携帯電話をなくしませんでしたか?

と、事務的な女性の声で電話がかかってきたのは土曜日の午後。
娘がケータイが見つからない、と言いだしてから1週間以上経っている。「絶対うちに持って帰ってきた」という言葉を信じて止めないでいた。
事務的な女性はRATPの職員で、落し物として届けられたケータイの「メゾン」を押したらうちにかかったというわけ。ちなみに、届けられた数多くの携帯の「メゾン」「シェリー」「ママン」のどれかにかけると持ち主が割れるそうだ。そうだろうね。
「そういえば娘が・・・」
「取り戻したかったら18時までにサン・ジェルマン・アン・レの窓口まで来て下さい」
サン・ジェルマン・アン・レ!1時間はかかるRERの駅。娘は、そんなとこ行ったことない、と言うし、誰かが盗んで、そんなとこまで運んで捨てたってこと?
「もし今日行けなかったら?」
「パリ警察の遺失物に送られ、そこには何万台という携帯電話があって、取り戻すのは至難の業です」
そう言われれば行くしかない。ソルドの下見の約束を返上し、娘とサン・ジェルマン・アン・レに赴いた。

窓口に座っている中年過ぎのオジサンに、
「さっき電話をもらったものですけど」と言うと、
「携帯のメーカーは?」
「Nokia」
「じゃあんたのじゃない。届けられたのはNokiaじゃない」
「でもメゾンを押したらうちにかかったってことは、うちの誰かのものだってことでしょ?」
「Nokiaじゃない」
「電話してきた女性に会わせてください」
ナニを言ってもオヤジは「Nokiaじゃない」と繰り返す。こいつ、極右ル・ペンの支持者か?
1時間かけてたどり着いて、はい、そうですか、と帰れるわけないじゃない。
オヤジも私が大人しく帰らないと察したのか-その上、私の背後に長い列ができている-諦めて担当の女性を呼んだ。
携帯を隠すように持った事務的な女性が現れた。
「コード番号をここに書いて」
しかし娘が書いたコードでは開けられなかった。
ほらね、あんたのじゃない、という顔の女性に、
「でもメゾンでうちにかかったわけだから、家族の誰かの持ち物に決まってる。そうじゃなかったら気持ち悪い・・・」
ふと思いついて、
「0000を押してみて」と言うと、それで携帯のブロックが解除された。携帯を買ったとき、デフォルトのコードが0000で、そのまま変えない人を知っている・・・
RATPの女性はその携帯に最後にかけてきた人に電話をして、ひそひそ話していた。相変わらず携帯を見せないように隠している。見せたら、私が飛びかかって奪い取るとでも思ってるんだろうか?
「あなたのご主人の名前は?」
「アラン」
「ピンポーン!ご主人がこの携帯を落としたんです。このすぐ近くにいるらしいですよ」
ウソー!どこに行くかくらい言って出かけてよ、紛らわしい。
「そういうのをコミュニケーションの欠如というんです」とRATP女性。余計なお世話だ。
「すぐ取りに来るそうですよ、待ちませんか?」と言われたけど、夫の「すぐ」はよく知っている。娘と私は回れ右して、また1時間かけてうちに帰った。ヤレヤレ。

しかし。今日スマートフォンじゃない前世代の携帯は、盗む人がいなくて、落としても見つかるということは判明した。


にほんブログ村 海外生活ブログ フランス情報へ
↑ランキングに参加しています。お気に召したらクリックしてください。


スポンサーサイト
コメント
コメントの投稿
プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
最近の記事
カテゴリー
おすすめ書籍
RSSフィード
おすすめコスメ
フランスに行くなら
プロヴァンスの田舎町をまわる1日
アーカイブ