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パリのユースホステル

kota

矢守功太さんというミュージシャンが、フランスの歌手とコラボレーションの企画があってパリに滞在していた。その歌手が友人なので、彼と知り合い、時々一緒にご飯を食べたり、おしゃべりをした。滞在が長くなって後半はバスティーユのユースに泊まっていた彼、そこで出会ったり、すれ違う人たちの話は『スパニッシュ・アパートメント』のように面白い。

例えばブラジル人兄弟。兄のラファエルがもとロックバンドをやっていたので気が合って、ご飯を食べたり、靴下を貸したりしていた。弟はある日、ロンドンに発っていったがラファエルは残っている。「一緒に行かないの?」「うん、パリが好きだから」

功太さんが外でタバコを吸っていると彼がやってきて、
「受付の子、どう思う?」
「いい人だね」と功太さん。
「それに美人だ。よく立ち話しているけど、何話してるの?」
「別に・・・世間話程度だよ」
「実はぼく彼女に興味があるんだけど、すごくシャイなんで、『鍵ください』しか言えないんだ・・・」

そこで功太さんが、彼女にあれこれ聞いて、ラファエルに伝えることになった。
彼女が写真の勉強をしていて音楽が好きなこと知ると、ラファエルはますます惚れたけど、意思表示はできない。間もなく弟が戻ってきて旅立たなくてはならない。でもこのまま何も言わないで去ったら、ずっと後悔しそう・・・というわけで、発つ前夜、功太さんが手伝って彼女に“ラブメッセージ”を書くことになった。

あまりヘビーになりすぎず、でも気持ちが伝わるように「漫画にしたら?」と功太さん。
ラファエルが世界のどこにいても、彼女が忘れられずユースに戻ってきてしまう、というシナリオを考えたけど、「ヘビーすぎない?」「これじゃストーカーと思われる」とラファエル。その上、功太さんの描いたキャラが「日本人にしか見えない」と難癖をつけるので、結局ラファエルが描いて、功太さんがダメだしをし、「来年リオに来てよ!空港で花束を持って待っているから」という結構ヘビーな漫画に落ち着いた。創作に3時間!

ところが発つ朝、彼女はお休み!がっかりして功太さんに手紙を託し、ラファエルは旅立っていった。この恋の行方はいかに・・・?シャイなラファエルはこの方

同じ部屋に泊まっていたコソボからきた研究者。40歳くらいで気難しそうで、話しかけられないでいた。
あるとき、功太さんのギターに目を留め、「君、音楽やるのか」「ハイ」「コソボの音楽、聴いてみないか?こっちに来なさい」「ハイ」
初めて聴くコソボの歌は素朴で迫力があり、そして長かった。
10分くらいの曲が終わり、功太さんが立ちかけると「もう1曲」、さらに「もう1曲」。そのうち、感極まったように彼は一緒に歌いだし、熱唱は延々と続き、功太さんは動けなかった。
ふと見ると彼の目が潤んでいる。パリ大学の奨学金をもらい、妻と子供を置いて単身留学だとか。2日後にソルボンヌの学生寮が空き、そっちに移っていったそう。

ユース・ホステルというくらいだから年齢制限があるのかと思ったら、ここは中年でも泊まれるみたい。
短い滞在者が多い中、2週間以上泊まっていた功太さんは、顔パスのきくユースの有名人になってしまった。彼も、美人の受付嬢との別れが辛かったのでは・・・?

「地球の歩き方」に載ったこともあるというユースホステルはここです。


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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(単純計算しても歳は出ません!)
訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とヴィンテージの服、デビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

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