1986年4月。ウクライナ地方の小さな町、プリピャチ。
結婚間近のアンヤとピオットルはボートに乗ってプリピャチ川を漂っている。川べりでは女たちが洗濯をし、男の子が父親と林檎の苗を植えている。緑の多いのどかな風景。

そして結婚式の日、友達や家族に囲まれた花嫁・花婿はレーニン像の前で記念写真を撮る。
ウォッカを飲んで食べて踊ってのパーティの最中、ピオットルは「森の火事を消すのを手伝え」と呼び出される。
「結婚式の日だっていうのに行かないで!」涙ぐんで止める新婦に「仕事を失いたくない。すぐ帰ってくる」と出かけていく。
どしゃぶりの雨が降り出して、お客たちは軒下に逃げ込む。その雨が黒いのを誰も気に留めなかった。

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夫はその晩帰ってこなかった・・・永久に帰ってこなかった。

『La Terrre outragee/陵辱された土地』はチェルノブイリに一番近い町、プリピャチを描いた作品。
この町は原発の従業員の居住地として作られた町だった。

10年後、かっての花嫁アンヤは“チェルノブイリ・ツアー”という旅行会社のガイドとして、世界中から来る調査団やジャーナリストを案内している。
林檎の苗を植えた父親は原発の技師だった。政府から事故の詳細を硬く口止めされ、彼は蒸発することを選んだ。男の子は青年になり父親を探し続ける。

プリピャチは時が止まってしまった現代のポンペイ。廃墟の風景が住人の諦めや政治家のウソを雄弁に物語る。

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監督はウクライナを知り尽くしているフランス・イスラエル混血の女性ミシャル・ボガナン。アンヤを演じるのはオルガ・キュリレンコ。どこかで見たと思ったら『007慰めの報酬』のボンド・ガール。宿命と諦めて一日一日を送る女性を見事に表現しているのは、ウクライナ出身だから?

日本人には生々しすぎて息が詰まりそうになるけど(私は日本に住んでいないから観れたのかもしれない)、原発の、事故が起きてしまったときの怖さに改めて震えがくる。チェルノブイリで起きたことを当時のソ連の政治形態のせいばかりにはできない。日本でも同じようなことが起こったではないか。
こういう映画は作られなければいけないし(4分の1世紀も後だけど!)この怖さは伝えていかなければならないと思うのだ。

映画が終わったあと、観客はしばらく席を動けなかった。

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La Terrre outragee
原題Land of Oblivion
フランス映画 1時間48分
フランスで公開中


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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

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