泣きたい人の映画

ニュヨーク郊外の問題ある高校に臨時教師としてやってきたヘンリー、と書くと、フランス映画『パリ20区、僕たちのクラス』のアメリカ版?と思われるかも。でもトニー・ケイの『デタッチメント 優しい無関心』の視点は全然違う。

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アグレッシヴに反抗する生徒たちの前でヘンリーは無力に感じるが、彼の言葉は不思議と生徒たちに伝わっていく。それは、今は亡き母親と祖父に育てられた彼が幸福でない子供時代を送ったから?
ある日ヘンリーは、帰り道で出会った若い娼婦を連れて帰る。乱暴された傷の手当をし、ご飯を食べさせ、泊まらせる。次の日も、また次の日も・・・

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教室と、祖父が入院している病院と、娼婦を泊めている彼のアパートが交互に描かれ、子供時代の断片的な映像が挟み込まれる。
エイドリアン・ブロディの悲壮感漂う痩身が“作品の主軸”、いくら悲壮感漂っても、それだけで涙は出ないが、泣きたい下地はできる(この役、ブロディ以外考えられない)。
そこへ2つの別れ:圧倒的な娼婦との別れ。胸が張り裂けそうに泣き叫ぶ彼女の声に観客の半分は泣く。私は滂沱の涙。いずれ別れなければならないとわかっているとき優しくするのは却って残酷だ、ということ。

そして祖父との別れ。過去に母親と何かあったことを察しつつ、唯一の肉親である祖父を毎日のように見舞うヘンリー。肉体も心臓も弱り、いつ蝋燭の炎が消えてもおかしくない。祖父は、若いヘンリーの重荷になりたくない一方で、孫を一人残していく不安もある・・・

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photos:allocine

最近、批判精神に燃えている息子は目を腫らして帰ってきた私に、「泣かせるための映画だ」。
確かに・・・でも泣くだけでなく、希望のある後味を残すいい映画だと思った。人間の深い孤独を埋められるのは人間だ。

Detachment
トニー・ケイ監督作品
主演:エイドリアン・ブロディ


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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

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