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ひとり旅の女

イレーヌは、世界中の4つ星ホテルを泊まり歩くという、人も羨む仕事をしている。
彼女はホテルに着くなり、フロントの応対、ベルボーイの態度、ロビーの家具や絨毯、部屋に入れば白い手袋をはめ、家具やカーテンのほこり、リネンの清潔さ、ベッドメイク、レストランでは、グラスや食器の磨かれ方、サービス・・・をチェックして点数をつける。“謎のお客”と呼ばれる視察官は、滞在の最後にしか仮面を脱がないホテルにとっての脅威だ。

パリのホテル(確かクリヨン)も登場。

映画『ひとり旅の女』

同僚たちは結婚や出産で辞めていき、イレーヌに仕事が集中、今日はトルコ、来週はタイと飛び回る。そう、イレーヌは40歳、独身、子供なし。
結婚して2人子供のいる妹は、早く身を固めろ、とうるさく言い、元彼アンドレアは待ちくたびれて、2人の間は友達化している。それでもイレーヌは、世界のあちこち旅できる身軽さと、待つ人のいない自由さを捨てられないのだ。

諦めたアンドレアは他の女性に接近。優しそうでいい男なのにもったいない・・・
映画『ひとり旅の女』

ある日、ホテルのバーでひとりお酒を飲んでいるイギリス女性と言葉を交わす。50代のケイトは作家で、離婚してひとり暮らし。イレーヌと同じく魅力的で、自由を愉しんでいるように見える。
シックなバーのインテリアを「こんなの虚飾よ、息が詰まる」と言い、「あしたの夜、小汚くて美味しいレストランに案内するわ」とイレーヌに約束して別れる。
でもその約束は果たされなかった。
ケイトは夜中に心臓麻痺で亡くなったのだ。家族が誰も来ない孤独な死を目の当たりにして、イレーヌの信条は揺らぐ:この生き方を選んでよかったんだろうか?

『Je voyage seule』(『ひとり旅の女』・・・なんか演歌のタイトルみたいだけど)は女性監督のイタリア映画。綺麗な映像(豪華ホテルが次々に)とゴキゲンな音楽で、重いテーマを包んでいる。

映画『ひとり旅の女』
photos:allocine

イレーヌと妹のコントラストが上手い。夫婦喧嘩や子供の世話に忙しい妹は、イレーヌの暮し方が“自由で自分勝手”に見える。妹の大変さは目に見えても、孤独や周囲のプレッシャー、ひとりで何でも引き受ける“大変さ”は見えないのだ。

アヴァンチュールはあっても、“誰とも暮さないでひとり”を貫いている友人がいるけど、彼女の強さが今頃わかる。
私も時々、突然の誘いにふらりと出かけられた自由な時代を“あの頃は良かった”なんて思うけど、それは無いものねだりなのだな、と。

『Je voyage seule』
Maria Sole Tognazzi監督作品
1時間25分

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娘のバカロレア祝いに、どこに行きたい?と聞くと「インドかタイ料理がいい」
インドはあまり知らないけど、彼女が「trop cool !」と喜びそうなタイならBleu Eléphantであろう。
バスティーユのロケット通りにある“青い象”は1980年創業で、バンコク、ジャカルタ、ロンドン、ブリュッセルなどにもレストランを持つグループ。パリでは恐らく一番有名なタイレストランだ。

入り口は大したことないけど、中は広大でエキゾチック。
一番奥の一番いい席(?)に通された。掘りごたつ式。
Blue elephant ブルーエレフォン1

メニューをじっくり検討したあと、結局、色々な料理が少しずつ食べられるムニュ・ロワイヤル(52ユーロ)にする。
前菜の盛り合わせ:カニと生姜風味の鶏シュウマイ、海老とイカの揚げ物、鶏と野菜の春巻き、鶏のマリネ串焼き、海老入り春雨サラダ。香草がたっぷりでどれも繊細な味。

Blue elephant ブルーエレフォン2

メインの盛り合わせ:羊の煮込み、牛肉と香草のサラダ、鶏のパンダナスの葉包み焼き、揚げ白身魚のピリ辛ソース、野菜炒め、カニ入炒飯・・・かなりのボリューム。
Blue elephant ブルーエレフォン3

さてメインを食べ終わったころ、「アタシはベジタリアンなのにぃ!」という声。
近くのテーブルで友達3人と食べている女性が、ウェーターに文句をつけている。私達はしゃべるのをやめて耳をそばだてると、ベジタリアンプレートを頼んだのに、魚が入っていた、と騒いでいる。
ウェーターは「そういうことは最初に言っていただきたい。全部食べた後に言わないで欲しい」ごもっとも。
「あたしは一口食べただけ!残りは連れが食べたのよ」同じことじゃない。
「別にお金を払わないって言ってるわけじゃないの!」そんならなんで騒ぐのよ。
隣のテーブルのカップルが「静かにして欲しい」と一言いうと「関係ないでしょ」と言い返す。

