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最後の授業

ナタン君は4月の初めから3か月日本に行く。
そのために段ボール会社で6カ月バイトしてお金を溜め、クリスマスプレゼントも「全部キャッシュでもらった」
Dokodemo」という日本留学支援サイトで東京の日本語学校の3か月コースに登録し、シェアハウスも見つけ準備万端。


dokodemo 日本留学支援サイト

1年半前、沈黙のほうが長かった会話もずいぶん続くようになった。
最後の授業で敬語の基本を教えたら、
「自分が“なさいます”と言ったらジョークになる?」
「なるなる」
「“召し上がりますか?”に願望を入れることができる?」
「入れてみて」
「召し上がりたいですか?」
「スバらしい!」
今は大学にも行っていないしバイトもしていないので、一日中日本語のアニメを観たり、『みんなの日本語』の総復習をしているそうで、上達するわけだ。
「お父さんとお母さんは何て言ってるの?」
「なんで日本なんだって」
「遠すぎる?」
「そう、日本で女の人に会ったらコワイって」
この文章だと日本人女性が恐ろしいみたいけど、「日本で女の人に出会って帰ってこなくなったら」を心配しているらしい。
「その場合は“コワイ”じゃなくて“シンパイしてる”」
「はい、シンパイしてる」
授業の終わりにナタン君はリュックからワインの瓶を取り出した。2010年のボルドーグラ―ヴ。
「お礼です」
「?!」
「ほんとにありがとうございます」
思いがけなくて、言葉に詰まる。
「帰ったら話を聞かせてね」
と別れたときの気持ちは、何年も前に初めて息子を日本に送り出したときのと似ているような気がした。


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春告げ猫

地上階のうちの窓にも日が差すようになり、猫たちが光を求めて右往左往はじめると、ああ春分が近いんだ、と。

「オーイ!ここに日が差してる」

タマ、リュリュ

早速、寝椅子(段ボール箱の蓋)登場。
「ナンだ、お前も来るのか?」

タマ、リュリュ

よく場所取りの喧嘩になる。リュリュはこっちに避難。

タマ、リュリュ

太陽に当たりたい、は動物の本能なのだ。
冬が長くて灰色のパリで、太陽が出るとカフェのテラス席が取り合いになるのも、動物の本能でしょうね。

紫外線(UVB)はビタミンDの合成を促進し、くる病やかっけ、骨粗鬆症(骨の密度が減る)の予防になる、のは知っていたけど、
-血圧を下げる
-いくつかの皮膚炎を改善する
-免疫を強化する
-目の疲れを癒す・・・などなど恩恵がある。
逆に太陽の欠乏は鬱を招く(季節鬱)。私は3年間、地下室がオフィスで、冬は確かに滅入った。

日本では毛嫌いされ(されすぎ)ているけど、程よく太陽に当たるのは身体にいいんだ、と猫に教えられる。
フランス人のガンガン焼き方は非常識だけど、足して2で割るとちょうど良さそうだ。

そのフランスでも日焼けサロンはどんどん姿を消している。なんでもメラノーマ(ほくろの癌)の43%はマシンによる急速な日焼けが原因だそうで、サロン禁止にはなっていないけど、基準が厳しくなった。例えば若い人のマシン日焼けが危険なので、18歳未満お断り。
と同時に、紫外線に当たりすぎると皮膚ガンの危険、ガンにならなくても皮膚の老化を早める、という知識(ジョーシキ?)が行き渡り始め、2009年には2万人を数えた日焼けサロン従業員が、今は半分になったとか。

皮膚の老化を早める、という情報は届いていないらしく、うちの猫たちは太陽を求めて今日も走り回っている。


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観に行った自分に腹が立つ

15年前、地元県のミスに選ばれ、華々しく北フランスの田舎を出て行ったサンドラが失業して戻ってきた。
なんとか見つけたサバ缶詰工場の仕事。ベルトに乗せられたサバを次々に缶に詰めていくのは女性ばかりだ。

