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ジェローム・ケルヴィアル。2008年に株式操作で49億ユーロ(約5880億円)の損失を出した、ソシエテ・ジェネラル銀行のトレーダー。彼の名前は一日にしてフランス全国、そして世界の金融市場で有名になった。

ケルヴィアル。辣腕そうでちょっとワルそう

映画『L'Outsider』

映画『L’Outsider』は、一介の銀行員として入行したケルヴィアルが出世階段を駆け上り、5年後に“キャッシュ・マシン”と呼ばれるほどの名トレーダーになり、49億ユーロの大穴を開けるまでを、事実に忠実に描いている。
なんでそんな大穴が可能なのかは、説明を聞いてもよくわからないけど、株価指数500億ユーロに上る先物取引に対する彼の判断の結果で、それを不正な操作で上司に隠していた、ということらしい。でも彼のポケットには1ユーロも入っていない。

ソシエテ・ジェネラルは「全く知らなかった」と、ケルヴィアルを、背信行為、文書偽造で訴える。裁判所は、禁錮5年、損害賠償49億ユーロ(フランス史上最高額)の判決を下した。
しかしメディアと世論は「銀行上司が知らなかったなんて考えられない」「口座が50ユーロ赤字になっただけで電話してくるのに、49億ユーロの穴を知らなかったとは言わせない」(まったく)とケルヴィアル擁護に傾く。
ファンクラブができ、ケルヴィアルは本まで出した。(『L’Engrenage :mémoires d’un trader/歯車:あるトレーダーの回想』)

2014年、破毀院は損害賠償を破棄、だけでなく、2016年パリのプリュドム評議会(従業員の権利を護る裁判機関)は、逆にソシエテ・ジェネラル銀行を「屈辱的状況における正当な理由なき解雇」で訴え、ケルヴィアルに損害賠償を要求している。

映画は、彼の“不正な操作”が発覚するまで。どんな操作で何が不正なのかは、やっぱりよく理解できないけど、トレーダーたちが売り買いするヒステックな“戦場”の様子、その緊張とストレス解消(ストリップティーズ、アルコール)、金銭感覚の麻痺・・・すべてヴァーチャルな操作で現実感のないまま、ちょっと一線を越え、それを隠すためにまた・・・という構造がよく描かれている。

映画のケルヴィアル(アルチュール・デュポン)

映画『L'Outsider』

映画『L'Outsider』

映画『L'Outsider』
photos:allociné

決着がついていないのに、銀行もトレーダーも実名を出し、舞台はデファンスのソシエテ・ジェネラル本行。
“表現の自由”をふりかざしてスト・デモを繰り返す労組はいい加減ウンザリだけど、こういう作品が作れちゃうのはすごい。ソシエテ・ジェネラルの行員たちはこれを観て、何と思うだろう?ご本人(ケルヴィアル)は『すごくよくできた伝記作品』とTwitterで言っていた。
そういえば、ジョージ・クルーニー&ジュリア・ロバーツの『マネー・モンスター』も、お金とメディア、という2大権力のお話だ。

L’Outsider
クリストフ・バラティエ監督作品
主演:アルチュール・デュポン、フランソワ=グザヴィエ・ドゥメゾン
1時間57分
フランスで公開中

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美しすぎるのは危険?

モデルになりたいとロサンジェルスにやってきたジェス、未成年で身よりもなく、陰気なモーテルに住み始める。
その無垢な美しさは見る人をハッとさせた。
「あなた、怯えた子鹿みたいね」とメイク係。傷つきやすそうな様子は、弱肉強食のモデル界で“格好の餌食”になりそうだ。しかし彼女の自然な美しさに、モデルエージェントや、有名カメラマンがすぐに扉を開けた。御伽噺のような上昇。
整形を重ね、力づくで美しくなったモデルたちの羨望と嫉妬。とりわけ嫉妬・・・

