アパルトマン物語

私の住む建物にアパルトマンとスチュディオを3つも持っているディディエ、3つとも貸して自分は南仏に住んでいる優雅な方だ。
私たちが越してきた20年前はここに住んでいて、住居人組合の代表者をしていた。水漏れがあると彼に文句を言えたし、夏には中庭でアペリティフをして仲良くしていた。

“マレ最後の娼婦”と言われた60歳近いミッシェルが、スチュディオのひとつを仕事場にしていたのもその時代。
管理人のオバサンと言われていた子供たちは、数年後に真相を知り、
「掃除とか全然しないんでヘンだと思った!」
「ミニスカートに網タイツも怪しかった」

そのミッシェルが60歳で定年退職し“仕事場”を売りに出した。細長いワンルームにシャワーとキチネットの15㎡。マレの地価が高騰する前、破格の値段で「お子さんが大きくなったときにいかが?」と勧められたけど。
「”お子さん”が大きくなったら、もう少し離れたとこに住みたいんじゃない?」
「それにスチュディオの前歴にちょっと抵抗あり・・・」と私たちが話しているうちにディディエがさっさと買ってしまった。
壁のペンキを塗りなおし、家具付き(大体、この狭さだと家具もたかが知れている)で家賃600ユーロ。
今ではアノンスを出すと2日で100人の希望者、という人気物件になっている。儲ける人はタイミングを逃さないのだ。

さて20年の間に、仲良くしていた子供連れ夫婦は離婚して去り、小さいスチュディオにひとりで住んでいた人たちはカップルになって去り、ご老人は亡くなり、ディディエはすべて貸して南仏に引っ越し・・・気が付くと一番の古株になっていた。おかげで私は“東洋人の管理人のオバサン”に間違えられたりする。

新しい持ち主の殆どは、自分は他所に住み、Airbnbに登録しているので、毎週のように外国人旅行者がスーツケースを引きずってやってくる(まだ日本人にはお目にかからない)。困るのはゴミを所かまわず捨てたり、夜中まで音楽をガンガンかけて騒ぐこと。
一度ならず、パジャマの上からコートを着て文句を言いに・・・でも行く前に何語で文句を言えばいいんだろう?
「英語で言えばいいじゃん」と娘。
「今、英語で怒鳴ったけど、効き目ないのよ」
「発音悪いからじゃない」
「うるさい!イタリア語で『静かに!』って何て言うの?」
「知るか。ネットで調べたら?」

住人をみんな知っていて、「カナヅチ貸してくれる?」「うちのネコ、お邪魔してません?」などと言っていた頃が懐かしい。


ランキングに参加しています。クリックしていただけたら嬉しいです。
にほんブログ村 海外生活ブログ フランス情報へ

にほんブログ村 海外生活ブログへ
にほんブログ村




この犯人にしてこの弁護士あり

去年の10月末、オート・ソーヌ県で。ジョギングに出かけた妻アレクシアが帰ってこない、とジョナサン・ダヴァルが警察署に通報した。2日後、彼女の焦げた死体がグレの森の中で見つかった。絞殺で殴られた痕もあった。
アレクシアは29歳、スポーツ大好きな銀行員。
こういう事件の場合、まず疑われるのは配偶者だけど、ジョナサンは否定し、アレクシアの両親も「模範的な娘婿、ありえない」職場の同僚も「すごく優しい性格」(この辺から怪しい)

11月5日、家族や友人、地元の住民800人余りが『Marche blanche/白の行進』を行ったとき、ジョナサンは、
「妻は私を一番支えてくれた人、私の“酸素”だった。2人の結束でこれまでやってこれた。あの充実した関係が恐ろしく恋しい」と涙ながらに語り、参加者ももらい泣きした。

アレクシアの両親とジョナサン

ジョガー殺人事件の犯人
photo:francesoir.fr

3か月後の1月28日、警察はジョナサンを拘留。彼の弁護士は「なーに2時間くらいで解放されますよ、ハハハ」と言っていたが、拘留は延長。2日後にジョナサンは「“偶然”絞め殺してしまった」と白状した。

