Archive

DE BATTRE MON COEUR S'EST ARRETE

de battre mon coeur

2006年のセザールで最も話題になったこの映画を今まで見なかったのは、「僕の心臓の鼓動が止まる」というタイトルやポスターのせいかもしれない。深刻で重そうな映画、という印象を持っていた。やっとDVDを借りて観たら、確かに軽いテーマではないけど素晴らしい作品だ。
トムは28歳、父親と一緒にちょっとヤクザっぽい不動産業をやっている。ある日、知人のピアニストに再会し、亡くなった母のように自分にもピアニストになれるかもしれない、と思い出す。不動産業は続けながら、オーディションを目指しピアノの練習に励む毎日が始まる・・・
この映画は最優秀映画賞、最優秀監督賞、音楽賞、脇役賞、新人賞など2006年のセザールを文字通り総舐めにした。逃したのは主演男優賞くらいだが、その主演のロマン・デュリスが、圧倒的に上手い。「なぜピアノを続けないのか?才能があるのに」といわれただけで、その気になる甘ちゃん、アグレッシヴで傷つきやすく、どこか憎めないとこがあり、女を口説くのが上手い、というキャラを繊細に演じている。本人がこういうキャラなのでは、と思うほど。なぜ彼が取らなかったのか理解に苦しむし、セザール授与式の会場で、引きつった表情をしていたロマン・デュリスが思い出される。
de battre mon coeur

トムがお金を取り立てに行くマフィアの情婦役で5分ほど登場するメラニー・ローランは、よく年、「Je vais bien, t’en fais pas」(僕は元気だ、心配しないで)でセザール新人賞を取るが、一瞬の登場でもなかなか存在感がある。
監督のジャック・オディアールは1作品つくるのに、多いときで4~5年かけるという寡作な人だ。
このタイトル「De battre mon coeur s’est arête」は「僕の心臓の鼓動が止まる」の語順を逆にしたもので、正しくはMon coeur s’est arête de battre 、日本語にしたら「鼓動が止まる、僕の心臓の」のようなニュアンスかな。フランス語のお勉強はともかく、お薦めの作品だ。

スポンサーサイト

モード講座体験

fashion mais pas victime

「ファッション、でもヴィクティムではなく」というタイトルのモード講座を、お花やお料理教室で評判のラ・ベル・エコールがやっているので、参加させてもらった。「ファッショナブルに、でも服の中毒にはならないで」というニュアンス。場所はサンジェルマン・デプレからセーヌに向かった小さい道にある、小さなホテル。時間が止まったような古色蒼然としたホテルで最新モードの講座という、不思議な取り合わせだ。講師はスタイリストのユージェニー(写真の人)、参加者の顔ぶれは20代前半から60歳のマダムまで。最初に「クロエ、23歳、いつもジーンズにテニス・シューズなんで、イメージ変えたいと思って」と自己紹介と講座にきた理由を簡単にいわされる。さてメニューは、
「利口なワードローブ」:トレンチ、ジャケット、白シャツ、ベーシックなパンツなど、持つべきものとその選び方。このへんは誰でも知っている基本。
「今年のトレンド」:60年代風、メタリックな素材、白&黒など今年の流行を、モード写真を貼ったパネルを見せながら解説。
「パーソナル・タッチ」:ボタンを変える、アイロンでくっつくトリミングを加えるなど、フランス人が大好きな「人とは違う」着こなしのコツ。
「1週間七変化」:ベーシックな黒のジャケットに、ブローチ、ベルト、ファー襟などをプラスして毎日変化をつける方法。
ビジュアルなものは殆どなく、講師の話がメイン。ユージェニーの話し方はユーモアもあって面白いけど、目からウロコのすごい発見はない。一人一人に講座に来た理由や悩みを聞いたわりには、アドバイスはない。1週間の着まわしも、OGGIなどでよくやっているし・・・もっと画期的なモード講座を探します。

料理教室

ヴァンドーム・ハイアットホテルのレストランの、sous chef(シェフの次)という輝かしい肩書きを持つ愛ちゃん。フランスにきて7年、独学でここまで上昇した頑張り屋だ。すごく細い体に、けっこう筋肉のついた腕、その腕には火傷のあとが痛々しい。愛ちゃんはフランス料理のシェフだけど、本当に好きなのは日本料理、彼女の料理を食べた人たちが、あんまり美味しそうに語るので、聞いているだけでうっとりしてしまう。

その愛ちゃんに「たかこさん、フランス人対象のお料理教室始めません?」「今、日本料理すごく流行ってるから、いいかも」と料理教室を始めることになった。お試しの第一回は、巻き寿司にインゲンと鶏肉の胡麻和え。巻き寿司の具は「手近にあるものでできるように」と、アボカド、エビ、スモークサーモン、グリーンアスパラ、そして愛ちゃん得意の出し巻き卵。

参加したアニエスとテレーズは2人とも料理に興味がある、働く子持ちマダム。ご飯のとぎ方、寿司飯の作り方、フランス式ではなくアルデンテな野菜のゆで方、ゴマのすり方・・・シェフの鮮やかな手つきに「セ・ジェニアル!」(画期的!)と感動しながら、自分でも試している。

実は巻き寿司は一度も作ったことのなかったので、私も学ぶところが多い。「お寿司は買ってくるものなの」という言い訳はもうできない!結果はご覧のよう。出来上がったときに申し合わせたように台所に現れた夫や子供が、すごく美味しいと大喜びして「料理教室、毎日でもやって!」と言われて、少し傷ついた。

心優しい青年と老女

よく行くスーパーの隣にMaison de repos(休息の家)、つまり老人ホームがある。その出窓によく同じおばあさんが座っている。過去を彷徨っている表情で、独り言をいっていたり、静脈瘤の出た脚を撫ぜたりしている。ある夕方、閉店間際のスーパーに急いでいると、配達にでかけるスーパーの店員が、MP3の音楽に身体をゆすりながら出てきた。ピアスがキラリ、腕にはタトゥー。その男の子が、出窓の前を通るとき、おばあさんに向かって大きく手を振った。すると、暗い顔で独り言をいっていたおばあさんが、ぱっと顔を輝かせて手を振り返す。優しいとこあるじゃない!と感心。それから、“指定席”に座っているおばあさんを見ると、私もコンニチワと手を振るが、どうも男性のほうが、顔が輝くみたいだ。老いても女なのである。
関係ないけれど、老人ホームの向かいにLotus de Nissan(日産の蓮の花)というとんでもない名前の中華レストランがある。お寿司も出しているけど、試す気がしない。Roses de Toyota(トヨタの薔薇)なんてライバル・レストランを隣に開きたくなる。
プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから20年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書2冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

カレンダー
06 | 2007/07 | 08
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
最近の記事
カテゴリー
おすすめ書籍
RSSフィード
おすすめコスメ
フランスに行くなら
プロヴァンスの田舎町をまわる1日
アーカイブ