
マレのTurenne通りにあるAu levain du Marais(マレの酵母)というパン屋さん。行列ができる美味しさで、日本のガイドブックで“並んでも買いたいパン屋さん”のようなページには必ず登場している。ティエリー・ラビノーが1994年に開いたパン屋だ。
週の半分くらいここでパンを買う。
2週間くらい前から、パンの種類や姿がかすかに変わってきた。パン・ド・カンパーニュ(田舎パン)は、形も大きさも前と同じだけど、どこか顔つきが違う。
「なに、このパン!」とひと目で変化に気づいたのは息子。食べてみると、味もテクスチャーも前と違う。
「どこが違う?」と首をかしげるのが夫と娘。この2人は質より量の人なのだ。
「パン焼き職人が変わった」というのが私たちの推理であったが、数日後、この謎が解明された:大繁盛していたあのパン屋が、他のパン屋に店を売った、新オーナーは、粉を変え、種類を増やした。
新オーナーのパンは、悪くないけど、以前の“雨の日も風の日でも並んで買いたい”というモチベーションを興させる美味しさはない。
つまり、日本のガイドブックのあちこちに登場していたTurenne通りのAu levain du Maraisのパンはもうない、ということだ。
なぜ、Turenne通りと断るかというと、ティエリー・ラビノーは、バスティーユよりのBeaumarchais大通りにも店を持っていた。私がそこへ駆けつけたのはいうまでもない。ご飯の味には疎いけど、パンにはうるさいのだ。
「Turenneのお店、売ったんですって?」
「そうよ、先々週だったかしら」
「このお店は?」
「やだ、オーナーが変わって1年近くになるわ」
「気がつかなかった・・・同じ味だもの」
「パン焼き職人も粉も変えてないからよ」
「2件とも同じパン屋が買ったの?」
「いいえ、Turenneは別の人が買ったわ」
というわけで、Beaumarchais大通りのパン屋には今まで通りの美味しさが存続している。
パン屋という職業は、夜明け前から焼き始めて夜8時まで、しんどい仕事だが儲かるのだ。友達のこの話でもわかるように:
「信号待ちで止まったら、となりにジャガーXKのコンバーチブルがいて、サングラスをかけたドライバーに見覚えがある。映画俳優?テレビで見た?・・・と思い出そうとしたけど、思い出せない。うちに帰ってから、ハタと気づいた。いつも買うパン屋の親父じゃないか!」
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