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フィヨン圧勝:この政策でなぜ?

右派大統領選前選挙で70%を獲得して、アラン・ジュペに圧勝したフランソワ・フィヨン。左派まで投票してサルコジ潰しに躍起になっていたら、“第三の男”フィヨンがスルスルと勝ってしまった。

マダムのペネロープ。もしかしたら彼女がファーストレディ?

フランソワ・フィヨン夫妻

彼の政策は:
-就業時間、週35時間から39時間へ。
-公務員ポスト50万削減。
-TVA(付加価値税)20%から22%へ。
-代理母出産合法化しない。
-同性カップルの特別養子縁組、人工授精認めない。
-中絶の合法、同性の結婚合法は「法律改正はしないけど賛成できない」

50年前のフランスに逆戻りの、伝統的カトリック右派がなぜこんなに支持される?
オランド政権に権威がなかったからその反動?昔の道徳観と規律へのノスタルジー?

だってよく考えると、今だって学校教師や看護人や公共サービスの人員が不足しているのに、50万人も削減してどうなるんだろう?(すでに労組から抗議されている)
もうひとつ賛成できないのは社会保険。現在、医療費はまずSécurité Sociale/社会保険が払い戻し、不足分を民間のMutuelle/相互保険が、契約に応じてカバーする。
フィヨンの政策は、病気を《大きな危険(重病、治療に長くかかる病気》《小さな危険(その他大勢)》に分け、社会保険は《大きな危険》だけ負担、相互保険が“その他大勢”を負担する。
しかし。私たちは-ありがたいことに-小さな危険の病気に頻繁にかかる。第一《小さい》《大きい》の判断は難しい。気管支炎でも《大きい危険》という人が続出しそうだ。フランス人だものね。
これには現厚生相マリソル・トゥーレーヌがすぐ「待った!」をかけた:フィヨンの政策でいくと、一家庭の年間医療費が+3200ユーロになる。
どうやって算出したのかは知らないけど、個人の医療負担が増えるのは歴然だ。

・・・などなど「えっ ?!」という政策が少なくないけど、フィヨンさんのメリットがひとつ。彼はジュッペより、マリーヌ・ルペンに対抗できそうだ。デフォルトでマリーヌを選んでいた人たち、「同性の結婚」に反対してデモを繰り返していた伝統カトリックの人たちはフィヨンに投票するだろうから。これは大きなメリットだ。


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半世紀経っても色あせない『男と女』

ドーヴィルの寄宿学校に入っている娘と週末を過ごし、パリに戻る電車に乗り遅れるアンヌ。
同じ寄宿学校に入っている息子と週末を過ごしたジャン=ルイは、アンヌを乗せて車でパリへ。

映画『男と女』

アンヌは映画のスクリプター、俳優でスタントマンの夫を撮影中の事故で亡くしている。
ジャン=ルイはレーサー、やはり妻に死なれている。
彼女と彼は急速に接近する・・・美しすぎる2人の、美しすぎる恋物語『男と女/Un homme et une femme』。

若いころのジャン=ルイ・トランティニアンは(若いころの)ケビン・コスナーに似てない?
2012年『愛、アムール』で久しぶりに姿を見せた

映画『男と女』

1966年の作品だからちょうど50年前。カンヌ映画祭のパルムドール、アカデミー賞、ゴールデングローブ賞など取りまくり、主題歌とドーヴィルを世界的に有名にした。
デジタル・リマスター版がパリで上映されている。最後に観たのは10年前?もっと?また観たいと思っていたので、娘に「一緒に来る?」というと意外にも「行く」
美術学校の先生から「古い映画を観ろ」と言われていて、秋休みはエリック・ロメールを観ていた。

冬のドーヴィル、誰もいない海岸を歩く2人、走り回る小さな子供たち・・・ロマンチックに浸っていると、アンヌがジャン=ルイに電報を打つシーンで「携帯電話なかったのね」と娘。
あるわけないだろ。電話だって、交換手に「モンマルトル1525お願いします」だ。
観に来ている人たちは、70代以上が多い。「年代を感じる」と言う声に振り向くとかなりのおじいさんだった。
そうかな?私は逆に、口説き方、突進する男、躊躇う女・・・何も変わっていないと感じた。
でも今日、こういう“美しい男女の、映画のような恋物語”を作ったら、「なにコレ?」と言われるかも。