ウェーターの責任者が出てきた。「お金を払わないって言ってるわけじゃないの」と繰り返す女に、
「魚は全く入っていません。オイスターソースを少量使っているだけです」
「えええええ!あたしは魚アレルギーなのにぃぃ!」
その叫び声に、この女、発作を起こしてぶっ倒れ、救急車を呼ぶまでやるんじゃないかと思った。
「引っぱたいてやりたい・・・」と娘。私も同じことを考えていた。

ついに支配人登場。低い声で話していたので内容は聞きそびれたが、その後、女が騒ぐのをやめてゴキゲンになったのを見ると、彼女の料理はタダになった模様。ゴタクを並べて喜ぶ人、時々いるよね、ああ、腹が立つ。帰り際に思いっきりにらんでやったけど、女は意に介せず、勝ち誇った表情をしていたわ。

とにかく。このレストランは、値段は少々高いけど、美味しく、スタッフの数も多く感じがいい。

お店を出るとき支配人がランの花をおみやげにくれて、私の出身を聞き、「おじかったですか?」
「は?」息子が素早く“通訳”してくれる:おいしかったですか?
ヒステリー女の対処、大変でしたね、と言いそうになるのを飲み込んで、
「はい、とっても!」

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離婚したい妻、同意しない夫

ヴィヴィアンヌは3年前から離婚したがっている。でも夫は承知しない。
民法上の結婚がないイスラエルでは、結婚・離婚はラバ(ユダヤ教の指導者)によって承認され、離婚は、夫が妻を“離縁”しないとできない。ヴィヴィアンヌの「離婚要求」の訴えを前に3人のラバは理解に苦しむ。

Proces de Viviane Alsalem2

「愛情がなくなった」「性格の不一致」・・・ヴィヴィアンヌと弁護士の訴えはすべて却下される。
「あなたの夫は家庭にお金を入れ、暴力は振るわず、愛人もいない。なぜ離婚したいのかね?」
結婚は感情の問題ではなく、社会的な絆なのだ。 
「離婚したい。自由になりたい」というヴィヴィアンヌ、「絶対しない」という夫。
平行線のやりとりが、ラバの法廷で3ヵ月後、1ヵ月後、2週間後・・・と繰り返される。
家族や友人が証人として呼ばれる。その多くは「模範的な夫」「素晴らしい妻」と証言する。
結婚の“たてまえ”が大事で“本音”はどうでもいいってこと。
ユダヤ教では、人妻はほかの男性とお茶を飲むのさえ禁じられている。弁護士と一度カフェで会ったことが「不倫か?」と糾弾される始末。

彼女が美人なのも禍している・・・すぐに他の男性が見つかりそうだ。
ヴィヴィアンヌ役のロニ・エルカベッツは監督の1人(もう1人は彼女の弟)
Proces de Viviane Alsalem2

次第に夫の意図が見えてくる。「離婚しない」は、自分と別れたいといっている妻への最大の復讐なのだ:この女に自由を与えてなるものか。
「今でも愛している」という言葉とは裏腹に、妻を見る目は憎しみに満ちている。

Proces de Viviane Alsalem3

イスラエル映画『Le procès de Vivianne Amsalem/ヴィヴィアンヌ・アムサレムの裁判』は、ラバの“法廷”(といっても 簡素な部屋にプラスティックのテーブルと椅子)と待合室だけが舞台。

Proces de Viviane Alsalem

こういうアクションのない映画は居眠りしてしまいそうだが、全然!段々上がっていくテンション、殆どシュールな証人と弁護士のやりとり。証言から垣間見られる女性の立場・・・に居眠りどころではない。2時間が長く感じられなかった。

70年代に一度訪れたことのあるイスラエルは、若くてエネルギッシュな国に見えたけど。その内側では、宗教の戒律にがんじがらめになり、パレスチナの地をめぐって出口のない争いが続いている。人間の救いであるはずの宗教が、自由を奪い、武器を持たせるという、恐ろしいパラドックスだ。この国に生まれなくて良かった・・・

『Le procès de Vivianne Amsalem』
Shlomi & Ronit Elkabetz監督作品
主演:Ronit Elkabetz、 Manashe Noy
1時間55分
フランスで上映中