証拠はすべてジョナサンを指さしていた-事件当日、彼がひっかき傷を負っていた、アレクシアが包まれていた毛布が夫婦のものだった、夫婦がよく激しい口論をしていた・・・-にも拘らず、3か月間、“妻を殺され悲嘆に暮れる夫”を信じていた人たちは愕然。

そこへ「ハハハ」の弁護士が記者会見で、

ジョガー殺人事件犯人の弁護士

「我々は、ジョナサンを“殺人者”と呼びたくない。彼は自分のしたことの悲劇的な結果を自覚し、打ちひしがれている[・・・・]夫婦の関係は非常に緊迫していた。アレクシアは支配的な性格で、ジョナサンは過小評価され、押しつぶされていた」
「誰にも限界があるように、ジョナサンにも限界があった。あの日、口論が悪化し偶然に殺してしまった。この事件には2人の犠牲者がいる:アレクシアとジョナサンだ」
私は耳を疑った。アレクシアが支配的な性格だったので、殺されて当然みたいな言い方!
彼も犠牲者だ ?! “偶然殺した”って、過失致死に持っていこうとしているわけ?
果たしてこの発言は非難を浴びる。当然。

ジョナサンは絞殺は認めたけど、燃やそうとしたのは「自分じゃない」
つまりたまたま通りかかった誰かが死体に火をつけたってこと?いや、その前に彼らのうちに侵入して毛布を盗んでこなくちゃ・・・

アレクシアの両親は二重のショック:娘を殺され、殺したのが信頼していた義理の息子。
「アレクシアは、2人の仲がうまく行っていないことを両親に言っていなかったのかしら?」と私。
「第一、親なら感づくだろうに」と言うと、夫は
「不仲になったらすぐ言うようにうちの子供たちにも言っておかないと」
「・・・・」


ランキングに参加しています。クリックしていただけたら嬉しいです。
にほんブログ村 海外生活ブログ フランス情報へ

にほんブログ村 海外生活ブログへ
にほんブログ村

お姫さま交換

1715年、ルイ14世の死により、オルレアン公フィリップは、当時5歳のルイ15世の摂政になった。
1721年、野心家の彼は大胆な企みをする:ルイ15世(11歳)は間もなく実権のある王になる。スぺインの姫と結婚させて、長年戦争をしたスペインとの和平を回復し、戦いで疲弊した両国を盛り上げよう。その代わり、自分の娘をスペインに嫁がせよう。すなわち姫の取り換えっこ。

オルレアン公(オリヴィエ・グルメ)。カツラが似合ってない。

『l'Echange des Princesse/お姫様の交換』

オルレアン公は、娘のルイーズ=エリザベス(15歳)をスペイン国王の後継者と結婚させ、ルイ15世はスペインの親王アンナ=マリア=ヴィクトリアと結婚させる。しかし親王は・・・4歳だった。
幼い姫たちは、この強制結婚をどう生きるだろうか?

あまり知られていない歴史の一コマにスポットを当てた『L’Echange des Princesses/お姫様の交換』
ベストセラー作家のマルク・デュガンがシャンタル・トマ(デザイナーではなくて作家の)の原作を映画化。

『l'Echange des Princesse/お姫様の交換』

映像や衣装-特に2人の姫の交換劇-がタブローのように美しい。
見かけの美しさとは裏腹に、権力者の犠牲になる姫たち。結婚が成立すると、すぐから「早く妊娠して男の子を産め」。