『男と女』はルルーシュ、アヌーク・エメ、ジャン=ルイ・トランティニアン、冬のドーヴィル、ダバダバダ・・・だからできた不滅のマジックだ。
『Un homme et une femme』(1966)
クロード・ルルーシュ監督
主演:アヌーク・エメ、ジャン=ルイ・トランティニアン、ピエール・バルー
1時間40分

パリではレンヌ通りのArlequin、ゴブランの Escurial、
東京は恵比寿ガーデンシネマで上映中。

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必ず待たされる。うっかり時間通りに着いたら、果たして「すぐ着く!」のSMS。
“すぐ”とは?10分?15分?今どこにいるのかもわからん。意味のないメッセージ。
「どこにいるの?」「ナシオン」
待ち合わせがオペラだから「すぐ着く」わけないだろ、まったく。

仕方なくデパートのクリスマスイリュミネーションを見に行った。
ギャルリー・ラファイエットは真っ白な紙細工。

クリスマスイリュミネーション2016

こういうのボン・マルシェがやりそうだ。ギャルリー・ラファイエットはいつももっとカラフルじゃない?

クリスマスイリュミネーション2016

まだ時間があるのでユニクロに入る。
ダウンを見ていたら、3歳くらいの可愛い中国人の男の子が泣きながら走ってきた。
あらら、お母さんが服に夢中で(私もよくやった)迷子になったの?
すぐに中国人の店員さんが気づき、(中国語だったので想像するに)「ほら、お母さん、あそこ」と私を指さす。
私?! 違う違う、お母さんじゃないわよ!
男の子は、他人の子供にされそうな恐怖と怒りから、なんと私をぶち始めた。
やだ、私、何もしてないでしょ!そういうのお門違いって言うの!
そこへ、実の母が「おお、なんとか(子供の名前)!」と叫びながら走ってきた。
ひしと抱き合う母と息子。めでたしめでたし。
母に抱かれた男の子は、涙の溜まった目で恨めし気に私を見るのであった。

やっと着いた息子に、
「あなたが遅れてくるから3人目の子の母になるとこだった」
と話すと、
「若く見えたんだからいいじゃない」
全く反省の色なし。その上、私を黙らせるセリフを心得ている・・・


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カトリーヌ・ドヌーヴらが署名運動:オランドいじめを止めて!
Tête de Turc(トルコ人の頭=いじめられっ子の意味)という表現があるけど、フランソワ・オランドはまさにそれ。何かにつけ批難され、いじめの対象になってきた。(それにしてもなぜトルコなんだろう?トルコ大使館の訴えで廃止になった、日本の“トルコ風呂”だってそうだ)

からかいやすいキャラなのかも

ストップ!オランド・バッシング
photo:lepoint

そこで、カトリーヌ・ドヌーヴ、ジュリエット・ビノシュなどが署名運動を始めた:ストップ!オランド・バッシング。

ストップ!オランド・バッシング

(左上から右へ)カトリーヌ・ドヌーヴ、ジェラール・ダルモン(俳優)、シルヴィー・テステュー(女優・監督)、バンジャマン・ビオレ(歌手)、
(左下から右へ)ドゥニ・ポダリデス(俳優・監督・アカデミーフランセーズ団員)、ジュリエット・ビノシュ(女優)、ドミニック・ベヌアール(俳優・監督)、マザリヌ・パンジョ(故ミッテラン大統領の娘、作家)

その内容は:
「就任時からフランソワ・オランドは不当に糾弾されてきた。絶え間ない中傷は、共和国の機能と大統領の職務を損なってきた。フランソワ・オランドは国家首領として、国際的な危機と国内で起きた忌まわしい事態を対処してきたのに、それは今日も続いている。

教育省に新ポスト設立、教職者の手当是正(教授に比べて低かった教師の給料引き上げ)、警察官と司法官数の増加、若者の雇用援助、見習い制度の援助、すべての人に結婚の権利、職場における男女の平等強化、女性のセクシャルハラスメント対策強化、国家予算赤字を5.1%(2011)から3.5%(2015)、減税、失業率低下・・・この4年間に遂行されたことは、ことごとく無視され、歪曲され、糾弾、罵り、卑劣なウソに置き換えられた。