昔の友達に再会する。
左からマリリン(オードレイ・ラミー)、サンドラ(セシル・ド・フランス)、ナディーヌ(ヨロンダ・モロー)

映画「Rebelles/反逆女」

唯一の男性、工場長は女性なら誰でも征服しようとするので有名。元ミスのサンドラにすぐ飛びつくが邪険にされ、闘争心を更に燃やし、更衣室まで追っていく。サンドラは抵抗し、不本意にも・・・殺してしまう。
工場長が持っていたスポーツバッグにはなんと札束がぎっしり詰まっていた。
昔の友達2人マリリンとナディーヌの協力で死体を始末し、さてこの大金・・・ちょうど3人ともお金に困っていた。

映画「Rebelles/反逆女」

3人の中で一番頭が働くサンドラは「サバ缶詰の工場長がこんな大金を持ってるはずがない。これはヤバい金に違いない」と・・・

『Rebelles/反逆女』

映画「Rebelles/反逆女」
photos:allociné

この出だし、桐野夏生氏の「OUT」を思わせる。深夜の弁当工場で働く女たち。事情はそれぞれ違っても「こんな生活から抜け出したい」という点で繋がっていた。
ある時、仕事友達のひとりが暴力夫を殺してしまう。彼女たちは団結し、死体をバラバラにして捨てる。

“女性の地位”も描きつつ、完璧と言っていい犯罪小説。映画化され舞台にもなり、英語に訳され、日本人で初めてエドガー賞(ミステリー小説のアカデミー賞)にノミネートされた。
ところがフランス映画のほうは、出だしだけ似ているけど似ても似つかない。お粗末なシナリオ、低級なギャグで、犯罪モノでもなく、コメディでもなく、社会派でもない。演技派女優3人も救えなかった。

第一、そんな映画を観に行った自分に腹が立つ。
「なんで途中で出なかったの ?!」と娘。全く・・・

Rebelles

アラン・モデュイ監督作品
主演:セシル・ド・フランス、ヨランダ・モロー、オードレイ・ラミー
1時間27分

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ブルーライトと網膜

「網膜に穴?」
「そう、たくさん穴が開いてるんだって」と眼医者から帰ってきた娘。
「網膜剥離と違うのね?」
「違うみたい。先生が最初になんて言ったと思う?」
「なんて?」
「Merde !」

網膜裂孔。穴を塞ぐため娘はレーザー光凝固をすることになった。
網膜剥離で2度レーザーをした私が「不快だけど痛くないって。それに数分で終わる」といくら言っても、ネットで恐ろしい体験談ばかり読んで怖がっている。
「大体、あなたの年で穴が開くってのは、ブルーライトの見すぎよ」
この子は動画やテレビシリーズまで携帯で観るし、絵の修正も全部PCでやっている。レザーを怖がっているクセに画面を減らす気配は全くない。

「ブルーライトが脳と身体に及ぼす害」の図:スマートフォンのブルーライトは睡眠を乱し、記憶力を落とし、網膜を傷つける・・・

lumière-1

「目が霞んで帰れないかも」と言うので、当日ついていった。先生にちゃんと言ってもらわなくちゃ。

20年来、家族全員が通っている眼科のシロ先生は定年退職を2回伸ばし、ついにこの3月末でリタイアすることになった。
伸ばしたのは後任が見つからなかったせい。一般医でも専門医でも、若い医師が自分の医院を持ちたがらないらしい。
責任が重すぎる、経費がかかりすぎる、と、あちこちで休暇中の医師の“代理”をしている。結局、シロ先生も後任が見つからず、35年間にわたるおびただしい患者データはすべて近くの眼科医院に送られた。