『ドライヴ』のニコラス・ウィンディング・レフンの『The Neon Demon/ネオンの悪魔』

ニコラス・ウィンディング・レフン『ザ・ネオン・デモン』

より美しく、より有名になることが命のモデル界、憧れの的になる虚構の世界を描いている。審美的で(彼が好きな)血さえ現実味がない。右がニコラス・ウィンディング・レフン。

ニコラス・ウィンディング・レフン『ザ・ネオン・デモン』

『ドライヴ』は何度見てもよくできた映画と思う。優しさと凶暴さが入り混じった主人公(ライアン・ゴスリング)のキャラ、お隣さん人妻アイリーンとの明日のない恋、全体に流れる詩情・・・そして流れる音楽まで。
に比べて、『The Neon Demon』は表面的。出てくる女達は(モデルだから)みんな綺麗で「これが同じ人間か!」と思うほど。
一方、ソフィア・コッポラの『Somewhere』で注目されたエル・ファニングは可愛いけど、女たちに殺意を抱かせるような美貌かね?

ニコラス・ウィンディング・レフン『ザ・ネオン・デモン』

濃いメイクをすると変貌する。

ニコラス・ウィンディング・レフン『ザ・ネオン・デモン』
photos: allociné

ニコラス・ウィンディング・レフンが描きたかったのは、モデル界の内側?
綺麗すぎる人への警告?エル・ファニングに魅せられて?・・・その全部かもしれない。
この作品の最大の欠点は最後の15分が余計なこと。映画館を出て「“あそこ”でやめればよかったのに」「まったく」と夫。
“あそこ”が気になる方は、どうぞ!

The Neon Demon
ニコラス・ウィンディング・レフン監督作品
主演:エル・ファニング、ジーナ・マローン、
1時間57分
フランスで上映中

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それでもデモがしたい!

労働法改正案(通称エル・コムリ法案)に反対するデモ・ストが3月から続いている。
“雇い主に有利な改正”なのが反対の主な理由だけど、雇い主が今より簡単に雇用、解雇できるようにならないと失業者は減らないし、世の中停滞したままだ。
この改正案が経済の活性化に繋がると信じるオランド&ヴァルスのコンビは譲らないし、組合や学生は飽きもせずデモを繰り返す。23日(木)はなんと10回目。

ちょうどサッカー欧州選手権真っ最中、フランス各地のスタジアムには夥しい数の警官が配置されている。
パルク・デ・プランスに試合を観にいった息子は「2度、バッグの中身+身体検査があった」
「すごく時間かかりそう・・・」「それがすごく速やかだった。警官の数はハンパじゃなかったけどね」

時期が時期だけに、カズヌーヴ内相は「デモを中止してくれないか」と(丁寧に)に組合側にお願いした。
前回のデモのとき “暴力分子”が商店のウィンドウや病院の正面を壊したり、車に放火して収拾が大変だったから。警官だって限りなくいるわけではない。
「とんでもない」と労組側。
「では歩かずに静止デモにしてくれないか?バスティーユ~ナシオンの警備は難しい」
「ノン。それではデモ行進と言えない」
ついに前日22日朝、パリ警察がキレて「デモ禁止!」を発表したもんだから、組合、野党は「民主主義に反する!」「表現の自由、デモする自由!」と大騒ぎ。

結局、両者が歩み寄って“コースを縮小する”で落着。縮小コースとは“バスティーユからバスティーユ”。正確にいうと広場からアルスナル湾までの500mを行ったり来たりするというギャグみたいなデモ、と前日は笑っていたのだが、一夜明けるとバスティーユは大変なことになっていた。
広場から出る道は全部通行止め。機動隊のバンが並んでいる。
メトロは閉り、バスも不通。バスティーユは世の中から隔絶された。

労働法改正反対バスティーユのデモ

さらに広場はこのような壁で囲まれた。こんな新兵器があったのね・・・

労働法改正反対バスティーユのデモ

出たらすぐ検問にあった。バッグの中を見て「マダム、ナイフとか持ってないですか?」思わず「持ってます!」と言いそうになった。

四方を囲まれた広場で、檻のクマみたいに行ったり来たりするわけ?それでもやりたいのね・・・
赤いバルーンは大手労働組合CGT。

労働法改正反対バスティーユのデモ

警官、憲兵2000人、デモ参加者2万人(警察発表の数字、主催者側発表はその3倍)。つまり10人にひとり警備がついたことになる。この写真だと逆みたいだけど。30度になる夏日、厚着・重装備の警官たち、かわいそう・・・

