実は、カンヌ映画祭の審査委員の多くはこの作品にパルム・ドールをあげたかった。でも毎回取り逃がしている(ミヒャエル・ハヌケのせいで)ジャック・オーディアールの『ディーパン/Dheepan』に、これまでの功績への賞としてあげることに決めた、という裏話。

ナンニ・モレッティはオートフィクション(自伝とフィクションが一緒になったジャンル)が得意な監督で、脚本・監督・主演を一手に引き受けることが多いけど、この作品『Mia madre/わたしの母』では自分の分身(女性!)を立てた。

女性監督マルゲリータは、解雇に反対して工場を占拠した工員たちを描いた作品を撮っている。撮影は思うように進まず。その上、入院している母親は余命いくばくもない。

そこへ、工場経営者を演じる“有名な”アメリカ俳優が到着。実はこの役者、プロ精神に欠けた、気まぐれなほら吹きで、セリフもまともに覚えられないことが判明。マルゲリータのストレスは募るばかり(でも観ているほうはすごく可笑しい)。

バリー(ジョン・タトゥーロ)のNGの連続にヒステリーを起こすマルゲリータ

ナンニ・モレッティ『Mia madre』

夜は疲れ果てて病院にたどり着き、母親の枕元でひとときを過ごす。
母親役ジュリア・ラザリニは有名な舞台女優。なるほどの貫禄。

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マルゲリータは自分の仕事にも私生活にも迷いと疑いを感じている:撮影が上手くいかないのは私のせい?自分がどうしたいのかよくわからず、いつもピリピリしているから?ひとり娘に好きな人がいたことを、死にかけている“おばあちゃん”から教えられるなんて。なんで母親の私が気づかなかったの?・・・

ナンニ・モレッティ『Mia madre』


ナンニ・モレッティはマルゲリータの兄役。控えめでしっかりしていて・・・こんな兄貴が欲しかった。

ナンニ・モレッティ『Mia madre』

映画は、母親が元気だった頃のフラッシュバックを挟みながら、撮影現場と病室を行ったり来たりする。その中から、今、人生を終えようとしている母、人生半ばで疑問を感じているマルゲリータ、これから大人の世界に漕ぎ出していこうとしている娘、の3世代が浮き彫りになる。
可笑しくて哀しい(でもメロにならず)傑作。私はハンカチを取り出し、隣の女性もグスンと言っていた。
恐ろしい事件が重なった2015年の終わりに、家族の絆と人が死ぬことの重みが染み入ってくる。是非観て下さい!

Mia Madre
ナンニ・モレッティ監督作品
主演:マルゲリータ・ビュイ、ジョン・タトゥーロ、ナンニ・モレッティ
1時間47分
フランスで上映中

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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

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