私たち、アーティスト、スポーツ選手、クリエーター、思想家、研究者、実業家・・・は、民主主義を脅かすこの執拗なバッシングを告発する。
フランソワ・オランドは、国民として、私たちの共和国の大統領として尊敬される権利がある」
写真家のレイモン・ドパルドン、アニエスB・・・各界の有名無名の人がすでに署名しているとか。

政策やその成果で、批難すべきとこはあるけど、相次ぐテロで、これほど困難な時期に直面した大統領はいない。
ストレスでぶっ倒れないのが不思議。痩せもしないから胃潰瘍でもないらしい。
野党の政治家が「自分ならこうした」と事後に言うのはあまりにたやすい。
オランドさん、この署名運動でいじめが少し鎮まるといいね・・・


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予想ではジュペがトップでサルコジが後に続いていた。
でも予想が当てにならないのはブレキシットやトランプで証明されている。
右派・中道大統領候補前選挙の第一回投票、2位を大きく引き離してトップに出たのは:
フランソワ・フィヨン44%。
アラン・ジュペ28.1%
サルコジ21.1%

右派・中道大統領候補前選挙の第一回投票
visuel: lemonde.fr

ところで誰が投票するかというと右派・中道の支持者だ。左派でも『右派と中道の共和主義の価値観に賛同する』という憲章にサインすれば投票できるので、“一時的に右派”になって、ジュペに投票する反サルコジ派もいた。

フランソワ・フィヨンはサルコジ大統領時の首相で、サルコジが国内のことも仕切りたがるので影が薄かった。
でも眉毛は濃くてリッパ。いつも仕立てのいいスーツを着ているダンディ。
候補者の中では”保守派”で、真面目、誠実(私腹を肥やしたりしなさそう)なイメージがウケたのか?

フランソワ・フィヨン

そのフィヨンが第一回投票10日前くらいからラストスパートをかけてきて、ジュペも真っ青のトップ。
しかしもっと真っ青はサルコジ。
上位2人で次の日曜日に決選投票、ということはサルコジのレースはここで終わりということだ(ほっ)。
選挙運動資金の疑惑(ニセ領収書、リビアから500万ユーロ?)の上、極右に近づく政策(移民問題、徴兵制度復活・・・)で、もう引っ込んでほしいと思っていた人が多かったということ。
でも本人はそうは思っていなかったらしく、負けが確実になってくると選挙本部はどよめいた。間もなくサルコジが現れ、けっこう長い演説をした:自分は国民を説得するに至らなかった。支持をしてくれた人たち、選挙運動の参謀たちに心から感謝。妻のカーラや子供たちにも苦労をかけた・・・そして第二回投票ではフィヨンに投票してくれ、と。

このまま行けば大統領選はフランソワ・フィヨンVSマリーヌ・ルペンの対決?
サルコジVSルペンよりはいいか・・・


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息子から回ってきた本。ジョナサン・トロパーの『Perte et fracas』(荒々しく)

ジョナサン・トロパー仏語版

服と本を買う時だけ「時間ある?」とお誘いを受けるから、この夏一緒に買った本の一冊が、友達の手を経て、やっと私のもとへ。

邦訳タイトルは『ぼくが妻を亡くしてから』。表紙の雰囲気もすごく違う。

ジョナサン・トロパー『ぼくが妻を亡くしてから』

アメリカ人作家で、原題は『How to Talk to a Widower』だから、仏語タイトルはかなり“荒々しく”変えている。

アマゾンの【内容】によると、
『周囲の反対を押しきり、11歳年上の美しいシングルマザー、ヘイリーと結婚したダグ。が、わずか2年後、彼女は事故で亡くなってしまう。その死から1年が過ぎても、ダグは悲しみとやり場のない怒りにとらわれたきり自分の殻に閉じこもっていた。そんな折り、ある事件がきっかけで彼はヘイリーの息子と一緒に暮らすことを決意する。同じつらさを抱えた者同士の生活のなかで、ダグはふたたび生きる道を探しはじめるが…突然愛する女性を奪われた男が、義理の息子や家族の絆を通して希望を見出していく、愛と再生の物語』

