
「入ってもいいかな、カール」という監督のセリフで映画は始まる。7区にある旧財閥邸にあるラガフェルドのアパルトマン。美しいはずの部屋は本が溢れるほど積み重なり、所狭しと服や紙袋が置かれ、乱雑そのもの。たんすの上には彼のトレードマークであるシルバーのリングやブレスレットやネックレスが何百と並んでいる。旅支度をしているカールは、リングを10個くらいはめ、少しためらってから「万が一のため」とさらに何十個ものリングをポーチに入れる。
初めてラガフェルドが信頼し、その日常に入り込むことを承諾した監督、ロドルフ・マルコーニ。彼のカメラは、デッサンする、男性モデルの写真を取る、ショーの準備をする・・・ラガフェルドを追いかける。
このモード界の大御所を一度見たことがあった。サントノレ通りに路面店を開いたメークアップブランドのオープニングに行ったら、そこに彼が現れた。会場が「おお!」「カールだ」とどよめき、シンボルマークの高いカラーにサングラスのラガフェルドが姿を現した。
この映画はそのときの第一印象(スタイリッシュで偉そうな感じ)を覆す。すごくユーモラスで機知に富んだ人だ。例えば、「あなたの・・・その特殊な性向が現れだしたのはいつ頃でしょう?」というインタビュアーの質問に、「あんた、はっきりモノをいいなさいよ。僕がホモセクシュアルってこと言いたいんでしょ」とニヤニヤ笑う。自宅のトイレには「あちこちにオシッコ飛ばす人は全然シャネルじゃない」と張り紙がしてある。
「成功はね、すぐ無効になるんだ。だから毎回、やりなおさなければいけない、それも違ったやり方でね」プレッシャーはいかに、と想像するけど、それを面白がっているような軽いフットワークの70歳。スゴイの一言。『Lagerfeld Confidentiel』、まだ公開中です。
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