メビウス50年間の作品に眩暈

Fondation Cartier(カルチエ財団美術館)で開催されているメビウスの(フランス語ではモエビウスと発音)展覧会。
自画像に始まり、ブルーベリー、ステルとアタン、ジャン・ディフォールなどキャラクター別に展示され、媒体はバンド ・デシネの原画やアニメのストーリーボード、巨大なパネルになったイラストやデッサン、小さなタブロー・・・50年に近いメビウスの創作世界が一堂に会する。
バンドデシネを日本向けに編集する仕事をしていたとき、メビウスとは何回か話したことがあった。
一見気難しそうで、眼光鋭く、なんとか教の教祖さまのような雰囲気が漂うが、その目が笑うと途端に無邪気で優しい顔。

moebius_original.jpg

徹底したベジタリアンで、奥さんが美味しそうにステーキなど食べている横で、キュウリやトマトやカリフラワーをボリボリ食べていた。宮崎駿の大ファンで、娘さん(今の奥さんとの)はナウシカと名づけた。でもフランス語発音だと“ノシカ”になってしまう。

彼のアトリエ兼住居に行ったとき-もう10年以上前だ-ナウシカちゃんはまだ小さくて目の離せない年頃。奥さんは料理かなんかしていて、メビウスは子供と遊んだり、監視したりしながら、食堂のテーブルでササッと絵を画いていた。あの緻密なタッチと正確な遠近法の絵、どんなにか集中力を要するだろうと思いきや“ササッ”なのだ。私の叔母は画いているときは仕事部屋に閉じこもって、誰も寄せ付けなかったのに。

展覧会を見ながら色々な場面が蘇る。
当時は、メビウスがシナリオで谷口ジローさんが絵のコラボ『ICARE』が進んでいて、私はシナリオの翻訳と谷口さんの編集者とのリンクをしていた。
シナリオは、生まれた途端、へその緒も切らないうちに飛んでしまう男の子の生涯の話。メビウスが見た夢がもとになっている。
「このストーリーの始めから終わりまで夢で見たんですか?」
「そうすっかり」
「1回の夢で?それとも続き物?」
「1回で」
「そんなことよくあるんですか?」
「いや初めて」
夢の話は簡潔で面白く、頭の中に映像が浮かんだが、ライターがそれにいろんなディティールを足してシナリオにしていくに連れて、膨大な枚数になり、オリジナルの骨格が見えなくなってしまった気がする。そういうものかもしれない・・・
美術出版から刊行されている。

会場の上の階が本屋さんになっていて、メビウスの選んだ本が並んでいる。自作のBDのBest of、谷口さんの作品、マイクル・コナリーの『ザ・ポエット』(画期的に怖い推理小説)など、彼の想像世界が垣間見れる。

72歳になるメビウス、著書やデッサンの数は膨大で、3Dの短編アニメや、素顔が見れるインタビュー・フィルムも上映されている。ご馳走やプレゼントの後に、アートな世界に浸り、お腹ごなしにもなる・・・お奨めエクスポです。
メビウス公式サイト

Fondation Cartier
261 Blb Raspail 75014
メトロ:Raspail(6番線)
11h-20h(火は22hまで)
休館:月
2011年3月13日まで


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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

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