労働法改正反対バスティーユのデモ
photo:lemonde.fr

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娘の東京便り

スカイプに現れた娘は、シェアハウスのキッチンで、泣きながら玉葱を刻んでいるとこだった。
「メガネかけてても涙が出るの?」
「日本の玉葱って強烈なのよ」(それは初耳)
「なに作ってるの?」
「スパゲッティ・カルボナーラ」
「友達できた?どこの国の人がいるの?」
娘は玉葱を切り(泣き)続けながら、「カナダ、ドイツ、英米、タイ、中国、南アフリカ・・・みんな英語が上手で、とても親切。帰りたくないくらい・・・」(おお!)
「つまりワタシは昼間、日本語話して、夜は英語話して、それが時々混ざって、アタマの中グチャグチャよ」
「日本語は少しマシになったの?」
「研修先でずいぶん上手くなったって言われた。でも買い物が大変、漢字やカタカナが多くて・・・ところで“海の鶏”って何?」
「海の鶏 ??・・・あ、シーチキンね、マグロのことよ」
「うそ!日本語はタダでさえ難しいのに、なぜ“海の鶏”なんて呼ぶの?素直にマグロって言えばいいのに・・・ブツブツ」
確かに、なぜシーチキンなんだろう?肉質が似てる?
「・・・ご飯作って、お皿洗って、ゴミ出して、洗濯して、買い物して・・・つまりウチじゃやらなかったことをやってるわけ。成長するわけよ」(自分で言ってれば世話はない)
「それからゴキブリ!」
「あ、いるだろうね、建物古いし」
「トイレに入ったら、巨大なのがいたの、叫んで便器の上に避難して10分間降りて来れなかった」
フランスのゴキブリはずっと小柄で(私の知る限り)飛ばない。
玉葱とベーコンを刻み終えた娘は「じゃーね!」と視界から消えていった。

「2ヶ月もいるの?」「友達ができなかったらどうしよう・・・」
私が発つとき泣き言をいっていたのは誰だ?、「帰りたくない」なんて。まさに“やったぜ!”だ。

同時に一抹の寂しさ。メアリー・ポピンズの『ジョンとバーバラの物語』のムクドリみたいに・・・
生まれたばかりの双子、ジョンとバーバラは、窓辺に飛んでくるムクドリの言葉がわかった。ムクドリは時々やってきては双子とのおしゃべりを楽しんでいた。ところがある日、窓に来てみると、双子は(成長して)もうムクドリの言葉がわからなくなっていた。
寂しさを隠せないムクドリ。
「アンタ、泣いてるの?」とメアリー・ポピンズ
「いや、ちょっと風邪を引いてるだけさ」
いつ思い出しても素敵なお話・・・


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バカロレア英語の試験問題のひとつに抗議して、受験生たちがこの問題を“無効”にしてくれ、とネットで署名運動を始めた。
既に1万1000の署名を集めたとか。

「英語バカロレアの最初のテキスト無効」の署名用紙
バカロレア英語の試験問題に抗議

問題になっているのは読解力テスト。アリス・ホフマンの『The Museum of Extraordinary Things』からの抜粋で、20世紀にマンハッタンが飛躍的に発展したことが描かれている。で、最初の質問が、
「この場面はどこの都市で起こっているか?文中、2つの根拠から説明せよ」
抗議している受験生たちはマンハッタンがNYにあることを知らなかった、というわけだ。
「これは、一般教養についての質問で、授業でやったこととは全然関係ない」
「私の成績は総合平均17点(20点満点の17点は非常にいい成績)なのに、マンハッタンでしくじるなんて(試験問題が)許せない」
「マンハッタンとハドソン河がNYにあるなんて、すごい個人的知識が必要だ」
“すごい個人的知識”かね・・・抗議に答えた英語教師は「バカロレア試験は授業でやったことだけでなく、一般教養、文化知識を動員して答えるもの」そりゃそうだ。誰も知らない田舎町ならともかく、それに英語の試験だもの・・・
一方、NYと知っていた受験生たちは署名組をあざ笑い、ネット上は喧々諤々になっているみたい。

