Category : 映画

女優が迫力、この2作

リリアンヌはパテ工場で働いている。焼きあがったパテに、ローリエの葉とピンクペッパーを飾るのが彼女の分担。昼休みも同僚とのおしゃべりに加わらず、一日中ローリエ&ピンクペッパー。17時のベルが鳴るとまっすぐアパルトマンに帰り、ひとりウィスキーを飲む。
ある日、若い男子ジャンが流れ作業に加わった。彼はリリアンヌが、80年代ヒットを出した歌手であるのを見破る。
「父はあなたの大ファンでした。全然変わっていない!」
リリアンヌがなぜ“ここまで堕ちた”か知りたがり、カムバックを薦める。
最初は「ノン」「ありえない」を繰り返していたリリアンヌも、ジャンの情熱にほだされていく。

『Souvenir』

30年も消えていた歌手のカムバックなんて可能だろうか?
母と息子ほど年の離れた2人の愛が可能だろうか?

ベルギー人バヴォ・ドゥフュルヌの『Souvenir/思い出』

『Souvenir』

御伽噺のようなストーリーを、イザベル・ユペールの細腕が“一見の価値ある”作品に持ち上げている。
視線、表情だけで感情を伝えるミニマルな演技。ファンじゃなくても「お見事!」としかいいようがない。

もうひとつ、女優から目が離せなかったのが、成瀬巳喜男の『女が階段を上る時』の高峰秀子。
パリでは、日本の古い映画、小津や溝口、黒沢がよくかかっていて、私はこっちに来てから発見した。

『女が階段を上る時』

バーの雇われマダム、圭子はこの世界では珍しくお客と一線を越えないのをモットーにしている。30歳になり、結婚するか、自分の店を持つかで迷っていた。期待した男には裏切られ、前から自分に惚れているマネジャーとは絶対うまくいかないと知っていた・・・
高峰秀子は、テレビドラマで時々見たけど、堅実なお母さんやおばさん役だったような・・・こんなに色っぽかったの!
可愛くて媚びなくて毅然としてて、彼女もミニマルな演技で、見とれてしまった。

1960年のこの作品には、仲代達也、加東大介、淡路恵子、沢村貞子・・・など名優がぞろぞろ出ている。社用族のオジサンをホステスが取り囲む(今もそう?)昭和のバーの雰囲気も面白い(夫が「今度行きたい!」)。それでいて時代遅れに感じない名作。

Souvenir
Bavo Defurne監督作品
主演:イザベル・ユペール、ケヴィン・アザイス
1時間半
フランスで上映中

女が階段を上る時

成瀬巳喜男監督作品
高峰秀子、森雅也、仲代達也
1時間50分
パリ5区のReflet Médicisで上映中

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アメリカ人モーリーンはパリで、時間のないセレブ女性のためにドレスやジュエリーを借り歩くパーソナル・ショッパーのバイトをしている。好きな仕事ではないけど、ルイスからの“合図”を待っている間の生活費稼ぎだ。

『パーソナル・ショッパー』クリステン・スチュアート

パリで急死した双子の兄、ルイスとモーリーンには霊媒能力があった。兄は、死んだ後、何らかの形で“合図を送る”と彼女に約束したのだ。
兄が恋人と暮らしていた大きな館にひとりで残り、彼女は物音や影に神経を研ぎ澄ます。「ルイス、あなたなの?これが合図?」

出るならさっさと出ろ・・・館のシーンはホラー映画だ。

『パーソナル・ショッパー』クリステン・スチュアート

そのうちモーリーンは「私はあなたを知っている」に始まる不可解なSMSを受け取るようになる。送り主は彼女がどこにいるか知っていて、陰のようにつきまとう。放っておけばいいのに、「これもルイスと関係あるの?」彼女は返事せずにいられない。

