影のヒーローたち

水曜日に発売になったシャルリー・エブドはキオスクや新聞・雑誌屋の開店(6時半)から10分足らずで売り切れる騒ぎ。通常6万部の刷り部数が500万部になった。
「表現の自由を護る」が「シャルリーを護る」になったみたいでで違和感を感じたけど、「(内容はともかく)原則として買う」人がけっこういたようだ。
息子は「いつか自分の子供に見せるために買わなくちゃ」。なんだか急におばあちゃんになった気がした。

フランス人は“結束”したかったような気がする。ここ数年、不況で購買力が下がり、失業率は上がり、“自分の問題で精一杯、人のことなんかかまっていられない”という風潮だったから。デモに参加して、ああ、まだ結束できる、と確認して、しばらく忘れていたものを取り戻したんじゃないかと。警官や憲兵に自発的に「メルシー」や拍手が起こったのも同じ。人にお礼を言う気持ちも薄れていたように思う。
その結束の象徴的な行為が“シャルリーを買う”なのだ。それにしても騒ぎすぎる気がして買いに行かなかったけど、「子供に見せたい」と言われて近くのキオスクに寄った(残っているわけないけど)。新聞売りのオジサンは「アンタもか」とウンザリした顔で、「明日もあさっても入荷するから心配するな」

何度も繰り返されるメジャーなニュースの影で、私が拍手したかったのはヴァンセンヌのユダヤ・スーパーの従業員、ラッサナ・バティリー26歳。アメディ・クリバリが人質を取って店に篭った13時頃、彼はクリバリに見つかっていないお客6人(赤ちゃんもいた)をこっそり地下に誘導、冷蔵室に隠した(冷蔵スイッチを切るのも忘れなかった)。その6人に裏口からの逃げ方を教えたけど、みんな怖くて動けなかったとか。ラッサナはクリバリがシャッターを閉める前に抜け出し、警察の特別介入部隊に中の状況を伝え、シャッターの鍵を渡した。RAID突撃のとき、店のシャッターがスルスルと開いたのは彼のおかげだった。

ラッサナはマリ出身のイスラム教徒。イスラム教徒=過激派という先入観が高まる今、こういう人こそスポットを当てるべきだ。

テロ事件、陰のヒーロー

「ぼくはユダヤ人をかくまったんじゃない、人間をかくまった」とインタビューに答えたセリフも心に残った。
2006年にフランスに来て、滞在許可書を取るのに悪戦苦闘したという彼に、フランス国籍が与えられることになった。ヨカッタヨカッタ。

クアシ兄弟が押し入った印刷屋の主人もなかなか。事務所にいたグラフィストが隠れられるよう、テロリストたちに「コーヒーでもいかがですか?」(「ノン!」の返事)、ひとりが首に怪我をしているのを見て「傷の手当をしましょうか?」(「ノン!」)と時間稼ぎ。武装したテロリスト2人を前に「コーヒーでもいかが」は言えるもんじゃない。

私が耳を澄ませた影のヒーローの話でした。


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コメント
こんにちは。この事件、凄く考える事が多くて色んな意見があって、でも何だか最終的に宗教論争みたいになってしまって、何だかずっとモヤモヤした気持ちが拭えませんでした。でもny timesの記事で、射殺された警官の家族が「my brother was Muslim, and he was killed by people who pretend to be Muslims"と言ったとあり、上手く言えないけどすっとこの言葉が心に届きました。
はじめまして。
こんばんは。初コメントです。ずっと読んでるだけでした!今回のテロの後日談として、このような物語は日本のニュースで取り上げられることは無くて、長谷川さんのブログで細かな物語が知ることができることに感謝です。
また、クアシ兄弟が幼い頃に孤児になり、孤児院で過ごした。とラジオで聞きました。その後の彼らの経歴は大人になってからの過激なものばかりです。私はこの兄弟の親はシリアで病死なのか?それとも紛争で亡くなったのだろうか?と加害者である彼らの物語も同様に知りたいと思うようになりました。移民で両親がなく、育つのは大変だっただろうとも思います。自由と同じ重さで彼等の平等も守られていたのかは?大いなる疑問です。私はこの兄弟の孤児院で、、の情報を聞いた時、怒りと同時に切ないものも感じ複雑になりました。繰り返すループでなければいいなと思いますが、情報が無いので?です。また、こういう物語があればブログに書いて下さいね。
こんにちは。初めてコメントさせて頂きます。
この事件については、日本で報道されていることと、現地の方が発している内容と結構相違があるように思いました。(この件だけでなく、メディアの情報はすべて同じようなものなのかもしれませんが。。)
ラッサナさんのお話は、人としてどう生きるかを改めて考えさせられました。ブログに載せて下さってありがとうございました。
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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

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