意外と退屈しない・・・

入院した翌日、夫と娘が借りた山奥のアパルトマンに荷物を取りにいった。
雪が嫌いで、スキーはできないし、したくもない、という夫は、バスを降りて雪の中に一歩踏み出した途端、大の字に倒れ、
「死ぬほど笑った」と娘。雪の上にできた100kgの人型を見たかったもんだ。

スキーを返却し、荷物をまとめてスーツケースにいれ、部屋をざっと片付けるのに持ち時間正味45分。
チャップリンの映画のような騒ぎだったそうで、ヴィデオに撮っておきたかった、なーんて、本人たちは大変だっただろう、ご迷惑かけます・・・

私の入院は手術から1週間の予定。夫と娘はパリに戻るので、最小限必要なものを揃えてもらう:パトリシア・コーンウェルとマイクル・コナリーの推理小説、リンゴとオレンジ、筆記用具、パソコン、携帯電話とテレビのリモコン、化粧ポーチ・・・ベッドの周りに、私の最小限空間が出来上がる。

2人がパリに帰って行ったあと、時間の流れ方をそれは遅く感じるだろう、と覚悟していたら、意外とそうでもない。
病室は2人部屋で、私は窓側だ。窓の形に切り取られたブリアンソンの風景。雪に覆われた山、枯れ木、こげ茶の三角屋根・・・墨絵のような風景に雪が降り、午後には雨になる。太陽が射す朝もあった。月は満月に近づいていく。
私は、その墨絵を飽きることなく眺めた。

人も車も殆ど通らない。病院の屋根に降りた私は、自分が町のどの辺にいるかもわからなかったけど、中心地から外れた病院と教えられた。ブリアンソンは人口11000人。標高1300m、ヨーロッパで一番高いところにあるそうだ。

夜10時、昨日の夜番の看護夫が現れる。夜番は必ず年配2人のペアで、退職後のアルバイト、という雰囲気だ。つるつる頭のおじさんが点滴を変えてくれる。
「昨日より顔色が良くなった」
昨日は手術の直後だったもの。
「それに昨日は悲しそうだったよ、娘さんのバカンスを台無しにしちゃったって・・・」
「だって着いて2日目だったから」
「事故だもの、あなたのせいじゃない。それに何でもいい経験になるもんだよ」
「ヘリコプターに初めて乗ったって興奮してた」
「それも後ではいい思い出になるよ」

お孫さんがいるのかしら?看護夫オジサンの“哲学”に慰められる。


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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

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