オリヴィエ・アサイヤスの最新作『Personal Shopper 』

『パーソナル・ショッパー』クリステン・スチュアート

カメラはひたすらモーリーン(クリステン・スチュワート)を追い続ける。
ガランとして寒々しい(つまり幽霊が出るには理想的な)一軒家と、有名ブランドの華やかなショールーム。2つ世界を行ったり来たりしながら、喪失感、霊の存在への懸念、そして自分のアイデンティティも見失いそうになるモーリーン。

カンヌ映画祭で監督賞をとったものの、試写では拍手とブーイングに分かれたとか。
果たして、夫は「よくわからん」。私は好きだった。この作品の掴みどころのなさが、観る人に判断を委ねているような。それが、「信じているもの、世界は、すべて自分の頭の中?」という作品の問いかけに重なるような気がした。上手く言えないけど。
黒沢清の作品を思わせる、という批評もあった。

とにかく。『アクトレス~女たちの舞台~』でも絶賛されたクリステン・スチュワートがすごく上手い。強さと脆さがリアルに同居し、フォトジェニック。(私は)お奨めです。

Personal Shopper
オリヴィエ・アサイヤス監督作品
主演:クリステン・スチュアート
1時間50分
フランスで上映中


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フィリピンの肝っ玉お母さん

ローザは夫と4人の子供と、マニラの一画で駄菓子屋を営んでいる。飴やポテトチップスを売るだけでは食べていけないので、実はドラッグの密売もしている。
子供を怒鳴りつけ、なりふり構わず店と家族を仕切っているローザ母さん。

映画『Ma'Rosa』

ある晩、家族が食事をしているところへ、警察の抜き打ち捜査。隠していた白い粉があっさつ見つかり、夫婦に手錠がかけられる。

取調室に連れてこられた夫婦に、警官たちは“取引き”を持ちかける:ブタ箱にぶちこまれたくなかったら5万ペソ(約11万円)用意しろ。そして鶏の丸焼きとビールで前祝を始めるのだ。

翌日、心配した子供たちは警察署にやってくる。両親の逮捕は記録もされていない(ゆすりが目的だったってこと)。ローザは3人の子供(4人目は小さすぎる)にお金の集め方を指示する。

映画『Ma'Rosa』


罵られる親戚に頭を下げ、重いクーラーを抱えて売りに歩き、親には言えない手段も使って、子供たちは金策に奔走する。
フィリピン映画『Ma' Rosa』

映画『Ma'Rosa』

ドキュメンタリーのような撮り方から伝わってくる暑さ、湿気、貧しさ。そして腐敗しきった警察。
何があっても動じない、毅然としたローザ母さん。ひとりで抱えていた感情が一瞬ほとばしり出る最後のシーンが印象的。逞しく、哀しい。

ローザ役のジャクリーヌ・ジョゼは今年のカンヌ映画祭で、最優秀女優賞とった。こういう地味な映画を評価して、彼女に賞を与えたのはエライ。
知らない国の生活や戦いが垣間見れる名作。お奨めです。

Ma’Rosa
ブリアント・メンドーザ監督作品
1時間50分
フランスで公開中


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半世紀経っても色あせない『男と女』

ドーヴィルの寄宿学校に入っている娘と週末を過ごし、パリに戻る電車に乗り遅れるアンヌ。
同じ寄宿学校に入っている息子と週末を過ごしたジャン=ルイは、アンヌを乗せて車でパリへ。

映画『男と女』

アンヌは映画のスクリプター、俳優でスタントマンの夫を撮影中の事故で亡くしている。
ジャン=ルイはレーサー、やはり妻に死なれている。
彼女と彼は急速に接近する・・・美しすぎる2人の、美しすぎる恋物語『男と女/Un homme et une femme』。

