孤独な人生の美しい最後

ロンドン郊外の役所に勤めるジョン・メイ。地味な背広に地味なネクタイ・・・印象も陰気なら彼の仕事も陰気だ:1人で死んだ人の身寄りを探し出し、お葬式に来てもらうこと。でもジョンの努力にも関わらず、お葬式の参列者は彼1人のことが多い。

ジョン自身、ひとり暮らしだ。きちんと片付いた簡素なアパート、ひとりの夕食は、ツナの缶詰、トースト、リンゴ・・・彼のマニアックな性格や、友達も娯楽もない生活がうかがえる。
夕食の後、ジョンはアルバムを取り出す。そこには結局身寄りが見つからず、一人で埋葬された人たちの写真が並んでいる。そう、彼の人生の意味は、孤独に死んでいった人の、最後のセレモニーだけでも“美しく”すること。ジョンは故人の手紙や写真を頼りに、私立探偵のように身寄りを探す。彼はこの仕事に生きがいを感じていた。

映画『Une belle vie/Still life』

身内を見つけて、お葬式に来るよう説得する。唯一の”孤独でない”時間。
映画『Une belle vie/Still life』
photos:allocine

ある日、上司がやってきて、彼の仕事は時間がかかりすぎ成果がイマイチなのでポストを閉めることになった、と告げる。
「お葬式に誰か来ようと来まいと、死んだ人にはわかりゃしない。無駄な仕事だ」
ジョンはびっくりして上司を見返す。彼は自分の仕事に意味を見出していたし、第一、これがなくなったら彼に何が残るというのだろう?
最後の仕事は、なんと彼のアパートの隣人、1人暮らしの老人だった。ジョンは今まで以上の情熱で、老人の身寄りを探す・・・
すごく地味だけど小さい宝石のような作品、『Une belle fin/美しい最後』(原題は『 Still life』)。
アンチヒーローのジョン役、エディ・マーサンがひたすら陰気でメランコリックで上手い。孤独で無味乾燥な生活は『すべての善き人のためのソナタ』の諜報員を思い出す。
この作品、日本ではかからなそうだから最後まで話したくなるけど・・・じっと我慢(ところが。読者の方から「この映画は日本で既に公開されている」と教えていただいた。ありがとうございます!)

とにかく、心に残る御伽噺に出会ったような気分で映画館を出た。
監督はイタリア人、ウベルト・パゾリーニ。英伊合作映画。
『Une belle fin』邦題は『お見送りの作法』
1時間27分。
パリではレ・アールのCine Citeなどで上映中。お急ぎを!

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コメント
こんにちは、

この映画…すでに終わりましが、日本で公開されましたよ^_^

日本名はお見送りの作法…
still life、une belle finの方がしっくり来ます。

新聞も何紙か取り上げてました。

私も見ましたが、最後は涙が止まりませんでした…


おみおくりの作法
こんにちは

この映画、以前に新聞で紹介されていて、気になってました。「おみおくりの作法」の邦題で日本でも公開されていますよ。

やっぱりいい映画なんですね、見に行ってみます!
Re: あずきなこ様
知りませんでした!ありがとうございます。
日本では1月末に公開されたんですね。なぜフランスで今頃?
たしかに『Une belle fin』のほうがいいタイトルですね。

Re: 104様
日本のほうが早かったとは知りませんでした。ありがとうございます。
いいですよ。是非!
Re: 豊栄のぼる様
フランスで観られたんですか?日本の配給会社が買ったそうです。
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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

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