日本の18歳の何割が、マンハッタンはNY、と知っているだろうか? “受験勉強”だけやっていた学生が陥りやすい“罠”・・・そういう私だって、マンハッタンはいくらなんでも知ってるけど、「ハドソン河はどこ?」と聞かれたら、「ロンドン・・・?」とか言いそうだ。

しかし。労働法改革反対のストにしろ、この国の人間は抗議・示威運動がとことん好きなんだ。

うちの猫たちもまだ「もう旅行に行くな」ストを続けている。あまり寝心地良さそうじゃないのにね・・・

タマ&リュリュのスト

「このスーツケースは猫にやるしかないか」と夫。そこで折れちゃダメなんだって!


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水曜日に、恒例通り哲学から始まったバカロレア試験。
今年の受験生は、サッカー欧州選手権という巨大な誘惑と戦わなければならない。かわいそう・・・

バカロレア2016
photo:lexpresse

さて哲学。Bac S(理系)の問題に、『より少なく働くことは、よりよく生きることか?』というのがあった。

フランスと日本で答えがすごく違いそうだ。で、どういう答えが可能か、ご丁寧にサイトに載っていた:
「もし仕事が私の自由を奪うのであれば、幸福になるために仕事を減らすべきではないか?」と提示する。この問いは、「果たして私たちに仕事を減らす権限があるだろうか?」さらに「“よりよい人生”を可能にする条件とはなんだろうか?」という問いを導く(なるほど。こういう風に展開するのね・・・)
しかし、いくらフランスでも「よりよく生きたいので、仕事の時間を減らすことにしました」なんて上司に言えない。

もうひとつのアプローチは、「仕事を減らしたら、私を幸せにし得るものを入手できなくならないだろうか?」と提示し、「しかし、逆にもっと働いたら、自分の幸せを享受する時間があるだろうか?」
これは多くの日本人が持つ疑問ではない?収入が減れば、今の生活水準が保てなくなる。それで幸せか?一方、収入はあっても、それを使う時間がない、休みも取れず旅行にも行けない・・・つまり、“お金=幸せ”か?

ニコラ・サルコジの「より多く稼ぐためにより多く働く」というスローガンがあった。この行間には「よりお金を稼ぐ=よりよく生きる」という価値観が見える。それを実践してサルコジはリッチな生活を誇示し、不正な選挙資金、ニセ領収書などで警察の事情聴取まで受けている。

試験会場から出てきた学生にラジオがインタビューしていた。
「より仕事をしない=よりよく生きる」で展開した女子は、「仕事だけが人生じゃない。もっと大切なことがあるから」

仕事と人間の幸せの関係、その兼ね合い・・・一生考えるテーマを18歳か19歳で取り組むのは、この国の教育制度のいいところだ。

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朝ごはん:抹茶ソフト

発つ朝、11時の便だったので早く出た。寝ぼけ眼の娘に、
「ここに好きなだけいて、鍵は中に置いてドアを閉めてね」
「それ、もう2回言ったでしょ」
「・・・・」(親は同じことを何度も言う生き物だ)

あの陰気でかび臭いシェアハウスに娘を置いていって、落ち込まないかなぁ、と考えながら、レインボーブリッジから東京の街に見とれた。霧雨にかすんで墨絵のように立つ超高層ビルは、SF映画のように美しい。
羽田について携帯を返し(請求書が楽しみ!)旅先から絵葉書をもらうのが趣味の従兄妹夫婦に手紙を書く。いつも最後で思い出し、ひどい時はパリの空港で投函した。朝から何も食べていなかったので、どこかに入ろうか・・・
羽田の4階は『江戸小路』という江戸時代の町並を再現したフロアでレストランやお店が並んでいる。お寿司屋(お寿司は食べ損ねたけど、朝10時にはちょっとね)、うどん屋、焼肉屋、らーめん屋・・・和風喫茶の抹茶の緑に心惹かれた。
朝ごはんは抹茶ソフト!これで心残りはない。

