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数週間前に妻に去られた、アンジェに住む65歳の男性の場合。
一人でクリスマスを迎えるのが耐えられなくて自殺を図る。首を吊ろうとしたが縄が切れ、包丁で喉を切ろうとするが手がいうことをきかない。最後の手段、ガスのボンベ4個を開き、床にガソリンをまいて火をつけた。ところが近所の人がすぐ通報して消防士30人が駆けつけ、たちまち鎮火。男は軽い怪我ですんだ。

「笑っちゃいけないんだけど・・・」という声で、このニュースを報じていたラジオキャスター。
「人間て“その時”が来ないと死ねないものなんだね」と友達にこの話をしたら、「それがアメリカ人だとこうなる」:

同じクリスマスの夜、アメリカのロサンジェルス郊外で、やはり妻に去られた男45歳。にぎやかにクリスマスパーティーをやっている家にサンタクロースに変装して入り、ピストル2丁で発砲し、家に火をつけた。パーティのメンバーの中には、1年間の結婚ののちに別れた元妻とその両親がいた。死者9人。犯人も自殺・・・

これで、アメリカ人とフランス人の違いを云々するのは、もちろんすごい短絡だけど、同じクリスマスの夜、同じく妻に去られた2人の男の事件なので、誰もが比較したくなってしまうのだ。
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パリのユースホステル

kota

矢守功太さんというミュージシャンが、フランスの歌手とコラボレーションの企画があってパリに滞在していた。その歌手が友人なので、彼と知り合い、時々一緒にご飯を食べたり、おしゃべりをした。滞在が長くなって後半はバスティーユのユースに泊まっていた彼、そこで出会ったり、すれ違う人たちの話は『スパニッシュ・アパートメント』のように面白い。

例えばブラジル人兄弟。兄のラファエルがもとロックバンドをやっていたので気が合って、ご飯を食べたり、靴下を貸したりしていた。弟はある日、ロンドンに発っていったがラファエルは残っている。「一緒に行かないの?」「うん、パリが好きだから」

功太さんが外でタバコを吸っていると彼がやってきて、
「受付の子、どう思う?」
「いい人だね」と功太さん。
「それに美人だ。よく立ち話しているけど、何話してるの?」
「別に・・・世間話程度だよ」
「実はぼく彼女に興味があるんだけど、すごくシャイなんで、『鍵ください』しか言えないんだ・・・」

そこで功太さんが、彼女にあれこれ聞いて、ラファエルに伝えることになった。
彼女が写真の勉強をしていて音楽が好きなこと知ると、ラファエルはますます惚れたけど、意思表示はできない。間もなく弟が戻ってきて旅立たなくてはならない。でもこのまま何も言わないで去ったら、ずっと後悔しそう・・・というわけで、発つ前夜、功太さんが手伝って彼女に“ラブメッセージ”を書くことになった。

あまりヘビーになりすぎず、でも気持ちが伝わるように「漫画にしたら?」と功太さん。
ラファエルが世界のどこにいても、彼女が忘れられずユースに戻ってきてしまう、というシナリオを考えたけど、「ヘビーすぎない?」「これじゃストーカーと思われる」とラファエル。その上、功太さんの描いたキャラが「日本人にしか見えない」と難癖をつけるので、結局ラファエルが描いて、功太さんがダメだしをし、「来年リオに来てよ!空港で花束を持って待っているから」という結構ヘビーな漫画に落ち着いた。創作に3時間!

ところが発つ朝、彼女はお休み!がっかりして功太さんに手紙を託し、ラファエルは旅立っていった。この恋の行方はいかに・・・?シャイなラファエルはこの方

同じ部屋に泊まっていたコソボからきた研究者。40歳くらいで気難しそうで、話しかけられないでいた。
あるとき、功太さんのギターに目を留め、「君、音楽やるのか」「ハイ」「コソボの音楽、聴いてみないか?こっちに来なさい」「ハイ」
初めて聴くコソボの歌は素朴で迫力があり、そして長かった。
10分くらいの曲が終わり、功太さんが立ちかけると「もう1曲」、さらに「もう1曲」。そのうち、感極まったように彼は一緒に歌いだし、熱唱は延々と続き、功太さんは動けなかった。
ふと見ると彼の目が潤んでいる。パリ大学の奨学金をもらい、妻と子供を置いて単身留学だとか。2日後にソルボンヌの学生寮が空き、そっちに移っていったそう。

ユース・ホステルというくらいだから年齢制限があるのかと思ったら、ここは中年でも泊まれるみたい。
短い滞在者が多い中、2週間以上泊まっていた功太さんは、顔パスのきくユースの有名人になってしまった。彼も、美人の受付嬢との別れが辛かったのでは・・・?