その日が医院閉鎖前最後のレザー治療なので、狭い待合室にはレーザー待ちの患者さんが10人。平均年齢(娘を除いて)70歳。事前に瞳孔を開く目薬を3回さすので、
「アタシ、2回したかしら?忘れちゃった」
「手が震えてさせない!」
「みなさん、レザーの前にお金を払ってください」と看護婦さん。
「なんだ、タダじゃないのか?」
と騒々しい。
娘の番になり、10分くらいして先生とともに現れた。
「お嬢さんのはブルーライトとは関係ありません」
横で娘がニンマリ笑う。
「そんな!この子がどんな生活してるかご存知ないでしょう?」
「網膜裂孔や剥離には色々な原因があって、お嬢さんのは、言ってみれば“製造上の欠陥”」
「 セイジョウジョーの欠陥?!」
「文句があるなら製造元(つまり親)に言いなさいね。はい、次の方」
満足げな娘と懐疑的な私を残し、先生は再びレザーに戻って行った。


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エルメス傘の修理はハウマッチ?

お店を買ったのはいいけど、お客は少ない(繁盛してたら売らないものね)
それに21世紀に傘修理なんて・・・
「そこでホームページを作った。当時、私は先駆者だった」
ヨーロッパ唯一の傘の修理職人というレアさが注目され、テレビにも出演。彼のユーモラスなキャラがウケて、
「日本のテレビにも出たよ。『もったいない』という番組」
次第に外国からも傘が送られてくるようになった。

アトリエに案内してあげよう、とティエリーさん。細い階段を上ると、傘の骨や持ち手や留め具や、修理を待つ傘が溢れている。

peps atelier1

ちょうどエルメスの傘が修理を待ってた。
エルメスにはバッグ修理人はいるだろうけど傘修理はいないから、彼のところに委託される。
生地は厚手コットン、渋いオレンジ、ステッキの持ち手。傘だってエスメスだと700ユーロ近いから修理したくもなるだろう。
ティエリーは傘を広げ、情け容赦なく骨を折って総取り替え。

エルメス傘

その間も階下にお客が来ると、細くて急な階段を駆け下りていく。よく落ちないね・・・
開閉を試してから、持ち手を付けなおし、ニスを塗る。15分ほどで傘は元通りになった。
「この傘の修理はいくらですか?」と聞くと「エスメスだって他のブランドと一緒」。じゃ50ユーロ?
ティエリーははっきり答えなかった。企業秘密?

エルメス傘

傘の修理を頼むお客のプロフィルは?と聞くと、
「うーん、特にプロフィルはないけど、年齢層は高め。30代が一番若いかね。そういえばこの前、100歳のおばあさんが傘を持ってきた」
「アタシは100歳ですよ」と自慢げに言うおばあさんと入れ違いに“バービーみたいに綺麗なマダム”が入ってきた(“バービーみたい”は決して誉め言葉ではないけど)。今のご婦人100歳なんだって、と言うと、
「アラ、アタシはいくつに見えます?」とバービー。
「ご婦人の年なんか・・・」とティエリーが言うと、
「80歳!でもまだイケますでしょ」とニッコリ。

「60~65にしか見えなかった。ほんとに“まだイケます”だった」
質のいいものを買って、修理に出して長く使う習慣は、この年代の人たちで終わってしまうんだろうか?
でもH&Mのスローガン「See now buy now(そして翌年には捨てる)」は消費者団体から叩かれていたし、Retoucherと呼ばれる服直し屋はパリのどの地区にもある。
ティエリーのような職業と、おばあさんたちのエスプリが引き継がれていってほしい、と私は思うけど。


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傘修理はエコロジー!

