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大工、配管工、建具屋・・・ありとあらゆる建築業を転々としてきたリッキー。老人の在宅介護をしている妻のアビーと子供2人の家族は団結していたが、借金は膨れる一方。
リッキーは配達ドライバーになることを決める。社員ではなく“個人事業主として”という条件は魅力的に響いた。

ケン・ローチ『家族を想うとき』

ケン・ローチ『家族を想うとき』

自分の会社だ。トラックも会社のリースではなく自分のを買うことにし、そのためにアビーに彼女の車を売ってくれ、という。在宅介護に車は必需品だが、
「この仕事で、自分たちの持ち家が現実になるんだ」

しかし蓋を開けてみると、配達ノルマは膨大で、昼ご飯どころかトイレに行く時間もない。うちに帰るのは夜の9時。彼の仕事ぶりは一日中見張られている。社会保障も自分の負担だ。
“個人事業主として”は、実は雇い主にだけ都合のいい罠だった(“ゼロ時間契約”と呼ばれるらしい)。
リッキーとアビーは必死に働くうち、思春期の息子を見失っていく。

ケン・ローチの『Sorry we missed you/家族を想うとき』

ケン・ローチ『家族を想うとき』

88歳の監督は、競争の激しい通販業界を舞台に、落ちていく中産階級を訴える。

ken loech
photos:allociné

フランスではレストランの料理宅配会社の配達人が抗議して、彼らの労働条件が明るみに出た。正方形の大きなリュックを背負い、自転車で配達する彼らはみんな個人事業主。事故(多い)に遭ってもカバーされないのだ。

2012年の『天使の分け前』(社会奉仕活動を強いられたロビーがウィスキー蒸留工場で、自分のテイスティングの才能を発見する)、2014年『ジミー、野を駆ける伝説』(10年ぶりに祖国アイルランドに帰ったジミーが。かって自分が開いたダンスホールの再開を試み、地元権力とぶつかる)まではケン・ローチの作品に希望があった。その後一作ごとに絶望的になっていく。

先日ご紹介した『Hors Normes/規格外れ』は苦境にも笑いを混ぜているが、『家族を想う時』は、これでもかこれでもか、と真っ向からリッキー一家の不幸を描く。前者はアソシエーションの人間にスポットを当て、後者は労働状況がテーマになっているせい?

ケン・ローチの説得力も甚大だ。映画が終わったとき拍手が起き、誰かが「アマゾンで買うのはやめよう!」と叫びまた拍手。

原題の『Sorry we missed you/ご不在につき失礼』は宅配会社が残すメッセージ。同時に、両親が仕事で遅くまで帰らないので、路頭に迷ってしまう子供たちへの「ごめんね」というダブルのメッセージだ。日本語タイトルも残せばよかったのにね。
お見逃しなく!

Sorry we missed you
ケン・ローチ監督作品
主演:クリス・ヒッチェンズ、デビー・ホネーウッド、リス・ストーン、ケイティ・プロクター
1時間40分
フランスで公開中
日本公開は12月


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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

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