!

Spoy、田舎の春

枯れ枝の中に隠れていた・・・

Spoy、田舎の春

次はリンゴの木。

Spoy、田舎の春

「枝の、三つ目の芽まで残して切って」
「ミッツメノメ?せっかく伸びたのに可愛そう・・・」
「切らないと葉ばっかりで実が生らないんだ」
と言われて心を鬼にして全部切った。
庭のリンゴは見かけは不細工で、甘みの少ない“営業用”じゃない味。
夫が子供の頃はもっと盛大にリンゴの木があって、義父はシードルを作っていたそうだ。

私が切ったんだから沢山実をつけてくれ!

Spoy、田舎の春


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8月の長い週末:フォアグラとカモの町

「すごく美しい町」「絶対行くべき」と言われたサルラはフィジャックから150㎞の町。
朝市があるから間に合うように、と早起き(8時半!)したら、雨降りだった。今年の夏、私は雨女だ。

サルラ-正確にはサルラ・ラ・カネダ/Sarlat la Canéda-は、ペリゴール地方、正確にはペリゴール・ノワールの町。
ペリゴールと言えばトリュフ、フォアグラ、カモ・・・13世紀の建物もある旧市街は確かに美しいけど、バカンス客が溢れ、朝市はフォアグラとカモだらけ。どっちも好きじゃない私はどーする?

サルラの旧市街

サルラ朝市 フォアグラ、カモ

フォアグラやカモのコンフィは真空パックと缶詰もある。子供たちに買おうと思ったけど、真空パックは要冷蔵、缶詰はパリにもあるので諦める。
飴色の液体はクルミのオイル。エンダイヴやマッシュルームのサラダに美味しいというので買った。料理には使えない(加熱しちゃいけないってこと)そう。

サルラ朝市 フォアグラ、カモ

「この辺一帯に可愛そうなカモたちが飼われてるのね」と言ったら、「アメリカ人みたいな発言をするな」とジャン=ルイ。
身動きのできないカプセルホテルみたいな檻に入れられ、チューブでエサを流し込まれる・・・拷問じゃない。
日本の鵜飼いの鵜は、首に巻かれた紐のせいで、アユを呑み込めない。鵜匠はそれを吐き出させてアユ漁をする。
日本の鵜とフォアグラになるカモとどっちかになれ、と言われたら、私は迷わず「ウ!」と答える。

市場を取り囲むレストランは揃って、フォアグラ、カモの足のコンフィ+ジャガイモのサルラデーズというメニュー。カモの脂で薄切りのジャガイモをソテーしたポム・サルラデーズは子供たちの大好物。“サルラの”という形容詞だったのね。

パリはパリジャン、パリジェンヌ。リヨンはリヨネ、リヨネーズ、ニースはニソワ、ニソワーズ。町の形容詞形はそこの住民を表す単語でもある。クイズにもよく出るのが「モナコの住民は?」「モナコワ?」「はずれ!」正解はモネガスク/Monégasque。

フォアグラ、メロン、カモのコンフィ、ジャガイモのサルラデーズ、カベクー(チーズ)と地元名産オンパレードの一皿が15ユーロ(安い!)デザートの名物はクルミのケーキ。

ペリゴール料理

つまり恐ろしく高カロリーなものを食べているのに、この地方の人たちは太っていない。これぞフレンチ・パラドックス。


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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

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