「この前、持ち手が取れた傘の修理をお願いしましたよね。新しい持ち手が22ユーロだったでしょ。夫に話したら『それなら新しい傘が買える』って」
「22ユーロの傘はすぐ壊れて捨てる。お金払って環境汚染してるってこと」
はあ、なるほど。帰ったら言って聞かせよう。

150万本。フランス(だけ)で毎年捨てられる傘の数。
ちょっとの雨では傘をささず、子供や若い子は傘を使わないこの国でこの数。
安いビニール傘が氾濫する日本では何百万本が捨てられているだろう?
ビニールやポリエステル、金具は地面を汚染する。
壊れた傘を捨てずに修理するのが、エコロジーな行為とは気づかなかった。
私は靴も修理するのが好きで、最年長は30年前のフランソワ・ヴィヨンのブーツ。ブランドはもうなくなってしまったからコレクターものになった。
自慢はさておき。
ヨーロッパで唯一の傘修理屋さん、ティエリー・ミエ氏に興味を引かれてまた訪ねて行った。
アトリエ・ブティックはパリで一番古いパッサージュ、Passage de l’Ancre/錨のパッサージュにある。
1637年、初めての辻馬車会社が登場したのがこのパッサージュだ。

パッサージュ・ドゥ・ランクル/passage de l'Ancre

カラフルな傘が溢れる小さい店で、ティエリーさんは年間約1万本の傘を修理する。
一見、気難しそうだけど実はそうでもない。笑顔が可愛い。

傘修理ティエリー・ミエさん

傘が好きだったわけでも、親の職業を継いだわけでもない。
彼はEcole Boulle/エコール・ブールという造形芸術の学校に4年間通い、家具メーカーRoche Bobois に就職(「仕事を見つけるのが簡単な時代だったね」)。家具チェック、販売員、そして仕入れ総責任まで上った。
「給料はよかったけど、15年経って同じことをやるのに退屈して辞めた」
もったいない・・・
潔く辞めたはいいけど、なかなか仕事が見つからず、たまたま傘修理屋が後継者を探しているのを知って会いに行く。
傘修理の経験なんてない。
「傘の修理を教える学校なんてないでしょ。みんな独学」

傘修理屋さんはティエリーにごく基本だけ教え、「君は手先が器用だ。私より上手い」
Ecole Boulleでは、版画、家具作り、彫金、製本などアート/工芸を一通り教えるので、お世辞ではなかったはず。
こうしてアトリエブティックが彼のものになる。2003年のこと(続く)


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神様のお陰?

フランソワ・オゾンの最新作は公開が許可されるかがギリギリまでわからなかった。なにしろバルバラン大司教裁判のまっ最中。
聖職者のペドフィリア(小児性愛)行為を、バルバラン大司教が知っていて隠ぺいした経過を描いたこの作品が、ジャッジに影響を及ぼすのを裁判所が恐れたからだ。しかも映画の登場人物は実名になっている。

結局予定日に封切りになった。『Grâce à Dieu/神様のお陰で』

フランソワ・オゾン 『Grâce à Dieu/神様のお陰で』

リヨンに住むアレクサンドル(メルヴィル・プポー)は銀行家。妻と子供5人、敬虔なカトリックのブルジョア家族だ。

フランソワ・オゾン 『Grâce à Dieu/神様のお陰で』

ある日、彼はプレナ神父が司教区に戻ってきたのを知り、30年前の記憶が蘇った:教会のボーイスカウトに入ってた彼は、ブレナ神父から何度も性的愛撫を受けた。しかも被害者は彼だけではなかった。
30年間、悪夢を押し込めてきた。でももう黙っていられない。子供たちに同じ思いをさせてはいけない。彼はプレナ神父を役職から外してくれるよう教会に手紙を書く。
アレクサンドルの訴えはバルバラン大司教まで届くが、事態は変わらない:プレナ神父は相変わらず教会にいて、子供たちに公教要理を教えている。彼は他の被害者たちとアソシエーション《解放された言葉》を作る。重い口を開く人が増えていった。

前列の4人が被害者の”代表者”。どの被害者も、なんらかの“後遺症”を抱えていた。

フランソワ・オゾン 『Grâce à Dieu/神様のお陰で』

彼らはメディアに働きかけ、隠ぺいしようとする教会と戦おうとする。

女装することでアイデンティティを発見する男性の話『彼は秘密の女ともだち』、ブルジョア家庭の娘が売春する『17歳』など、性の形を、挑発的に描いてきたフランソワ・オゾン。この作品ではトーンがガラリと変わり、事実を追ったドキュメンタリーに近い。

