ジョン・ガリアーノが人種差別発言で警察に拘束され、ディオールを解任されたあと、ディオール・オートクチュールは後任者を11ヶ月探し続けた。
2012年4月、ラフ・シモンズが責任者として就任。オートクチュールのコレクションまで8週間しかなかった。
その8週間を追ったフレデリック・チェングのドキュメンタリー『Dior et moi』。ディオールと私。

Dior et moi/ディオールと私

ラフ・シモンズの形容詞といえば「ミニマル」「構築的」・・・2005~2012年、プラダの傘下に入ったジル・サンダーのプレタポルテ・アートディレクターははまり役だった。
ウエストを絞り、ボリュームのあるスカート・・・フェミニンなディオールのラインになぜ彼が?
『クリスチャン・ディオールの仕事にはずっと感銘を受けてきた。もちろんニュールック、でもそれだけに要約できない。僅か10年の間に、あれだけの革命を生み出した人は彼の他にいない』とラフはどこかで言っていたけど。
ベルギー人のラフ・シモンズが、“右腕”ピーター・ミュリエと共に、由緒あるクチュール・メゾンにやってきたとき、メゾンのスタッフたちも懐疑的だったに違いない。

ラフ・シモンズは寡黙で、控えめな感じで、ガリアーノとは随分違うキャラに見える。

Dior et moi/ディオールと私

ある日、メゾンで一番腕利きの女性がいない。ラフが尋ねると、NYの顧客のところに行っている、という返事。
「僕が必要なときになぜいない?僕と顧客とどっちが大切なんだ!」珍しく怒るラフ。
スタッフたちはあまり動じない。メゾンに20年、30年いるベテランのオバサンたちは、
「35000ユーロ買ったお客が不満を言えば、飛んでいくのが当たり前じゃない。今にわかるわよ」
そう、ここはオートクチュール。世界中に200人と言われる顧客が一着平均15000ユーロの服を買う世界だ。
「今にわかるわよ・・・」なんて言っていたオバサンたちも、時間が経つうちにラフの“静かな情熱”と力量に一目置くようになる。

Dior et moi/ディオールと私

ショーの当日。特別に借りた元貴族館は改装され、花で埋め尽くされる。
始まる間際に出来上がったドレスたちが運び込まれる。
次々入ってくる招待客を階上から見ているラフ・シモン:アナ・ウィンター、ジェニファー・ローレンス、シャロン・ストーン、マリオン・コティアール・・・感情を殆ど表さないラフの、緊張とプレッシャーが限界まで達したのがわかる。

Dior et moi/ディオールと私

ここで気づくのは、ディオールが、クリスチャン・ディオールの時代と異なり、LVMHという巨大コングロマリットの傘下にあること。最初のコレクションの発表をするラフ・シモンズの肩にはLVMHのイメージを左右する責任がのしかかっていたことだ。かわいそうに・・・

ラフ・シモンズの人物像、彼が創る”新しい神話”。メゾンのスタッフたちが見せるモードへの情熱、プロ精神が伝わる撮り方。最後はジーンとした。

『Dior et moi』
Frédéric Tcheng監督作品
1時間26分

ランキングに参加しています。お気に召したらクリックしてください。
にほんブログ村 海外生活ブログ フランス情報へ

にほんブログ村 海外生活ブログへ
にほんブログ村


スポンサーサイト
コメント
コメントの投稿
プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
最近の記事
カテゴリー
おすすめ書籍
RSSフィード
おすすめコスメ
フランスに行くなら
プロヴァンスの田舎町をまわる1日
アーカイブ