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夏の準備、ZARAソルド

7月14日(パリ祭)のパレード、と聞いて「え?まだだったの?」
“10月の気候”が続いたせいか、季節がわからなくなってきた。暑すぎる日本、寒すぎるフランス。地球の温度計が狂っているのは確かだ。
気分はバカンスモードにならないけど、「着るものがない」という娘に引きずられて買い物に行った。娘も息子も「なるべく親とは関わりあいになりたくない」年頃であるのに、服を買うときだけは別だ。率直さ(「全然似合わないわよ」)と押しの強さ(「ストックにもない?もう一度確かめてくださる?」)が買われているのではないか。
「スキーに行ったとき、唇がひび割れて大変なことになった」そうなので、まずUVカットのリップクリーム。パラファーマシーの店員さんが「こちらの極太スティックですと、顔にもささっと塗れて便利ですよ」というアドバイスにすぐ乗り、レジに行くと2つ商品を買うと2つとも20%オフになる、と聞いて、SPF50のサンスクリーンも買わされるはめに。
vichy-capital-soleil-sticks.jpg

「2つ20%オフだから40%得したのね」
「!?」
これでよくバカロレアに受かったもんだ(彼女のはテクノロジーバックなので、数学と物理があった)

次にZARAに行く。ネットで買った商品を、「お店を指定して取りに行く」という配送法を選んだ。配送料がタダ。
「ネットで購入したものを取りに来た」というと「それは上のレジカウンター」「特別なカウンターがあるのか?」「ない」
2階のレジに行くとかなりの列だ。娘は更なる戦利品はないか探しに行った。
やっと私の番になり、「ネットで買った・・・」といいかけると、「それはここじゃない。あちらのレジだ」
そこで(当然)キレた。
「下で、特別なレジがないといわれたから、15分も並んだんですよ!」
「誰です?そんないい加減なこといったのは?どんな店員でした?」
“その店員”の容姿はかなり正確に覚えていたけど、私のせいでクビになったら・・・という思いが頭を横切る。
「若くて髪が長い女性でした」
見回したところ、女子店員はみんな若くて髪が長かったからだ。

娘が買ったトップ(写真はモデル、念のため)
zaraソルド

白いシャツはなかなか難しい。「看護婦さんみたい」なんでやめた。

zaraソルド

それにしてもZARAは前に比べて高くなった。ワインピースはまだいいけど、タバコを近づけただけで燃え上がりそうな素材のトップや、「何が悲しくて・・・」という悪趣味プリントのパンツがけっこう高い。更に安いブランド、それより更に安いブランドができてきて、押し上げられたせい?
私が惹かれたワンピース(39.99ユーロ!)はデカいサイズしか残っていなかった。残念。

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朝市で私の前に並んでいた男の子がお母さんに、「今日の13時半にブルジェに着くんだよ」
W杯フランスチーム、les Bleusが1ヶ月ぶりに戻ってくるのだ。
「ねえ、シャンゼリゼのパレードに行ってもいい?」
牛肉を買うか、豚肉にするかが先決問題であるお母さんは、
「負けたんだからパレードはないのよ」とそっけない返事。小学校1年生くらいの男の子は憮然とした顔になった。
フランスはサッカー国だな、と改めて思った。

金曜日18時からの対ドイツ準々決勝は、これまでで最高の視聴率。パリ市庁舎前にはジャイアントスクリーンが設置され、ぎっしりの観衆で一時通行止めになったほど。みんな会社を早引けしたみたい。夫も早引けで私は後半に間に合った。

さてフランスチームの帰国。後でヴィデオで観たら、肌寒い雨にもめげず500人くらいのファンが空港で待ちうけている。朝の9時から待っている人もいるとか。
顔をトリコロールに塗りわけたり、3色のカツラをかぶったファンたちは飛行機が着陸したと同時に歓声を上げた。

W杯フランスチーム
photo:AFP

選手達が出てくると「メルシー!」「よくやった!」キーキーキャーキャーのすごい騒ぎ。
警備の憲兵までが選手に話しかけている(警備はどうした?)

W杯フランスチーム
photo:20minutes

マイクを向けられた人は、
「彼らの頑張りがフランス国民にも浸透して、元気をくれた」
「そりゃ優勝しなかったのは残念だけど、準々決勝まで行ったのは上出来。誇りに思う。ありがとう!」
ドイツに負けてシュンと“おうちに帰ってきた”選手たちは、ヒーローのように迎えられて嬉しそうだ。私までジーンとなった。

そうだよね、優勝しなくても、あそこまで戦った努力は拍手だ。4年前の南アフリカW杯の惨敗を思い出すと尚更。
W杯のとき、フランスにも日本にも勝ってほしい。私は引き裂かれるような気持ちになる。2人の愛人に「どっちが好きなの?」と聞かれたような(実際、そういう状況になったことはないけど)。
日本は母国、フランスは移民の私も受け入れてくれた国だ。父国?
今ではフランスにいる年月のほうが長くなったけど、この感覚はずっと変わらないような気がする。それは決して居心地悪いもんじゃない。2つのカルチャーを知っていて好きだということだから。


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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

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