どうして被害者たちがこんな長い間黙っていたのかがよく描かれている。
当時、親たちが子供の訴えに取り合わなかった。神様との仲介をする神父がそんなことをするのが信じられなかった。世間体もあった。子供たちも最初は神父に”気に入られた”ことを誇りにさえ感じたのだ。

信仰というのは個人的なものなのに、その上に政治力、権力を持った教会という制度がある。
私のおばあちゃんは熱心なキリスト教だったけど、プロテスタントとかカトリックとか形式は構わず、“直で”神様と繋がっていたような気がする。当時はぶっ飛んだ人だと呆れていたけど、あのプリミティブな形が本当なんじゃないか、と最近思う。

映画の中でバルバラン大司教が記者会見で言うセリフ:
「とにかく昔の話です。神様のお陰で時効になりました」(タイトルはここから)
記者のひとりがはじかれたように立ち上がる。
「あなた、今暴力的なを言いましたね。“神様のお陰”とは“幸いにも”ということですか?」
全くなんてこと!被害者たちにとっては時効になってないよ!
数日後のニュースで、バルバラン大司教には執行猶予付き禁錮6カ月の有罪判決が下りたのを知った。

Grâce à Dieu
フランソワ・オゾン監督作品
主演:メルヴィル・プポー、ドニ・メノシェ、スワン・アルロー
2時間17分
フランスで公開中


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「ムスメさん帰ってきてにぎやかになったでしょ」と友達。
「それが“なりすぎ”たのよ」
娘が戻って来ると、彼女のボーイフレンドも“うちで暮らす”ようになった。経済力のない2人だから、選択肢は、うちか彼のうちしかない。彼の家は郊外で、「遠すぎる」と娘がなかなか行かないので、自然とうちになった。
つき合って2年になるその男子は、パリのボザールに通っていて、なかなかいい子。
最初は「ハタチの恋が続くはずがない」と思っていたけど、ますます仲が良くて、最近「もしかしたら・・・」と思うようになった。

そこまでは予想していたけど、もう一人、娘の親友が転がり込んできた。
住んでいたアパルトマンを追い出され「別のが見つかるまで泊まらせて!」
両親は彼女が小さい時に離婚、母親とは上手く行かず、父親は若い女性と一緒になり子供を作り、別れてまた他の女性と子供を作り、また別れて他の・・・を繰り返している。
・・・という境遇なのにグレることもなく可愛い性格、1年前からレストランで働いている。
だからイヤとは言えず、うちはユースホステルのようになった。
「今夜、うちでご飯食べる人は?」
「まだわかんない」
「アタシ、肉は食べないの」(知るか!)
「お風呂、誰が入ってるの ?! もう1時間になる!」
「〇×よ、次はあたしの番なんだから」(私はどうなる!)
「ボク、7時ごろ帰るけど、誰かいる?」
「ところで誰が鍵持ってるの?あの鍵、高いんだからなくしたら罰金よ!」

猫たちは静かな場所を探して彷徨った。
タマは窓辺で瞑想に耽り・・・

タマ

リュリュ!落ちるよ!

リュリュ

「アパルトマンが見つかるまで」という親友の子は本気で探している気配もなく、見学にも行かず。娘に聞くと「望みが高すぎて見つかるはずがない」という絶望的な意見。
確かにパリは高い、高すぎる。うちの隣のステュディオが14㎡で600ユーロ。娘がアングレームでクラスメート2人と借りていたアパルトマンは120㎡で850ユーロと夢のような家賃だ。
でもこの“同居”に一番困っていたのは娘だろうね。本の作業していても、おしゃべりにやってくる。イラつくけどむげにはできない。よく、同居するには友達より少し距離がわる人とのほうが上手く行く、と言われる訳だ。

