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冬時間になりました!

Je n’ai pas vu le temps passer(直訳:時間が過ぎるのが見えなかった)という表現がある。
日本語では、例えば、年の暮れが近づくと「時が経つのは早いわねぇ」というけど、それよりもっと具体的なニュアンス。例えば、まだ先だと思っていたことが翌日に迫っていた時や、請求書を払うのを忘れたときの口実に使う。
と、前置きが長くなりましたが、今年の「冬時間への変換」がまさにそうであった。10月25日から26日の午前2時が1時になり、朝1時間多く眠れるようになった。いつもはこのスイッチを「もういくつ寝ると・・・」と指折り数えて待つのに、今回は前日に気が着いた。残念。

もうひとつ突然やってきたのが、娘の秋休みだ。金曜日の夕方バスに乗っていたら、スーツケースを持った人がたくさん乗り込んできて「何事だ?」とよく考えたら、土曜日から休みではないか。
始まって2ヶ月も経ってないのにもう休み?!それで毎日テストだったわけだ。

一方、息子のジュリアンの大学は10月13日にやっと始まってくれた。
6月半ばにバカロレアの試験が終わって以来、なんと4ヶ月という長いバカンス。一生に一度のロングバケーションとは言え、長すぎる。とくに9月になって全国的に新学期ムードになってから、「昼頃起きて、午後はパソコンゲーム、日が暮れれば・・・」という彼の日常がうっとうしくなり始めていた。

始まってみると、予想以上に授業は少なくて、週22時間。後は自分で勉強しろ、ということ。特に医学部と法学部がそうで、前者は1年目で80%、後者は70%が落とされる。息子は法学部、30%に入れるか否かは、自主的にする勉強にかかっている。

大学に入ってしまえば勉強しなくていい日本とは反対だ。落とされた人たちの運命は、落第が1回だけ認められ、2回目も合格点に達しないと“追放”になる。他の学部に入りなおすこともできない。つまりフランスで大学教育を受けることが不可能になる。
始まったばかりの大学はさすがに秋休みはなく、早い日は朝8時から授業なので、7時過ぎに
出て行く。休み癖がついた頭には辛そうだ!


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この秋のダントツ話題作

EP

フラマリオンとグラッセ。文学出版社の大御所2社が共同で、「2人の作家による共著を秋に刊行する。内容はヒミツ・・・」という発表が夏前にあって「誰と誰だ?」「何の本だ?」と憶測が飛び交い、好奇心が掻き立てられた。10月はじめについにベールを脱いだ本とは、ミッシェル・ウエルベックとベルナール=アンリ・レヴィの往復書簡、正確には往復メール。

ミッシェル・ウエルベックは『素粒子』『プラットフォーム』など、現代人の愛の不毛をテーマ(と言ったら、ちょっと乱暴か)にしたベストセラー作家。
最近封切りになった『ある島の可能性』(同名の本の映画化で監督も作者自身)は、めちゃくちゃに酷評された(可愛そうなブノア・マジメル!)。
貧相な見かけで服装も、「そこにあるものを着てきた」という感じ。

一方BHL(BHVの支店ではない。ベルナール=アンリ・レヴィの略)は、作家・エッセイスト・ジャーナリスト・ビジネスマン・映画監督など、色々な肩書きを持つ。本人は哲学者と自称しているが、フランス哲学界は認めていないらしい。
奥さんはあのアリエル・ドンバルだし、あちこちに顔を出す恐ろしくメディアティックな男。エレガントといわれる風貌に、白いシャツ(胸のボタンをおへそくらいまで開けている)に黒いスーツがトレードマーク。
個人的にはきらいで、著書も読んだことがなかった。

『メディアティックな茶番劇の専門家、富豪の家に生まれ、権力者と仲良し、思想のない哲学者、フランス映画史上最低の映画の作者・・・』であるBHLと、『ニヒリスト、反体制、シニック、レイシスト、恥ずべき女嫌い』のウエルベック。
ルックスも頭の中も、正反対に見えるこの2人は「なぜか嫌われる」と唯一の共通点で意気投合。というわけで、往復書簡のタイトルは『Ennemis Publics』(公衆の敵)。

出版社のマーケティング戦略が成功し、刊行前に(内容も著者も知らないまま)書店の注文が殺到。15万部という、フランスでは例のない初版部数になった。
そして私もその戦略にはまった1人で、すぐに買ってしまった。
感想は後日!

