アンティーブのおばあさん

娘の高校の友達が「車で15分のとこに来てるんだって!」世の中狭い。
彼女が一日遊びに来て、アンティーブでニコラ・ド・スタールの展覧会をやっている、と教えてくれた。
41歳で亡くなったロシア人は一番好きな画家のひとり。即、行こう!

マンドリュー=ラ=ナプールからイタリア国境の町、ヴェンティミーリアまで走るコート・ダジュール沿岸電車で10分。
展覧会は去年も来たピカソ美術館で。海を見下ろす岸壁にある。

アンティーブ ピカソ美術館

お昼過ぎだったので、市場の中にある去年と同じレストランに入った。探究心がない、と言われるかもしれないけど、去年と変わらぬ場所を見つけるのは悪くない。でも変わらないのは場所だけではなかった・・・

「同じおばあさん!」と娘がささやくので、見ると、テーブルの端に小柄なおばあさんがひとりで座っている。
ほんと、去年も同じ場所に座っていた。彼女の前には白ワインのグラスと空のグラス。おばあさんはその一杯をゆっくり飲む、30分以上かけて。そこの“風景”になっているらしく、通りがかりの人が「サ・ヴァ?」「今日も暑いね」と声をかけていく。
間もなくおばあさんはうたた寝を始める。二重顎に顔を埋めるようにして・・・はっと目覚めると、けっこう輝きのある目。
ウエートレスに向かって、かすかに指を上げると新たなグラスが運ばれてきた。
70歳と80歳の間くらい。旦那さんに先立たれて、孤独を紛らわすために飲み始めた?でも、おばあさんは一杯のワインを前に、夢を見ているような、平穏な表情をしている。グラスはまたゆっくりゆっくり減っていく。

さてニコラ・ド・スタールの展覧会は亡くなる前の1951年-55年の作品。ジャンヌ・マチューという女性(人妻)と恋に落ち、彼女の住むニース近く、アンティ-ブに引っ越してきた。この時期はジャンヌをモデルにしたのをはじめ、裸婦をたくさん描いている。裸婦はあまり知らなかったけど、身体の線が、そしていつもの赤やブルーがすごくいい。

ニコラ・ド・スタール

1955年夏にニコラ・ド・スタールの展覧会がアンティーブで予定されていた。それなのに、その3月にアトリエの窓から飛び降りて自殺。恋に行き詰った?・・・生きるのが嫌になった人の気持ちはわからない。

展覧会の後、市場のレストランの前を通ったら、おばあさんの姿はなかった。
来年、ここでまた再会するだろうか?


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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

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