田舎の埋葬式

私が会いに行った翌日に義父は亡くなった。
「死にかけている人は直前になると死ぬ時を選べるんだって。会いたい人に会えて安心したんじゃない」と友達に言われたけど、私が優先順位のそんなに上にいたとは思えない。
口から食べ物をとることができなくなっていたし、呼吸をするのもしんどい様子だったので、“その時”が来たんだろう。
トップ5には入っていなくても、私のことは「気に入っていた」と家族が言う。20年以上のつき合いで距離はあまり縮まらず、最後までvousvoyer-丁寧な話し方だった。
年老いてますます気難しいイジワル爺さんになっていったけど、みんなが「また始まった」とうるさがる昔話を私は面白がった。だから結構よく話を聞いた。

埋葬式が4日後に行われた。実家から歩いて5分くらいの村の教会に親戚と親しかった村の住民(村の人口140人)が集まった。
棺が担ぎこまれると、その上に「子供たちと義娘から」「孫たちから」と書かれた花束が置かれる。
義父の秘蔵っ子だった夫の弟が挨拶した:1928年、シャンパーニュ地方のこの村に生まれてからの人生を要約し、希望通り自分の村で村の人に囲まれて亡くなって幸せだったはずだ、と。重くなくて時々ユーモラスないい挨拶だった。
聖歌を歌うために“選ばれた”村の女性2人の1人がびっくりするくらい音痴だった。
緊張すると笑いが止まらなくなるという性癖のある娘は、笑いをこらえるのに苦労していた。

お葬式のとき、お酒を酌み交わすのは何処も同じで、ここはシャンパーニュだからシャンパンだ。
会葬者がゾロゾロうちにやってきてシャンパンがふるまわれる。午後の4時からポンポンとボトルが開き、90歳を越える義父の友達や従兄弟までがグイグイとグラスを空ける。30度を越える暑い日だったので私は1杯でけっこう回ったのに、みなさんごリッパ。
14年前、義母の埋葬で会ったきりの遠い親戚たちと再会する。
「亡くなった奥さんとやっと再会できるのね」と誰かが言うと、
「うちの父は、母が亡くなった後すぐ老人ホームに入ってね、気落ちしているだろうと見舞いに行ったら、もう他の女性の手なんか握ってるの」
「ヤダー!ギャハハ・・・」
などと盛り上がって、宴は7時すぎまで続き、近しい人たちが残って夕食になだれ込む。

死者との別れをこうやって“お祭り”にしてしまうのが、残る者の知恵なのかもしれない。


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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

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