ソニア・リキエル40周年

SR

黒・ストライプ・スパンコール・縫い目が表に出ている・・・と言えばもうおわかりですよね。
ひと目で“彼女”とわかるニットを世界中に流行らせたソニア・リキエルは、今年40周年。10月1日に、マルタン・マルジェラ、JP・ゴルチエ、カヴァリなど30人のデザイナーが、「ソニア風」ルックを披露して、40周年を祝った。

1968年、“出版社と骨董屋の町”サンジェルマン・デプレにソニアのブティックがオープン、この界隈がモードの中心となるきっかけとなり、ソニアは高級プレタポルテの先駆者となる。
「モードを始めたのはほんの偶然」とソニア。「当事、セーターはどれも大きすぎ、スカートは身体に合っていなくて着るものがなかったの。夫が服のブティックをやっていたんで、私がデザインしたニットをそこの製造元に作ってもらったら、友達がみんな欲しいっていうのよ」
そしてとうとう自分のブティックを開くことに(↓)。

SR boutique

毎シーズンの流行に影響されることなく、自分のモードに忠実に、同じような(失礼!)ニットを作り続ける。第一、彼女は自分のモードを「DEMODE」(流行遅れ)と呼んでいる。
赤毛で黒づくめ、魔女のような風貌も40年来変わらない。

「毎シーズンのコレクションの“縦糸”は政治。必ず今起こっていることに関連付けて、少し皮肉と優しさを加えて服を作る」そう。

私がソニアのニットに出会ったのは80年代のはじめ。中性的な身体を女らしく見せてくれるような気がして、一時期、結構ハマッた。
当時、グルネル通りのブティックにはソニアによく似た、ボリュームあるヘアに細い体の売り子さんたちがいた。みんな若くなく、感じが悪く、魔女の一族のようで、店内に漂う官能的な香水の匂いとともに、独特の雰囲気が漂っていた。
アート・ディレクターが娘のナタリー・リキエルに代わってからデザインが微妙に変わったせいか、それとも私の心変わりか、質と値段の関係のせいか、久しく買っていない。
でも、ニットを格上げし、セクシーとユーモアを盛り込んだ独特のスタイルを打ち出し、移ろいやすいモード界で40年間第一線を保つのは、スゴイ!の一言。



贖罪の日

10月9日。となりの出版社のオフィスには、アシスタントの女性のほか誰もいない。「みんなどうしたの?ブックフェア?」と聞くと「ヨム・キプールよ」。
新しい韓国スターの名前ではない。
Yom Kippourとは、ユダヤ教にとって、キリスト教の復活祭並の大きなお祭りで、ヘブライ語で「贖罪の日」という意味。ヘブライ暦のTishriの月の7日目にあたる・・・と言われても、知識のない私にとってはちんぷんかんぷんであるが。

ヨム・キプールの日は、25時間、食べる・飲む・身体を洗う・マッサージする・革の靴をはくことが禁じられる。そして当然仕事もしてはいけないし、セックスも禁止される。つまり、一日何もしてはいけない。

そして最初の星(ヴィーナス)が現れると、断食が終わり、ご馳走を食べる。9日は19時58分に星が現れた。ご馳走は、レモン入りお菓子から始まる。ずっと断食していたので、まず糖分を取るため。「そのあとにクスクス、詰め物をした鶏と野菜のブイヨンを食べる」、というのはお隣の出版社のおじさん。でも地方によってヨム・キプールのご馳走はまちまちだそう。
「あんまりお腹が空いていて、みんな大急ぎで食べるんで消化不良になる」そうだ。

この日、マレの郵便局に出かけたら、通りのブティックの殆どが『臨時休業』していた。やっぱりユダヤ人が多い地域なのだ。娘の学校でも休んでいる子が数人いたとか。ヨム・キプールも復活祭と同じく移動祝日で、去年は9月22日、2009年は9月28日だそうだ。

9月は、息子の友達に「ご飯食べていったら」と言ったら、ラマダン(回教徒の断食期間)中だと断られた。パリはいろいろな人種、文化、そして宗教が共存している街だと再確認。

封切りホヤホヤ『Cliente/クライアント』

cliente

テレビ・ショッピングの司会をしているジュディットは、魅力的な50過ぎの女性。同じ番組のプロデューサーをしている姉は、隣同士のアパルトマンに住み、ビールを飲みながらバックギャモンに興じる仲良しだ。ジュディットは数年前に離婚してから、定期的にインターネットで若い“ホストボーイ”を探し、ひと時を過ごしている。
パトリックもそうやって出会ったが、ジュディットは彼に惹かれ、何度か会うようになる。
パトリック(は源氏名で本名はマルコ)は結婚していて、奥さん・ファニーのヘアサロンの借金や、彼女の実家の生活費を助けるために、この仕事をしていた。
ある日、ファニーは夫の“裏の仕事”を知ってしまう・・・