これだと、ひたすら悲しく勇気づけられる物語みたいだけど、実はかなり可笑しい。
ダグの家族-認知症だけど時々以前より明晰になる父親、独自の価値観で生きる母親、滅茶苦茶セクシーで美人の双子の妹-の描写が可笑しい。妹の企みで、独身の女性候補者と“お見合い”するシーンは、会話だけで相手のキャラが浮き彫りになる。
亡妻の息子ラスとヘイリーのお墓詣りに行くと、
“お墓の前に座って、亡き人に話しかけるというのはどう考えてもばかばかしい。もし死後の世界があり、死者が私たちの言うことを聞けるなら、どこでも話ができるはずじゃないか?お墓じゃないと、『電波が届かないところにいます』で通話できないとでも?
とにかく、もし僕が幽霊だったら、自分のお墓には絶対出ない。ふつうの日だって鏡を見るのが嫌いなのに、腐敗していく自分を見るなんて、ノーサンキュー“
深夜にひとり笑い。私だって化けて出るなら、墓地以外を選びたい。

ベースは傷心の物語だけど、一捻りあるユーモアが散りばめられていてメロになっていない。

それにしても、これほどヘイリーを愛したダグ、これほどダグに愛されたヘイリー・・・リタ・ミツコが歌っているように“恋物語は大概、悪い結末”だけど、その恋を生きたことを後悔しないものだ。


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4日後の日曜日に右派・中道のPrimaire(予備選挙)があり、大統領選候補者1人が選ばれる。
有力なのはアラン・ジュペ(シラク大統領時の首相、ボルドー市長)とニコラ・サルコジ(2012年にオランドに負けたとき『政治を引退』宣言したはずの)。
“有力”とは、『誰に投票するか?』のアンケート結果をもとにした予想だ。ブレキシットでも米大統領選でもこの“予想”が見事に外れたから、どこまで当てになることやら。

予備選挙に先立って候補者の討論会。
左から、一番美男ブリューノ・ルメール、最年長アラン・ジュッペ、紅一点ナタリー・クシュスコ=モリゼ、説明不要ニコラ・サルコジ、パン・オ・ショコラのジャン=フランソワ・コペ、キリスト教民主党のジャン=フレデリック・ポワッソン、サルコジ大統領時の首相、フランソワ・フィヨン

仏大統領選、予備選挙

左派は、というと、
-オランド大統領が12月初めに再出馬するかどうかを決め(しないほうが賢明)
-親分が諦めれば首相マニュエル・ヴァルス
-オランドの政策に反対して辞職した元経済相アルノー・モントブール
-2012年は左翼戦線で立候補して敗れ、今回は無所属のジャン=リュック・メランション。
そして極右、マリーヌ・ルペン。

トランプの勝利でフランスがどよめいたのは、これが追い風でマリーヌ・ルペンが大統領になるのを心配するからだ。
サルコジVSルペンの決選は、トランプVSクリントンに似ている:どっちも嫌いだけど、“どっちがより嫌いじゃないか”で選ぶ。
というのも、オランド大統領&ヴァルス内閣の支持率の低さから、どう考えても、ジュペかサルコジVSマリーヌ・ルペンで2次投票になる。左派の有権者の多くは、サルコジよりはジュペがいい。
そこへ、8月に辞職した元経済相エマニュエル・マクロンが出馬表明。

16日11時、出馬表明したてのマクロン

仏大統領選、エマニュエル・マクロン出馬表明

銀行家から政界入りし、左派でも右派でもない、アンチ旧体制を謳う若干39歳。
「いつも同じ顔ぶれ、見飽きた」という若者たちの票をどれだけ集められるか?
2次投票、ルペンVSマクロンもあり得ないことじゃない。
トランプが勝って、カナダへの移民希望が殺到したように、マリーヌ・ルペンが大統領になったら・・・でもどこに行こう?


