主要なセザール賞(最優秀映画・監督・女優・男優・シナリオ)はミヒャエル・ハネケの『愛・アムール』が独占し、2日後のアカデミー賞でも外国映画賞を取った(日本では3月9日公開)。

『セザールの夜』ではハネケもジャン=ルイ・トランティニャンも欠席。ステージに上がったのは女優賞のエマニュエル・リヴァひとり。深紅のドレスが似合って、凛としてそれは美しかった。

セザール女優賞エマニュエル・リヴァ

セザール名誉賞のケヴィン・コスナー、渋くて品格があって惚れ直す・・・

セザール女優賞エマニュエル・リヴァ+ケヴィン・コスナー

ノミネートされていた作品(全部観たけど)の中で、一番ずっしり残ったのはステファン・ブリゼ監督の『Quelques heures de printemps/春の数時間』。
ムショ帰りのアラン(ヴァンサン・ランドン)は行くところがないので母親(エレーヌ・ヴァンサン)のうちに転がり込む。
夫に先立たれてひとりで暮らしている老母は、家を綺麗に掃除し、買い物をし、ひとりのご飯を作り・・・誰の世話にもならずリッパに生活している人。それだけに大きな図体の息子-しかも仕事を見つけるのも難しい前科者-に静かな生活をかき乱され苛立つ。息子のほうも、何かにつけ文句をいう母親が鬱陶しい・・・というわけで口論が絶えない2人。

険悪な空気が伝わる一場面
ステファン・ブリゼ監督『Quelques heures du printemps』

ある晩、薬を探していた息子は、母親が脳腫瘍に罹っていて、スイスでの「介助自殺」に申し込んでいることを知る。彼女は自分の死ぬ時を自分で決めようとしていた。
愛し合っていないわけではないけど傷つけ合う、親子関係の難しさと、「介助自殺」に向かって進む2人の姿、深く共感する作品。
そして母親の最後のセリフ、「うちの鍵、渡したわよね?」のリアルさに硬直する。

母親役のエレーヌ・ヴァンサンは女優賞にノミネートされていた。ある日、ラジオ番組に出ていて、この映画の話になったら突然泣き出した。インタビュアーがびっくりして「ど、どうしたんですか?!」
彼女曰く、この役を演じられたことは自分にとってすごく大きな意味があり、思い出す度に涙が出るのだと。

『愛・アムール』は確かに優れた作品(あれを愛と呼ぶか、忍従と呼ぶか意見の分かれるとこだけど)だけど、こっちもひとつくらい賞を取って欲しかった。テーマは非常に近い。
老いる、病と闘う、自分の死期を決める、決められるか・・・いずれ誰もが直面する問題、こういう作品が少しずつ増えてくるでしょうね。


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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


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