cliente2

仕事は順調、リッチな生活を楽しんでいるように見える中年女性の深い“孤独”。
女性が男性を買う、という今までタブーだったテーマ。
その女性をナタリー・バイが演じ、姉役と監督はジョジアーヌ・バラスコ
と、話題になる要素が揃っている。
封切り後、最初の週末に観に行ったら、観客の多くが、中年すぎの女性だった。
今的で深刻なテーマを、すごく軽く扱っていて、「こんなにうまく行くはずがない」という気がする。また、ジュディット姉妹の豪華な暮らしぶりVSマルコの家族の貧しさが、ちょっとカリカチュアな感じで、全体的に真実味には欠けるけど・・・
“寂しい中年女”は、ナタリー・バイにぴったりだし、彼女のすごくさりげないスタイル(Vネックのセーター、タイトスカート、スエードのジャケットにシンプルなハイヒール)がエレガント。マルコ役のエリック・カラヴァカ(写真)がいいし、バラスコは登場すれば、画面が華やいで笑わせるキャラで、まあ2時間楽しめる作品。

映画が終わったあと、私の前に座っていた“おばさん”よりおばあさんに近い女性が、「いい映画だったわ。今までタブーだったことを扱ってくれて!」といっていた。「これで私も心置きなく・・・」みたいな口調。いくつになっても女、フレンチマダムはエライ!

Cliente
ジョジアーヌ・バラスコ監督作品
出演:ナタリー・バイ、エリック・カラヴァカ、イザベル・キャレ
あちこちで公開中



Entre les murs/教室

entrelesmurs

ご存知のように今年のカンヌでパルム・ドールを獲得し、審査委員長のショーン・ペーンが『Amazing!』と絶賛したロラン・コンテ監督作品。
フランソワ・ベゴドーが書いた小説を映画化したもので、著者が教師(フランソワ)役を演じている。彼は、パリ19区でフランス語の先生をしていて、小説はこの時の体験に基づいたものだ。生徒たちも、俳優ではなく20区の中学の生徒が演じている。
原作・主演、そしてシナリオにも加わったフランソワはこの人↓

entrelesmurs2

フランソワは、移民の子供が多い『困難な地域』の中学で、中学3年生(14、15歳)のクラスを受け持つ。フランスでは、科目ごとに先生は違うが、フランス語の先生が主任教師、つまり担任になる。

日本では考えられない多民族クラスだ:アフリカ、アンティル諸島、中国・・・純粋フランス人がいるんだろうか?フランス語がわからない親もいて、父兄面談の時は、子供が通訳を勤める。

映画は、限りなくドキュメンタリーに近く、教室での生徒とのやりとりと、教員室での先生たちの会話に終始する。
反抗期まっさかりの生徒たちは、勉強はできなくても先生の言葉尻を捕らえて言い返すのには長けていて、時に先生はタジタジになる。
反抗期の子供ひとり抱えていたって(私のこと)しんどいのに、25人の反抗的な子供たちに立ち向かう毎日!生徒が去った教室で、キレて椅子を蹴飛ばしたり、無力感に襲われたりするが、フランソワが、手に負えない子供たちを可愛いと感じているのが伝わる。
ただでさえアンビバレントな大人と子供の境目に、移民という不当な差別を受け、「勉強したって、どんな将来が開けるんだろう」とふてくされる彼らの心を開こうと努力する。
殆ど、クラスの中(entre les murs)で先生と生徒の“言葉の戦い”だが、引きつけられて2時間を少しも長く感じない。
憎ったらしく可愛い子供を持ち、移民の多いフランスに住み、そして自分も移民である私には強い余韻を残す作品だ。


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Karl

「黄色だ。美しくない。何にも合わない。でもこれはあなたの命を救える」
と、いかにもカール・ラガフェルドが言いそうなセリフ。
この黄色いベストと、三角形の標識がドライバーに義務づけられるようになった。
えーっフランスで運転する人はみんなあのベスト着なくちゃいけないの?かっこワルーイ!
と、運転しない私は人事のように思ったけど、そうではなかった。いくらなんでも。

これは、夜道や霧で視界が悪いとき車が故障した場合、車を降りるときにこの蛍光イエローのベストを着用し、三角形の標識を車の30m先に立てなければいけない、という決まり。
実は7月1日から車にこの2点を常備しておくことが義務づけられていたんだけど、守っている人がいないので、カールさんの登場となり、10月1日から135ユーロの罰金(その場で払うと90ユーロ)が課せられる。
自転車も同じく、視界の悪いとき、人里離れた場所を走るとき、このベストを着用しなければいけない。着てないと35ユーロの罰金。
自転車のほうは守っている人がちらほら。隣のオフィスのとてもおしゃれな女性も「一児の母になったから気をつけなくちゃ」と、雨の日は蛍光イエローのベストを着こんで自転車で帰っていく。
Velib(パリ市運営のレンタル自転車)を利用する人が増えて、事故も増えたと聞くんで、気をつけましょう!

プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから20年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書2冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

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