プレス評が良くて観客の評判が悪い時、どちらを信じるべきか?当然、後者だ。
アルノー・デプレシャンの最新作『les Fantômes d’Ismaël/イズマエルの幽霊たち』がその例。
それなのに、キャストがすごい(マチュー・アマルリック、マリオン・コティアール、シャルロット・ゲンズブール)、カンヌのオープニング作品・・・などのミーハーな好奇心に負け、観に行ってしまった。(第一、誘った人がみんな「アレ、つまんなそう」と乗ってこなかった。)
イズマエル(マチュー・アマルリック)は映画監督・脚本家。弟にインスピレーションを受けて、外交官イヴァン(ルイ・ガレル)の映画を撮っているところだ。徹夜、アルコール、タバコ、薬漬けの彼を支える彼女、シルヴィア(シャルロット・ゲンズブール)。
そこへ20年前に姿を消し、誰もが死んだと思っていた妻、カルロッタ(マリオン・コティヤール)が現れる。

「あなた、イズマエルのパートナー?」「・・・」「私は彼の妻よ」と、まるでお天気の話をするみたいに。

アルノー・デプレシャン『イズマエルの幽霊たち』

アルノー・デプレシャン『イズマエルの幽霊たち』

「自分が引き裂かれそうになったからいなくなったのよ」
「君は俺の人生を引き裂いた!」
「私にはあなたが必要なの」
「俺は必要じゃない!」
それでもシルヴィアは、イズマエルがカルロッタを忘れていなかったことを感じる。

・・・そこまではまぁいいんだけど、それに弟イヴァンの人生が平行して語られ、イズマエルが撮っている映画が挟み込まれ、過去・現在が何の断りもなく変わり訳が分からん。デプレシャンの混沌とした頭の中に投げ込まれたようで、一刻も早くここから抜け出したい(=早く映画館を出たい)と思うけど、左右に座っている人たちを踏み越えて出ていく勇気はなく、映画が終わるのを待つばかり。(第一、イズマエルもこの状況に正気を失い、撮影を中断して北フランス、ルーベの実家に逃げ込む。)

マチュー・アマルリックは正気と狂気の境目みたいな役が多いけど、ここではそのカリカチュア。そういえば朝市で隣にいたことがあったけど、服のまま寝たようなシワクチャのシャツとズボン、染ムラのある髪はボサボサで、映画で見るのと全く一緒だった。

どこか似ている(特にボサボサ頭)デプレシャンとアマルリック。トリュフォー&ジャン=ピエール・レオーみたいなデュオ。

アルノー・デプレシャン『イズマエルの幽霊たち』
photos:allociné

プレス評の中にも「躁鬱で、一貫性がなく繋ぎ合わせたような作品」(Nouvel obs)
「デプレシャンは、アヴァンチュール、愛、ノスタルジー、若いころの夢、過去の現在の対立・・・など、彼が執着するテーマを再び取り上げているが、要素がたくさんありすぎてついていけない」(Figaro scope)など全く同感の批評もある。
「マリオン・コティヤールでも救えなかった」とはイギリスのThe Guardian。

一方、絶賛しているプレスがあるんで平均点が上がっているんだけど、なぜ絶賛するんだろう?
自分(批評を書いた人)の頭の中も同じように混沌としていて感情移入できた?
サイコロジカルに入り組んだデプレッシャンの世界を評価しなかったらバカと思われるから?
映画が終わったとき、周囲のブツブツざわざわから、退屈したのは私だけじゃなかったのがわかった。
『キングス&クィーン』や『クリスマス・ストーリー』は良かったのに・・・

Les Fantômes d’Ismaël
アルノー・デプレッシャン監督作品
主演:マチュー・アマルリック、マリオン・コティヤール、シャルロット・ゲンズブール
1時間58分
フランスで公開中

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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


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