リヨン郊外の団地に娘2人と暮しているモロッコ出身のファティマ。離婚した彼女は、娘2人に教育を受けさせようと、毎日、会社の清掃やお手伝いさんをしてせっせと働いている。教育がなくフランス語がしゃべれず“他人の汚れものを洗う”しかない彼女は、娘たちにはこういう思いをさせたくない。長女は医科を目指し、15歳の次女は反抗的で勉強しない。
朝まだ暗いうちにバスに乗り会社清掃に行く。お手伝いさんをする家では、彼女の“誠実度”を試すため、現金を目につく場所に置いたり、彼女を信用せず鍵を渡さないブルジョアの主人たち・・・移民たちが毎日のように出会う“差別”と、マリーヌ・ルペンに投票する人たちだ。
3年前の『La Désintégration/崩壊』では、自分たちが育った社会から拒絶されたと感じる若いアラブ人が、狂信的イスラムやテロリズムに走る様を描いたフィリップ・フォーコン。「これが、フランス社会に溶け込めない移民たちの運命なのか?」という問いに、この作品『Fatima/ファティマ』で、「いや、そればかりではない」と答えている。

映画『Fatima/ファティマ』

孤独なファティマは娘たちに持てるだけの愛情を注ぎ、その将来だけを生きがいに戦う。娘たちは母親への感謝と屈辱(母親の職業が恥ずかしい)に引き裂かれる。とてもリアル。でもそこに悲壮感はなく、ユーモアさえある。

母親の努力に応えようとする長女

映画『Fatima/ファティマ』

「お母さんの仕事はメルドよ!」と父親に訴える次女

映画『Fatima/ファティマ』

封切りになったときから観たかった作品は、地味ながら、教えられることが多く、柔和なファティマの顔が残る。
12月16日にルイ・デリュック賞を取った。去年はオリヴィエ・アサヤス『Sils Maria』、2013年は『アデル、ブルーは熱い色』アブデラティフ・ケシシュが取っている。

フランスの移民の受け入れ方、不十分なフォローや“愚かな人たち”の差別が「自分の育った社会に溶け込めない」人間を作り出している。努力して自分の生き方を見つけるか、狂信的、暴力的な生き方を選ぶか、二手に分かれるところだ。移民=テロリストという混同も誤りだし、恐ろしい。

2015年は大変な年でした。いつもは楽しみなクリスマスシーズンも、全然その気になれない自分がいました。
新しい年の新しいページになっても“危険”や“問題”は変わりません。でも生きていることが幸せで、人生を楽しみたいと思い続けます。

今年も読んでくださった方たち、心からありがとうございます。
平穏な年、幸せなときがたくさんある年になりますように願っています。


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コメント
フランスと移民の同化問題
(引用)フランスの移民の受け入れ方、不十分なフォローや“愚かな人たち”の差別が「自分の育った社会に溶け込めない」人間を作り出している。(引用終わり)

これだけでしょうか?移民とその後世代の中には初めからフランスに溶け込むつもりがないどころか、フランスを憎むように子供の頃から親に洗脳され被害者根性を植えつけられている人たちがいます。彼らは、その憎い相手からの施しなしには生活がなりたたない一方で、施しを受ければ受けるほど相手への憎しみを増していきます。また、どんなにフランスが学校教育等を通して社会に溶け込むための手段・機会を提供しても、教育や自助努力を重視しない文化・メンタリティーの相手ではどうにもなりません。パリにお住まいならば、郊外のサン・ドゥニにでも一度お出かけになって(もちろんボディガード付きでないと危険です)じっくり現場検証してみて、それでもフランス体制側だけが責められるべきか、考えるのもいいのではないでしょうか。
Re: フランスと移民の同化問題
おっしゃる通り、移民の中にはフランスに根拠のない憎しみを持ち、それを行動に出す人たちがいますが、それがすべてではありません。しかし、治安の悪さ=移民のせい、青少年の非行=移民、イスラム過激派=移民・・・と、ルペンに限らず、彼らを十羽ひと絡げにして悪者扱いする発言は毎日のように耳にします。一方、学校の落ちこぼれなどのフォローの不十分さにについては、やっと少しずつ指摘されるようになりました。のでフランスの体制だけを責めているわけではありません。ご指摘ありがとうございます。
この作品の、移民の中にはこういう人たちがいる、個々を見ず、先入観を持つのは間違っている、というメッセージには共感しました。サン・ドゥニは(ボディガードなしで)行ったことがあります。
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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

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