結局“1週間か10日”が3か月住んでいた。
来たときはベジタリアンで、豆腐とキノアのサラダなど食べていたが、次第に私たちが食べているものを羨ましそうに見るようになり、「同じものが食べたい」と言い出し、ステーキでもハンバーグでもパクパク食べるようになった。

「じゃアパルトマン見つかったの?」と友達。
「ううん、叔母さんのうちに一部屋空いたんだって」
というわけで、やや静かな生活が戻ったのだ。


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20歳の決断

「え!あなたのムスメ、パリに戻ってきたの?」
「そう」
「アングレームの学校、やめちゃったの!どーして ??」

去年の暮、深夜に娘が電話してきた。事故でもあった ?!とドキッとしたけど、電話の理由は「どうしたらいいかわからない」
話はさらにその1年前に遡る。パリの美術学校の卒業制作に彼女はバンドデシネの本を作った。
『Mon premier rêve en japonais/初めての日本語の夢』

mon premier reve en japonais560

子供時代、彼女にとって日本がどういう存在だったかをマンガタッチで描いた部分と、夜、私が読んで聞かせた日本の昔話のイラストが交互になり、親バカをうんと差し引いても「よくできてる!」本だ。
と同時に、親が気づかないとこで子供は考え、悩んでいたことを思い知らされた。

卒業制作の審査委員の中に、バンドデシネ出版社の編集者がいて-審査委員は先生だけでなく第三者が混じっている-娘の本を「うちで出したい」。耳を疑うような話に娘は(親も)有頂天になった。
卒業制作は横長で作ったので、縦長の判型に直さなくてはならない。吹き出しやテキストももう少し読みやすく、など作業にかなり時間がかかる。
その時、すでにアングレームのボザールに行くことが決まっていたので、
「急がないから作業は自分のリズムでやってくれていい」と編集者。

ところが学校が始まってみると、課題制作に終われ、友達とアパルトマン暮らしだから、買い物、ご飯づくり、掃除、洗濯に「すっごく時間がかかる」。週末パリに帰ってくればボーイフレンドや友達に会うのに忙しく、あっという間に1年が経ってしまった。
そして不安になった。このままだと学校と家事で本の作業は進まない。編集者だっていつまでも待ってくれるわけじゃない。
それで夜中の3時に電話してきた。
「ママンがあたしだったらどうする?」
「20歳で本が出版されるって大変なことなのよ。このチャンスを逃したら一生後悔する。どんどん新しいイラストレーターが生まれるから、グズグズしてたら編集者に忘れられちゃう」
「だから?」
「学校やめなさい」
「でもディプローム・・・」
「もうひとつ持ってるじゃない。イラストレーターは絵次第よ。本とディプロームを天秤にかけたら、私なら迷わない」
翌朝、夫に話したら彼も同意見だった。
「イラストレーターにディプロームは必要ない」
この人は夜中に救急医が来ても、猫がハトを捕まえてきて大騒ぎになっても目を覚まさない。

・・・というわけで、去年の暮れから娘はパリに戻り、横長の絵を縦長にすべく描き足したり、描き直したりしている。
「母親が『学校やめろ』って言ったの!」と時々呆れられるけど、“二兎追う者一兎を得ず”はフランス語でも全く同じ表現なのだ。


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続:人形の仕業?

後日、工事の続きをしに来た配管工のお兄さん、開口一番(ボンジュールも言わず)、
「どこにいます?」
「誰が?」
その人形
「 ?!」
見せると、彼は手に取ってマジマジと見て、
「我々のとこでは、自然の素材でできているすべてのものに“気”が宿っていると思われているんだ」
なるほど人形の顔や手は陶製、着物も絹っぽい。自然素材だ。
「“我々のとこ”って?」
「ユダヤ教」
そうだった。彼は土曜日、仕事をしない。
「“気”が宿ってると湯沸かし器のバルブを開けれるってこと?」
私はからかいたくなったけど、彼はマジで、
「悪い影響を与えるってこと。他人のエネルギーを吸い取っちゃうような人間がいるでしょ。あれと同じ」
よくわからんけど、冗談で言った“人形説”を彼は信じているらしい。

