ジェローム・ケルヴィアル。2008年に株式操作で49億ユーロ(約5880億円)の損失を出した、ソシエテ・ジェネラル銀行のトレーダー。彼の名前は一日にしてフランス全国、そして世界の金融市場で有名になった。

ケルヴィアル。辣腕そうでちょっとワルそう

映画『L'Outsider』

映画『L’Outsider』は、一介の銀行員として入行したケルヴィアルが出世階段を駆け上り、5年後に“キャッシュ・マシン”と呼ばれるほどの名トレーダーになり、49億ユーロの大穴を開けるまでを、事実に忠実に描いている。
なんでそんな大穴が可能なのかは、説明を聞いてもよくわからないけど、株価指数500億ユーロに上る先物取引に対する彼の判断の結果で、それを不正な操作で上司に隠していた、ということらしい。でも彼のポケットには1ユーロも入っていない。

ソシエテ・ジェネラルは「全く知らなかった」と、ケルヴィアルを、背信行為、文書偽造で訴える。裁判所は、禁錮5年、損害賠償49億ユーロ(フランス史上最高額)の判決を下した。
しかしメディアと世論は「銀行上司が知らなかったなんて考えられない」「口座が50ユーロ赤字になっただけで電話してくるのに、49億ユーロの穴を知らなかったとは言わせない」(まったく)とケルヴィアル擁護に傾く。
ファンクラブができ、ケルヴィアルは本まで出した。(『L’Engrenage :mémoires d’un trader/歯車:あるトレーダーの回想』)

2014年、破毀院は損害賠償を破棄、だけでなく、2016年パリのプリュドム評議会(従業員の権利を護る裁判機関)は、逆にソシエテ・ジェネラル銀行を「屈辱的状況における正当な理由なき解雇」で訴え、ケルヴィアルに損害賠償を要求している。

映画は、彼の“不正な操作”が発覚するまで。どんな操作で何が不正なのかは、やっぱりよく理解できないけど、トレーダーたちが売り買いするヒステックな“戦場”の様子、その緊張とストレス解消(ストリップティーズ、アルコール)、金銭感覚の麻痺・・・すべてヴァーチャルな操作で現実感のないまま、ちょっと一線を越え、それを隠すためにまた・・・という構造がよく描かれている。

映画のケルヴィアル(アルチュール・デュポン)

映画『L'Outsider』

映画『L'Outsider』

映画『L'Outsider』
photos:allociné

決着がついていないのに、銀行もトレーダーも実名を出し、舞台はデファンスのソシエテ・ジェネラル本行。
“表現の自由”をふりかざしてスト・デモを繰り返す労組はいい加減ウンザリだけど、こういう作品が作れちゃうのはすごい。ソシエテ・ジェネラルの行員たちはこれを観て、何と思うだろう?ご本人(ケルヴィアル)は『すごくよくできた伝記作品』とTwitterで言っていた。
そういえば、ジョージ・クルーニー&ジュリア・ロバーツの『マネー・モンスター』も、お金とメディア、という2大権力のお話だ。

L’Outsider
クリストフ・バラティエ監督作品
主演:アルチュール・デュポン、フランソワ=グザヴィエ・ドゥメゾン
1時間57分
フランスで公開中

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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


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