「地球の歩き方」に載ったこともあるというユースホステルはここです。


従業員が強ーいフランス・・・

私のオフィスは、いくつかの会社がはいっている広いワンフロアにある。色々な人が出入りするので変化のある毎日、ではあるが、電話やミーティングの声がうるさい、経営状態が筒抜けになる、という不便がある。

隣のオフィスは美術書の出版社、翌日にある営業会議の準備に忙しい。フランスでは(日本でもそうかも)、中小の出版社をいくつか受け持っている、書店周りのセールスマンがいて、定期的に彼らに新刊書の説明をする。本の売行きに関わる大事な会議だ。
夕方6時にアシスタントが帰ったあと、社長さんは会議のブロシャーの準備が終わっていないことに気がついた。
そのアシスタントの女性は、今年の初め子供が生まれて、子供の父親と結婚することに決めた。よくあるパターン。結婚式を数日後に控えて、気もそぞろ。上司がいないと、オフィスから招待客や、仕出屋や、結婚相手に電話して準備に余念がない。

社長さんは毒づきながら、資料をプリントし、穴を開け、スパイラルを通してブロシャーを作り始めたけど、慣れていないので、すごく時間がかかる。ますますイラだってきた。
「アメリー・ノートンって、コピーが出来なかったって知ってる?」と言ってみるけど、あまり慰めにならないみたい。とうとうキレて「ブロシャーはクリップで留めただけでいい!穴は開けない!」と投げ出した。

翌日。会議から戻ってきた社長さんに「うまくいった?」とたずねると「最悪」という返事。アシスタントが準備した資料に本の価格が抜けていて、営業にさんざん批難されたそうだ。

日本だったら、このアシスタント、クビになりますよね?ところが社長さんの怒り方は、いたってソフト。「君、今朝は困ったよ。次回は気をつけてもらわんと・・・ゴホゴホ」彼は風邪を引いている。アシスタント嬢の返事はこうだった。「あまり近寄らないでください、風邪がうつりますから。私は2日後に結婚するんです」
笑いをこらえるのに苦労した。
フランスは従業員が守られている国だけど、この社長さんは寛容すぎる!
その日、アシスタントが帰ったあと「俺も結婚するぞ・・・」とつぶやいていた。

中学生もバリケード

lyceen

冬休みに入る前日の19日、中学生の娘がやけに早起きして、丁寧にドライヤーなどかけているので、「どこに行くの?」と聞くと「歴史のテストがあるから、ロクサーヌのうちで勉強するの」。よく言うわよ、そんなに勉強熱心じゃないことは親の私が一番よく知っている。「さては早朝デート?!」と問い詰めたら、学校にバリケードを張りに行くんだという。11歳でバリケード・・・!

高校の教育制度改正に反対して、前日も高校生が大掛かりなデモを行った。
改革案の中でも、教員数、クラス数の削減が、攻撃の的になっている。
文部大臣グザヴィエ・ダルコスは改正案の全面的見直しや、履行の1年延ばし(2009年の新学期から実施されるはずだった)を提案したけど、高校生は鎮まらず、「教育を救うために、ダルコス辞任しろ」「12ヶ月先でも改正はお断り!」などのプラカードを掲げ、全国で127000人が参加した。

