家族か自由かの二者択一『Noces/婚礼』

ベルギーで、両親と兄妹と仲良く暮らす18歳のザイラはパキスタン人。とりわけ兄貴のアミールは、何でも打ち明けるほど近い。彼女が妊娠して随ろす手術をすることも兄は知っている。

映画『Noces/婚礼』

ある日、両親があらたまってザイラを呼び、3枚の写真を並べる。この中から結婚相手を選べ、と。夫となる男性はパキスタン人でイスラム教でなければならないのだ。
「だってこの人たち、パキスタンにいるのに・・・」
「スカイプで話して決めるんだ」と父。
「私もお父さんのこと、結婚する日まで知らなかったの。でも一緒になってとても幸せよ」と母。

結婚は、自分の愛する男性と結婚したい、とザイラ。両親を愛しているけど、“自分の人生を生きたい”という欲望のほうが強い。
アミールはザイラの気持ちを理解するものの、長男の彼には一家の名誉を守る、という任務がある。引き裂かれる兄。

慣習や世間体に縛られた両親は、娘の幸せを考えることができない。写真選びを拒否するザイラに、
「おまえが結婚しなければ、世間に顔向けできない」「私たちの人生はもう終わりだ」と怒鳴り泣き崩れる。
結婚を拒めば勘当され、家族とは2度と会えなくなる。
でも自分の未来を3枚の写真から決めるなんて・・・不可能な二者択一を迫られ、引き裂かれるザイラ。

ザイラ役のリナ・エル アラビ、綺麗なだけでなくすごく上手い。

映画『Noces/婚礼』


ベルギー人監督ステファン・ストレッカーの『Noces』

映画『Noces/婚礼』


2015年の『Mustang/ムスタング』を思い出させる。トルコを舞台に、イスラム教の戒律にがんじがらめになった家族と5人の娘の戦い。

でもステファン・ストレッカーは誰も悪者にしない。親は“それが娘の幸せ”と信じて疑わないのだ・・・と言っても、たった3人から、しかもスカイプで話しただけで生涯の伴侶を決めろなんて、どう考えてもシュール。“娘の幸せ”はぶっ飛んでいる。

日本でも世間体のプレッシャーや本人の焦りはまだ強い。私がいた30年も前のことだけど、適齢期を超えた知人男性が上司に呼ばれ、「この中の誰か、どうかね?」と年頃の女性のお見合い写真をずらりと並べられた、と言っていた。
「トランプのカードを並べて1枚選べ、というみたいだった」と彼。もちろん断ってもクビになることはなかったけど。
『ムスタング』同様、残る作品だ。

NOCES
ステファン・ストレッカー監督作品
主演:リナ・エル アラビ、セバスチャン・フーバニ、ババク・カリミ
フランスで上映中。上映館が少なくなっているのでお急ぎを!


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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


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