原発で働く男達を描いた『Grand central』

アルバイトを転々としたガリーは原発作業員の仕事を見つける。若いし体力はあるし、危険が伴ってもサラリーがいい。採用されたガリーは、先輩に色々教えてもらいながら新しい仕事に張り切る。原発の近くに設けられた仮設に寝泊りし、昼も夜も仕事仲間と暮らす毎日。ガリーは先輩トニのフィアンセ、キャロルと惹かれ合い、人目のない林の中や川辺で逢瀬を繰り返す。
原子炉の間近での作業は、正確さと速さが命。廃棄物の入った容器を倒してしまうなどのアクシデントもある。ガリーは少しずつ汚染されていくが、チームから外されるのを恐れ、測定値をごまかして作業を続ける。一方トニは、自分の女とガリーの関係を疑いだす・・・

映画「Grand Central」

今年のカンヌ映画祭、「Un certain regards/ある視点」参加作品『Grand central』。原発の中の様子をここまで描いた映画は初めてとか。毎日、汚染の危険にさらされながら働く男達の姿や、放射濃度の厳しいチェックや、浴びてしまったときのパニックは息詰まるようだ。

監督・シナリオのレベッカ・ズロトヴスキーは33歳の女性(美人!)。原発のセットを造るのはお金がかかりすぎるし、稼動している原発で撮るのは危険が大きい、と探しまくって、ウィーン郊外に使われていない原発を見つけて舞台にした。元原発作業員が技術コンサルタントとして撮影に参加した。
「原子力発電に賛成・反対のメッセージはない。原発で働く男達の現状を描く社会的映画を作りたかった」と監督。「ガリーとキャロルの恋物語は、男だけの閉鎖社会をかき乱す要素として入れた」。

ガリー役のタハール・ラヒムは『アン・プロフェット/預言者』の主役。人種差別や権力争いの激しい刑務所で、のし上がっていくアラブ系青年を描いた映画で、小柄で一見目立たないタハールが放つカリスマ性にみんな驚いた。

タハール・ラヒム

キャロル役は今、すべての雑誌の表紙を飾っている、といっていいレア・セイドゥー。一時代前の女優のオーラがある演技派(しかし視線はこの美しい谷間に!)

レア・セイドゥー

監督のレベッカ・ズロトヴスキーがシナリオを書きだしたとき、福島の原発事故が起こった。「毎日、どんどんニュースが入ってくる中、この映画を作る必要性を確信した」。
日本人にとってはもちろん、原発の多いフランスに住む人にもズシリと重い内容で、こんな危険な装置を続けていいのか?と思う。「賛成・反対のメッセージはない」と言っても、ちゃんとあるような気がする:放射性物質も不倫の恋も、ある一線を越えると取り返しがつかなくなる・・・

ところで、この映画のタイトル、“Grande centrale”なら大原発という意味だけど、“Grand central”(大きな中心点?)という抽象的なタイトルになっている。

『Grand central』
レベッカ・ズロトヴスキー監督作品
出演:タハール・ラヒム、レア・セイドゥー、オリヴィエ・グルメ
フランスで公開中


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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


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