
うちの黒猫アナイスは、世話をする私に一番なついているものの、オフィシャルには息子の猫だ。当然のことながら、娘は「あたしも猫が欲しい」、「いや犬がいい」と定期的に騒ぐ。自分で世話をできる年まで待ちなさい、と逃げていたが、最近「ヘビを飼いたい」などとエスカレートしてくるので、この辺で手を打ったほうが懸命みたいだ。
猫をもう1匹飼うのが、もっとも簡単だけど、気難しいアナイスは、自分のテリトリーへの闖入者を認めない危険性が大きい。唯一認めるのは自分の子供だろう。じゃ産ませるしかない、夫を探してこよう、と、娘の友達の牡猫を一日借りてくることになった。
初めてのお見合いどころか、うちから出たことのないアナイスにとっては初めて会う猫だ。
連れてこられた牡猫は、怖がってすぐ戸棚の後ろに隠れてしまった。とても引っ込み思案で怖がりなんだと。「シャマロ(というのが彼の名前)、しっかりやって!明日、迎えに来るから」と飼い主は楽天的に帰っていった。
アナイスはすぐ興味を示して、戸棚の周りをウロウロしている。シャマロは隠れ家からやっと出てきたと思ったら、今度は窓の片隅に逃げ込んだ。女のほうが積極的で、さかんにアプローチするけど、相手が全然反応しないので、諦めてどこかに行ってしまった。
この後、シャマロは再び戸棚の陰に逃げ込み、水にもキャッツフードにも手を(?)つけようとしない。みんなが寝静まったら、出てくるだろう、と期待したけど、翌朝見にいったら、同じ場所に隠れ、ご飯も食べていなかった。
夜中に何度か接近を試みたらしいアナイスはやつれた顔。触れることも、視線を交わすこともできなかったようだ。
そんなわけで一夜の情事は失敗に。娘はもちろん、子猫の貰い手まで決め出していた夫も「思ったより複雑なんだな」とがっかりしていた。
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