長谷川たかこのパリのふつうの生活
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おかしな友達、子供の暮らし・・・
パリのふつうの日常
『LAGERFELD CONFIDENTIEL/非公開のラガフェルド
DATE : 2007-11-09-Fri Comment 0
Lagerfeld

「入ってもいいかな、カール」という監督のセリフで映画は始まる。7区にある旧財閥邸にあるラガフェルドのアパルトマン。美しいはずの部屋は本が溢れるほど積み重なり、所狭しと服や紙袋が置かれ、乱雑そのもの。たんすの上には彼のトレードマークであるシルバーのリングやブレスレットやネックレスが何百と並んでいる。旅支度をしているカールは、リングを10個くらいはめ、少しためらってから「万が一のため」とさらに何十個ものリングをポーチに入れる。

初めてラガフェルドが信頼し、その日常に入り込むことを承諾した監督、ロドルフ・マルコーニ。彼のカメラは、デッサンする、男性モデルの写真を取る、ショーの準備をする・・・ラガフェルドを追いかける。

このモード界の大御所を一度見たことがあった。サントノレ通りに路面店を開いたメークアップブランドのオープニングに行ったら、そこに彼が現れた。会場が「おお!」「カールだ」とどよめき、シンボルマークの高いカラーにサングラスのラガフェルドが姿を現した。
この映画はそのときの第一印象(スタイリッシュで偉そうな感じ)を覆す。すごくユーモラスで機知に富んだ人だ。例えば、「あなたの・・・その特殊な性向が現れだしたのはいつ頃でしょう?」というインタビュアーの質問に、「あんた、はっきりモノをいいなさいよ。僕がホモセクシュアルってこと言いたいんでしょ」とニヤニヤ笑う。自宅のトイレには「あちこちにオシッコ飛ばす人は全然シャネルじゃない」と張り紙がしてある。
「成功はね、すぐ無効になるんだ。だから毎回、やりなおさなければいけない、それも違ったやり方でね」プレッシャーはいかに、と想像するけど、それを面白がっているような軽いフットワークの70歳。スゴイの一言。『Lagerfeld Confidentiel』、まだ公開中です。
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お薦めしない映画
DATE : 2007-09-24-Mon Comment 0
hairspray

『la Question humaine』(人間的問題):石油化学の大企業の人事課で、心理学者として働くシモン。ある日、副社長から社長の精神状態について調査をして欲しいと内々密に頼まれる。半日ひと言も発しない、などおかしな言動があり、秘書も心配している・・・「深い調査はできない」と渋々承知するシモン。しかし、彼自身の心理状態までおかしくなるほど深みにはまっていく。
大好きなマチュー・アマルリック主演なので、迷わず見に行ったが、かなり退屈して何度かウトウト。ロックコンサートに行ったシモンが同僚と踊るシーンが10分くらい見せられたり、独白が延々と続いたり、作り手の自惚れが感じられる。いい俳優が揃っているのにもったいない。
始まって30分くらいで10人近く出て行った。ケチなフランス人が席を立つのはよっぽどのこと。そういう私は「今に面白くなる」とはかない期待で、最後まで我慢したけど、とうとう面白くならなかった。私のほうがもっとケチ?
『Hairspray』:1988年、ジャン・ウォーターズの作品のリメイク。ジャン・トラヴォルタの女装は一見の価値あるかもしれないけど(写真左、念のため)単純なストーリーのミュージカル。詰め物をした15kgの衣装+体中(あごや頬まで)にシリコンの人口贅肉をつけたトラヴォルタ、ここまで変身したらトラヴォルタである必要なんてあるだろうか。この重荷をしょって毎日ロケをしたおかげで5kg痩せたそう。『サタデイ・ナイト・フィーバー』や『グリース』で有名になったトラヴォルタの、ミュージカル復帰!と騒がれたが、ジャン・ウォーターズのもと作品のほうがいいという評判。
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La Vie d’Artistes /アーティストたちの人生
DATE : 2007-09-14-Fri Comment 0
la vie artistes

