ENA (エリート官僚養成学校) に進もうとしている良家の息子、パリ郊外に住む学生や失業中の男女・・・社会的カテゴリーも人種(フランス、アラブ、アフリカ)も様々な若者グループ。RERやメトロで移動する彼らの行動をカメラは分刻みで追う。時刻が画面に出る物々しさ。彼らは、単独か2人組で警備の厳重な建物に入り込み、爆弾を仕掛ける。携帯電話をゴミ箱に捨てる。

ベルトラン・ボネロ『Nocturama/ノクチュラマ』

予定の時刻、内務省、銀行、デファンスの企業ビル、証券取引所広場に並んだ車が爆発炎上。同時多発テロだ。

テロ後、犯人グループは深夜のデパートに隠れ、夜が明けるのを待つ。薄明りの中に佇むマネキンたち、美しくディスプレイされた高級品、家具やベッド・・・消費社会のメタフォールは磁気のように彼らを吸い寄せる。彼らの標的は“消費社会”だったはずなのに・・・ブランド物の服を試し、高価なワインを開け、音質のいいオーディオをつけ踊る。

ベルトラン・ボネロ『Nocturama/ノクチュラマ』

ベルトラン・ボネロ『Nocturama/ノクチュラマ』

ベルトラン・ボネロの『Nocturama/ノクチュラマ』。

ベルトラン・ボネロ『Nocturama/ノクチュラマ』

シナリオはシャルリー・エブドのテロ前に書かれたそうだけど、その後に起こったことでこの作品の観方は変わってくる。
それはともかく。接点がなさそうに見える若者たちが、どうやって出会い、どういう過程を経てテロ行為に至るのか語られない。犯人たちが緊張した顔で、ひたすらパリの中を移動するだけの前半は恐ろしく長い。

デパートに逃げ込んだ後半はまだ許せる。壁に並んだテレビが映し出す爆発場面。「僕たちがやったんだ!」という高揚から、次第に恐怖に変わってくる。「僕たち、捕まって殺されるんだろうか?」
テロ前・テロ後の映像はあるものの、薄っぺら、空虚だ。
結局、何が言いたかったわけ?現代の若者の絶望?その表現?(若者たちが怒るよ!)

この作品のタイトルは最初『Paris est une fête』(ヘミングウェイのエッセイから『パリは祝祭日』)に決まっていたけど、2015年11月13日の同時テロ以来、パリ市のスローガンになったので変更。

ボネロさん、『メゾン ある娼館の記憶/l’Apollonide : souvenirs de la maison close』(2011)『Saint Laurent』(2014)はよかったのにね。不可解なのは、ル・モンド、Télérama、Inrockなど、いつもは同感できるメディアの批評がいいこと。それで観ちゃったわけだけど。


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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


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