「2004年にシャトレ劇場のディレクターに就任したときから念願だった」とジャン=リュック・シャプラン。
彼がオペラ座のバレエ理事をしていた80年代の後半に、出張で行った日本で若い玉三郎を“発見”。
その優雅さとひとつひとつの動きの正確さと完成度にぶっ飛んだ。
彼曰く、玉三郎が舞台で見せるのは「女性ではない。男性が抱く完璧な女性のイメージ」
なるほど。
しかし、1986年以来パリ公演をしていない玉三郎を呼び寄せるのは、ミッション・インポッシブルだったそう。その間に人間国宝になっているし、彼のスケジュールは3年後まで詰まっているし、公演の条件(技術的+財政的)をクリアするのが難しい。その上、玉三郎は松竹と契約しているので(そうなの?)“公演依頼”が本人のもとに届くまで、ほとんど障害物競走で、ジャン=リュック・シャプランの依頼がどの障害物で、どんな理由でコケたかわからぬまま、時間が経った。
シャプランの新たな作戦:数年前から玉三郎が和太鼓集団“鼓童”の芸術監督をしているのを知った彼は、2012年、シャトレ劇場に“鼓童”グループを呼び、接待、ホテル、パーティ・・・と最大限の気配りで迎える。その公演に同伴してきた玉三郎が、自分からシャプランに会見を申し込んだ。
「この度の皆さんのご親切に驚き、25年ぶりにパリの夜(!)と再会して感動した。アヴァンチュール(=パリ公演)を試みる準備はできている」
シャプラン氏は狂喜し、カレンダーを取りに走り(国立劇場の予定も3年先まで決まっている)「2015年か2016年・・・」と言いだすと、人間国宝は、
「いや、3年後に自分の身体がどうなっているかわからない。来年やりたい」
こんなチャンスは逃がせない。私は翌年の公演予定から、動かせるものを-それが何だったかは言えないが、一番煮詰まっていなかった企画-を動かし、2月公演が決まった、と得意げなシャプラン。
玉三郎ほどのスターが移動するときは、アシスタント、弟子、各種スタッフ、楽器、衣装、舞台装置、『牡丹亭』の中国人役者60名・・・の大所帯。さてパリ公演はハウ・マッチ?の質問にシャプラン氏は「言えない」。でも、オペラやミュージカルの公演より安いそうだ。

7日、私と夫はシャトレ劇場で『地唄』を観た。
シャトレ劇場

2度と観れないかも、と一番高い席(90ユーロ!)を奮発したけど、それでも舞台は遠く、オペラグラスを奪い合う。
最初の『雪』はあまり動きがない舞で、謳いも子守唄のようで、夫はイビキをかき出した。映画館で眠っても誰も何も言わないけど、人間国宝を観にきた芸術的インテリな方々、前列全員が振り向いて「シーッ」、その度にこづいて起こす、の繰り返し。90ユーロ払って寝るな!

最後の『鐘ヶ岬』が素晴らしかった。

玉三郎 パリ公演『地唄』

幕が開いて、満開の桜が現れただけで観客はどよめく。
この桜の花、紙で作ると重すぎてドサッと落ちる。ハラハラと散ってくれない、と日本から運んだもの。
身体の動き、手の動き・・・ひとつひとつがなまめかしい。セクシーな女優が裸になってもあまり感じないけど、心乱されるのは男性だから?
黒子が後ろに回ったとき「脱がせるわよ」と夫に言うと、何を期待したのかパッチリ目を覚ました。
最後の挨拶の、どこか可憐な女らしさも何度見ても飽きない。観客は総立ち。
しかし短い!20時10分に始まって終わったのが21時40分。その3分の1は着替えのための幕間だった。欲求不満を抱えて立ち去る。美しさは儚いのだ。

地唄は7日で終わり、2月11日~16日は同じくシャトレで崑曲『牡丹亭』
玉三郎 パリ公演


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コメント
素晴らしい時間でした。
はじめまして。
玉三郎さんのパリ公演見たさにはるばる?日本からやって来ました。でも本当に来て良かった♪素晴らしい時間、何にも変えがたいものです。

長谷川様のお陰で、公演開催までのエピソードが伺えて嬉しかったです。ありがとうございました!!

久しぶりのパリ、もっと先に来る予定でしたが、思わぬ展開になりました。すべての事に感謝しながら、今日日本へ戻ります。
また是非戻って来たいです。
Re: 素晴らしい時間でした。
コメントありがとうございます。
日本からいらしたんですね!こういう舞だけの公演は日本ではないのかもしれません・・・
特に3幕目、2度続けて観たかったです。
玉三郎さんにインタビューした知り合いのジャーナリストが「こんなにエレガントな人は見たことがない」そうです。

ありがとうございます
御返事ありがとうございました。
玉三郎さんは、舞踊公演を何度もなさっておられます。ただ地唄舞三曲は、回を重ねる度に、演奏者との良い関係がパワーアップしていっているのです。それを昨年更に感じて、パリ公演は凄いことになるかもと大変期待していました。
舞台は一期一会ですが、一回だけでなく、二度三度と見たくなる舞台にはそうそう出合えません。やはり、玉三郎さんは別格なのでしょうね。

インタビューされたジャーナリストの方の「エレガント」という言葉は、最大級の誉め言葉なのでしょうか?フランスのお国柄、人間性を含めそういう表現をなさったのかなととても嬉しく感じました。
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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

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