12時間飛んでロワシー空港に着く。日本からずいぶん遠くなってしまった、と自分の携帯をつけると、娘からメール:今夜は住人5人と食事をして、すごーく楽しかった。
第一、夫にシェアハウスの話(悪口)をすると、「Ah bon ?」だけ。
息子にいたっては「あいつ贅沢好みだからな」
母親だけが余計な心配をする・・・損な生き物だ。

駆けつけて迎えてくれた猫たち。間もなく「もうどこにも行くな」の“座り込み”。
この国では猫までストをする・・・

タマ&リュリュ、スト


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「自分の羽で飛び立たなくちゃ」

娘のシェアハウスがちょっと陰気で、部屋がかび臭いのも気がかりだけど、何より不思議なのは、誰ともすれ違わないこと。靴箱に靴はたくさんあるのに、声も音楽も聞こえず、ひっそり静まり返っている。
翌日、近くのスーパーで調味料や野菜や買い込む。自分で買い物するときは気づかなかったけど、娘の目で見ると、わかりにくい漢字で溢れている。「賞味期限」「保存期限」「値下げ除外品」「〇〇県特産」・・・
肉の部位もフランスのそれと対応していないみたい。

例えば日本の豚さん
豚肉の部位

フランスのコションはより細分化されている。

豚肉の部位 フランス版

可笑しいのは日本の部位図のブタがみんな左を向いているのに、フランスではほぼ全員右向き。理由があるんだろうか?日本のブタは左を向きたがる、とか・・・

7時過ぎに買い物を抱えてシェアハウスに着くと、キッチンにピンクのサングラスをかけたキッチュな男。初めて住人に遭遇!生のマグロとアヴォカドの角切りが山盛りになったお皿に取り掛かろうとしている。目の端で観察していると、彼はマグロとアヴォカドを一口食べ、うっとりした顔をしている。そして娘に、部屋番号のついている戸棚を使うこと、冷蔵庫は3部屋に1台、食器は誰がどうやって洗ったかわからないので、自分のを持ってきたほうがいい・・・など教えてくれた。サングラスのせいで宇宙人のようだけどなかなか親切。

シェアハウスに荷物は移したものの、娘は私が発つまでウィークリーマンションに一緒に帰ってきた。
「ひとりで大丈夫?」(親はこういう意味のない質問をする生き物だ)
「大丈夫よ。いつか自分の羽で飛びたたなくちゃ」(これは娘の表現ではなく成句がある)
そして「あなたの娘は強いのよ」
なんか逆に励まされてない?


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「私は20歳以上です」

コンビニで缶ビールを買ったら、
「押してください」
「?」
「そこ」
と指差されたとこを見ると『私は20歳以上です』というパネル。顔見りゃわかるだろう!
数年前に一緒に来た白髪の友人も押せと言われて、「からかわれていると思った」
・・・という話を友達にしたら「責任逃れなんだよね。マニュアル化した電話の応対も、気象庁が梅雨入りを“宣言”しないことにしたのも全部責任逃れ」
気象庁が梅雨入り宣言しないことにした気持ちはわかるけど、20歳タッチパネルは桁外れの責任逃れだし、無意味だ。去年、成人であるとボタンを押した15歳の少年にタバコを売ったコンビニが訴えられた、という話を聞いた。
これをフランスでやったら大変なことになる。13歳のガキだって躊躇いなく押してお酒やタバコを買うし、過半数の酒・タバコ屋が訴えられることになるだろう。

