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ロベールの“アルバイト”

ある晩、うちに向かっているとロベールが追いついてきた。
「学校うまく行ってる?」
彼はうちの子供たちが行っていた中学に9月に入学した。
「ううん・・・ルイが20ユーロくれるっていうのにママンがダメって言うんだ」
「ルイってクラスの友達?なぜ20ユーロもくれるの?」
「彼が言った“悪い言葉”をほかの人に言わないように」
つまりアンタが脅迫したってこと?と出かかったセリフを呑み込んで、
「そりゃマズイよ。お母さんの言う通り、受け取っちゃダメ」

翌日、ロベールがまた窓から手を振っている。
「なーに?」
「ボク、何でもサービスのアルバイト始めたんだ」
「何でもって?」
「買い物や片付け、犬や猫の世話、何でも手伝う。30分5ユーロ、1時間10ユーロ」
かってロベールが木の枝を振り回して追いかけたうちの猫たちは、彼の顔を見たら逃げ出すだろう。
この子に何が頼める?と思いながら、
「わかった。覚えとく」
とドアを閉めようとすると、ロベールは「待って!携帯の番号交換しよう」
そこへ彼の携帯が鳴りだした。
「ロベール !!どこで何してんの ?!宿題は?」
私まで聞こえる母親の怒鳴り声。ロベールは電話を耳から20㎝くらい離して聞いている。
「さっさと帰ってきなさい、わかった ??」
「OK」
「え?返事が聞こえない!」

ヤレヤレという顔で電話を切ったロベールに、
「お母さん、お小遣いくれるんでしょ」
「ノン」
本当かどうかはわからないけど、あの母親は“必要なものは買ってあげるからお小遣いはいらない”と言いそうな顔をしている。
子供にとってお小遣いは、大きくなったことの象徴、自由の象徴じゃないの。
「お母さんに交渉しなさいよ」
ロベールは曖昧に頷いてから、「ほかの住人にも営業してくるから。じゃーね」と去っていった。

とにかく。脅迫や、何もしないでお金をせびるのをやめて、お手伝いをしてお金をもらおうという発想は画期的だ。

翌日、ロベールから着信。頼むこともないから放っておくと、またやってきて、
「あの、料金に変更があった。例えば君が20ユーロの買い物を頼んだら、僕は10ユーロ取る」
「ちょっとそれ高すぎ。よく考えてよ。20ユーロの買い物が30ユーロになるなら誰だって自分でするでしょ」
ロベールは考え込む顔。
「30分ですむ買い物に5ユーロなら頼む人あるんじゃない」
そこへ犬を連れた住人が階段を降りてくると、
「あ、僕のクライアントだ!用事がないか聞いてくる」
と駆け出して行った。
この調子だと、毎日聞きに来るだろうなぁ。何が頼めるかマジに考えないと・・・


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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

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