田舎の週末:哀しい春景色

大酒飲みで大食漢、“節制”という言葉を知らなかった従弟のジャン=ピエール。
3-4年前からそのツケが回ってきて、糖尿、心臓、大腸がん・・・がんは無事取り除けて、お医者に40㎏痩せるように言われた:130㎏を90㎏に(身長は183㎝)
「40㎏なんて!最初からやる気をなくすじゃない。“まず10㎏”とか言えなかったの ??」
「ほんとにバカ医者!」と、奥さんのマリー・フランスと言い合ったものだけど、果たして酒量は減らず体重も変わらなかった。

あの時やめてればねぇ・・・
でも彼としては、好きなだけお酒が飲めず食べられない人生なんて、ありえなかったのかもしれない。第一職業がシャンパン造りだもの。

そして去年の暮、肝臓がんが見つかった。フランスでは一番生存率が低いと言われているガンで、それを聞いた人はみんな「ああ・・・」と絶句した。
先週、化学療法のためにトロワの病院に入院したけど、始める前に昏睡状態になってしまった。
「会うなとは言わないけどチューブだらけだし・・・いい思い出を残しておいたら?」と奥さんのマリー・フランス。
夫は会うのを躊躇っていたし、電話を切ったあと考え込んでいたら、
「会ってさよならを言いたいんでしょ?」と娘。
「うん・・・」
「じゃ行って手を握ってあげて」
「そうだね、会わないとぜったい後悔する」
と土曜日に病院に駆けつけ、目を覚まさず苦しそうに呼吸するジャン=ピエールの手を握っていた。
日曜日、パリに帰る電車に乗ったとたん、電話が鳴った。“マリー・フランス”の表示を見ただけで内容はわかっていた。

親戚の中で一番仲がよく一番近しかった。田舎に行く愉しみは、彼とマリー・フランスに会うことだった。
あんなに頑丈で陽気だった人が、なんてあっけなく死んじゃうの?
パリまでの2時間、私はぐしゃぐしゃに泣いて、検札に来た車掌さんが恐れをなしてパスするほど。ちゃんと切符持ってたのに。


ランキングに参加しています。クリックしていただけたら嬉しいです。
にほんブログ村 海外生活ブログ フランス情報へ

にほんブログ村 海外生活ブログへ
にほんブログ村

スポンサーサイト
コメント
お悔やみ申し上げます。
タカコさん
初めまして。いつも楽しくタカコさんのブログを拝読しています。
ジャン=ピエールさん、私も大好きでした!、、、なんてタカコさんのブログを通してしか存じ上げませんが。。でもブログからジャン=ピエールさんのお人柄、また彼に対するタカコさんの愛情がひしひしと伝わってきます。
私も昨年、祖母を亡くしました。かなりパワフルな女性で長生きしましたが、最後はやせ細り、呆気なく逝ってしまいました。
食いしん坊の祖母でしたので、生前から「最後の晩餐」は何がよいか、冗談まじりによく話していましたが、「私は断トツ鰻がいいわ!」との事で入院して何度か差し入れていました。
そのうち鰻に飽きてきたのか、「クロワッサン食べたい」とか、「牛(肉)もいいわね」と言いだし、最後の晩餐はかなりのバラエティになりました(笑)。
それでも食べられる量はほんの少しですので、どんどんやせ細り、会話もままならなくなる寸前、私がパリへ出張へ行くと伝えると、「パテ買ってきて」と言われました。
いよいよ、という時でしたので、帰国まで間に合うかヒヤヒヤしましたが、パリで食材をしこたま買い込んで病院に駆けつけると、さらに一回り小さくなった祖母がムクッと起きだして「生ハム買ってきてくれた?」との言葉!皆で大笑いし、生ハム、フォアグラ、クロワッサンなどをつまみながら少し話しました。
帰国が間に合って良かった、とホッとしたのもつかの間、翌日から食事が取れなくなり、その数日後に息を引き取りました。
皆で「きっと生ハムとフォアグラをまだかまだかと待っていたのね。」と今でも笑いながら話しています。
自分の話ばかり長くなってしまいました。
ジャン=ピエールさんのご冥福を心からお祈り申し上げます。
Re: クリスタル様
ありがとうございます。
生命力に溢れた素敵なおばあ様ですね!ムクッと起きて「生ハム買ってきてくれた?」は目に浮かぶようです。

今日がジャン=ピエールの告別式でした。”音楽をかけて楽しく”という彼の遺言通りの式になりました。
こんにちは。
昨年夏のサルラ旅行記にコメントした者です(前回は名を名乗らず失礼致しました)。

悲しみの渦中にいらっしゃるたかこさんにかける言葉もございません。
「親戚の中で一番仲がよく一番近しかった」という一文から、
たかこさんがどれほど彼を信頼し、彼の存在が大きかったかというのが伝わりました。
異国の地での親戚付き合いは、最も緊張するネットワークの1つだと思います。
配偶者に不満を言うのをためらうこともありますね。
そんな中でたかこさんに大きな愛情を注いでくれたであろう彼を失ってしまった悲しみと寂しさは、想像するに堪えません。

今は、彼との思い出に涙する日々かと思いますが
そのうちに、思い出に励まされて笑顔になれる日が来ます。
どうぞお体お大事に。
Re: ミライ様
ありがとうございます。
ミライさんの言われる通り、保守的でやや排他的な田舎で私が疎外感を感じなかったのも、ひとえに彼のお陰と思います。
コメントの投稿
プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
最近の記事
カテゴリー
おすすめ書籍
RSSフィード
おすすめコスメ
フランスに行くなら
プロヴァンスの田舎町をまわる1日
アーカイブ