養子の難しさ

2015年、フランス人が外国からに養子にとった子供、赤ちゃんは815人。国ではベトナムが筆頭で108人、コロンビア、コートジヴォアール、ロシア、ハイチ、中国と続く。

私が住む建物にも、ロシアから養子をとったシングルマザーが住んでいる。赤ちゃんのとき来たロベールは今9歳。養子は難しいと聞くし、想像に難くないけど、このロベールは学校でもうちでも全然言うことをきかないとか。頭はけっこう良さそうだけど。

中庭を荒らして夫にこっぴどく怒られたし、うちの猫を木の枝で叩こうとしたときは私が飛び上がった。公園の砂場で、他の子供たちに砂をかけて喜んでいるのを、息子が目撃した。
母親にも問題ありで、いつもヒステリックに怒鳴っている。階下に住む女性は、騒音苦情で警察に電話したことがあるといっていた。でも母親の怒りは全然効き目がないみたい。大体、ある年齢以上になった子供を叱るとき、逆上したら負けだ。
母親の怒鳴り声、ロベールがそれにに負けない迫力で泣き叫ぶのが中庭に響く。その直後に、鼻歌なんか歌っているからかなりのスゴモノだ。

用もないのにうちのベルを鳴らすのは、いくら言ってもやめない。
「オオカミが出た!っていう少年の話、知ってる?」
「知らない」
「『オオカミが出た!』って叫んで、村の人たちが助けに駆けつけて、でも毎回ウソだったの。そしたらある日、本当にオオカミが出て、助けを呼んでも誰も来てくれなかった。またウソだと思ったから」
「ふーん」
「だからむやみにベル鳴らすのやめなさい。本当に開けてほしいとき、『またイタズラだ』と思って開けてあげないわよ」
「本当に開けてほしいときって?」
「鍵を忘れてうちに入れないとか、怪しい人に追いかけられてるとか」
ロベールはちょっと考え込む顔で帰っていったけど、ベル鳴らしはやめなかった。時間のムダ。

先週またベルを5回くらい鳴らすんで、仕方なくドアを開けると、
「SPA(動物愛護教会)のために寄付を集めているので5ユーロちょうだい」
その手に乗るか。
「学校の先生が寄付を集めろっていったの?」
「そう」
「じゃ先生か学校の手紙があるでしょ」
「・・・・」
「先生のサインがある『子供たちが寄付を集めています』って手紙がないと、お金出せないわよ」
「手紙はうちにある」
「じゃ持ってきて」

手紙なんてあるわけない、一件落着、と思ったら15分後にまたベル。
「先生の手紙、いつもと違うんだ」
「違うって?」
「その・・・ちゃんとした紙じゃないってこと」
「いいから見せて」
ロベールが差し出した紙は、学校で生徒が使うレポート用紙に、すごく子供っぽい字で、
「どうぶつをたすけるのをたすけてください」と一行。その下に「ニャーオ」とサインされていた。
怒るのを忘れて吹きだしそうになった。
「ちょっと私のことバカにしてない?」
クビを横に振る。
「これを先生が書いたって、私が信じると思ったの?」
肩をすくめる。
「なんで5ユーロいるの?お母さんにもらえないの?」
「・・・・」
可笑しい“先生の手紙”を私はとっておきたかったけど、
「それ返して」とロベール。「ほかで使うから」
今度は私が「・・・・」となる番だった。


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コメント
手紙の内容はバカバカしくて、つい笑ってしまって
騙されてあげたりすると
駄目な大人に育ってしまいますもんね。
ここは、近所の怖いオバサンとして
心を鬼にして対応しないと…ですね。
Re: マザー様
時々かわいいと思って心を許すと、すぐ悪いことをするんで・・・
あの子が反抗期になったらどーなることかと思います。
はじめまして。
この男の子に実際会ったことがないのであくまでも推測ですが、文面から想像するに、この親子は何かしらの助けを必要としている気がしました。養子だから、ではなく、血が繋がっている親子でも、同じようなことはいくらでもあります。お母さんはひとりでの子育てに疲れ果てているのかもしれない、ロベールは、悪ガキのレッテルを貼られて傷付いているのかもしれない、お母さんにもっとかまって欲しいのかもしれない。理由はいくらでもあると思いますが、ロベールの行動はSOS信号を送っている気がしてなりません。
Re: こらも様
コメントありがとうございます。
そうですね。助けを求めているとしたら、子供のほうという気がします。
どうして悪いことをするのか、お母さんが理解しようとしないで頭ごなしに怒鳴ってばかりいるので。
児童セラピストに相談しているといって、他人の意見は聞こうともしません。
人事ながら心配になります。
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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

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