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11月13日が近づいて、連続同時テロ一周年記念番組がいくつか放映されている。
撃たれて生き残った人たちのインタビューは娘と観ていて二人で泣いた。
バタクランで床に伏せていて、気がつくと隣の恋人が動かなくなっていたという若い女性。
「彼を置いていくなんて信じられない、自分は鬼のようだ、と思いながら逃げた」彼女は背中を撃たれていた。
「一緒に子供を作って・・・私の将来は彼なしでは考えられなかったのに」

『Cellule de crise(危機対策室)』は、2人のジャーナリストが、警官や人質になった人の証言、パトロール車と指令室の会話をもとに、スタッド・ド・フランスからバタクランまでを再現している。
ニュースで何度も伝えられたこともあるけど、知らなかった事実もあった。

例えば、スタッド・ド・フランスに着いた3人のカミカゼ。自爆ベルトをつけた3人は競技場内に入ろうとするけど警備が厳しくて入れない。侵入方法を探すうち、一人の自爆ベルトは周りに誰もいないところで爆発した。不幸中の幸い。どうやら操作ミスだったらしい。

仏VS独のサッカー友好試合が“何事もなかったかのように”続けられたのは、7万人の観客がパニックになって出口に殺到したら大変なことになるから(確かにそうだ)。そして警備の警察官たちは、犯人は競技場内に入っていないという確信があり、中にいたほうが安全と読んだから。

警察や救助隊がショック状態になるのはこの後だ。パリ10区、11区の、人がたくさん入っているカフェ6軒にカラシニコフを持った犯人たちが現れる。
パリ警察の指令室には3000件の通告電話がかかり、応対するのは6人!
救助隊がすぐ来なくて、カフェのひとつでは、近所に住むリタイアした医師が救助を始めた。
もう一軒のカフェでは、誰が誰に発砲したのかわからず、とにかく倒れている人に人工呼吸を始める。実はそれが犯人だった。

自宅にいた警官も総動員(警察署で武器を持って現場に向かうので時間がかかる)で、点在するカフェに駆けつける。
すると今度はバタクランだ。パトロール警官が指令部に、
「こっちでもテロだ、人を送ってくれ」と通報すると
「全部出払って車がない!」
番組は決して糾弾口調ではなく、前代未聞の出来事に直面した彼らのパニックを伝える。
そして、事件直後には話せなかった人たちが初めて口を開く。

11日、スタッド・ド・フランスでのフランス・スウェーデン戦も、
バタクランのスティングのコンサートも無事に終わった。

スティング、バタクラン・コンサート

「今夜、私たちは、この歴史的な場所で、命を亡くした方たちを思い出し、人生と音楽を称えるという2つの務めを両立させなければいけない」というスティングのメッセージ。

そういえば「(テロ後の)フランスはもうフランスじゃない」と言った人が、次の米大統領になるんだ・・・

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あれから1年経つんだ・・・11月13日の連続同時テロ。
スタッド・ド・フランスでは試合が再開され、11区のレストランも前のようなお客数になっている。
死者90人、怪我人130人を出したバタクランだけが扉を閉ざしていた。あのコンサート会場の前を通るたび、テレビの実況にかじりついていた夜が蘇る。

バタクラン再開

1年後、11月12日(土)にバタクランが扉を開ける。全面改装(以前通りに)され、ステージに立つのはスティング!
「事件直後の最優先は犠牲者(とその家族)に話すことだった。メディアへの沈黙も、犠牲者たちの苦痛を考えたからだ。1年後の今日は、バタクランが生きていること、前進していることを世界中に見せなければならない」とディレクターのジェローム・ロングレ。
テロ当日、コンサートをしていたイーグルス・オブ・デスメタルも申し出たけど、犠牲者にとって生々しすぎる、と断ったそうだ。

その役目を買って出たのがスティング。ポリスのバタクラン・コンサートから37年後。

バタクラン、スティングのコンサート

彼は1サンチームのギャラも受け取らず、売り上げはすべて2つの犠牲者アソシエーションに贈られる。
チケットは8日(火)の朝からバタクラン公式サイトで発売。
・・・というニュースは11月4日、つまりかなり直前に発表された。
その日からチケット買いのスターティング・ブロックに立った私。
「バタクランの前に並んだら?」と息子。
「明け方から?」
「寝袋持って前夜から行くべき。スティングなら僕も行きたい」
彼は、ポリスとデヴィッド・ボウイとクィーンを聴かされて育ったという。いい教育じゃない。
でも私に並ばせて?この寒さにそんなことできるか!第一、サイトでしか売らないみたいだ。

