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パリ郊外の“ああ無情”

2018年7月。フランスはサッカーワールドカップの優勝に沸き返っている。
パリ郊外モンフェルメイユに住むアフリカ系の子供たちも、トリコロールの旗を持ってシャンゼリゼ通りのパレードに繰り出した。
肌の色は違ってもみんなフランス人なのだ。

ステファン(左)はシェルブールから、このモンフェルメイユの警察に配属される。
2人の警官、クリスとグワダとチームを組み、町をパトロールする一日目。

映画『レ・ミゼラブル』

住民の殆どが移民であるのに驚き、権限を振りかざして彼らを制圧しようとするクリスのやり方に疑問を持つ。
これじゃ警察官というよりヤクザだ。

間もなく、町で興行するジプシーのサーカス団から「ライオンの赤ちゃんが盗まれた」と通報がある。「24時間以内に返さないと、町の黒人集団は痛い目に遭うぞ」
なるほど痛い目に遭わせそうな強面のジプシーたち。

映画『レ・ミゼラブル』

ステファンら3人は、インスタグラムでライオン赤ちゃんの写真を見つけ「少年イサが怪しい」。

映画『レ・ミゼラブル』

遊んでいたイサを捕まえようとするが、凶悪犯を捕まえるようなヴァイオレントな追跡になる。
イサの仲間の子供たちに取り巻かれ、パニックになったグワダは、スタンガンを取り出す・・・(これ以上は書かないほうがよさそう)

マリ人、ラッジ・リの初長編映画『レ・ミゼラブル』。
今年のカンヌ映画祭で審査員賞を取った。

映画『レ・ミゼラブル』
photos:allociné

最初は警官の行き過ぎを描いた作品に見える。黄色いベストの暴動の制圧に、警官が必要以上に自衛&防犯武器を使うのが問題になっているし。
しかし作品は、移民の子供たちが束になったときの、制圧できない反抗パワーもたっぷり見せる。
それは大の大人の警察官たちが震えあがるアグレッシブさ。映画の冒頭で、フランス優勝を無邪気に喜ぶ同じ子供たちと、見事なコントラストだ。

移民を受け入れるのはいいけど、ちゃんと受け入れられるかが問題なのだ。すぐに学校制度から落ちこぼれ、一日中町を徘徊して、盗みや万引き、暴力を覚えていく子供たち。
俳優は警官だけ。住民、子供たち、ジプシーまでみんな本物。だからこのリアルさ。

最後にヴィクトール・ユーゴーの『ああ無情』から抜粋される。
『世には悪い草も悪い人間もいるものではない。
ただ育てるものが悪いばかりだ』

内容だけでなく撮り方も上手く、初の長編映画とは思えない完成度。是非、日本でもかかって欲しい。

Les Misérables
ラッジ・リ監督作品
主演:ダミアン・ボナール、アレクシ・マネンティ、ジェブリル=ディディエ・ゾンガ
1時間42分
フランスで公開中


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高台と低地

夫はずらせないミーティングがあり、娘はバイトで、空港には娘のボーイフレンドが迎えに来てくれた。
帰りのRERで、Finnairは機種が古くてスチュアーデスが不愛想、JALは機種もサービスもいいけど、映画の選択がイマイチという話をしたら、航空会社はエミレーツとエティハド航空がいいと彼。座席は広く、TV画面は大きい。
「でもイスラムは映画の検閲が厳しいいからラブシーンは全部カット。二人が接近したと思うとバッサリ切られて、筋がわからくなる」
「日本は“ぼかし”。小さな雲が現れて見せちゃいけない部分を隠すの。それってもっと想像力をかき立てられるのよ」
「ハハハ」

帰りのJALでは『パラサイト 半地下の家族』を観た。2度目だけど改めてよくできている。

『パラサイト 半地下の家族』

韓国とは目下険悪な関係だけど、絶対お奨めの作品。日本は1月10日公開。
ユーモアと社会批判とサスペンスを共存させ、匂い、高台、低地(貧しい一家は大雨ですぐ床上浸水する場所に住んでいる)などのシンボルが上手い。

