眠らなかった『Winter Sleep』

カンヌ映画祭でパルム・ドールを取ったヌリ・ビルゲ・ジェイランのトルコ映画『Winter Sleep』。
絶対観たいけど、上映時間3時間16分(予告とCM を入れたら3時間半)を考えると、気軽には行けずに延び延びになった。寝不足のときに行ったらWinterじゃなくても寝ちゃいそうだ。

引退した俳優のアイディンは、アナトリアのカッパドキアで小さなホテルを営み、若い妻と、姉と暮している。心が離れてしまった妻とは、あまり会話もなく、姉は離婚から立ち直っていない。雪に閉じ込められ、3人の後悔や恨みがぶつかり合う。

・・・と、要約するとたった3行で、大した事件も起こらず3時間以上続く映画、どうしたら退屈しないのか?と思うでしょ。ところが長くは感じられなかったし、居眠りもしなかった。
まず、舞台となるアナトリアの大草原が息を飲む美しさ。気候は荒々しく、冬が恐ろしい寒さ、人々の暮らしは貧しく近代化もされていない。私なら2日ともたないだろうけど、その風景はタブローのようだ。

ヌリ・ビルゲ・ジェイラン『Winter Sleep』

姉は仕事をしているアイディンの背後に座って、グチグチと彼を非難したり生活の不満を言う。その小意地の悪さは引っぱたきたくなるほど。
ヌリ・ビルゲ・ジェイラン『Winter Sleep』2

冷たく恨みがましい眼差しで夫を見る妻・・・この3人はみんなそれぞれ不幸なんだとわかる。

ヌリ・ビルゲ・ジェイラン『Winter Sleep』3

でも観ていて落ち込まないのは、誰も100%加害者でも被害者でもなく、人間みんな灰色なんだ、と共感し、それでも人生を続けていく人間の強さ(あるいは弱さ)、尊厳(時には尊厳を捨てる強さ)が感じられるからではないかと。

とにかく、閉所で暮す人たちの、アクションのない生活を3時間に渡って描き、感動させるというのはスゴイ。家の中の家具や照明も陰気なトーンで、登場人物たちの心情に合わせて計算されている。
監督のヌリ・ビルゲ・ジェイランは『スリー・モンキーズ』(2008)がカンヌ映画祭監督賞、『冬の街』(2002)『昔々、アナトリで』(2011)はグランプリを取っている。寡作だけど撮れば名作、という監督だ。
『Winter Sleep』日本でかかるといいのに。フランスで約1ヶ月前から上映中。

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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


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