8日朝10時発売と聞いて、10時前からバタクランの公式サイトへ。
「夥しいアクセスのため、少々お待ちください」とサイトは表示すらされない。4%・・・6%・・・読み込みのパーセントを時々見ながら、表示されたときは「完売」なんだろうな。1500席だし、犠牲者たちは招待される。
果たしてその通り。なんでも30分足らずで完売したとか。

行けなくても、バタクランが蘇るのは素晴らしい。前を通るとき気持ちがざわめくのは変わらないだろうけど。


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ゴンクール賞はレイラ・スリマニ。
ルノードー賞はヤスミナ・レザ。
アカデミー・フランセーズ小説賞はアデライド・ド・クレルモン=トネール。
文学賞、すべて女性、素晴らしい!と喜ぶと同時に、ゴンクール賞設立以来、113年で女性がとったのはたったの12回。男性101人VS女性12人。フランス文学界ってこんなにマッチョだったの ?!

レイラ・スリマニ。女性、若い(35歳)、外国生まれ・・・と異例のプロフィル。しかも可愛い。
毎年ゴンクール賞が発表になるオペラのレストラン、Drouant/ドゥルーアンで。

ゴンクール賞2016 レイラ・スリマニ
photo:lemonde.fr

今年のゴンクール賞候補のテーマは、自殺・嬰児殺し・民族大虐殺・人食い・・・。
「ソフトなテーマは来年お越しください」だったそう。なんという時代・・・

その中で“嬰児殺し”が受賞した:モロッコ出身のレイラ・スリマニ『Chanson douce(優しい歌)』は冒頭から:
「遅すぎた。赤ん坊は既に死んでいた。姉ももう長くはなかった。2人を殺してから、乳母は自分の喉にナイフを突き立てた。でも死ねなかった。彼女は死を与えることしか知らなかったのだ。」

著者は、殺人は詳しく描写せず、それ以前に何があったのかを語る。
子供たちの両親は「年取りすぎていない、ヴェールをかぶっていない(イスラム教ではない)、タバコを吸わない」という理由で、ルイーズを乳母に選んだ。
これが“大当たり”で、赤ん坊の世話だけでなく家事もこなし「非の打ちどころのない乳母」「妖精」と両親は大満足。「メアリー・ポピンズみたいな」ルイーズに、彼らはプレゼントをあげたり、ギリシャのバカンスに一緒に連れて行ったり、「ルイーズは家族の一員ね」というまでに。
ルイーズは“控えめながら、なくてはならない存在”になる。

じゃ一体なぜ?
ここまで聞いたら、読まずにはいられない。
ルース・レンデルの『ロウフィールド館の惨劇』を思い出すけど、テーマは全然違うようだ。買うしかない。


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お嬢様と侍女の恋!『Mademoiselle』

1930年代、日本占領下の韓国で。ヒデ子は、変態で専制的な叔父と、広大な館に暮らしていた。
そこへ新しい侍女Sookeeがやってくる。
実は、Sookeeは詐欺師の一味、“日本の侯爵”と名乗る仲間が、ヒデ子を口説き、財産を奪おうという企みだ。

mademoiselle5.jpg

周到に用意したはずが、筋書き通りには運ばない。
なぜなら、ヒデ子とSookeeは恋に落ち、
可憐で世間知らずに見えるヒデ子は、実は相当の悪女。
Sookeeは打ち合わせ通りに動かず、
詐欺の首謀者である“伯爵”は実はアホ。

誰が誰を騙し、最後に笑うのは誰か?

イギリス人作家サラ・ウォーターズの小説『Fingersmith/荊の城』をパク・チャヌク(『オールド・ボーイ』『渇き』・・・)が映画化。

『Mademoiselle/お嬢様』

パク・チャヌク『Mademoiselle/お嬢様』

伯爵の口説きにシラケた顔のヒデ子

パク・チャヌク『Mademoiselle/お嬢様』

スリラー+ロマンスに、ユーモアあり、背徳あり、ヴァイオレンスあり、造形美ばっちりで、東洋にファンタズムを抱くフランス人が狂喜しそうだ(実際していた)。同時に、東洋の女性=従順で美しいオブジェ、というイメージを覆している:お嬢様&侍女のコンビは、したたかで行動力があり男たちの裏をかく。痛快!
“日本語を話せるのがインテリだった”当時の時代背景もうかがえる。そう、字幕は日本語が黄色、韓国語が白で出る。