映画を観て思い出したのが成田空港のさくらラウンジ:チェックインしたとき「さくらラウンジをご利用いただけます」と言われた。
プレミアムエコノミーに付随したこれも初体験!と時間はあまりなかったけど覗きに行く。
ドアが開くとカウンターがあり、その背後に立派なサロン。
すっと入っていくと、呼び止められ「ボーディングパスをお願いします」
見せると、「エレベーターで下に降りてください」
カウンターの後ろに見えた優雅なラウンジはファーストかビジネスクラス用で、“プレミアム”でもエコノミーは階下なのだ。
ここにも高台と低地というシンボルがあるのね。ふつうのエコノミーとの間にはさらに8㎝の差があるのだ。

でも飛行機を正面に見ながら飲むエスプレッソは美味しく、喫煙室もあり、日本の最後の10分は快適だった。

成田 さくらラウンジ



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「東京で会えますか?」

ナタン君からのメールは日本語で書かれていた。
4月はじめに3か月の予定で東京に発ち、VISAを延長してもっといたい、と夏に聞いてから消息がなかった。まだいたのね。
「学校に行っています。板橋にすんでいます」

1週間のタイトな日程で、東京は広いし、毎日駆け回っていたけど、日本に送り出した(?)生徒さん第一号だ。
夜、学校のある高田馬場駅で待ち合わせした。
「元気そう!」
「あなたも」
「居酒屋でいいですか?」
「もちろん」
彼が連れていってくれたのは、恐ろしく騒々しい店で(店員さんたちが叫ぶ)、お客の平均年齢25歳(私が吊り上げる前)。
店内どこでもタバコが吸える。ナタン君がヘビースモーカーだったことを思い出した。

高田馬場居酒屋

ナタン君はとても日本語が上手くなっている。
でもシェアハウスに住んでいるので外国人の友達はできても日本人の友達ができない。女の子はさらにむずかしい。
「そうなの?」
「考えてることわからない」
少し話をするようになった女子がいて、一緒にお茶を飲んだとき、
「ぼくが専業主夫になりたいって言ったら、こんな目を丸くして(顔を真似る)びっくりした」
「のっけからそれ言っちゃだめなんじゃない」
「はい、もう言いません」
「それっきりになったの、その子と?」
「でも何も始まってなかった」

ナタン君の友達のフランス人は、日本人女子と“付き合って”いて、
「3か月目に映画行きました。フランス人、映画館でタッチするでしょ。だから手をにぎろうとしたら、女の子飛び上がって驚きました」
アハハ。
「それで終わり?」
「そうです。だから女の子ワカラナイ」
手を握られて驚くくらいならなぜ3か月付き合う?なぜ3日で止めなかった?というのがフランス側の理屈である。それはそうだ。

「たかこさん、2つお願いがあります」
「?」
「ひとつは、もう一杯飲みませんか?」
「いいわよ」
わたしたちは生ビール(小)を飲んでいたけど、水で割ってない?という軽さで、すぐ赤くなる私が赤くならなかった。
「もうひとつは、カミーユさんの本、どこで買えますか?」
「あら、送ってあげるわよ」
「いえ、ぼくカミーユさん助けたい」
優しい言葉に思わずホロリ。
「ありがとう。紀伊国屋書店のオンラインで買えるって聞いたけどカミーユ喜ぶわ」

ナタンは食べる時間も惜しいというように何も取らずにしゃべり続けた。将来のこと、観たアニメの話・・・会話の80%は日本語で。
私はお腹を空かせて家路についたけど、会えてよかった。素敵な時間を過ごした。


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パリVS東京、2人の女性市長


「路上で吸えないの!?」
「そう、知らなかった?」と息子。
「2年前、秋葉原とか伊勢丹の周辺とか吸えないゾーンはあった。今はどこもかも?」
「どこもかも」
渋谷のハチ公のそばに喫煙エリアがあったけど、ハチ公で待ち合わせや写真を撮る人の邪魔になるという理由(ごもっとも)どこかに移されている。

