FC2ブログ

迷惑な“エコロジスト”

パリに戻って間もない日曜日、朝市に行こうとしたら中庭の真ん中に大きなビニール袋が2つ。中に土が入っていて、土が掘られた形跡が。土で汚れた靴下も脱ぎ捨てられていて、近眼の私はネズミの死骸と間違えて飛び上がった。
「なにコレ?」「土ドロボー?」と夫と立ち止まると、2階の窓から若い女子が顔を出し、
「ごめんなさーい、後で片付けるから」
何も言わない夫に、
「あの子、庭の土を取ってるのよ。そんなことさせていいの?」
「ムムム・・・」

中庭は、アパルトマンの家主が集まった組合で管理されている。つまりみんなのもの。たまたま庭仕事が好きな夫が、組合から“庭師”に任命され、日当たりが悪くても育つ草木を植え、水撒きをしたり土を買ってきて足したりしている。

猫たちのジャングルでもある。

タマ

彼のテリトリーなんで私は黙っていたけど、あの女の子が土を取り、ほかの住人が「私は花をもらう」「ぼくは木を一本」なんてやりだしたら収拾つかないじゃない。

私たちの会話を聞いていた娘が出てきて、
「その子、坊主刈りでメガネかけてる?」
「まさに」
「その子よ、コンポスト作ったの!」
ヴァカンス前にうちのドアの真ん前に10㎝くらい穴を掘り、果物や野菜の皮を捨て、蓋もせず、自慢げに「Composte」と立札を立てた人がいた。その後、夫が埋めてしまったけど、犯人はあのネオヒッピー!

しばらくしてベルが鳴り、その子が裸足で立っていた。娘より若そうだ。
「土を取ってるというより、リッチな土と混ぜてるんです」
「??」
「今から種を買いに行って、キュウリやハーブを植えようと」
キュウリ ?!
「それはダメよ。中庭はみんなのもので、勝手に菜園作ったりできないの」
女の子は私のセリフが聞こえないかのように、
「その横にコンポスト作って・・・」
コンポスト ?!
「この前はうちの真ん前に作るからハエが増えていい迷惑だったわ。コンポストって臭いもあるから、住居から200m(確か)離れてとか、蓋をするとか色々決まりがあるのよ」
「でも私たち一人一人が地球を護らないといけないのはジョーシキでしょ?それに菜園作れば住人が喜ぶし・・・」
ジョーシキ !? 段々腹が立ってきた。
「地球を護るのは賛成だけど、同じ建物に何世帯も住んでいるから、ひとりひとりが勝手なことできないの。家主ミーティングの時、みんなの意見を聞いて投票しないと何も決められないのよ」
「そのミーティングいつあるんですか?」
そんなこと聞いてどうすんの?どっちみちアパルトマンから1mも離れてないとこにコンポストは作れないの!
「夫が知ってるかも。今、昼寝してるの」
「いつ昼寝から起きます?」
「起きたくなったら起きるでしょう!とにかく穴掘ったり種蒔くのはやめてね」

彼女の家族は6月に引っ越してきた。私は知らなかったけど(誰に聞いても「知らない」)父親はCanal+のモト司会者。何でも郊外に家を建設中で、工事の間、1年だけ借りているそうだ。
家が建ったら、好きなだけナスでもキュウリでも育てたらいいのに。
「ところであなたのご両親、お留守なの?」
「田舎に行ってる」
ああ、早く帰ってきてくれ!


ランキングに参加しています。クリックしていただけたら嬉しいです。
にほんブログ村 海外生活ブログ フランス情報へ

にほんブログ村 海外生活ブログへ
にほんブログ村






スポンサーサイト



コメント
クラスにひとり(たぶん)
思わず吹き出しながら読んでしまいました。
なんというかフランス人のエコに対する認識は未だに理解できないことがあります。ひとクラスに一人位の割合で「大目に見る」ことが一切できない ー「プラスチック=環境破壊!!」みたいな単純な方程式で物事を考える人がいるように私の目には映ってしまいます。
仕事で必要な書類のコピーを印刷するのもできるだけそんな彼女がランチに出ているときにまとめて行い、、ちょっと怯えています。。無駄遣いの線引きって曖昧ですね。
このネオヒッピーについては、ガスピアージュとは別に共有エリアを自己判断で手を付けることがNGではありますが。
Re: クラスにひとり(たぶん)
そう、大目に見れない、情状酌量がないんです。息子も「大学にいるいる」。ファナティックなセクトみたいな人がいるそうです。
如何にもフランスらしい逸話!続編も期待してます
長谷川さま
 今月11月某日の記事を読んでいたところ、この日の案内リンクに遭遇。ほんの気軽な好奇心から打鍵したところ、この珍妙なエコロジストの紹介記事にジャンプ。イヤー、実にユニークな言動ですね。

 ただ、周囲との同調性を常に意識する東アジアの多神教文化圏に居住している部外者から見れば、この様な女性の実在と活躍こそが、フランス社会の象徴に思えて仕方がありません。正に「フランスそのもの」ですよ!

 隣のエコロジストの奇矯な振る舞いの数々、その後の追加行動があれば、是非とも記事に纏めて下さい。お元気で。
Re: Yozakura様
こんにちは。
このエコロジー娘の言動がフランス社会の象徴・・・人がどう思おうと何と言おうと自分のやりたいことをやっている、ということですね。そう言われてみると確かに。今のところ追加行動はなく、先日お父さんと一緒におとなしく歩いていました。
コメントの投稿
プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(単純計算しても歳は出ません!)
訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とヴィンテージの服、デビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

カレンダー
03 | 2021/04 | 05
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
最近の記事
カテゴリー
おすすめ書籍
RSSフィード
フランス語講座
アーカイブ