反抗的なルイーズ=エリザベス、スペイン国王の息子ドン・ルイに「触られるのもイヤッ」

『l'Echange des Princesse/お姫様の交換』

一方、4歳の姫はぬいぐるみを抱いて寝ている。側近たちが額を突き合わせて「いかんせん骨盤がまだ狭くて」

『l'Echange des Princesse/お姫様の交換』

あんたらマジ ?!
セクハラ、小児愛が糾弾される今日では、信じられない世界。

ルイ15世は当時の人としては長生きで、5歳から64歳で亡くなるまで国王の座についていた。ヴェルサイユで生まれ亡くなった唯一の国王だ。
11歳の子供に側近のオジサンたちがお伺いを立てるのが可笑しいけど、すでにカリスマがある。18世紀半ばの男子平均寿命が25歳に達していなかったことを考えると、今よりずっと成熟が早かったはず。
右後ろの召使は奥方のお人形を持っている!

『l'Echange des Princesses/お姫様の交換』
photos:allociné

とにかく子役が上手い。特に4歳のアンナ=マリア=ヴィクトリア演じる子は姫になりきっている。

歴史物があまり好きじゃない私にも面白かった。この時代に生まれなくてよかった・・・

L’Echange des Princesses
監督/シナリオ:マルク・デュガン
主演:ランベール・ウィルソン、オリヴィエ・グルメ、アンナ=マリア・ヴァルトロミー他
1時間40分
フランスで上映中


ランキングに参加しています。クリックしていただけたら嬉しいです。
にほんブログ村 海外生活ブログ フランス情報へ

にほんブログ村 海外生活ブログへ
にほんブログ村



金曜の朝、セーヌ河の水位はオステルリッツ駅の地点で5.6mに達した。Vigicrue(増水予防ネットワーク)は土曜日に6.2mに達すると予言、警視庁は6mとやや楽観的。だったけど、正午にはVigicrueも6mに下げた。

パリ市内では浸水や避難は出ていないけど、ヴァル・ド・マルヌでは395人が避難、パリ近郊と遠距離郊外の1000世帯で停電している。
うちはマレで、しかも地上階。マレは沼地という意味でもともと湿地だから「やばくない?」と言うと、友達が「パリは大丈夫。セーヌがパリに入る前で洪水になるから」
パリを護るために、郊外を洪水にする・・・セーヌの水位が上がる度に流れるこの噂は、科学的には根拠がない。じゃただの都市伝説?というとそうでもないらしい。
「パリ郊外を洪水にするため、誰かが密かに水門を開けているわけではない。しかし、パリが洪水になったら被害は法外な額、何十億ユーロに上る」と、セーヌ河保護協会の会長で、議員のイヴ・ジェゴ氏。
パリの地下が浸水した場合、被害額は30~300憶ユーロ。メトロの復興作業に4~5年。旅行業界は惨憺、外国企業は他の都市に引っ越して2度と戻って来ない・・・
また、パリは地面はコンクリートだらけで雨水を吸い取ってくれる土が少ないから、勢いセーヌに流れ込む。
「だから可能な時は、パリ周囲の農村エリアで洪水にする防止対策が敷かれている」
なるほど。

2016年6月の増水の時「あと10年は起こらない」という話だったけど、地球の温暖化で、この現象が繰り返される恐れ、と言われている。「地球の温暖化はデマだ」と言い続けている大統領がいるけど。

わー!ここは公園だったのに

セーヌ川増水

川船レストランに人影はなく、セーヌ川遊覧船バトー・ムーシュも欠航になっている。

セーヌ川増水

こちらは有名な1910年の氾濫

1910年のセーヌ河氾濫

えっ!ここrue de Bac?

1910年のセーヌ河氾濫
photo:prefecture

セーヌの増水の影響で、RERのC線が31日まで不通になり、ルーヴルやオルセーは下の階にある美術品を避難、川船の持ち主たちは船が河岸に乗り上げないか心配している。

もうひとつの弊害がネズミ、うちの猫が捕まえてくる小さなネズミではなくrat/ドブネズミ!
彼らの棲み処が浸水して、ドブネズミたちが外に出てくるので「道でネズミに出会う機会が多くなる」
ギャーッ!
 「と言ってもネズミが増えるわけではない。逆に、増水は齧歯類にとって致命的になりえるので、結果的にネズミ人口(?)は減る可能性がある」と衛生&安全の専門家。
それを先に言ってよ!

