マリナは児童心理学者で30代の女性。優しい夫がいて、面白い仕事をしていて・・・友達は彼女を“満ち足りた女性”だという。
でもマリナの現実は、自分の居所が見つからず、模索と諦めの間を行き来する毎日。

ある日、愛人とひと時を過ごしてうちに帰る途中、ハイヒールのヒールが折れてしまう。びっこを引きながら、通りがかりのレストランに入ると、崩れた感じの女が注文を取りにやってくる。
「タクシーを呼んでほしいんですけど」とマリナ。
女は聞こえなかったように、
「注文は?」と繰り返す。
仕方なく「コーヒー」というと、「コーヒーはない」。
「じゃ紅茶」「それもない」
「水」「ない」
「じゃ何があるんです?」
「ウォトカとビール、ソーセージ」
それを全部注文してもタクシーは呼んでもらえず、ヒッチハイクをしながら歩き続ける。
やっと止まってくれた車は、バッグをひったくって走り去った。
次に止まってくれたのはパトカー、助かったと乗せてもらうと警官に強姦された。

この警官がすごい。荒削りのフランケンシュタインそっくりの大男で、コンピューターで合成したような声。人間性ゼロ。警官の住処を突き止め復讐しようとするマリナ。でも成り行きは思わぬ方向へ・・・

無気力なブルジョア、腐敗した権力機構、欲望を満たすだけのセックス・・・アンジェリナ・ニコノヴァの初めての作品『Portrait au crepuscule/黄昏のポートレート』は“プーチンのロシア”を描いているという。ちょうど大統領選一回投票でプーチンの勝利が報道されたばかり。

portraitaucrepuscule.jpg

左がフランケンシュタインの警官。
19869837_jpg-r_640_600-b_1_D6D6D6-f_jpg-q_x-20111216_103252.jpg

ソ連だったロシアに行ったのは30年も前。ガイドはすべてスパイだと聞いたし、ホテルの各フロアには一日中“見張り”がいて、勝手に外出できないようになっていた。お店には殆ど商品がなく、レストランに入れば何を注文しても1時間は待たされた。働いても働かなくても同じだから、無気力が空気の中に漂っていた。
ソ連が崩壊して突然自由になって20年。今日のロシアも、庶民の日常はこんなに希望がないもの?体制が変わるには長い歳月が必要だってこと・・・

観て楽しい映画では決してないけど、観て良かった。最後のシーンが一筋の光を感じさせる。

Portrait au crepuscule
Angelina Nikonova監督作品
1時間45分
MK2 Beaubourg、Sept Parnassiens、 Elysees Lincolnで上映中


にほんブログ村 海外生活ブログ フランス情報へ
↑ランキングに参加しています。お気に召したらクリックしてください。
スポンサーサイト
コメント
コメントの投稿
プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

カレンダー
10 | 2017/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -
最近の記事
カテゴリー
おすすめ書籍
RSSフィード
おすすめコスメ
フランスに行くなら
プロヴァンスの田舎町をまわる1日
アーカイブ