創作に苦しむ芸術家たちの生活を描いた作品、では全然ない。
ベルトランは高校で国語(フランス語)の先生をしているが、それは仮の姿で、本業は小説家のつもり。「つまんない!」と同居人にけなされても、授業中に生徒に読ませて教室中がシラケても、めげすに書き続ける。アリスは女優としてスタートしたが今はお誘いがかからず、日本のアニメの声優をしている。メイクされ、ライトを浴び、カメラに囲まれるのを夢見つつ、誰にも見られない暗いスタジオに通う。コラは歌手志望。カラオケバーでバイトをしているが、お客のマイクを奪って歌ってしまいクビになる。
“自分の才能”が認めらないことに苛立ち、理想と現実とのギャップに落ち込み、携帯のメッセージや偶然の出会いに一喜一憂する。キャラクターの違う3人の様がユーモラスに描かれ、自分の姿と重ねあわせることができる。人のことだと笑っちゃうのに、私だってこんなことあった・・・
映画の途中から結末が気になりだす。3人が夢を実現させハッピーエンドになったら面白くないけど、どんなオチをつけるのか・・・?
監督のマルク・フィトゥシ(Marc Fittoussi)は、これが最初の長編作品。軽いコメディという印象を与えるポスターだけど、登場人物の誰かに感情移入できて、快く楽しめ、“自分の姿”に思いを馳せてしまう作品。
写真はアリス役のサンドリン・キベルラン。ご主人のヴァンサン・リンドンも公開中の『Ceux qui restent/残る者たち』に出ている。
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DE BATTRE MON COEUR S'EST ARRETE
DATE : 2007-07-27-Fri Comment 0
de battre mon coeur

2006年のセザールで最も話題になったこの映画を今まで見なかったのは、「僕の心臓の鼓動が止まる」というタイトルやポスターのせいかもしれない。深刻で重そうな映画、という印象を持っていた。やっとDVDを借りて観たら、確かに軽いテーマではないけど素晴らしい作品だ。
トムは28歳、父親と一緒にちょっとヤクザっぽい不動産業をやっている。ある日、知人のピアニストに再会し、亡くなった母のように自分にもピアニストになれるかもしれない、と思い出す。不動産業は続けながら、オーディションを目指しピアノの練習に励む毎日が始まる・・・
この映画は最優秀映画賞、最優秀監督賞、音楽賞、脇役賞、新人賞など2006年のセザールを文字通り総舐めにした。逃したのは主演男優賞くらいだが、その主演のロマン・デュリスが、圧倒的に上手い。「なぜピアノを続けないのか?才能があるのに」といわれただけで、その気になる甘ちゃん、アグレッシヴで傷つきやすく、どこか憎めないとこがあり、女を口説くのが上手い、というキャラを繊細に演じている。本人がこういうキャラなのでは、と思うほど。なぜ彼が取らなかったのか理解に苦しむし、セザール授与式の会場で、引きつった表情をしていたロマン・デュリスが思い出される。
de battre mon coeur

トムがお金を取り立てに行くマフィアの情婦役で5分ほど登場するメラニー・ローランは、よく年、「Je vais bien, t’en fais pas」(僕は元気だ、心配しないで)でセザール新人賞を取るが、一瞬の登場でもなかなか存在感がある。
監督のジャック・オディアールは1作品つくるのに、多いときで4〜5年かけるという寡作な人だ。
このタイトル「De battre mon coeur s’est arête」は「僕の心臓の鼓動が止まる」の語順を逆にしたもので、正しくはMon coeur s’est arête de battre 、日本語にしたら「鼓動が止まる、僕の心臓の」のようなニュアンスかな。フランス語のお勉強はともかく、お薦めの作品だ。

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ドヌーヴがすごくいい『APRES LUI』
DATE : 2007-06-11-Mon  Trackback 0  Comment 1
カトリーヌ ドヌーブ

映画館チェーンUGCの「見放題」カードを作ってから、より映画館が気軽になった。月額18ユーロだから2回半でモトがとれる。MK2チェーンでも同様のカードを作っているので、配給映画のジャンルで選ぶといい。つまらなかったときも「お金払ったんだから」と最後まで我慢せず、心置きなく出れる。土曜日の午後、ぽっかり時間が空いてレ・アールのCine Citeに行って「Apres lui」(彼の後で)を見た。残り空席数が40となっているので、最前列だったらやだな、と思って入ると、100席くらいの小さな映写室で、半分くらいしか埋まっていなかった。地味な映画だものね。

カミーユ(カトリーヌ・ドヌーヴ)は、交通事故で息子を亡くし、自分の人生が崩れるような悲しみを味わう。埋葬の日に、息子の親友で、事故の引き起こした張本人でもあるフランクを連れてきて親戚のひんしゅくを買う。しかし唯一彼女を慰めるのはフランク(トマ・デュメルシェズ、写真)の存在で、カミーユの娘(エロディ・ブシェズ)の出産も彼女の悲しみを紛らすことができない。

カミーユとフランクの関係は、母娘のとは全然違う、母と息子の関係をたくみに映し出している。母であり、女、息子であり、男なのだ。深い喪失感で強調されたアンビバレントな愛情がフランクに注がれる。

息子を失った母の悲しみ、とはくくれない微妙なところにテーマはあり、母と女を同居させるドヌーヴが素晴らしい。冒頭ではきっと泣きます。
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