私が信じないのを察して、彼は作業を始めたけど、しばらくして
「日本にも幽霊とかお化け、多いでしょ?」
ヤダ、ずっとそんなこと考えてたの ?!
「人形の髪の毛が伸びるとか・・・」
思わず、うちの人形の髪を見た。伸びてないよね・・・

IMG_20190305_200556.jpg

「『アナベル』も原作は日本じゃなかったっけ」
じゃない。アメリカの実話がもとになっている。

そして「le Bon Coin(Ebayの仏版)で売っちゃたらどうです?」と言って帰って行った。
しかし、見れば見るほど人形は気品があって美しい。電話の横に座らせた。
夜、娘がそれを見つけて、
「物置に戻さないの?」
「だって人形のせいのわけないじゃない」
「じゃ、湯沸かしのバルブはどうして開いたの!?」
「ムムム・・・」
たしかにミステリー、怪奇現象だ。


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人形の仕業?

ある朝、キッチンの流しの下から水漏れしていて、戸棚がびっしょり濡れている。
前日、配管工の人が来て、水を止めて工事していたので、
「彼が水道管のどこかに穴を開けたに違いない」(と誰もが思いますよね)
水漏れしてる!とすぐ電話したら、
「僕じゃない!穴なんて開けてない」
そして「水漏れの場所をヴィデオに撮ってWhatsappで送ってくれ」おお、新世代の職人さんだわね。
送るとすぐ電話がきて、
「水道じゃない。ガスの湯沸かし器から漏れている。どこかのバルブが開いてるに違いない」
「バルブなんか触ってない!」でも念のために湯沸かし器の配管を見ると、なんとバルブのひとつが開いている。
「ほらね!」と配管工のお兄さんは勝ち誇った声。
「でも誰も触ってないのに・・・」
「ご主人じゃない?」
彼は田舎に行っているんで確固たるアリバイが。
「娘さん?」
彼女はこんなとこに配管があることすら知らない。
不可思議・・・自然に開閉するようなバルブではないのだ。その時、娘が冗談半分に、
「あの人形がやったのよ!」

“あの人形”とは、数日前に物置を整理していた夫と娘が見つけた古い日本人形。古びて汚れているけど、物もリッパだし、当時は美しい人形だったはず。でも誰にも見覚えがない。買ってないし、もらった記憶もないのだ。
「きれいだけど、ちょっと怖い」と娘がいい、また物置に戻そうといいつつ、そのままキッチンの片隅に置いてあった。

IMG_20190305_200618.jpg

「人形?」
と電話の向こうの配管工さん。私は、
「ハハ、冗談ですよ。娘はホラー映画の見すぎ!」
と笑い飛ばしたのだが(続く)


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真昼の悪魔

クレールは50歳の大学教授、離婚してひとり暮らし。若い愛人リュドにふられたばかりだ。
もう女として魅力はないんだろうか?と焦りを感じる。

ある晩、クレールはFacebookにページを作る:名前はクララ、年齢24歳。どっかから見つけてきた若い女性の写真を載せ、リュドの友人アレックスにメッセージを送る。

映画『Celle que vous croyez/あなたが思い描いていた女性』

「こんばんは。あなたの写真、とても素敵ね」
アレックスは24歳、駆け出しの写真家だ。すぐに反応してくる。
「ほんと?どの写真が好き?」
「君は何をしてるの?」

メッセージをやり取りするのが日課になり、クレールはメッセンジャーの発着音を心待ちにするようになる。
リュドの近況を探るのが目的だったのに、彼女は若い男に興味を持たれる快感に酔い、アレックスに惹かれていく。
間もなく電話番号を交換し(「君の声、とても若いね」)「会いたい」と言われるようになって、クレールは現実に引き戻される:すごく会いたい、でも会えない。わたしは50歳のオバサンなのだ。