ヒデ子とSookeeが美しい。2人のラブシーンは、『アデル、ブルーは熱い色』とは違ったエロチシズム。
少女のような体つきと意外な大胆さのミスマッチ。

パク・チャヌク『Mademoiselle/お嬢様』
photos:allociné

2時間半を長く感じないエンターテイメント。お奨めです。

Mademoiselle

パク・チャヌク監督作品
主演:Kim Min-hee、Kim Tae-rim、Jung Woo-ha/ハ・ジョンウ
2時間25分
フランスで公開中


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59歳、建具屋、妻に先立たれて一人暮らしのダニエル・ブレイク。心臓発作で危うく一命を取りとめ、お医者さんから仕事をしてはいけないと言われる。
傷病年金を申請しようと、社会福祉の下請けオフィスに行くと、まるで心臓と関係ない質問をされ(目は見えるか?手は挙げられるか?・・・)挙句、「健康である」と判断される。つまり傷病年金はダメ。

それでは失業手当をと、国民保険のセンターに赴くと、手当を受けるためには就職活動をしなくてはダメと言われる。
失業手当願いの書類はパソコン上で、自分で記入しなくてはならない。パソコンを触ったこともないダニエルは四苦八苦。

手書きの履歴書を手に、工事現場から工事現場に職探しが始まる。
「仕事?ないねえ」という返事が続いたあと、ダニエルの履歴書に関心を持つ工事主任に出会う。「若い子はすぐ辞めちまう。あんたのようなベテランを探していた」
ところが“採用”の電話をもらっても断らなくてはならない。失業手当をもらうため、職探しのふりをしているだけだから。
とにかく職探しはしたから、と再び福祉サービスに赴くと、「え?履歴書を渡しただけ?それじゃ職探しをしている証拠がないじゃないですか !?」
ダニエルはカフカ的な迷宮に怒りと疲れを覚えだす。
窓口の人間の言うことはすべてマニュアル化され、手続きはすべてコンピュータ処理。私は番号でしかないのか?・・・

社会福祉センターで、2人の子供を抱えるシングルマザーのカティと知り合う。家族は大家から追い出され、仮のアパートに住んでいる。ダニエルは水漏れや故障を直したり、子供と遊んだり。それは唯一、人間の温かみを感じられる時間だ。

ある日、一緒に食料の支給所に行く。何日も食べていなかったカティはそこでキレてしまう。
貧しいことは決して恥ずかしいことではない、君はひとりで勇敢に頑張っているじゃないか・・・カティを励ましながら、それは自分自身への言葉でもあると気づく。どん底の生活に落ちていきながら、必死で、尊厳を、自己愛を保ち続けようとしている自分への・・・

ケン・ローチ『I, Daniel Blake』

労働者階級や移民の日常を、ドキュメンタリーに近いほどリアルに描くケン・ローチ。
カンヌでパルム・ドールを取った『I, Daniel Blake/Moi, Daniel Blake』(日本語タイトルは『私、ダニエル・ブレイク』にはならない予感)

ケン・ローチ『I, Daniel Blake』

ケン・ローチ、80歳

ケン・ローチ『I, Daniel Blake』
photos:allociné

福祉国家だった古き良き英国(マーガレット・サッチャー以前)の生き残り、ケン・ローチが描く、「何とかして払わないように」の原則と、マニュアル化した応対の今日の“福祉機関”(イギリスの国民保険は、福祉を受けられるかどうかの判断を民間会社に下請けに出している)。そこでたらい回しにされながら、自尊心やユーモアを失わないで立ち続けようとするダニエル・ブレイク・・・ ダニエル役は、Stand-upのお笑いコメディアン、デイヴ・ジョーンス。

映画の終わり、珍しく拍手が起こった。
そして「あれに比べればフランスの福祉はマシだ」という囁きが・・・例えば、フランスでは冬の間、大家は、家賃を滞納しても追い出してはいけないという法律がある。小さい子供がいる場合は尚更だ。


Moi, Daniel Blake
ケン・ローチ監督作品
主演:デイヴ・ジョーンス、ヘイリー・スクワイアス
1時間39分
フランスで上映中


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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

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