19日は、実際に改正をこうむることになる中学生まで参加。娘の中学でも上級生がイニシアティブを取り、校門にゴミ箱を積み重ねて授業を阻止。結局、この日の授業はなかった・・・と、娘が興奮して話してくれた。校長先生がゴミ箱で封鎖された校門の前に現れたけど、何も言わなかったとか。校長先生自身、この改正案に反対しているので、阻止しなかった模様。娘は一日早く始まった冬休みに大喜び。

julien+paul


その夜は、大学生になったばかりの息子が初めての年度末パーティへ。「正装で」というドレスコードなので、父親のネクタイや革靴を試して大騒ぎ。
「正装すぎてちょっとダサい」というと、ネクタイを緩め、プルオーバーを着てドレスダウン。友達のポールと、我が家のツリーの前で。ジーンズとスニーカー姿より老けて見える?
大学のパーティは、会場を借りて夜の11時半から。会費は17ユーロで、シャンパン1杯が出たそう。もちろん(?)朝帰り。
クリスマスがあるから一番好き、という子供たちの冬休みはかくして始まった・・・

パン屋買収劇

pain

マレのTurenne通りにあるAu levain du Marais(マレの酵母)というパン屋さん。行列ができる美味しさで、日本のガイドブックで“並んでも買いたいパン屋さん”のようなページには必ず登場している。ティエリー・ラビノーが1994年に開いたパン屋だ。

週の半分くらいここでパンを買う。
2週間くらい前から、パンの種類や姿がかすかに変わってきた。パン・ド・カンパーニュ(田舎パン)は、形も大きさも前と同じだけど、どこか顔つきが違う。
「なに、このパン!」とひと目で変化に気づいたのは息子。食べてみると、味もテクスチャーも前と違う。
「どこが違う?」と首をかしげるのが夫と娘。この2人は質より量の人なのだ。

「パン焼き職人が変わった」というのが私たちの推理であったが、数日後、この謎が解明された:大繁盛していたあのパン屋が、他のパン屋に店を売った、新オーナーは、粉を変え、種類を増やした。
新オーナーのパンは、悪くないけど、以前の“雨の日も風の日でも並んで買いたい”というモチベーションを興させる美味しさはない。
つまり、日本のガイドブックのあちこちに登場していたTurenne通りのAu levain du Maraisのパンはもうない、ということだ。
なぜ、Turenne通りと断るかというと、ティエリー・ラビノーは、バスティーユよりのBeaumarchais大通りにも店を持っていた。私がそこへ駆けつけたのはいうまでもない。ご飯の味には疎いけど、パンにはうるさいのだ。
「Turenneのお店、売ったんですって?」
「そうよ、先々週だったかしら」
「このお店は?」
「やだ、オーナーが変わって1年近くになるわ」
「気がつかなかった・・・同じ味だもの」
「パン焼き職人も粉も変えてないからよ」
「2件とも同じパン屋が買ったの?」
「いいえ、Turenneは別の人が買ったわ」
というわけで、Beaumarchais大通りのパン屋には今まで通りの美味しさが存続している。

パン屋という職業は、夜明け前から焼き始めて夜8時まで、しんどい仕事だが儲かるのだ。友達のこの話でもわかるように:
「信号待ちで止まったら、となりにジャガーXKのコンバーチブルがいて、サングラスをかけたドライバーに見覚えがある。映画俳優?テレビで見た?・・・と思い出そうとしたけど、思い出せない。うちに帰ってから、ハタと気づいた。いつも買うパン屋の親父じゃないか!」

モミの木の話

sapin

クリスマスまであと1週間、クリスマスと言えば欠かせないのがツリー。
花屋さんの前には白いネットに包まれたモミの木が並び、夕刻には肩にモミの木を担いで家路に着くおとうさんたちとすれ違う。

モミの木は不況の影響を受けず例年通り売れている、とニュースで言っていた。AFSNN(フランス天然モミの木協会。そんな協会があったんだ)も、「世界的経済危機にもめげず、モミの木は残った」と語っている。家族全員が揃うキリスト教の一番大きな祝日に、このシンボルはやっぱり欠かせない。

我が家も、12月最初の週末に、力持ちの“お父さん”を連れて選びに行った。
モミの木の種類は2つ。「子供とお母さんのための」NORDMANN(ノールマン)。針葉が広くて、子供が飾りつけをするとき痛くない。葉が長持ちして(1ヶ月)落ちないので、掃除がラク。という理由で、このキャッチがついている。お値段は1m50の木で45ユーロ。横幅があり、置き場所に苦労するのが欠点。
nordmann
もう1種はEPICEA(エピセア)。木の香りとバランスの取れた葉並び。葉は尖っていて乾燥してくるとパラパラと落ちる。ノールマンより安く28ユーロから。
epicea
2007年にフランスでは700万本のモミの木が売れ、1億ユーロの売り上げだとか。
うちが、“お母さんのために”葉が落ちないノールマンを選んだことは言うまでもない。
最近は、“担ぎたくないお父さんたち”のために、モミの木ネット販売も増えている。