若いころのジャン=ルイ・トランティニアンは(若いころの)ケビン・コスナーに似てない?
2012年『愛、アムール』で久しぶりに姿を見せた

映画『男と女』

1966年の作品だからちょうど50年前。カンヌ映画祭のパルムドール、アカデミー賞、ゴールデングローブ賞など取りまくり、主題歌とドーヴィルを世界的に有名にした。
デジタル・リマスター版がパリで上映されている。最後に観たのは10年前?もっと?また観たいと思っていたので、娘に「一緒に来る?」というと意外にも「行く」
美術学校の先生から「古い映画を観ろ」と言われていて、秋休みはエリック・ロメールを観ていた。

冬のドーヴィル、誰もいない海岸を歩く2人、走り回る小さな子供たち・・・ロマンチックに浸っていると、アンヌがジャン=ルイに電報を打つシーンで「携帯電話なかったのね」と娘。
あるわけないだろ。電話だって、交換手に「モンマルトル1525お願いします」だ。
観に来ている人たちは、70代以上が多い。「年代を感じる」と言う声に振り向くとかなりのおじいさんだった。
そうかな?私は逆に、口説き方、突進する男、躊躇う女・・・何も変わっていないと感じた。
でも今日、こういう“美しい男女の、映画のような恋物語”を作ったら、「なにコレ?」と言われるかも。

『男と女』はルルーシュ、アヌーク・エメ、ジャン=ルイ・トランティニアン、冬のドーヴィル、ダバダバダ・・・だからできた不滅のマジックだ。
『Un homme et une femme』(1966)
クロード・ルルーシュ監督
主演:アヌーク・エメ、ジャン=ルイ・トランティニアン、ピエール・バルー
1時間40分

パリではレンヌ通りのArlequin、ゴブランの Escurial、
東京は恵比寿ガーデンシネマで上映中。

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お嬢様と侍女の恋!『Mademoiselle』

1930年代、日本占領下の韓国で。ヒデ子は、変態で専制的な叔父と、広大な館に暮らしていた。
そこへ新しい侍女Sookeeがやってくる。
実は、Sookeeは詐欺師の一味、“日本の侯爵”と名乗る仲間が、ヒデ子を口説き、財産を奪おうという企みだ。

mademoiselle5.jpg

周到に用意したはずが、筋書き通りには運ばない。
なぜなら、ヒデ子とSookeeは恋に落ち、
可憐で世間知らずに見えるヒデ子は、実は相当の悪女。
Sookeeは打ち合わせ通りに動かず、
詐欺の首謀者である“伯爵”は実はアホ。

誰が誰を騙し、最後に笑うのは誰か?

イギリス人作家サラ・ウォーターズの小説『Fingersmith/荊の城』をパク・チャヌク(『オールド・ボーイ』『渇き』・・・)が映画化。

『Mademoiselle/お嬢様』

パク・チャヌク『Mademoiselle/お嬢様』

伯爵の口説きにシラケた顔のヒデ子

パク・チャヌク『Mademoiselle/お嬢様』

スリラー+ロマンスに、ユーモアあり、背徳あり、ヴァイオレンスあり、造形美ばっちりで、東洋にファンタズムを抱くフランス人が狂喜しそうだ(実際していた)。同時に、東洋の女性=従順で美しいオブジェ、というイメージを覆している:お嬢様&侍女のコンビは、したたかで行動力があり男たちの裏をかく。痛快!
“日本語を話せるのがインテリだった”当時の時代背景もうかがえる。そう、字幕は日本語が黄色、韓国語が白で出る。

ヒデ子とSookeeが美しい。2人のラブシーンは、『アデル、ブルーは熱い色』とは違ったエロチシズム。
少女のような体つきと意外な大胆さのミスマッチ。

パク・チャヌク『Mademoiselle/お嬢様』
photos:allociné

2時間半を長く感じないエンターテイメント。お奨めです。

Mademoiselle

パク・チャヌク監督作品
主演:Kim Min-hee、Kim Tae-rim、Jung Woo-ha/ハ・ジョンウ
2時間25分
フランスで公開中


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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

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