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工場が閉鎖されてから、すっかり寂れてしまった南仏のある村。
刑務所暮らしをしていたサミールが出所して帰ってくる。待ちかねていた父親のフランシスは、息子を不器用に抱きしめる。
フランシスは工場が閉鎖されたあとも、無人の工場に出かけて、自分が使っていた機械を修理したり磨いたりするのが日課だ。妻に先立たれた彼は、お隣の中年女性、マリアと付き合っている。

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彼女の夫はある日、若い女と出て行ったきり帰ってこない。マリアは新しい薬の実験台になる仕事をして、一人息子を育てている。
その息子は一日中、外に座って父親の帰りを待っている。
父親はゲーリー・クーパーに似て男前だったといわれ、毎晩、ヴィデオでゲーリー・クーパーの西部劇を見ている。

一言もしゃべらず、障害者の友達と並んで父親を待っている。
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サミールはスーパーで働き始めるが、初日から「チーズのお買い得セール」でネズミの帽子をかぶらされ、数日でいやになってやめてしまう。
ムショを出たばかりでどこに仕事が見つかるっていうんだ!またドラッグの売買でもやる気か!と怒るフランシス。自分で何か見つけるさ、僕はお父さんのようにはなりたくないんだ、と怒鳴り返すサミール。
翌日彼は工場にでかけ、熱心に機械の手入れをする父親を見て、手伝い始める。

眠ったような村に残った人たちは、さりげなく労わりあいながら、昨日と同じような何事もない日を続けていくのだ。

・・・という、大したことは起こらないけど、後に残る映画だ。
Nassim Amauche(ナッシム・アマウシュ)という若い監督の初の長編作品。今年のカンヌの”批評家週間”でグランプリを取っった。

父親役のジャン=ピエール・バクリは苦虫を噛み潰したような表情とブラックなユーモアで、ファンの多い俳優。彼をはじめとして役者がみんなよく、村への愛着と諦めが混じった村人たちの雰囲気と、ゆるゆると流れていく田舎の時間がリアルに、ちょっと哀しく描かれている。

タイトルの『Adieu Gary』のガリーは、実はゲーリー・クーパーのことで、私もすぐにはわからなくて、「ガリーってどの人?」と探してしまった。フランス人は何でもフランス式に発音するので紛らわしい。ゲーリー・クーパーそっくりのお父さんを毎日待ち続けていたマリアの息子が、ある晩、フランソワの“演出”で、お父さんをふっきれるので、このタイトルがついたそうだ。


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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

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