金曜日の夜は雨も止み、帰り道に通ったカフェやバーは賑やかだった。

ランキングに参加しています。クリックしていただけたら嬉しいです。
にほんブログ村 海外生活ブログ フランス情報へ

にほんブログ村 海外生活ブログへ
にほんブログ村




希望は捨てず・・・

“迷える小包”を読まれて、「やっぱりフランスの郵便局はねぇ・・・」と思われるかもしれないけど、どっこい信用できるのだ。
会社から毎週郵便物を日本に送っているけど、紛失したのはこの10年で2件か3件。Carte pro/プロ・カードという優先カードを持っているので、年末の長蛇の列も突破できるし、私はこの国の郵便サービスをかなり評価している。

だから希望は捨てず、また待たされ、また同じセリフを聞くのか、とうんざりしながら再度電話をした。
「その小包はサン・ルイ島のタバコ屋に着いています」
おお、郵便局がタバコ屋に変身したことを知っているのね!でもそこにはもう行ってみたって。
「いつ行きました?」
「うーん・・・週末が入ったから4日か5日前」
「その後に着いています」
「!?」
つまり一旦着いた後どこかを彷徨って舞い戻ったってこと?
数日は行く時間がなく、やっと土曜の夜、
「小包探しに行ってくる」というと、
「開いてるの?」と夫。
「タバコ屋兼カフェだから開いてるにきまってる」

果たして開いていたけど、中国オジサンは
「郵便物?それは月曜日じゃないとできない」
「どーして?」
「だって郵便局のネットワークが正午に閉まるから、調べらんない」
今度は自分に「アホか!」という番だ。ちょっと考えれば当然だ。小包への執念で(!)私の思考は鈍っている・・・ただのオッチョコチョイなのかもしれないけど。
オジサンはがっくりする私の肩を叩き「また来なさい」

週明け。大雨の降る中、私は再びサン・ルイ島に向かう。2度あることは3度ある?いや、あのてきぱきした中国オジサンには何か希望を抱かせるものがある。3度目の正直。
オジサンの前にはタバコや宝くじを買う人が既に5人いたけど、彼はあっという間に片付け、私の不在届通知を見て、
「バスティーユって書いてある」
私も字は読めるのよ、と言いそうになるのを呑み込み、こうこうこういうわけで、再びここに着いたらしい、と説明すると、奥に探しに行った。
小包を持って出てきたオジサンを、私は抱きしめそうになった。送り主はイラストレーターの田中英樹さん、娘が東京で研修した時の先生だ。小包には12月29日に投函され、記録的なスピードで1月3日に配達され、その後20日間もパリでたらい回しになっていた。

帰りにポン・マリーを渡ったら、アララ、連日の雨でセーヌが大変なことになっている。
水に浸かった木・・・足が冷たいでしょ?

セーヌ川氾濫?

河岸に降りていく道も水に浸かっている。

セーヌ川氾濫?

小包には抹茶キットカットや抹茶ラテなど娘が好きなお菓子と、田中さんの作品集が入っていた。感激。
娘が大喜びしたのは言うまでもない。中に入っていた手紙を声を出して読み、「ホラ、日本語忘れてないよ!」 と、お菓子を全部持ち去ろうとする。ちょっと、捜索したのは私なんだから、少しコミッションちょうだいよ!


ランキングに参加しています。クリックしていただけたら嬉しいです。
にほんブログ村 海外生活ブログ フランス情報へ

にほんブログ村 海外生活ブログへ
にほんブログ村




プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

カレンダー
01 | 2018/02 | 03
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 - - -
最近の記事
カテゴリー
おすすめ書籍
RSSフィード
おすすめコスメ
フランスに行くなら
プロヴァンスの田舎町をまわる1日
アーカイブ