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古いのに古びない小津の作品

フランスの映画批評で「オズの世界」「オズを彷彿とさせる」というセリフに時々出会う。
最初、なぜオズの魔法使いが出てくるの?と思ったけど、小津安二郎のことだった。

小津作品を知ったのはフランスに来てから。「え?オズ観たことないの ?!」と驚いた友人が連れて行ってくれた。
小津がフランスで(日本より?)人気があるのは、エリック・ロメールの日本版だからではないかと思う。2人ともふつうの人たちの人生の一コマを切り取り、人間関係や感情を細やかに描く。背景には時代を感じても、登場人物たちは少しも古びていない。

今年もいくつかの映画館で小津回顧特集をやっていて『彼岸花/Fleurs d’équinoxe』を観た。

左から有馬稲子、山本富士子、久我美子

小津安二郎 『彼岸花/Fleurs d'equinoxe』

大企業の常務、平山(佐分利信)は、適齢期の長女・節子(有馬稲子)の相手に頭を悩ませていた。
次女が「お姉ちゃん、自分でいい人見つけるわよ」と言うと「そうだといいけどねぇ」と鷹揚に返事をしていたくせに、谷口(佐田啓二)が会社に現れ、節子とつき合っていると言うと、途端に拒絶反応を示す。
一方、馴染の京都の旅館の女将(浪花千恵子)も、娘・幸子(山本富士子)の縁談にヤキモキしている。「お母ちゃん、あの人はどうか、この人が良さそうだ、と勝手に選ぶけど、自分の相手は自分で決めたい」と幸子に相談されると、「そりゃそうだ、幸子ちゃんの結婚だもの」(セリフはすべてアバウトです)と理解を示す。なんという矛盾!

この作品は1958年公開だから60年前。東京の風景やちゃぶ台の食卓に時代は感じても、人間の気持ちは変わっていない。

小津安二郎 『彼岸花/Fleurs d'equinoxe』

マッチョ夫(佐分利信)を巧みに懐柔する妻(田中絹代)

小津安二郎 『彼岸花/Fleurs d'equinoxe』

男たちは、形だけでも自分で決めないと気が済まない。「大事な娘をやるのに親の意見も聞かずに決めて!私は反対だ!」
女たちは真っ向からは反論せず、父親の顔を立てながら、小気味よくしたたかだ。

当時の名優が顔を並べ、女性たちがとても素敵。平山の妻(田中絹代)や浪花千恵子、山本富士子の着物が決まっていて、裾を少しも乱れさせず走る姿に見とれた。有馬稲子の“洋装”はそのまま真似したいくらいエレガント。

この映画、夫に見せたい。娘のボーイフレンドに懐疑的で「いい子じゃない」と言っても、ブスっとしている。“大事な娘”には、どんな男子も相応しくないと思っているらしい。ヤレヤレ・・・

彼岸花/Fleurs d'Equinoxe(修復バーション)
監督:小津安二郎
主演:佐分利信、田中絹代、有馬稲子、山本富士子、久我美子
1時間57分
パリのMK2Parnasse、MK2Bastille、その他インディペンダント映画館で9月4日まで


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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

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