ある時、パリのスーパーでレジに並んでいると、私の前の男の子2人がジンを2本買おうとしていた。どう見たって15-16歳の2人を見て、レジの女性は「子供には売れない」とキッパリ。
でも男の子たちの意志は固く、レジの前を動こうとしない。買ってこないと顔が立たない、とかリンチに遭うとか、事情はあるだろうけど・・・
「じゃ身分証明書を見せなさい」とレジ係。見せられるわけがない。
そこへ責任者の女性登場。後ろに並んでいたお客達はしびれを切らし他のレジに移ったけど、私はどうなるか観察していた。責任者の判断は、
「大人のお客さんに頼んで買ってもらいなさい」
「 ??!」
“未成年者にアルコールを売らない”という義務を果たしたレジ女性も私と同じくらいビックリしていた。責任逃れどころか違反介助じゃない、まったく。

つまり、この20歳タッチパネルに少しでも効果があるとしたら、ここが日本だからだ。でも、明らかに20歳以上の人には押させなければいい。レジにいるのはコンピューターじゃなく生身の人間なんだもの・・・それを白髪でもシワシワでも「押してください」だから“マニュアル化”になっちゃう・・・


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東京駆け足日記

InDesignでイラストを描いたり、ギャラリー巡りをしたり、そして何より、親切でユーモラスな“先生”に出会い、娘の研修は順調だ。“日本の伝統文化を体験する”ために、日本舞踊まで体験させてもらった。
夫と息子に写真を送ったら、「なんでイラストの研修でダンスするんだ?」

日舞

月曜日、娘はシェアハウスに引越しをする。大きなスーツケースとともに中野坂上へ。駅からサクラハウスまで、スーパーやローソンやジョナサン、サイゼリアまである。
もう2件のジョナサンに行った娘は「東京ジョナサン巡り!」とはしゃいでいる。

それもサクラハウスに着くとしぼんだ。建物は写真より古びて(当たり前か)、個室の扉が並んだ廊下は、「監獄みたい」と娘。
部屋にはベッドと机、スチールの戸棚、そんなに小さくないし、そうじされているけど「なに、この匂い?」

サクラハウス

私にはかび臭い匂い、だけど娘には「汚い靴下の匂い!」
共有のキッチン・食堂に行くと、シンクに汚れたお皿が積み重なっている。アララ・・・
娘も私もかなりめげた。

その夜は友達と食事をする約束で、前にも行った飯田橋の和食のお店を予約してもらった。
“ちょい干し”のお魚や、とびきり美味しい野菜を炭火焼にして食べさせてくれる。最初に行ったとき感激したので、拙筆の本にも登場するお店。食べ物で機嫌が変わる娘はたちまち元気になった。
ちょうど友達が本を持っていたので、食事の終わるころサービスの女性に「ここに出てますよ」と。
彼女は「ちょっと見せてきます」と厨房に引っ込む。
私たちは、もしかしてデザートのサービスがあるかも、とヒソヒソ話していたら、女性が戻ってきて、
「店長、喜んでいました」
それだけ。
世の中、そんなに甘くない。

10日間はすごいスピードで過ぎていく。友達と別れるとき必ず言われたセリフは、
「今度は飛行機間違えるんじゃないよ!」(ウルサイわね)

追伸:日曜日、豊洲ららぽーと紀伊國屋に来てくださった方たち、ありがとうございます。直接お目にかかれて嬉しかった!

何を言おうか考えてる顔・・・米澤よう子さんと。

写真 (7) (560x420)


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頑固な時差ぼけを治す法

飛行機で殆ど眠らなかったので、着いた日は鉛のように疲れ、11時には倒れていた。翌朝目覚め、9時かと思ったら12時15分前!
それが悪かったのかどうか知らないけど、娘と私は深刻な時差ぼけ。身体は疲れて12時頃寝ても、午前2時とか3時にぱっちり目が覚める。仕方ないから本を-しかも退屈そうな本を選んで-読むけど全然眠くならない。朝方やっと2-3時間ウトウト・・・

