観た後でジワジワと怖い映画

ミヒャエルが仕事から帰り、車をガレージに入れ、スーパーの買い物袋を持って家に入る。誰もいない。
よろい戸を全部閉め、食事の準備をする。2人分。お皿やコップを綺麗に並べ、地下室に下りる。
金庫のような鍵のついた扉を開け、「おいで」
暗闇から10歳くらいの男の子が現れる。
オーストリア映画『ミヒャエル』は、少年を幽閉し、会社ではマジメで有能な社員として働く男の生活を描く。

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会社の同僚との会話、整然と片付いた家の中の様子、そして少年との生活-丁寧に髪を切ってやるかと思えば、スキー休暇の間、インスタント食品だけで置き去りにする-から、彼が外の世界に持っている憎悪が伝わってくる。
でも誰の目にも、ごく普通の人間として映っているところが怖い。目に見えない怖さ。

ミヒャエルを演じる俳優は「ほんとはこの人のドキュメンタリーなんでは?」と思えるほどリアルで上手い。(まぁ、この役をブラッド・ピットなんかがやったら-引き受けないだろうけど-全然真実味がない)

そして観たあと、この監督が描いたのは、ミヒャエルの異常さではなく、彼が生きている国、オーストリアの陰気さ、清潔さ、無関心、エゴイズム・・・だと気づく。

そういえばミヒャエル・ハネケもオーストリア人で、彼の映画も“人間の憎悪”と呼べるようなものがテーマだ。
『ミヒャエル』の監督、Marcus Schleinzer(マルキュス・シュレインザーと発音?)はハネケの弟子で、『ピアニスト』『白いリボン』では監督アシスタントだった。
ただ弟子のほうは肉付けや装飾なしに、批判や感情移入は一滴もなしに、むき出しのまま投げ出す。

彼らがこんなに嫌うオーストリア-私は数日しか滞在したことがないけど-は本当にそんな国なんだろうか?

『MICHEL』
Marcus Schleinzer監督作品
1時間36分
上映中、ただしメジャーな映画ではないので上映館が少ないです。

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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


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