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悪ガキの変身

モノプリのシリアルがずらりと並んだ棚の前で、何を買ったらいいのか途方に暮れていると、傍らで立ち止まる男の子。
「あら、ロベール」
同じ建物に住む彼は、動物愛護協会に寄付すると見え透いたウソでお金をせびりにきたり、公園の砂場で他の子供に砂をかけたりで悪評高い。でも不思議と私は嫌いじゃない。
「また背が伸びたね、元気?」
ロベールは現行犯で見つかったみたいにソワソワして、
「うん、いや、その元気じゃない」
「?」
「ママンがお金くれるの忘れて・・・」
またか。
「何買いたいの?いくらいるの?」
「お菓子・・・6ユーロ」
この子、お金がなかったら万引きするかも・・・するだろう。
私がお財布を出すと、びっくりした顔。こんなに簡単に出すと思わなかったらしい。
「20ユーロ札しかない」
「僕はかわまないけど」
「私はかまうの。おつり持ってきてね」
ロベールは既にいなくなっていた。

やっとシリアルを選んでレジに行くと、ロベールも並んでいた。彼の計算通り6ユーロちょっとで、私におつりを渡した。
「メルシーボクー!」
そういえばこの子からメルシーなんて言われたことなかった。
うちに帰ってその話をすると、
「毎回、モノプリで待ち伏せしてお金をせびられたらどうするの」と娘。
その可能性を考えなかったわけじゃないけど。まあその時はその時で。

後日、私が物置きの整理をしていたらロベールが通りかかった。
「手伝おうか?」
一瞬、聞き間違いかと思った。今までボンジュールと言っても返事すらしなかったから。
「あ、もう終わりだから大丈夫。ありがとう」

ロベールは養子で、養母と2人暮らし。その養母の女性が問題ありで、怒鳴ってばかりいる。彼女の声が建物全体に鳴り響くと「また始まった」
ロベールはもう慣れっこになっている。つまり母親が声を枯らして怒鳴っても全然効き目なし。9月に中学生になって、これから思春期で難しい時期なのにどうなるんだろう。
「養子を取るには厳しい審査があるんだけど、よく許可が下りたな」と夫。
あの養母に当たらなかったら、ロベールの人生は違っていただろうと私は同情してしまう。

そのまた数日後の夜。台所にいたらベルが鳴って、娘の友達かと思ったら、
「ロベールだよ、ママンに用事じゃない?」
ドアを開けて「なに?」と聞くと、
「こんばんはって言おうと思って」
「・・・・」
ジーンときたわね・・・私が彼の味方ってことをやっとわかってくれた?
モノプリで待ちかまえていたことも一度もないし。若い友達がひとり増えたみたい。


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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

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