おかげで目は腫れ(娘「いつもとそんなに変わらないわよ」)、一日の前半はぼーっとしている(いつもと変わらない?)。
入眠薬も効かない。ほんとにパッチリ、が4日続く。
「昼間は色んなことしてるからいいけど、夜、電気を消すと不安になる」と娘。
「何が?」
「研修のこととか、道に迷わないかとか・・・」

Stage/研修と呼ばれるのは、大学や専門学校で義務づけられている、会社での見習い期間。美術学校に行っている娘は、イラストレーターのアトリエで5週間研修することになっている。
つまり、これは時差ぼけではない・・・娘の不安が私にも伝染し、2人して眠れないのだ。

研修が始まり、先生がとても親切で、不安は減ったものの、東京の街は大きすぎ(パリの7倍)、来るたびにメトロが1本増えている。私だって毎日のように人に聞く始末。日本語にまだ自信がない娘が「東京で迷ったら大変なことになる」と心配するのはもっともだ。
2日前、初めて研修先にひとりで出かけた彼女が、乗り換え駅を乗り過ごした。どーしよう!と電話してきたけど、どーしろと言えるほどメトロ路線図がわかっていない。
人に聞いて、20分遅刻で目的地に辿り着いたとか。
迷って却ってよかった、と内心思ったけど、果たしてルンルン帰ってきた娘は、
「もう怖くない。迷っても“世界の終わり”じゃない」
そしてその夜は初めてぐっすり眠った。
失敗は成功の母・・・母も夜中にパッチリにならずよく寝た。


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しゃべりすぎる家電たち

日本ではことが何でもスピーディに運び、フランスのほうがグズグズと時間がかかる、と思っていた。でもその思い込みが裏切られる。
ウィークリーマンションWIFIのが繋がらなくて、サービス会社に電話した。10分以上も話して切ると、待ちかねていた娘が「ナンダって?」
「コンセント一度抜いて、10秒待ってまた入れろって」
「それだけのことになんであんなに長話していたの?」
「・・・・」
電話の相手は「恐れ入りますが、お客様のいらっしゃるマンション名を伺えますでしょうか?」答えると、
「ありがとうございます。恐れ入りますが部屋番号を伺えますでしょうか?」
答えると「ありがとうごさいます。恐れ入りますがお客様のお名前を・・・」
一度に聞いてくれたら良かったのに・・・
「つまり、すべてに『恐れ入りますが』と『ありがとうございます』がつくんで、話が長いのよ」と私。
「ふーん」
電話に出た人だって、何も好きでやっているわけではなく、”マニュアル”通りに繰り返しているわけだから彼のせいではなく・・・マニュアル作ったのは誰だ?

翌日、娘を居候させてくれる友達夫婦の家に行き、“家の使い方”を教えてもらう。彼らが北海道に長期バカンスに出かける間、一軒家まるごと貸してくれるのだ。
この家のマダムは料理がすごく上手で、キッチンには調理家電がいろいろ揃っている。レンジはIHクッキングヒーターなので、うちと一緒、わかり易い。ONを押して、タイマーをセットして・・・ところがそいつがいきなりしゃべり出した:焼き物ですか?揚げ物ですか?吹きこぼれ防止はしますか?・・・それにいちいちボタンで答えないと、加熱が始まらない。
語彙に限りがある娘は、「ナニ?ふきぼこれ ??」

2年前息子と一緒に来たとき、マンションのお風呂がいきなりしゃべり出して2人で飛び上がった。
今日では、お風呂はもちろん、IHヒーターも、食器洗い機まで「これから乾燥に入ります」と報告し、洗たく機はしゃべらないまでもプログラムが20種類くらいある。
すべてが“親切に”なり、細分化した分だけ、慣れていない私たちには、複雑になり時間がかかり、突然の声にびっくりする。
娘のメモ帳はぎっしり埋まった。「これをなくしたら死ぬ・・・」
フランスのお風呂なんて蛇口をひねるだけ、IHは吹きこぼれれば消えるだけ。家の説明なんて5分で終わる。あの原始的な簡単さが懐かしい。


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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから20年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書2冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

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