2008年ベストドレッサー50人

GP

という特集だったので、ELLEを買った。表紙がグウィネス・パルトロウなんで嫌な予感がしたけど、やっぱり彼女が女優部門の1位。この人は有名ブランドの最新コレクションをとっかえひっかえ着ているだけではないの・・・、ELLEなんだから、もっと個性的な組み合わせが上手い人を選べばいいのに!と思いません?

さてベストドレッサーの顔ぶれは、映画部門2位にアン・ハサウェイ、3位、シャロン・ストーン、そして4位になんとヴィクトリア・ベッカム(この人、女優だったっけ?)。彼女こそガリガリの身体に最新流行モノを次々と着ているだけ!
エキセントリック部門、1位がチルダ・スゥントン、2位ルー・ドワイヨン、3位イリナ・ラザレアニュ(ルーマニア出身のモデル)・・・5位に菊池凛子が登場!
女政治家部門、1位、アスマ・アルアサッド(シリアの大統領夫人、写真左!)。元モデルの仏大統領夫人を抜く女は誰だ?と写真を見たら、確かに綺麗でおしゃれ。2位はカーラ・ブルニ、3位は法相、ラシダ・ダチ。

asma

セクシー部門1位はディータ・ヴォン ティース、2位スカーレット・ヨハンソン、3位エヴァ・メンデスと頷けるランキング。
キリがないのでこの辺で止めておくけど、トップモデル部門1位のヘレナ・クリステンセンは、本当に素敵。デザイナーたちがこぞって「最も美しい」と絶賛するメリハリのあるバディに、流行と微妙な距離をつけた着こなし。
こういう人を表紙にもってこなくちゃ、と思っていたら次の号の表紙がヘレナ・クリステンセンだった。
失礼しました。
HC




ジーンズ再発見

jeans

ジーンズを10年くらい履いていない。最後のジーンズをショートパンツにしようとぶち切って、失敗して捨てたのはいつのことだったか?
なぜ履かないかというと、似合わないから。黒人のモデルの、短くて立体的なお尻の上にシャンパンのボトルがのっている写真を見たとき、「あ、こういうオシリだとジーンズが似合うんだ」と理解し、あまりの違いに履く気がしなくなった。

それ以来、365日のうち340日はスカートかワンピース。
最近、スカートとプルオーバーの組み合わせに疲れてきた。ふと子供たちの格好を見ると、毎日ジーンズだ。息子はともかく、娘が毎日履いてるってことはスカートよりラクなんだろうな。急にジーンズが履きたくなった。
「でも似合わないんだよね」と友達にいうと、「誰でも似合うモデルが見つかるのがジーンズなのよ」で、私に似合うのはスリムだと断言する。
そこで、デパートに出かけて片っ端から試すことにする。リーヴァイスのスリムはストレートに近い感じ。脚長に見えるという定評のジョゼフ。Acne Jeansなんて知らなかったぞ・・・次々と試したら疲れて頭が混乱して、何も買わずに出てきた。

数日後、本屋に行こうと歩いていたら、ウィンドウにスリムジーンズのマネキンが立っている。良さそげ。お店に入って試して、買ってしまった。
JOE’Sというブランド。何しろ10年間買わなかったから、ジーンズは知らないブランドだらけ。

joes

さて、そのジーンズを履いた日。今まで、私のことを中身までヴィンテージみたいに見ていた子供たちが「おっ!いいじゃん」「ママン、素敵」と初めて褒められた。要するに、初めて彼らの美意識にひっかかる格好をした、ってことだろう。
外に出ると、スカートの隙間風がなく(パリは今とても寒い)快適だ。履きなれている人には当然のことでしょうけど。なんだか自由になった感じ。ジーンズはスゴイ!でもこれって本当は、自分のつまらない思い込みから解放された快感なんだと思う。




プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから20年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書2冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

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