「おばあちゃんが老人ホームで死んだ」という知らせをアルモンが受けたのは、愛人宅で、手品の練習をしていたとき。
ベルト(と書くと変だけど、Bertheは今は時代遅れのファーストネーム)おばあちゃんはすごく控えめな人で、いることさえ忘れていたほど。しかし、亡くなったという知らせを聞いて、思い出がどっと蘇る。アルモンが情熱を傾ける手品だっておばあちゃんから受け継いだものなのだ。
ブリューノ・ポダリデスの『アデュー・ベルト-おばあちゃんの埋葬』の話。

妻と薬屋を経営するアルモンは、そこから歩いて5分の愛人宅の間を行ったり来たりしている。

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手品の趣味は妻にはバカにされるけど、愛人には拍手喝采される。離婚に踏み切り、愛人と一緒になろうかとなびいていた彼だが、おばあちゃんの死はすべてを“中断”してしまう。

お父さんは認知症なので埋葬の手続きを一手に引き受けるアルモン。妻とネットで葬儀屋を探すと、「リモコンで動く棺おけ(担がなくてすむ)」とか「エコロジー木材の棺おけ」などが現れ、ピンと来ないので地元の葬儀屋に出向く。
そこはハイクラスな雰囲気で、ドラキュラに似たオーナーが現れ、棺おけセレクションは実物大ヴァーチャルで画面に映し出される。“今までの棺おけの概念を覆す”長方形棺おけ(日本はそうなんだけどね)、“フィリップ・スタルクデザイン”という白い繭型棺おけ・・・予算に応じて色々ある葬儀メニューの中から、ドラキュラは“トワイライト”を薦めるのだ。

左がアルモン、愛人(ヴァレリー・ルメルシエ、いるだけで可笑しい)、右が葬儀屋役で登場する監督
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今は亡き伊丹十三氏の『お葬式』もそうだったけど、一生に一度のセレモニーがユーモラスに描かれる。でもけっして茶化しているわけではない。老人ホームに荷物を取りに行って発見するおばあちゃんのラブレター、手品の道具・・・死者への愛情や思い出もしんみりと描かれる。

アルモンを演じるのは弟のドゥニ・ポダリデス。コメディー・フランセーズの舞台俳優で、とりわけモリエールの『守銭奴』が2009年から大ヒット。すぐに完売になりまだ観ていないけど、型破りの守銭奴なんだとか。
シナリオも書き、お兄さんと組んだ映画もこれが4作目。サルコジの選挙戦を描いた『La Conquete』ではサルコジを演じた。
小柄で風采も大したことないけど不思議な魅力があり、女が「ほっておけない!」と思うタイプだ。
ゲラゲラ笑って温かい余韻を残す作品。最近観た映画の中では1位かも。日本でもかかって欲しい。

『Adieu Berthe ou l’enterrement de meme』
ブリューノ・ポダリデス監督作品
1時間40分
フランスで公開中


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コメント
長谷川様、こんにちわ!いつも楽しくブログ拝見させて頂いています。
この映画の話ではないのですが、RATPの乗車マナーキャンペーンのポスターご存知ですか?人を押しのけ先に乗り込もうとする闘牛男、混んでいるのに足を伸ばし大柄に座る怠け者男、周りの迷惑顧みず大声で喋り捲る鶏女。。。etc
仏人の乗車マナーの悪さをすごく着いてて、笑っちゃいます!
Re: nomi様
そのポスター知りませんでした!メトロにはよく乗るのに、なぜ気がつかなかったんでしょう・・・すごく可笑しそう。ありがとうございます。
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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

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