ハチ公と並んで写真を撮りたい人の列。世界的有名な犬になるとは、本人(本犬)も思っていなかっただろう。

ハチ公前

従って喫煙エリア探しに駆け回ることになったが、ふと立ち止まり、ふむふむ・・・東京にいたらタバコが止められるかもしれない。

このタバコ締め出しは小池合子市長の発案だそう。フランスでは:
―タバコの値段を上げ続け(8.8~9.3ユーロ、日本の倍以上)
―パッケージを全部同一にし(ブランドを隠す)
―「Fumer tue/喫煙は殺す」というキャッチの上、タバコの害の恐ろしい写真を載せる。

fumer tue

という対策で、10代の子の抑止になっているらしい。
場所は公共の閉所は全面禁煙で喫煙コーナーもないが、外に出れば吸える。
外も規制するというテもあったのね。

そういえば東京もパリも女性市長。アンヌ・ヒダルゴ市長がパリから締め出そうとしているのは車だ。
5段階の公害度(5が一番排気ガスを出す)を設け、4以上の車は禁止。ディーゼル車もゆくゆく禁止される。
歩道をやたら広くし 、勢い車道は狭くなり、車なしデーを設けている。

これはパリ市庁のヤラセ理想図。

パリ、車ナシデー

この前、バスティーユ広場を抜け出すのに30分かかり、イラついた夫は「パリで運転するのはごめんだ!」と叫び、自分のセリフに「つまりイダルゴの思惑通りになってるわけだ」
どっちの女市長も評判はあまり良くない、“締め出し”好きで、それに成功しているということ。


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プレミアム初体験

「座席の間隔が8センチ長いの。横幅も少ーし広いし」プレミアムエコノミーで来た大学の友人。
「それに便によってエコノミーと2万円しか違わないのよ」と聞いて、ムムム・・・12時間乗ると、この8センチが大きいはず。
ちょうどJALのプレミアムエコノミーがエールフランスのエコノミーより安かったので、初めて買ってみた。
ただしヘルシンキ乗り換えで、ヘルシンキまではフィンエアのエコノミー。
12時半に発ったのに、軽食はおろかビスケットさえ出ず(ケチなエールフランスの国内便だってペストリーが出るのに!)乗務員も、よく言えば簡素、悪く言えば不愛想。
私はお腹を空かせてヘルシンキ空港に着いた。
何か食べないとぶっ倒れる、と売店をウロウロしていたら、乗り継ぎの日本人たちは急ぎ足でどこかへ向かっている。
そのはず。この空港はデカくてJALの49番ゲートまで延々と歩かなくてはならない。40分の乗り継ぎ時間はちょこっと食べる暇もなく、空腹のまま、メトロ3駅分くらい歩いた。ホントに。

さてJAL機に乗り、ボックス型のビジネスを横目で見て通り過ぎ、プレミアム。
なるほど、座り心地よし。最前列の席を選んだので8センチどころか前のスペースはスーツケースも置けそうだ。
でもとにかくメシ!と思っていたら、18時ごろご飯が出た。
食事はエコノミーと変わらないみたい(見に行って比べたわけじゃないけど)。
洋風(鱈とポレンタ)か和風(ハンバーグ)で前者を選ぶ。
セロファンんを取ってから撮るべきだったけど、そういう気持ちの余裕がなかったらしい。

JALプレミアムエコノミー、食事

ご飯を食べて人心地がつくと、日本人スチュワーデスの応対とサービスに感心する余裕ができた。
フィンエアとは天と地の差、エールフランスは感じ悪くはないけど、ラフというか、荒っぽいというか。
日本人スタッフは丁寧で細やかで、でもここまでしたら疲れ方も倍ではないか、と心配になるほどであった。

予告通り“到着2時間前”に出た、卵と鶏そぼろご飯!小学校のお弁当が懐かしい。

JALプレミアムエコノミー、食事

そう、懐かしい日本に近づきつつある。


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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(計算しないで!)
現在フレンチ・コード主宰。訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とデビッド・ボウイが趣味。


長谷川たかこ

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