アレックス(フランソワ・シヴィル)が好きになったのは”クララ”なのだ。

映画『Celle que vous croyez/あなたが思い描いていた女性』


「Celle que vous croyez/あなたが思い描いている女性」

映画『Celle que vous croyez/あなたが思い描いていた女性』
photos:allociné

ヴァーチャルの世界のクララが現実のクレールを侵食していく。顔は輝き、急に若返って、前夫でさえ「誰かに出会ったんだろう?」
ジュリエット・ビノシュは特に好きな女優さんではなかったけど、滅茶苦茶うまい。

映画『Celle que vous croyez/あなたが思い描いていた女性』

老いの恐怖。新しいアイデンティティでもう一度“幸福”を手に入れたいという執念。そしてウソが引き起こす意外な展開。最後まで引きつけるロマネスクなサスペンス。

Demon de midi(真昼の悪魔)とは、中年過ぎて「まだ恋愛現役でいたい!」と焦る“症状”のこと。男女とも自分より若い相手に惹かれるみたい。
映画館には女性が多く-私も友人の新間美也さんと観に行ったんだけど-70歳くらいのおばあさんもけっこういた。彼女たち、この映画にヒントを得て、Facebookにニセのプロフィール作ったりするのかしら・・・

Celle que vous croyez

サフィ・ネブー監督作品
主演:ジュリエット・ビノシュ、フランソワ・シヴィル、ニコール・ガルシア
1時間40分
フランスで公開中


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薬を出さないのが新傾向?

周りの人間が次々に風邪だかインフルエンザで寝込んだり、寝込まなくても恐ろしく気分が悪そうだ。
うちの子供も2人とも。これでうつらなかったら人間じゃない、と思っていたら、果たして。不吉な悪寒と喉の痛さで眠れなかった翌朝、声が出なくなっていた。

今週は人に会うことが多くて、声が出ないと話にならない。
行きつけのお医者は2人とも冬休みで不在、行ったことのない女医さんの医院で予約が取れた。
行ってみると現れたのは男性。ご本人は休暇で彼が代理をしているそうだ。
「熱がないからインフルエンザではないです」
私は悪寒や寒気はしても熱がなかなか出ないので、子供の頃学校を休むのに苦労した。
「咳をすると胸が痛いから気管炎?」
「気管炎とか鼻腔炎というのは場所をさしているだけで、ヴィールス性のもバクテリアのもあります」
そんなこと今までどのお医者さんも教えてくれなかった。
念のためとバクテリアの反応検査(麺棒でのどを表面をひっかく)をしたら陰性だった。

「食塩水でうがいをして、夜、はちみつをスプーン一杯、はちみつは殺菌作用があります。鼻づまりには海水スプレー・・・」
「食塩水って生理的食塩水ですか?」
「いえ、食塩を少々入れた水でいいです」

少し前まで一般医は、殆ど診察せず、喉の消炎剤、咳止めシロップ、解熱剤・・・と山ほど薬を処方していたもんだ。ヨーロッパの中でフランスは薬消費一位だし。
自然志向になったのか、健康保険の赤字を防ぐため「薬を出すな」とお達しが出たのか、その両方か・・・?
私の頭の中を読んだかのように、
「温かくして寝ているのが一番です」とニッコリ。
あの代理のお医者さん、なかなかいいじゃない!と医院を出た。

記録的に暖かい2月だったというのに病気の人が多い。ラジオで流している政府広報は、
「家に帰ったら必ず石鹸で手を洗いましょう(これをしないフランス人が多い)
咳やくしゃみをするときは口に肘を当てましょう(手より伝染の危険が少ない?)
一度鼻をかんだティッシュは捨てましょう(何度使ったのかわからないティッシュをポケットから出す人、多い)・・・」
ヴィールスが蔓延するのも当たり前だ。


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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

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